著者
近藤 克幸
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は,最近各方面で注目されている電子タグのベッドサイド注射業務への応用における医療安全面の効果を明らかにするとともに,その効果的な活用法を検討する事を目的としたものである.本研究で使用しているシステムは,13.56MHzの電子タグリーダー内蔵携帯端末(PDA)を用い,ベッドサイドにおける注射業務施行時に利用者・患者リストバンド・注射ラベルに内臓した電子タグの読み取りを行うもので,読み取った情報は無線LANを通じて病院情報システム上の指示内容と照合される.照合結果が正しければ実施記録が電子カルテシステムに記録され,取り違えの場合はPDA上にアラートが表示されるため実施入力が出来ない.本システムを研究代表者所属施設の病棟で全面的に運用し,導入前後の注射関連インシデント報告を比較した結果,有意にインシデント件数が減少し,システムの有効性が示唆された.また,利用者アンケートの結果でも,本システムによる医療者の安心感増加が明らかとなり,インシデント抑止効果とともに業務への優れた適合性が示唆された.さらに,システムのログ取得機能を強化し,バーコードで認証を行なった場合との比較検討を行なったところ,1回の注射業務にかかる時間の合計は,(1)全て電子タグの場合は31.0秒,(2)注射ボトル:バーコード・リストバンド:電子タグでは38.2秒,(3)注射ボトル:電子タグ・リストバンド:バーコードでは40.7秒,(4)全てバーコードでは63.6秒(いずれも平均)となり,一般に使われているバーコード認証システムでは電子タグシステムの2倍強の時間を要している事が明らかになった.医療安全を考えた場合,チェックの確実性に加えてユーザビリティが高いシステムが必要である.本研究により,電子タグは医療現場での行為の確実性と優れた業務適合性が明らかになり,今後もさらなる適用範囲の拡大が可能と考えられた.
著者
谷口 千絵 村田 加奈子
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.295-307, 2011 (Released:2011-11-01)
参考文献数
30
被引用文献数
1

背景:日本における全出産数の1%を,地域で活動する助産師が助産所や産婦の自宅において介助している。また産科医不足という周産期医療の課題の解決策として,「正常分娩」を自立して行う助産師の業務が見直されている。目的:助産所の開設形態別に,開設者の視点からみた助産所を開設・運営する体験を明らかにする。方法:2003年から2006年の間に,助産所を開設または業務変更を行った助産所管理者5名を対象に,聞き取り調査を実施した。結果:助産師は助産所を開設することによって,自らが目指すケアを実現させることができ,同時に不本意なケアを提供している葛藤から解放されていた。また,助産師は家庭生活に合わせて段階的に業務拡大を行い,居住する地域社会の一員として受け入れられていった過程がみられた。分娩の取扱いを始めることは覚悟が要ることであり,助産師生命を賭けた業務拡大となっていた。有床助産所は開設資金と維持に課題があることが明らかとなった。結論:助産師は自立自営で助産所を開設することにより,病院勤務では実現しなかった妊娠・出産・産後を通じた継続的なケアを提供することができていた。助産師は,地域の一住民として社会的信用を得て,家庭生活に合わせた業務拡大を行っていた。
著者
甲野 雄次 新井 啓五 泉対 博 松川 俊一 糸原 重美
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.117-125, 1986-02-15
被引用文献数
1

羊を用いて牛白血病ウイルス (BLV) の感染防御実験を実施した。Triton X-100により不活化した100倍濃縮BLV培養液をフロインド完全アジュバントとともに8頭の羊に2週間隔で3回筋肉内接種した。最終免疫から2週後, すなわちgp抗体価が1:32〜1:256に達した時に, 4頭の免疫羊に50μlのBLV感染羊血液を皮内接種したが感染は成立しなかった。この4頭を含めた8頭の免疫羊の抗体価が1:1〜1:8に低下した時, 同一方法で再び攻撃接種を行った。その結果, すべての羊は抗体価の著明な上昇を示し, 同時にBLVも分離された。BLV感染羊の血清から分離した種々の量の免疫グロブリンを, 健康羊に腹腔内接種した後攻撃接種を行った結果, 1:64の抗体価を持った個体では感染防御が成立した。実験に用いたすべての羊につき感染防御の成立と液性抗体価の関係を調べた結果, 1:64以上の抗体価を持つすべての羊および1:32の抗体価を持つ羊の半数で感染防御が成立したが, 1:16以下の抗体価を持つ個体では1頭が感染防御を示したにすぎなかった。

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著者
ゲーテ 原著
出版者
いろは書房
巻号頁・発行日
1919
著者
霍間 郁実 四日市 章
出版者
The Japanese Association of Special Education
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.421-430, 2013
被引用文献数
1

本研究では、手話から日本語への同時通訳(読み取り通訳)の量的な側面を明らかにするために、訳出率と変換作業について分析を行った。分析対象とした手話話者の発話の文節数は307文節であり、各通訳者5名が発話した文節数は207~283文節であった。訳出率は41.7%~71.8%であり、通訳資格をもつ者の中でも差が大きいことが示された。通訳者は重要語を選択的に訳出しており、訳出率の高い通訳者は少ない発話数で効率よく訳出を行っていることが推察された。訳出における変換作業は「同等」「言い換え」「付加」「省略」「誤り」に分類され、「言い換え」や「省略」では、通訳者が共通して選択する文節があることが示された。
著者
大阪市保育会 編
出版者
大阪蔡倫社
巻号頁・発行日
1903
著者
安酸 史子 中野 榮子 永嶋 由理子 松枝 美智子 渡邉 智子 檪 直美 安永 薫梨 清水 夏子 浅井 初 坂田 志保路 吉田 恭子 江上 史子 小森 直美 小野 美穂
出版者
福岡県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

経験型実習教育の研修プログラムを教員、実習指導者、学生を対象に実施した。研修毎にアンケート調査を実施し、研究者間で検討を繰り返し研修プログラムのバージョンアップを図った。学生は実習に臨む直前、強い不安を抱いていることが明らかになった為、実習前の演習にプロジェクト学習を取り入れた結果、不安の程度の軽減を図ることができた。また教材 DVD を制作し、活用した。いずれの研修も満足度が高く、この研修プログラムが有効であることが示唆された。さらに経験型実習教育を受けた学部生及び卒業生にグループインタビューを実施し、経験型実習の効果が確認できた。今回の取り組みや成果は、学会発表および経験型実習教育ホームページで公表した。
著者
岡屋 昭雄
出版者
佛教大学
雑誌
教育学部論集 (ISSN:09163875)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-18, 1999-03-01

今回は、鈴木三重吉研究、わけでもその描写論を中心に論究することにする。筆者は鈴木三重吉「赤い鳥」の会に所属しつつもその研究を深めることには今ひとつ不足していた憾みを感じている。したがって、今回は、三重吉の処女作でもある「千鳥」を中心にその文学的な背景を明らかにすることに努力を傾注した。ともすれば鈴木三重吉の文学的な活動のみならず、三重吉の文学的な意味までも忘却されているのが実状である、といってもいいのではないだろうか。最近の文学作品を読んでみてもその文体が暖昧であることに逢着する。それに対して、三重吉の文体の確かきには多くの学ぶ点があるのではないのか、というのが筆者のそもそもの出発である。それと写生文という運動を再評価したい、というのも筆者の研究の動機でもある。したがって、今回は、「赤い鳥」綴り方運動の前段の作業として位置づけ、三重吉の文学活動を作品に即しつつ深めながら、その文章の特質を明確にすることを目的とするのである。さらには、この文学的な活動の延長線上に子どもへの綴り方指導の基礎的指導を構想したものとして位置づけることになる。三重吉の作品分析を単に分析のみに終わらせることなく、この文学的な三重吉の営為から、子どもへの綴り方指導論が成熟するきっかけとして把握できる、との仮説を持っていることを述べておく。
著者
足達 義則 尾崎 正弘 尾崎 正弘
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

Web教育では端末側に座っている人間を特定することが、評価などを行う上で重要になる。本研究では平仮名を用いた筆者識別の検討を行い、「そ、よ、ま、わ」の文字を使うことで精度の高い筆者識別を実現した。また、顔画像を使った個人認証について検討し、主成分分析の手法と学習理論を併用した簡便な識別法を提案できた。さらに、学習を継続する上で理解度を予測し適切な教材を提供することが必要となるが、こまめなレベル調整が学習効率につながることを見出した。
著者
佐藤 憲行
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究ではハルハ・モンゴルを研究対象地域とし、一次史料を用いて、清代モンゴルに建設された漢人商業地区「買売城」の視点から、蒙漢の社会経済関係の内在的理解を目指した。家畜窃盗事案の分析を通じて、従来指摘されてきた「搾取-被搾取」関係とは異なる蒙漢の経済関係の一側面を明らかにした。また漢人耕作者管理、及び耕作地をめぐる諸問題の分析から、モンゴルにおける漢人管理に関する規定の成立過程を明らかにした。
著者
藤原 俊之 園田 茂 三田 しず子 岡島 康友 木村 彰男 千野 直一
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.253-258, 2001-04-18
参考文献数
15
被引用文献数
2

Functional Assessment Measure (FAM)日本語版を外傷性脳損傷(TBI)患者に用い,Short Behavior Scale (SBS), Mini-Mental State Examination (MMSE), Disability Rating Scale (DRS)との比較を行った.またFAMを用いて,脳血管障害患者とのADL構造の比較を行った.FAM合計点とSBS, MMSE, DRS得点とは統計学的に有意な相関を認めた.また項目別自立度の検討ではTBI群では特に脳血管障害(CVD)群と比較して,問題解決,記憶,見当識,注意,安全確認の項目での自立度が低く,いわゆる認知機能の障害がADLに強い影響を与えていることが客観的に明らかとなった.FAMはTBI患者の能力低下の評価法として有用と考えられた.(リハ医学 2001;38:253-258)
著者
橋本 剛
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2006

名人に勝つコンピュータ将棋の実現に向けて,動的なマージンを用いるFutility Pruningの提案,部分局面n-gram法の改良,詰め将棋探索で問題となる二重カウント問題の有効な対処法としてWeak Proof Number Searchの開発などを行った。マージンを用いるFutility Pruningの研究について,これまでfutility pruningは,チェスでは有効であるが将棋では探索空間の広大さと選択的探索が主流な事もあり,有効ではないと考えられていた枝刈り技術であった。しかし近年futility pruningを将棋に用いたBonanzaが好成績を収めて以降将棋でもfutility pruningが注目されることになった。futility pruningは大雑把な評価値にマージンを持たせαβのWINDOWから十分外れている場合に枝刈りをする技術である。これまでfutility pruningで用いるマージンには定数が用いられていたが,局面状況によって適切なマージンが変化すべきである場合に対応できないという問題があった。そこで,まずfutility pruningのマージンを定数で扱っている事による問題点を解析し,その改良案として,探索毎に動的なマージンを決定するアルゴリズムを提案,実装し評価を行った。その結果,動的なマージンを用いたfutility pruningが従来のものに比べて175勝138敗1分で統計的に有意に勝ち越し,その優秀性を証明することができた。部分局面n-gram法の改良では,プロ棋士の棋譜から頻度の高い指し手列を抽出し低ノイズで探索に組み込むことに成功した。また,指し手列の出現頻度をカウントし実現確率探索の遷移確率として扱うことでより人間らしい手筋を効率的に読ませることで探索の強化に成功した。詰み探索では従来のdf-pnに代わる二重カウント問題に影響されない新たな探索法Weak Proof Number Searchを提案し,ベンチマークテストでは611手詰みの「寿」をわずか数秒で解くなど従来手法に比べて圧倒的な性能を示した。
著者
大場 みち子 遠城 秀和 村垣委久夫 松山 憲和 葛坂 将人
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告デジタルドキュメント(DD) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.79, pp.41-47, 2004-07-30
被引用文献数
5

旅行業界では,旅行業者,交通機関,宿泊施設などの間で行われる各種取引情報について電子化し共通化を図ることが望まれており,日本旅行業協会とXMLコンソーシアムでは旅行業界電子商取引向けXML,TravelXMLの標準化を進めている。今回,XMLコンソーシアムではこのTravelXMLとWebサービス技術を利用した旅行パッケージ商品に関する企業間電子商取引システムの新たなビジネスモデルを考察し,その実証実験を実施した.本報告では,今回の実証実験により得られた新たなモデルの有効性を示す.In the travel industry, a computerized standardization of the information exchanged between travel agents, transportation systems, and accommodation facilities, etc. is desired consequently the standardization of the XML formats for the travel industry electronic commerce, TravelXML, is currently underway continued developing by the Japan Association of Travel Agents and the XML consortium. And this time, a new business model for travel industry was proposed and experimented by the XML consortium, using TravelXML and Web Services. In this paper, we show the effect of the new model obtained by our experiment.
著者
倉谷 健治
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告 (ISSN:02852853)
巻号頁・発行日
vol.90, pp.1-28, 1997-02
被引用文献数
1

高温での炭化水素と窒素よりHCNを生成する過程を電算機シミュレーションした。適切な素反応群と反応速度定数とを用いればよいのであるが, 実験値は僅かであるのに対し, 計算に用いられる反応式, 速度定数は多数で任意性が極めて高く, 何らかの規制を加えないと, 極言すればどうにでも実験値と符合させることが可能である。このうち反応式は原系から生成系に至ると考えられる反応を一旦網羅し, 感度解析を行って不要なものを削除すればよいのであるが, この際, 反応式が素反応であるか, 逆反応が平衡定数から精確に算出可能であるかが大きな問題である。素反応性を確認する方式が確立されていないし, 多数の文献でも多くの矛盾が見られるので, 怪しい反応を取り込むことを避けるのが望ましい。また, 素反応として, 平衡定数より逆反応の速度定数を求める場合には生成熱の精確さが重要なので, これにも検討を加えた。一方速度定数についてはBaulchの推薦値があるものはこれを優先第一順位とし, それが見あたらない時にはMiller, その他の推薦値を, さらにそれも見られない場合には文献に頻出し, 多数の人が採択している速度値を用いることにした。しかし, CH_3+CH_3→C_2H_4+H_2の反応についてはWarnatz説とHidaka説とでは大差があり, その影響も極めて大きいので, ここでは両者を比較検討した結果, Hidaka説に従うこととした。これらの検討の結果, 可逆性に疑問のある場合には正方向のみの反応として, 簡素化を徹底し表8の機構を提案した。