著者
塚越 累 建内 宏重 大畑 光司 江口 悟 奥村 秀雄 市橋 則明
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.41-48, 2009-04-20
被引用文献数
6

【目的】人工股関節全置換術(THA)後早期の股関節と膝関節筋力の推移を比較し,術後に最も回復の遅延する筋を明らかにすること。【方法】変形性股関節症によりTHAを施行した女性53名を対象とし,術側と非術側の股関節外転,伸展,屈曲,膝関節伸展および屈曲の最大等尺性筋力を術前と術後2週,4週,6週時点で測定した。【結果】術側の股関節筋力は術後2週で術前より有意に低く,術後4週および6週では術前値と有意な差は認められなかった。一方,術側膝関節伸展筋力は術後2週,4週,6週の全測定時期において術前値より低い値を示した。術後の筋力推移を術前比で比較した場合,術後6週では術側の股関節筋力および膝関節屈曲筋力の術前比は114〜124%で有意な差は無かったが,膝関節伸展筋力は術前比86%と他の4つの筋力と比べて有意に低い値を示した。【結論】THA後には股関節周囲筋力および膝関節屈曲筋力に比べて,膝関節伸展筋力の回復が遅延することが判明した。
著者
豊國 伸哉
出版者
名古屋大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

ゲノム情報の変化は発がん過程で重要な役割を果たしている。本研究においては、培養細胞や個体各臓器の細胞のゲノム配列において、紫外線・放射線あるいは鉄を介した酸化ストレスによってDNA塩基への傷害が起こりやすい部位をアレイ技術の応用により網羅的に同定し、その法則性を見いだすことを目的とした。これまでに、私たちは鉄ニトリロ三酢酸(Fe-NTA)腹腔内投与による腎発がんモデルを開発し、その病態に酸化ストレスが関与すること、主要な標的遺伝子にCDKN2Aがん抑制遺伝子やptprz1遺伝子などがあることを示し、ゲノムに酸化ストレスに対して欠損・増幅しやすい領域があることを報告した。今年度は遺伝解析より新たにalninoacylase-1にがん抑制遺伝子としての作用があることを見いだした。昨年度に引き続き、モノクローナル抗体で修飾塩基を含むDNA断片を免疫沈降する技術とマイクロアレイ技術を組み合わせることにより、ゲノム内の酸化ストレスに対する脆弱部位を網羅的に解析した。Fe-NTA腹腔内投与による腎癌モデル初期において代表的な酸化修飾塩基である8-hydroxy-2'-deoxyguanosine(8-OHdG)に対するモノクローナル抗体を使用した実験を反復した。対照のラット腎臓ならびにFe-NTA投与3時間後の腎臓からゲノムDNAを抽出し、制限酵素BmgT120Iで切断後,DNA断片の免疫沈降を行い,8-OHdGを含むDNA断片を回収した。DNA断片を蛍光色素でラベルした後CCGHのアレイにハイブリダイゼーションし解析を行った。すると、8-OHdGは非遺伝子領域に高密度に分布し、遺伝子領域には相対的に低密度に分布することが判明した。ゲノムの遺伝子密度と8-OHdGの存在頻度に有意な負の相関を認めた。分布のパターンそのものは対照と酸化ストレスのかかった状態でほとんど差が見られなかった。CDKN2A部位では酸化ストレス時に8-OHdGの増加を認めた。
著者
Fujikura Katsunori Fujiwara Yoshihiro Kawato Masaru
出版者
社団法人日本動物学会
雑誌
Zoological science (ISSN:02890003)
巻号頁・発行日
vol.23, no.8, pp.733-740, 2006-08-25
被引用文献数
66

A new whale-bone-eating polychaete species of the genus Osedax was found on sperm whale carcasses submerged off Cape Nomamisaki, Kyushu, Japan, at a depth of approximately 200m. The new species, Osedax japonicus, is the fourth known species of the genus Osedax and the first species from the western Pacific. Female O. japonicus specimens (1) form dense clusters on whale carcasses; (2) have a body composed of crown, trunk, and root structure; (3) lack a digestive tract; and (4) have bacterium-like particles in the tissue of the root structure. Osedax japonicus shares all these characteristics with O. rubiplumus and O. frankpressi, and items (1) to (3) with O. mucofloris. Osedax japonicus is easily distinguished from the other three known species by oviduct morphology, body length, and palp coloration in females. No males of O. japonicus have yet been found.
著者
大久保 弦
出版者
福井工業高等専門学校
雑誌
福井工業高等専門学校研究紀要. 自然科学・工学 (ISSN:03863352)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.130-124, 2005-11-25

Sarashina-nikki, as follows, can divide into four parts. The first is a diary of the travel to Kyoto from east country. The second is a record of life at the Kyoto home. In this, an article of the separation with older sister by death is included. The third is a record of court life. The fourth is an article of visit to various temples and shrine. In these parts, it can recognize that several diaries and essays (Tosa-nikki, Kagerou-nikki, Murasakishikibu-nikki, Makura-no-soushi so on) have an influence on Sarashina-nikki. From this, you can understand that this diary has the various elements. So, what constitutes a characteristic feature on this work? This dissertation discussed mainly it. In the first part of this diary, the travel is written as opposition of the light space and the dark space. In the next place, it is pointed out that Kyoto home belongs to the latter. As for this opposition of two spaces, in the article of court life and worships it exists likewise. And in it, you can see that stories, the moon and dreams have been mediated between two spaces.
著者
松田 謙次郎
出版者
神戸松蔭女子学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

この研究プロジェクトは、過去の法令と言語をめぐるアプローチとは異なり、法令を言語データ(コーパス)と見なして言語変化・変異の観察を行い分析することで、法令の言語データとしての特質やその可能性を見極めようとしたものである。具体的な変異現象として先行研究の多いサ変動詞の五段化・上一段化現象を取り上げた。法令データを分析すると、その分布は先行研究の結果と似たものであり、法令データでも他種類と同様な変異が存在することが確認された。また同年に公布された法令間、また同一の法令の中でも同一動詞についてサ変~五段・上一段という活用のゆれが存在することが明らかとなった。次に改正履歴を追跡するために、改正履歴が追跡可能な法令データベースを用いて過去10年間におけるいくつかのサ変動詞の動向を調査した。その結果いくつかの動詞で変化が年とともに進行する様子を明らかにすることができた。これらの結果からは、この変化が法令作成に携わる関係者の意識下で進行する、「下からの変化」であることが分かる。また、内的要因を分析してみると、少なくとも五段化では、先行研究で主要な制約条件とされてきたものがそのまま当てはまることが判明した。
著者
岡本 健
巻号頁・発行日
2010-11-25

京都橘大学 金武創先生ご担当授業 「観光政策論」使用スライド. 2010年11月25日(木). 京都橘大学. 京都市
著者
石垣 司 本村 陽一 土肥 麻佐子 持丸 正明
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.23, 2009

生活者の視点に立ったサービス生産性向上の重要性が叫ばれている。本発表では商品購買者を対象に実施したアンケートデータを用いて、購買商品の認知構造を確率的な因果関係によりモデル化し、再購買の可能性が高い顧客の属性を探る。それにより顧客に対応した効果的な販売促進が可能な技術の枠組みを示す。また、作成したモデルの妥当性はクロスバリデーションによる判別率により定量的に評価できる。
著者
PEKAR Thomas
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

亡命をめぐる文化人類学的要素(ホームシック、故郷の文化と移住地の文化の差異による葛藤、新しい文化への結びつき等)は異なる分野の亡命テクスト(哲学、文化、文学等)に見られることが明らかになった。これらのテクストを「亡命の文化テクスト」と定義することが可能であり、亡命文学、移住文学、旅行文学に共通するカテゴリーを定義することができる。このカテゴリーは、文学研究および文化人類学の分野で「超域文化テクスト」と定義されている。この「超域文化テクスト」という手法上の概念は第一の成果である。さらに、異文化交流の観点から亡命概念を考察することにより、日本における亡命理解の背景が明らかにされた。日本文化においては、ユダヤやキリスト教文化をベースとする「亡命」の概念が根付いておらず、日本において「亡命」は「追放」の意味合いを持つものとして捉えられていた。ドイツと日本という異なる文化における「亡命」概念の差異の分析は第二の成果である。第三の重要な成果として、様々な文書館および図書館での資料収集、学会の開催(研究発表は出版予定)により、第二次世界大戦中の日本および日本占領地を含む、東アジアへの亡命の全体像が明らかになった点が挙げられる。
著者
渡邉 俤二 平川 一臣 澤柿 教伸 石川 守 岩田 修二 泉山 茂之 水嶋 一雄 落合 康浩
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,パミール高原の中核地域であるタジキスタン共和国東部とキルギス共和国南部を主たる対象地域として,1991年の経済自由化がもたらした貧困が招く自然資源(大型草食動物と灌木)の利用(消費)の実態,土地利用(特に放牧地利用)変化,貧困が招いたオオカミ増加が家畜に対して与える影響,ツーリズムの現状,などを明らかにし,その上で持続的な自然資源の利用(保全)につながるジオエコツーリズムの導入について考察した。
著者
堀地 明
出版者
北九州市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、清代中国における食糧暴動の首謀者がどのよう法令に基づいて、いかなる刑事罰を受けたのかを実証的に解明することである。雍正~道光年間(1723~1850)の事例を検討した結果、清代の食糧暴動の首謀者に課せられた最重の刑罰は、大清律例軍律激変良民の光棍条例による判決後の即時執行の斬首刑であった。食糧暴動が頻発した乾隆13(1748)年には、皇帝の意向により斬首執行後の梟首が付加され、刑罰の厳罰化がはかられた。
著者
志柿 光弘
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究では米国との関係におけるプエルトリコ、日本との関係における沖縄という二つの事例について、「一定の地理空間を歴史・言語・文化的な同質性の基盤として有するが、独自の主権国家を形成することはせず、歴史・言語・文化的同質性の範囲を越えたより大きな主権国家内にとどまり、あるいは統合されることを選択している人間集団が構成する政治単位」としての「国家内地域」という概念を措定し、これを上記の事例に適用し、その有効性の検証を試みた。プエルトリコについては、地理的空間を基盤に持っていること、アメリカ合衆国とは明らかに異なる歴史的・言語的・文化的特性を有していること、しかし、分離独立を支持する住民は少数であり、アメリカ合衆国の主権下に止まることを住民は望んでいることから、「国家内地域」概念が有効性を持つと考えられる。また、沖縄については、地理的空間を基盤にしており、日本本土とは異なる歴史的・言語的・文化的特性を有しているが、明治維新以来の同化政策の結果、その差異はプエルトリコの場合ほどには顕著とは言えない。しかし、分離独立の可能性は持っており、「国家内地域」概念の適用は可能である。何れの事例についても、「民族」や「エスニック集団」という概念では、現状を十分に説明できないが、「国家内地域」概念を導入することによって、より客観的で冷静な理解が可能となる。
著者
崔 鍾植
出版者
大阪商業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

(1)最近の少年非行の動向としては、まず日韓ともに低年齢化の傾向が顕著である。少年比と殺人罪については韓国より日本のほうが高いが、反面、強盗罪と強姦罪、10万人あたりの少年犯罪者の割合は、韓国が日本より高く現れている。(2)少年司法においては、少年の健全育成という側面から見れば、全般的にいまだ足りないところが少なくない点から、日韓ともに「少年保護の理念」という初心に帰って処遇の多様化と充実化のためのさらなる工夫が必要であると判断される。特に、日韓ともに刑事裁判において少年に対する配慮が足りないところが多い点から抜本的な改善方策が急を要する。(3)日韓少年司法において望ましい市民参加による裁判制度については、少年審判と刑事裁判ともに参審制形態の市民参加による非公開の裁判制度の導入を検討すべきであるという結論に至った。
著者
高野 忠 戸田 知朗 遠山 文雄 佐々木 進
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

レーザレーダの探知能力は、レーザの出力と送受信の光アンテナの性能に強く影響される。しかもレーザの放射パターンは、暗点が無くなるべく一様であることが必要である。従来の1W級の大出力レーザをワイヤレス応用すると、パターンが乱れているために性能が著しく劣化してしまう事を、実験により示した。そして最も有望なブロードエリアレーザにおいて、パターンの平滑化を実現するための設計法を導いた。高性能光アンテナについて、製作誤差に強い鏡面修整法として、給電系のレンズと副反射鏡を修整することを考案した。その効果を、シミュレーションにより明らかにした。複数のレーザからの放射光を空間的に重畳することにより、強い照射光および受信光を得られる。更に単一レーザ光で問題になるスペックル効果を、制御することが可能である。これらのことを、実験的に明らかにした。
著者
床井 浩平
出版者
和歌山大学
雑誌
経済理論 (ISSN:04516222)
巻号頁・発行日
vol.240, pp.46-59, 1991
著者
春日 敏測
出版者
国立天文台
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

2006年12月から2008年5月まで、ハワイ大学のInstitute for Astronomy(IfA)に滞在した。ハワイ大学の所有する口径2.2メートルの大型光学望遠鏡を使用して、過去に彗星活動のあったと考えられる近地球型小惑星3200番フェートン(ふたご座流星群の母天体)と軌道力学進化的に関連し分裂破片の可能性のある小惑星2005UD、そして小惑星1999YCについて、多色測光(カラー観測)、ライトカーブ、自転周期、サイズを導出してきた。1999YCと2005UDの表面的特長とフェートンのそれと比較した結果、始原的な部類であるC,Bタイプであることが明らかにされた。1999YCもフェートンからの分裂破片である可能性がある。ライトカーブ観測からは、歪な形状であることが明らかにされた。得られた結果から、フェートンの分裂・枯渇化の可能性について追及した。流星研究から推測されているフェートンの表面と内部との熱的進化の違いについての知見も加え(Kasuga et al.2007)、総合的に枯渇彗星の進化について議論した。結果、フェートンの母天体は内部に氷を含んだ比較的サイズの大きい小惑星であった可能性を提案することができた。参考 Kasuga & Jewitt 2008,Astronomical Journal,Vol.136,pp.881-889