著者
和田 直樹 山本 澄子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.21-28, 2021

<p>〔目的〕座位から歩行までの動作において胸郭・骨盤角度の特徴を運動学的に分析し,若年者と高齢者の違いを明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕若年者14名と高齢者12名を対象に,3軸傾斜計・荷重スイッチシステム・ビデオカメラレコーダーにて座位からの歩行動作を計測した.〔結果〕高齢者は若年者と比較して一歩目離地時(foot off: FO)に胸郭・骨盤前傾角度が小さく,離殿からFOまでの時間が長かった.高齢者のFO時胸郭前傾角度・FOまでの骨盤前傾角度変化量とFunctional Reach Testに正の相関があった.〔結語〕両群ともに胸郭・骨盤前傾位で離殿するが,高齢者は前傾位を保持できずFOに至る.起立から歩行に短時間で移行するには胸郭の前傾に加え,骨盤の前傾が必要であることが新たにわかり,バランス機能の低下により若年者と異なる動作戦略に至ったと考えられる.</p>
著者
藤生 慎 大原 美保 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.453-457, 2013

我が国では近い将来,大規模地震の発生が懸念されており,莫大な数の建物被害が想定されている.これらの建物被害に対して迅速に被害認定を行い生活再建のための罹災証明書を発行するためには,莫大な数の人材が必要となる.しかし,危険かつライフラインが途絶した環境の被災地内に多くの調査員を派遣するには,調査員の安全や衣食住の確保に関する問題など,多くの困難を伴う.そこで筆者らは,地震後の迅速な被害認定・罹災証明書発行のために,ITを用いて被災地内と被災地外を有機的に結び付け,被災地外の人材を有効活用することを可能とする遠隔建物被害認定システムを提案した<sup>1), 2)</sup>.本稿では,提案システムのうち被災地内の要員が被災建物の写真撮影を行うプロトタイプシステムの開発,要素技術の検討,被災地内からの写真アップロードシステムを用いた実証実験について述べる.
著者
妹塚 裕行 安部 信子 中村 和夫 甲斐 之尋
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
雑誌
九州理学療法士学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.15, 2019

<p>【目的】</p><p>理学療法を行う上で、姿勢評価は病態を把握するために重要な評価の1つであるが、臨床では視診によって評価されることが多く、客観性に欠ける。客観的な姿勢評価として、レントゲン(以下X線)画像、スパイナルマウス、デジタル画像解析等があるが、機器の設置が必要な事や高価な事、また患者への負担(被爆)があり、臨床の中で簡便に行える評価ではない。先行研究において安価で簡便な方法として、デジタル傾斜計を用いて胸椎後弯角(以下TK角)を定量的に測定する方法が報告されている。しかし、デジタル傾斜計を用いて腰椎前弯角(以下LL角)、仙骨角(以下SS角)を検証した報告や、これらをX線画像との相関性を報告したものは見当たらない。本研究の目的は、健常者を対象にX線画像で測定したTK角、LL角、SS角とデジタル傾斜計で測定した値の相関関係を検証し、デジタル傾斜計を用いての姿勢評価の有用性を検討する事とした。</p><p>【方法】</p><p>対象は健常成人40名(男女各20名、平均年齢37±10.2歳)であった。X線撮影とデジタル傾斜計測定は同時に行い、測定姿勢は前方1mの目印に目線を向け、両上肢を前方で組み、両下肢は肩幅程度に開いた静止立位とした。X線画像解析はSchwabらの計測法を参考にTK角、LL角、SS角を測定した。デジタル傾斜計測定値はTh5、6棘突起の傾斜度とTh11、12棘突起の傾斜度の和を傾斜計TK角、L1、2棘突起の傾斜度とL5、S1棘突起の傾斜度の和を傾斜計LL角、S1、2棘突起の傾斜度を傾斜計SS角とした。デジタル傾斜計の測定回数は2回とし、平均値を代表値とした。</p><p>デジタル傾斜計による傾斜計TK角、傾斜計LL角、傾斜計SS角の測定者間級内相関係数は、それぞれ0.97、0.91、0.94であった。統計解析はPearsonの相関係数を用い、危険率5%未満を有意とした。</p><p>【結果】</p><p>TK角26.9±6.1°傾斜計TK角28.3±6.1°、LL角43.4±9.2°傾斜計LL角39.1±6.8°、SS角28.4±6°傾斜計SS角22.6±6.5°であった。</p><p>X線画像とデジタル傾斜計の測定値の相関は、TK角は強い相関関係(r= 0.75、p < 0.01)、LL角は中等度の相関関係(r= 0.62、p < 0.01)、SS角は強い相関関係(r= 0.75、p < 0.01)を認めた。</p><p>【考察】</p><p>本研究の結果、デジタル傾斜計でのTK角、LL角、SS角の値はX線画像の測定値と有意な相関関係が認められ、健常者の姿勢評価に有用である事が示唆された。近年、姿勢変化が隣接関節に及ぼす力学的影響についての報告が散見されており、姿勢評価・アプローチの意義は高くなっている。これらの事からも、デジタル傾斜計を用いる事は、臨床で姿勢評価・アプローチする際に簡便かつ定量化した方法として有用な一手段となりうる可能性があると考える。しかし、デジタル傾斜計は経皮的測定であるため、デジタル傾斜計の測定値は矢状面における脊椎の相対的位置関係を把握するものである事は念頭に置くべきである。</p><p>今後は、臨床応用するために姿勢障害を有する者を対象に検証していきたい。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に則り行った。当院スタッフに説明して研究への参加を呼びかけ、研究参加はあくまでも自由意志であり、参加しないことにより医療上または社会的な不利益は生じないことを説明した。対象者には事前に書面と口頭により研究の目的、内容、考えられる危険性等を医師と共に説明し、同意書に署名を得た上で計測を実施した。また、レントゲン撮影は医師の監視の元に行い、本研究データは匿名化し、個人情報管理に留意した。</p>
著者
渡部 英雄
出版者
日本アニメーション学会
雑誌
アニメーション研究 (ISSN:1347300X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.25-31, 2015-09-07 (Released:2023-02-18)
参考文献数
11

1984年、東映動画株式会社は、動画の作画使用枚数をTVアニメ1話に付き3500枚に制限することを開始した。コストを低減するために、他のスタジオ、例えばタツノコプロ株式会社およびサンライズ社も同様の措置を制定した。これらの制限は予想外の結果として、視覚的な表現に於いて日本独自のアニメスタイルになって現れた。当時の資料や演出、アニメーターの経験に基づき、本稿では、作画枚数を節約することが日本のアニメーションのアート的な発展に及ぼした影響ついて述べる。
著者
Yusuke Tabuchi Masayuki Tsujimoto Kosuke Yamamoto Ryo Shimizu Tadashi Kosaka Koichi Sakaguchi Naoya Dobuchi Kohshi Nishiguchi Keisuke Shikata
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Biological and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:09186158)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.964-968, 2023-07-01 (Released:2023-07-01)
参考文献数
16

Trastuzumab is a humanized monoclonal antibody targeting human epidermal growth factor receptor 2 (HER2) that is indicated for the treatment of HER2-positive breast cancer. The administration of biologics, such as trastuzumab, frequently causes infusion reactions (IRs) with fever and chills. This study aimed to clarify the risk factors for IRs in trastuzumab therapy. Between March 2013 and July 2022, 227 patients with breast cancer who started trastuzumab therapy were included in this study. The severity of IRs was graded according to the Common Terminology Criteria for Adverse Events, Version 5.0. The incidence of IRs in trastuzumab therapy was 27.3% (62/227). Dexamethasone administration was significantly different between the IR and non-IR groups in patients receiving trastuzumab therapy (univariate analysis, p < 0.001; multivariate analysis, p = 0.0002). Without dexamethasone, the severity of IRs in the pertuzumab combination group (Grade 1, 8/65; Grade 2, 23/65) was significantly higher than that in the non-pertuzumab group (Grade 1, 9/37; Grade 2, 3/37; p < 0.05). Our findings suggest that the risk of IRs is significantly higher in patients not premedicated with dexamethasone in trastuzumab therapy and that the concomitant use of pertuzumab without dexamethasone increases the severity of IRs caused by trastuzumab.
著者
岡本 耕太
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.7, pp.281-286, 2023-07-01 (Released:2023-07-01)

現在,人工知能技術の研究開発において,第4世代AIの取り組みが世界中で始まっている。日本国は,他国との差別化されたシステムの構築・開発,いわゆる「信頼されるAI」が日本の勝ち筋として推進を強化している。一方,世界の知的財産管理ソフトウェア市場は,2026年までに155.7億米ドル,2020年度比で2.5倍に達すると予想されている。AIが搭載された知的財産管理ソフトウェアも商用化されている。本稿では,知的財産部門業務の特性に基づき,AI搭載のソフトウェアの同部門業務への適用について検討した。知財AI活用研究会の成果と,私見ではあるが,課題と今後の展開を述べる。
著者
佐川 穣 中村 栄
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.7, pp.262-267, 2023-07-01 (Released:2023-07-01)

IPランドスケープ活動が知財業界に急速に広がり,AIを活用したツールも導入されてきている。これからのIPランドスケープは,製造業においてビジネス競争力を大きく左右する要素になっている知財・無形資産を分析・活用し新たな価値の創造に貢献する必要がある。本稿では,この貢献のポイントである経営/事業戦略の高度化への貢献(社内・社外のコネクト,戦略の提案と実行),知財情報(データ)活用の民主化(内外の環境分析,具体的な提案に落とし込み)について我が社の取り組みを例に挙げながら考察する。また,これからのIPランドスケープを担う人財,ハードスキル,ハイジェネリックスキルについても解説する。
著者
早川 浩平 佐藤 裕哉 胡 絵美帆
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.7, pp.294-298, 2023-07-01 (Released:2023-07-01)

日本パテントデータサービス㈱の提供する特許情報検索サービス「JP-NET/NewCSS」は,公報情報,審査経過情報といった国内外の特許情報を収録し,特許調査で必要な機能や効率化を図る機能を多く備えている。その中でも特徴的な機能を検索・表示・出力・情報共有のカテゴリ別に紹介,いかに漏れがなく,ノイズの少ない検索や,案件情報を正確に素早く把握し,目的の情報にたどり着けるかを紹介する。また,各種特許マップの作成,統計・分析機能や情報共有機能を活用することで,傾向や対策すべき状況の把握,事業を円滑に進められる環境構築といった特許情報を中心に重要な役割を担うサービスである点も紹介する。