- 著者
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真鍋 勇介
- 巻号頁・発行日
- 2014-03-25
我が国の電力系統は,地下資源の乏しさや縦長な国土形状などの特徴から,日本を10の地域に分け各地域に一般電気事業者を配する,一地域一社による垂直統合型の管理を行ってきた。しかし,現在,太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー(Renewable Energy:RE)の大量導入と,発送電分離や電力市場の開設などの電気事業の規制緩和という二つの大きな転換を迎えている。
RE電源の不確実性や地域偏在性,電力市場を介した複数の発電事業者による競争状態は今までの電力系統にはなかった要素であり,これらの変化は電力系統の運用・管理手法に大きな影響を与えると考えられる。
本論文ではその中でも,従来型電源や地域間連系線,蓄電池という電力系統設備の拡充計画へ与える影響や問題点を明らかにし,数年単位の長期的視点が必要となる設備形成の新たな策定方法の提案,検証を行うことを目的とする。最初に,長期的不確実性を考慮するための確率的動的計画法(Stochastic Dynamic Programming:SDP)による電源開発計画評価や,競争環境における電源開発計画を評価するための確定的動的計画法
(Deterministic Dynamic Programming:DDP)とSDPを組み合わせた新たな評価手法の開発,評価を行う。次に,RE電源の大量導入に対応した供給信頼度評価を行うために,正味負荷を用いた状態列挙法による評価手法,地域間連系線によって接続された2地域系統に対応した新たな供給信頼度手法の開発を行い,RE電源の等価負荷供給能力(Effective Load Carrying Capability:ELCC)の評価等を行う。この信頼度評価手法を用いることで,RE電源の大量導入に対応した電源開発計画の評価をSDPによって評価することが可能となった。さらに,競争環境で且つRE電源が大量導入される電力系統において既存電源の適切な建設を促すことを目的とした新たな容量市場の設計も行う。また,広域に点在する大規模RE発電所を同時に観測,制御する広域運用システムの実証研究事業を紹介し,その事業の一環として行った,複数の蓄電池と可制御電源との協調制御システムの開発と,ならし効果による必要蓄電池容量の削減量評価について述べる。
これらの研究を通して,経済性,環境性,供給信頼性の観点から,次世代における最適な設備形成とは何かを議論し,将来の電力系統のあるべき姿を示す。