著者
坂本 雄児
出版者
北海道大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

1. 目的多視点画像の撮影システムや、3Dディスプレイなど、3次元画像の様々な収集、表示システム間の3次元データを正規化する方法の一つである波面記述法において, 以下の点を明らかにする. (1)データ間の変換法のより深い理解 : 特に、多視点画像より波面記述データへの変換, (2)実空間への応用 : 実写多視点画像より波面記述データへの変換法の検討2. 平成19年度の研究実績開発した多視点画像撮影システムにより撮影された3次元画像より任意視点画像およびホログラムによる3次元像の表示を行い、変換法が有効であることを示した。3. 平成20年度の研究実績(1)多くの視点での撮影が必要とされていた従来のアルゴリズムを発展させ、撮影点数が少なく, かつ高分解能な立体画像の波面記述データに変換する新アルゴリズムを開発。(2)撮影位置に自由度が無かったものを, 比較的自由な位置からの撮影が可能な新アルゴリズムを開発。(3)上記, (1)(2)のアルゴリズムについてホログラムによる立体表示により有効性を確認。4. 今後の課題(1)連続的な視差と奥行き情報の内在が理論的にどう解釈されるべきか。(2)提案したアルゴリズムの特性や適応限界等の理論的, 実験的検討が必要。
著者
緑川 知子 山下 協子
出版者
四條畷学園大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

肢体障害者に運動機能の補助増進を目的に用いられる補装具の着心地改善を図り、肢体障害者の生活の質向上に貢献することを目的として本研究を企画した。平成19年度に行った身体障害者の補装具着用実態と着用感に関する調査により使用者が最も多かった短下肢プラスチック補装具について足底土踏まず部に孔をあけた着心地改良品を平成20年度に試作した。これを用いて平成21年度には着用実験を行い、装具内温湿度を測定した。平成21年8月に研究室のエアコンを30℃に設定して実験を行った。研究室に到着した被験者は1時間の安静後、半袖Tシャツと短パンの実験着に着替え、センサー添付部位(足底土踏まず部,下腿後面部,胸部)をアルコールで清拭した後、センサーを貼付し、実験中の衣服内温湿度を連続測定した。3種の補装具について装着前椅座安静20分、装着後椅座安静20分、歩行運動20分、回復期椅座安静20分の間、5分間隔で5分間ずつ口腔温(精度0.5℃の婦人体温計)と着心地アンケートを測定記録した。1)プラスチック補装具で被覆されると、足底と下腿の衣服内温度・湿度は上昇した。温冷感・湿潤感は装着後上昇し歩行運動により一過性に下降したあと上昇し、運動終了20分後も高いレベルにあった。2)皮膚に密着するプラスチック面に吸湿素材を貼付すると装具内湿度は改善する傾向が認められた。そこで、次に模擬皮膚を用いて発汗無し,少量発汗,中量発汗について、4条件((1)孔無しプラスチックプレート(2)孔有りフ°ラスチックプレート(3)ライナー+孔無しプラスチックプレート(4)ライナー+孔有りプラスチックプレート)で検証実験を行った。今回用いた吸水性能のライナーでは,発汗が少量時には衣服内湿度の上昇が抑えられるが,中量時にはその効果は認められなかった。プラスチックプレートの孔の有無による衣服内温湿度の違いは認められなかった。
著者
リナート キャロル 小林 ひろ江
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、過去の研究に基づき構築された「言語間のライティング能力双向性モデル」が多言語学習者によるテキスト構築を説明できるかどうかを検証した。ケース・スタディの方法を使い、母語を含む3カ国語による29篇の作文、思考発想法プロトコール、インタビューデータを収集し、分析した結果、このライティング・モデルの有効性を確認し、また多言語学習者が既習言語知識をテキスト構築プロセスに使うライティング方略も明らかにした。
著者
夏目 敦至 千賀 威 宇理須 恒雄
出版者
名古屋大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

ストレス顆粒はRNAと多くのタンパク質からなる凝集体であり、熱や活性酸素などのストレスにより形成される。その形成メカニズムは不明であり、RNAの翻訳停止やタンパク質の修飾が関与していると考えられている。また、ストレス顆粒の構成タンパク質の異常は神経疾患の発症と関連している。我々は分子生物学的手法とイメージングの手法を用いてストレス顆粒形成のメカニズムを解析した。ストレス顆粒の新たな構成因子を同定し、そのダイナミックな細胞内局在と複合体形成を解析し、関連する病態の解明をした。
著者
山名 早人
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

2010年度は、2009年度に開発したシステム自動最適化アルゴリズムの実機評価を目指した。本アルゴリズムはProducer-Consumer型のモジュール群で構築されたアプリケーションにおいて、メニーコアCPUを最大限に利用できるよう各モジュールに割り当てる計算機やスレッド数を自動で決定し、アプリケーションの性能を最適化することが目標である。研究には我々が開発している分散処理フレームワークであるQueueLinkerを用いた。2010年度は、まず、自動最適化アルゴリズムの評価用アプリケーションとしてWebクローラを開発し、QueueLinkerのプロトタイプにより動作を確認した。本クローラを構成するモジュールは全てProducer-Consumer型であり、QueueLinkerにより分散実行できる。実験に先立ち、本クローラがWebサーバにかける負荷を軽減するために、同一Webサーバに対するアクセス時間間隔の最小値を厳密に保証するクローリングスケジューラを開発した。本スケジューラは、時間計算量が0(1)であり、空間計算量の上限がクローリング対象のURL数に依存しない。本アルゴリズムはDEIM 2011において発表した。そして、開発したWebクローラをアプリケーションに用い、QueueLinkerの自動プロファイリング機能を開発した。本プロファイリング機能は、モジュールが使用するCPU時間や、ネットワーク通信量をプロファイリングできる。その後、昨年度開発したシステム自動最適化アルゴリズムを実際のプロファイリングデータを利用して動作するよう設計を修正した。本アルゴリズムは、各モジュールが使用するリソース量に基づいて、アプリケーションの性能が最大になるように、モジュールに割り当てる計算機やスレッド数を自動で決定するものである。
著者
山路 稔 岡本 秀毅 久保園 芳博
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

ベンゼン環同志が隣り合ってたくさん繋がった縮環化合物と呼ばれる分子は有機化学的の作成する事は大変手間と時間がかかる。本研究では、1)光を当てるだけで環縮環生成する反応機構を解明する、2)この反応機構を応用し、従来の有機合成では生成困難な多環芳香族化合物や窒素、酸素、イオウなどの原子を含む複素環芳香族化合物を新たに創成する、3) 作成した多環縮環化合物を電子・発光デバイスや超伝導材料としての可能性、について研究を行った。
著者
広常 真治
出版者
大阪市立大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010

我々は細胞質ダイニンの制御機構の解明に取り組んできた。細胞質ダイニンは微小管上を双方向に走るがプラス端に向って走るメカニズムは不明であった。我々は滑脳症の原因遺伝子・LIS1が細胞質ダイニンを微小管上に固定し、微小管-LIS-細胞質ダイニンの複合体を形成し、キネシン依存的に運搬することを明らかにした。さらにアスペルギルスにおけるNud遺伝子群のNudCがキネシンのアダプタータンパク質として機能していることを明らかにした。このことからLIS1が変異を起こすと細胞質ダイニンの順行性の運搬が障害され、細胞内における細胞質ダイニンの局在が中心体に偏った分布を示し、細胞の末梢部分で枯渇することが分かった。このことがLIS1の変異に伴う神経細胞の遊走異常、また細胞分裂における紡錘体形成や染色体分配の異常につながることが分かってきた。また、NudCの変異は細胞質ダイニンの順行性の運搬のみならず、他のオルガネラの運搬も障害されることから、NudCはキネシンの一般的なアダプタータンパク質として機能していることが示唆された。さらに、細胞質ダイニンはLIS1により微小管上にアイドリング状態になるが、低分子量G蛋白質のRabファミリーのタンパク質によって活性化されることが示唆された。さらに電子顕微鏡を用いた構造解析から、LIS1は細胞質ダイニンの頭部に結合し、ダイニン分子のスライドを制限することで細胞質ダイニンの微小管上の移動を制限することを証明した。
著者
米道 学
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

(目的)千葉県房総半島にはヒメコマツが天然に隔離分布する。この個体群は最終氷期後に局所的に残った遺存分布と考えられ大変貴重であるが、1970年以降マツ材線虫病等で急激に個体数を減少させている。1977年以降の枯死個体からマツノザイセンチュウが確認された。以上からマツ材線虫病が主要因であることが指摘されたため、現存する天然木からクローン増殖等で系統保存を行なっている。今後、保護・回復計画に基づき系統保存個体の自生地への補植の可能性が出てきた。その際には、マツ材線虫病抵抗性個体を植栽することが望ましい。本研究では、両親が明らかな人工交配実生苗や自殖の可能性が高い実生苗について材線虫接種試験により抵抗性の程度を確認し、実生苗における家系と抵抗性との関連性を明らかにする。(方法)。房総丘陵の自生個体は互いに孤立しており、花粉流動が少ないため自殖個体が多いことが報告されている。そこで、接種に用いる個体は人工交配苗(9通りの組み合わせ(自殖が1家系))と天然個体(4家系)・集植所(3家系)からの自然交配個体を用いた。人工交配は雌親を集植所木個体、花粉親を天然個体とした。接種試験は7月に行い、強病原性材線虫(ka-4)を5000頭/本を接種した。比較対照としてアカマツとクロマツの抵抗性苗および未選抜苗についても同様の接種を行い、接種試験の有効性を確認した。(結果と考察)ヒメコマツにおける生存率は人工交配個体50~100%で自殖個体が33%であった。自然交配個体では、天然個体群0~100%、集植所個体39~100%であった。人工交配個体のバラツキが少なく抵抗性が安定していた。アカマツ、クロマツにおける生存率は抵抗性個体群85~100%、未選抜個体群が19~40%でありヒメコマツ個体群の材線虫抵抗性は抵抗性個体群より弱く未選抜個体群より強いと示唆された。自殖の生存率は人工交配個体中で最も低く、自殖による抵抗性の低下が疑わられた。さらに天然個体でも生存率0%の個体群もあり花粉流動の悪さからくる自殖の可能性も示唆された。今後、生存個体を抵抗性個体母樹としてヒメコマツによるマツ材線虫選抜育種を検討したい。また、今回の結果からマツ材線虫抵抗性個体の理想的な組合せが示され今後の抵抗性個体創造の参考としたい。
著者
小椋 たみ子 窪薗 晴夫 板倉 昭二 稲葉 太一 末次 晃
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

第一に言語構造、養育環境(親の働きかけ、メディア環境、家族環境など)、個体要因(物理的世界の認知能力、社会的認知能力、気質、出産時情報など)の言語発達への影響を明らかにした。第二に親の報告から言語発達を測定するマッカーサー乳幼児言語発達質問紙の妥当性が実験と観察データから高いことを明らかにした。第三に言語構造の違い(複数の形態素の有無)が認知へ寄与するかどうか明らかにした。第四に大人の言語との比較を基調に、子供の言語を(i)非対称性、(ii)「幼児語」の音韻構造、(iii)アクセントの獲得、(iv)促音の出現、以上の4つの観点から明らかにした。
著者
石井 明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1951年のサンフランシスコ平和条約、それに続く日華平和条約の締結は、アメリカの反対のもとでは、日本は中華人民共和国との外交関係を打ち立てることは不可能であることを明らかにしていた。それから20年たち、アメリカと中華人民共和国との和解が進むなかで、日本は中華人民共和国との外交関係を樹立した。同時に、中華民国政府は日本との断交を決めた。しかし、中華民国政府は日本との間で、経済関係、人的交流などを含むインフォーマルな関係は維持することを選択した。意外なことに、日台関係はその後、外交関係の断絶にもかかわらず発展をとげた。これまでのところ、断交の政治過程についてはかなり研究の蓄積がある。しかし、その後の日台関係については十分な研究がなされているとは言いがたい状況にある。そこで、私は2度、台北を訪れ、1970年代の日台関係に関する文献を収集した。特に党史館(中国国民党の文書館)への訪問は私の研究にとって非常に有益であった。また、台北では、陳鵬仁教授(中国文化大学日本文化研究所所長)を含む何人かの日台関係の専門家に会った。陳鵬仁教授は中国国民党の党史委員会の前主任を勤めた方である。中国国民党の元秘書長、馬樹礼氏にも面会した。馬樹礼氏は、1972年の断交以後、日台関係を処理していたキー・パーソンの一人である。台北でのこれらの調査を通じて、私は、断交以後も日台関係が発展を続けたのは、密接なネットワーク-政治の分野に限らず、経済分野、それに文化の分野を含めた-の存在によるところが大きいことを改めて認識した。
著者
山下 英俊
出版者
一橋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は,産業廃棄物税を題材とし,都道府県の産業廃棄物統計を用いて税導入に伴う産廃最終処分量の変化の要因分解を行い,主要な変化要因の中から税導入の影響が認められるものを抽出することで,産業廃棄物税の効果を定量評価することを目的とする。産廃税は,価格メカニズムを用いた廃棄物削減と,財源調達という二つの政策目的を有する。自治体によって導入形態が異なり、(1)事業者申告納付方式、(2)最終処分者特別徴収方式、(3)焼却処理・最終処分業者特別徴収方式、(4)最終処分業者課税方式の4種類に大別される。理論的には廃棄物削減への誘因効果は(3)が最も高くなることが示唆される。こうした制度設計の相違が最終処分量の変化に影響を及ぼしたか否かを検証する。21年度は、統計分析の対象として20年度に抽出した対象自治体のうち、データ入手済みの各県について、要因分解による分析を行った。加えて、岩手県についても産業廃棄物実態調査報告書を入手した。さらに、県別の分析結果の一部を先行的に研究集会などで報告をし、関係専門家との意見交換や分析結果の検討を行った。一例に三重県の分析結果を示す。三重県では産廃税の導入前後で産廃最終処分量が18万トン弱減少している。要因分解の結果、主要な減少要因は(1)化学産業の汚泥、(2)建設業のがれき、(3)建設業の活動低下、(4)建設業の汚泥であることが判明した。このうち、(3)は公共事業の減少によるものであり、(1)は後に廃棄物処理法違反で有罪判決が確定した石原産業による汚泥の偽装リサイクルによるものである。さらに、(2)及び(4)は建設リサイクル法に起因する可能性もある。したがって、主要な減少要因のうち、明らかに産廃税の効果と考えられるのは一部に過ぎないことが確認された。以上の成果を踏まえ、県別の分析結果及び全体の比較分析の結果をそれぞれとりまとめ、学術雑誌への論文投稿を進めている。
著者
石井 香江
出版者
一橋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

本研究は歴史・社会学的な手法を用いて、テレフォン・オペレーター職(戦前と戦後の一時期は電話交換手を、現在は主にテレワーカーやテレコミュニケーターと呼ばれる)と電信・電報オペレーター職の生成過程とその現状をめぐる日独比較を試みるものであり、歴史分析編と現状分析編の二部から構成される。ジェンダー化(特定の性別と関連する意味が付与されること)された職種として出発したテレフォン・オペレーターの現状を探り、その変動の兆しや変化を阻む要因を分析することが研究の主旨である。歴史分析編では引き続き職員の身上調査記録を分析し、現状分析編では日独の元職員(今年は主に電信技手)へのインタビューや社史(電電公社・NTTやドイツテレコム)の検討を進めている。本年度は日本で入手不可能な戦前のドイツ逓信省の郵便・電信吏員組合の発行した機関誌や電話交換手や電信技手の人事記録など、ドイツの公文書館(ベルリンとミュンヘン)に所蔵されている史料の分類・整理・翻訳作業を、夏に引き続き行った。その際に、全体像を把握できる基礎データを作成し、これらのデータをコンピュータ入力し、データベース化し、また、史料のキーワードや関連書誌データも添付する作業も行なつた。その他には、先行研究者との意見交換やドイツ・テレコムとその職員、日本でも元電信技手へのインタビュー、日本の逓信総合博物館(『逓信協会雑誌』など)・東京大学医学部(労働科学・政策に関する雑誌)・明治文庫(『読売新聞』など)所蔵の資料の調査を引き続き進めた。そしてこうした蓄積の上に、本研究に関わる研究史や論文を発表した。来年はこれをもとに学会発表をする予定である。この他にも、修士論文の一部をまとめた論考をドイツ学会で共同発表し、共著として出版することができた。
著者
小澤 自然
出版者
関西大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、V・S・ナイポールの初期作品に含まれる文化的異種混淆性についての考察を行なった。2008年から2009年度にかけては、彼が作家としての本格的なデビューを飾る前に関わったイギリスBBCの文芸番組"Caribbean Voices"についての調査を行ない、この番組との関係が彼の事実上の処女作Miguel Streetに果たした影響について考察し、学会発表を行なった上で、論文にまとめた。また2010年度には、ナイポールの中期作品群の出発点に位置する旅行記The Middle Passageについて分析し、学会発表を行なった。
著者
芦田 昌明 蓑輪 陽介 石原 一 飯田 琢也
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

超流動ヘリウムという極低温かつ粘性が小さい特殊な媒質で満たされた環境下で、高強度レーザーを照射するレーザーアブレーションという手法を用いて、その結晶構造が異方的であるか否かによらず、様々な物質の真球形状を有する単結晶を作製することに成功した。また、その真球性に由来する高効率なレーザー発振を観測した。さらに、上記の特殊な環境である超流動ヘリウム中において、レーザーをナノメートルサイズの微粒子に照射し、その際に生じる輻射力を用いて、微粒子のサイズすなわち(物質の色など光学特性を決定する)エネルギー準位を選別しながら輸送する手法、光マニピュレーションが、様々な物質に適用可能であることを明らかとした。
著者
フォレスト アリスター
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究は「挑戦的萌芽研究」の助成金で実施。目的は各遺伝子のプロモータ領域を標的とする合成短鎖RNA分子を用い、遺伝子上方制御を誘導する設計ルールを発見することでした。上流アンチセンス転写物を標的とする合成RNAを設計し、2つの細胞株で合計25個の遺伝子をテストしたところ、EGR2、NANOG、SPI1、MAFBに対する潜在的な低分子活性化RNAを特定しましたが、効果は小さく、一方の細胞型でしか作用しませんでした。残念ながら本実験は発表には至りませんでした。
著者
草野 完也 浅井 歩 今田 晋亮 塩田 大幸 三好 隆博 簑島 敬
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

太陽フレアの発生機構について3次元電磁流体シミュレーションと太陽観測衛星「ひので」およびSDOによる観測データの解析を通して研究し、磁気中性線近傍に現れる2つの特徴的な構造を持つ比較的小型の磁場構造が太陽フレア発生のトリガとしての役割を果たすことを見出した。この小型の磁場は次期中性線上における平均場のポテンシャル成分と非ポテンシャル磁場成分に逆行する磁場成分を持つ。これらの結果は精密な磁場観測に基づいて太陽フレアの発生を決定論的に予測することが可能であることを示唆している。しかし、その予測時間は小スケールの磁場構造の変動によって数時間程度に制限されるであろう。
著者
根岸 理子
出版者
国文学研究資料館
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

本研究は、マダム花子(1868-1945)の活動を明らかにすることを目的として実施した。マダム花子は、20世紀初頭、20年近くにわたって欧米を巡演した日本女優であり、彫刻家オーギュスト・ロダン(1840-1917)の唯一の日本人モデルでもある。花子に関する資料は、海外に点在している。それらを現地調査し、花子一座の活動の実態を一部明らかにすることができた。特に、アメリカ議会図書館やニューヨーク公共図書館で、花子の写真や図版入りの記事や劇評を新たに収集できたことは、学界への大きな貢献であった。この成果は、2013年6月22日に開催される日本演劇学会において発表する。
著者
松田 知己
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

申請者はこれまでにFRET(蛍光エネルギー移動)を利用したカルシウムイオン濃度センサータンパク質Cameleon YC3.6 を元に光活性化カルシウムイオン濃度センサータンパク質 PA-Cameleon を作製していた。このセンサータンパク質はFRETのエネルギーのドナーであるPA-GFP(光活性化GFP)、エネルギーのアクセプターである色素タンパク質、そしてセンサードメインとしてのカルシウム結合タンパク質Calmodulin-M13 ペプチドから構成されていた。PA-Cameleon は HeLa 細胞内でのカルシウム応答の可視化に成功していたが、神経細胞内で自発的なカルシウム濃度変化等を検知することが出来なかった。そこで、センサー部分をニワトリ骨格筋由来トロポニンCに入れ替えて新たにPA-TNXL を開発し、ラット海馬神経の初代培養細胞内で1細胞レベルの光活性化、細胞内の自発的なカルシウム振動を可視化することに成功した (Matsuda T. et. al. Sci. Rep. 2013)。さらに、FRETとは異なる原理で光活性化カルシウムイオン濃度センサーを開発した。光刺激によって蛍光波長を変化させることができる蛍光タンパク質 mMaple に円順列変異を導入し、蛍光発色団付近に新たに出来たN末端、C末端にそれぞれM13とカルモジュリンを繋げたコンストラクトを基に、遺伝子改変により新規カルシウムイオンセンサータンパク質 GR-GECO を開発した。GR-GECOは光刺激により緑色から赤色に蛍光色を変化させ、カルシウム濃度上昇に伴い蛍光強度の増大させることができる。本センサーについてもHeLa細胞内とラット海馬神経細胞での光活性化とカルシウムイメージングに成功した (Hoi H., Matusda T. et. al. J. Am. Chem. Soc. 2013)。
著者
高山 博
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ローマ帝国がガリアを支配していた時代からドイツの領邦が強化される中世後期の時代まで、ドイツの王権と諸侯との関係がどのように変化し、王や諸侯の統治システムがどのように変化していったかを検討した。次の7つの時期、すなわち、(1)フランク支配以前(古ゲルマン時代)、(2)フランク時代、(3)東フランク王国と領邦の時代、(4)ザクセン朝の時代、(5)叙任権闘争の時代、(6)シュタウフェン朝の時代、(7)中世後期、に分けて作業を進めた。
著者
橘 省吾
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

金星環境を地球と対比しながら理解することは比較惑星学上の重要なテーマである.しかし,金星研究は鉱物学・岩石学・地球化学的探査の困難さもあって,これまでは限られた探査データに基づいた理論的研究が先行し,金星環境の安定性や表層物質循環を論じるための重要な化学反応であるパイライトの分解速度データとして,10年以上前に金星環境とはかけ離れた条件下で求められた実験データ(Fegley et al., 1995)がほぼ無批判に使用されてきた.本研究では,高温超臨界二酸化炭素中で金星表層を再現したパイライト分解実験をおこない,高温超臨界二酸化炭素によるパイライトの分解速度,分解メカニズムを求めることを目的とする.また,結果に基づき,金星表層環境でのパイライトの安定性を明らかにし,金星気候モデルに応用することをめざす.研究期間を通じて,パイライト分解に関する1気圧での予備実験を系統的におこなった。結果,金星表層で予想されるよりも酸化的な環境においては,酸素によるパイライトの分解反応が反応速度を支配することがわかったが,金星表層で推定される酸化還元条件では,反応に対する酸素の影響は大きくないことが明らかとなった.これらの予備実験の結果を踏まえ,高温超臨界環境での実験系の立ち上げた.しかし,金星表層の極低酸素分圧を実験系でどのように作成し,制御するかという問題が大きいことがわかり,その解決を試みた.結果として,実験系に酸素ゲッター(グラファイト,チタン)を設置し,酸素分圧は遷移金属酸化物(V2O5, V2O4, MoO3,Fe2O3,Fe3)4, Na4V2O7)の酸化還元を調べることで測定可能であることがわかった.