著者
西田 司
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1.コミュニケーション行動の予測に関する異文化間コミュニケーションの分析フレームワークを作成した。その分析フレームワークには第2章で詳述したように、四次元で構成した。(1)相手への態度や出会いの場の不安と不確実感の制御といったことがコミュニケーションが効果的になるかどうかに大きな影響を与える。(2)コミュニケーションの目的によっては、コミュニケーションをしようとする動機が強く影響する。(3)意思の表出能力と相互作用の能力はコミュニケーション行動が効果的であるか、ひいては、(4)コミュニケーション行動の結果、つまり、評価と満足に影響する。2.アジア人にはアメリカ人とは異なるコミュニケーションのルールがあることを知っていても、これまでの研究においてはアメリカで用いられている調査方法で研究がなされてきた。個人情報の開示に関する研究とコミュニケーション行動と内集団の研究を検証し、調査に取り入れるべき観点や方法を第3章で提案した。それは人の交流を複数の観点から捉えるもので、調査も集団の観点から行うことを意味する。3.調査法の転換に関する議論をもとに、二つの調査を行った。一つは、中国と日本において仕事や授業の終わった後の、内集団と交流活動の実態について学生を中心に調査票による調査を実施した。たとえば時間的コミットメントの実態、中国と日本の共通する面が確認された。また、交流時間は少ないが交流の重要性は高いという点が中国サンプルに明らかになった。もう一つは、アメリカ、中国、日本における人間関係のルールについて調査した。関係のみを明示しルールを集めた。この目的は、三つの文化における実際的な状況に関する情報を得るためであった。
著者
柳川 堯 小西 貞則 百武 弘登 内田 雅之 二宮 嘉行 川口 淳 長山 淳哉 野中 美祐
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

高次因果モデリングの有力な手法として、グラフィカルモデリングが提案されているが、連続変量の場合多次元正規分布が仮定されており、制約的でしかも線形関係だけが対象とされている。これを、高次非線形因果モデリングに拡張することを狙って順位相関係数を利用する理論を発展させ手法を開発した。また、分担者の協力を得てその計算アルゴリズムを開発しシミュレーションを行いその有効性を評価した。さらに、共同研究者から提供されたデータに適用し乳幼児の甲状腺機能、免疫機能に与える環境汚染物質のインパクトを明らかにした。その他、潜在構造モデルを用いる離散型変数、連続型変数混在の場合のグラフィカルモデリング、時系列データに関するグラフィカルモデリング、ノンパラメトリック共分散分析のグラフィカルモデリングに関して分担者と共同研究を行い、いくつかの価値ある結果を得た。これに関する基礎研究においても、以下のような成果をえた。・超高次元データから有益な情報やパターンを抽出するための手法開発に取り組み,基底展開法を用いた次元圧縮と圧縮したデータ集合に基づく識別・判別問題を定式化し,新しい解析手法を提唱した.開発した解析手法をシステム工学,生命科学の分野の問題に応用し,その有効性を立証した.・繰り返し測定値に対する非線形モデルのパラメータの関数について、コントロールとの多重比較のための同時信頼区間の近似を与え、その精度をシミュレーションにより検証した。・小さな拡散をもつ拡散過程に従う離散観測データから,未知のドリフトパラメータを推定する研究を行った.具体的には,条件付き期待値をIto-Taylor展開を用いて近似することにより近似マルチンゲール推定関数を構成した.それから得られる推定量が非常に弱い条件の下で漸近有効性をもつことを証明した.
著者
村井 忠政
出版者
名古屋市立大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.49-69, 2006-12-24

1965年のアメリカ合衆国の移民法改正は、それ以前の人種差別的移民制限法の下で保たれてきていたエスニック集団間の均衡を突き崩すという結果をもたらした。65年移民法体制の下、1970年代の合衆国は合法移民、「不法」移民、そして難民を合わせて恐らくは毎年100万を越えると推定される新しい移民の波に見舞われ、ラテンアメリカからのヒスパニックや従来ほとんど認められていなかったアジア系移民の激増を見ることとなったからである。1970年代以降、20世紀初頭の第一の移民の大波に次ぐ第二の大量移民時代にアメリカ合衆国が突入したことを受けて、アメリカの移民研究は現在新しい段階に入っている。本稿では、現代アメリカ合衆国のラテンアメリカとアジアからの「新移民」の同化をめぐる社会学的実証研究に精力的に取り組み、目覚しい成果を挙げているキューバ系アメリカ人社会学者アレハンドロ・ポルテスに着目し、彼の移民の同化をめぐる議論に焦点を当てることにする。本稿のねらいは、(1)アメリカ合衆国における20世紀初頭の新移民と現代の「新移民」の比較考察をすることで、現代の「新移民」の同化が持つ多様性、独自性を明らかにすること、(2)さらに、これら「新移民」の第二世代に当たる子どもたちが、現代アメリカ社会に適応し、社会経済的地位を向上させていくためには、いかなる条件が必要とされるかを明らかにすることにある。
著者
石渡 明
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

この研究では,既に国際学術誌に論文公表済みの多くの成果があった.Koizumi & Ishiwatari(2006)では丹波帯の付加体緑色岩が,ナップ基底部にまとまって産するものとメランジュ中にバラバラに産するものとの間で化学組成の多様性に大きな違いがあり,前者が海台,後者が通常の海洋底に由来すると結論した.Ichiyama et al.(2006)は丹波帯小浜地域の付加体緑色岩から,これまで日本ではほとんど報告がなかった,大規模火成岩区(LIP)に特徴的な鉄ピクライトを報告し,その成因を論じた.Ichiyama et al.(2007)は丹波帯の同じ緑色岩体から,顕生代では初めての大型スピニフェックス組織を示す玄武岩を報告し,同様の岩石を産するコラ半島ペチェンガ地域の原生代前期火山岩やズピニフェックス組織の再現実験結果と比較しながらその成因と地質学的意義を論じた.Ichiyama et al.(2008)は基底部緑色岩をTi含有量によって3種類に区分し,スーパープルームによるマグマ活動の一般的な時間的変化と対応づけてペルム紀海洋下におけるそれらの形成過程を論じた.このほか,この研究課題に関連する研究成果として,Ishiwatari et al.(2006)では小笠原前弧の母島海山にアダカイト質火山岩が産することを報告し,他の火山岩,斑れい岩,超苦鉄質岩の分布や岩石学的性質を検討して,太平洋プレート上の小笠原海台の沈み込みに関連してブロック状に隆起した前弧オフィオライト衝上岩体であるとするモデルを提出した.柳田ほか(2007)はマリアナ海溝南部の島弧側斜面からドレッジされた超苦鉄質岩を研究し,海洋底では初のMgカミングトン閃石を報告するとともに,原岩の鉱物化学組成や平衡温度,そして変成作用の特徴などから,この地域では前弧から背弧に至るマントル断面が,それらを横断するように形成された新しい海溝斜面に露出している可能性を示唆した.また,Ishiwatari et al.(2007)は世界的にも例の少ないざくろ石斑れい岩-超苦鉄質岩体をロシア北東部から報告した.
著者
平井 啓之 党 建武 本多 清志
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.918-928, 1995-12-01
被引用文献数
13

喉頭を含めた発話器官の生理学的モデルを作成した。このモデルは、各筋の活動量を入力として、舌・喉頭・顎などの発話器官に加わるすべての力が釣り合うときの発話器官の位置を求め、得られた声道形状及び声帯長を用いて音声の生成を行なうものである。また、本モデルでは、舌・下顎・舌骨・喉頭は互いに筋によって接続され力の授受が考慮されているため、舌と喉頭との相互作用を表現することができる。測定された筋電信号を入力として発話時の声道形状及び音声を生成し、発話時の声道断面のMRI画像及び実音声との比較を行なった。また、本モデルを用いて外舌筋のF_0に及ぼす影響について検討した。
著者
新山 龍馬
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

人体の特長を備えた筋骨格ロボットを工学的に実現し,それを用いて筋骨格系を基盤とした身体運動の原理を明らかにすることを目指して研究を行った.最終年度は,筋骨格系を工学的に実現する設計論と筋骨格系のための運動制御手法を確立し,開発した筋骨格ロボットによって走行を実現した.具体的な内容は以下のとおりである.筋骨格系の力学特性を記述し,筋指令を単純な基底関数の組み合わせによって表現する"SCA(Sparse Coding of Activation)"と呼ぶ手法を提案し,筋骨格ロボットに適用し,筋骨格系を基盤とした俊敏な身体運動(跳躍・走行)について調べた.走行の運動制御では,まず,ヒト筋骨格系と対応がとれることを活かして筋賦活パターンの原型をヒトの走行中のEMG(筋電図)を単純化することで得た.次に,計算機シミュレーション上での走行実験および運動学習によって筋賦活パターンを改良し,実機に適用する筋賦活パターンを得た.実機実験では,各筋の賦活によって理論値と一致する方向の床反力ベクトルが得られることを示した.また,計算機シミュレーションと同様に,下腿ブレードの弾性を利用した約1mのストライド(1歩あたりの距離)による3歩の走行を実現した.さらに,床反力の方向制御によって,体幹の姿勢を調節できることが示された.生体と同様に筋の応答遅れがあることから,予測的な筋指令が重要であることがわかった.
著者
池田 和司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.502, pp.7-12, 2004-12-03

皮質領野のニューロンを特徴づけあるいは分類するため,情報幾何学の手法を応用した.スパイク列のインタースパイクインタバル(ISI)が平均発火率が時変のガンマ分布に従うという仮定のもとでは,この問題は統計学におけるセミパラメトリック推定として定式化される.これまで,ISIの統計的性質に関してC_V,S_K,L_Vなどの統計量が提案されてきたが,これらはセミパラメトリック推定問題に適当な仮定を追加した場合の近似解として表されることを示した.また,同じ仮定のもとで,情報幾何学的見地からより良い統計量を提案する.
著者
石濱 裕美子 福田 洋一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究はチベット仏教の大成者ツォンカパ・ロサンタクペーペル(1357-1419)の最古層の伝記の研究を通じて、ゲルク派の歴史・教会史を明らかにすることを目的とした。現在入手可能なツォンカパの最も古い伝記には、『自伝』、直弟子のケドゥプジェ(1385-1438)の一般的な伝記『信仰入門』と神秘体験を綴ったンカ『秘密の伝記』、それに対する補遺として書かれたジャンペルギャムツォ(1356-1428)の『ツォンカパ伝補遺』他2篇がある。本研究課題では、これらの伝記の和訳研究を通じて、文献学、歴史学、仏教学の視点からツォンカパの思想形成や当時の教団の具体的な姿などを明らかにした。これらの伝記の成立順も確定することができた。まず最初に『自伝』が書かれて、ツォンカパの学習過程が修学期間、思想形成期間、講説期間という三つの期間に分けるパターンが確立した。ケドゥプジェの『信仰入門』が書かれ、次に同じく『秘密の伝記』が書かれ、それらを踏まえて『ツォンカパ伝補遺』が書かれた。その大部分はツォンカパ在世時に書かれたが、ツォンカパの死後『信仰入門』の最後にその様子が付け加えられたと推定される。また、ツォンカパの著作の全てのコロフォンを整理した。そこには、著作年次はほとんど見られないが、著作場所が記されていることが多く、また『信仰入門』にはツォンカパの場所の移動が細かく記されているので、それらを対照することで、多くの著作の著作年次または著作順序を明らかにすることができた。本研究課題の成果として、報告書において『自伝』、『秘密の伝記』、『補遺』の訳注と『信仰入門』の梗概を収録した。『信仰入門』全体の訳注は後日、その他の資料も含めて刊行予定である。

2 0 0 0 OA 大坂橋名

出版者
大阪府学務課
巻号頁・発行日
1873
著者
SATO Sho NISHIURA Minako ITSUMURA Hiroshi MITSUISHI Tomomi OKA Mizuki LEE Myeong-Hee HASHIMOTO Yasuhiro
巻号頁・発行日
2010-11

This paper reports the development of a platform called the pingpong platform with the aim of collecting and visualizing the information on human behavior and also the outcome of a series of design workshops held for trying out this platform. With the proliferation of new technology, it has become easier for us to obtain the data of human behavior. Making good use of such collected data, new attempts have been emerged for designing spaces. In conjunction with trend, we have developed the pingpong platform by using Twitter and held design workshops at three different university campuses in Japan. The outcome shows that: 1. Human behavioral data can be easily obtained via the pingpong platform, 2. The visualization of the data greatly helps in putting the feedback to the best use for designing physical spaces.
著者
呉 聖淑
出版者
筑波大学比較・理論文学会
雑誌
文学研究論集 (ISSN:09158944)
巻号頁・発行日
no.23, pp.27(36)-44(19), 2005-03-31

はじめに 本稿は明治四一年三月にエリート青年男女が起こした情死未遂事件、あるいは心中未遂事件として社会に大きな関心と反響を呼び起こした、いわゆる〈煤煙事件〉をさぐる前段階の作業である。 ...
著者
鴨池 治 金崎 芳輔 秋田 次郎 吉田 浩 北川 章臣
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本年度の研究では、以下の3点の実績が得られた。1.はじめに、確定拠出年金の導入は実質的には退職金の前払いであり、その導入を決断した企業は年功賃金制のような賃金後払いの方法で従業員の勤労意欲を引き出すことを(部分的に)断念したに等しい。こうした企業は勤労意欲を引き出す手段として効率賃金を採用する可能性が高いが、この方法が広汎に採用されると、労働市場は高賃金が支払われる内部市場と低賃金が支払われる外部市場に階層化し、全く同じ能力を持つ労働者の生涯効用に格差が生じることになる。2.つづいて、厚生労働省のホーム・ページから2000年8月末に「確定拠出年金企業型年金承認規約代表企業一覧」を入手した。このリストにある1,993の企業から株式公開企業520社、さらに東証1部上場企業337社を抽出した。次に、日経テレコン21の記事検索により401k年金導入の記事が掲載された企業93社を探し出した。最後に、東洋経済新報社の株価CD-ROMより新聞掲載前後の株価データを入手し、401k年金導入のニュースに対して、株価(企業価値)がどう変化するかのイベント・スタディを行った。その結果、確定拠出年金導入の公表は当該企業の株価を高める効果は確認できなかった。3.最後に、『家計調査』の2002年から2006年までの貯蓄・負債編の公表集計表のデータを用いて日本における確定拠出年金制度の家計貯蓄に与えた効果を回帰分析した。年金型貯蓄/総貯蓄比率を被説明変数とした回帰では、勤労者でより所得の大きな世帯で拠出限度額の改定が総貯蓄に占める年金資産額を増やす可能性が示された。しかし、総貯蓄/所得比率を被説明変数とした回帰では勤労者でより所得の大きな世帯で、拠出限度額の改定が総貯蓄を侵食している可能性が示されている。いずれのケースにおいても、所得の小さな世帯においては確定拠出年金制度が年金型貯蓄および、総貯蓄を増加させているという効果は確認できなかった。