著者
森下 知晃
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.106, no.11, pp.800-811, 2000-11-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
44
被引用文献数
3 4

北海道, 幌満かんらん岩体に産する輝石・スピネル-シンプレクタイトの組織を定量的に記載する基礎データとして, シンプレクタイトの3次元構造を連続2次元BSE像から推定した.シンプレクタイトは斜方輝石マトリクス中に粗粒な枝分かれ状単斜輝石と棒状, 板状, 枝分かれ状スピネルが分布している構造を呈している.シンプレクタイト中の単斜輝石はシンプレクタイトの周りの単斜輝石とひとつながりであると推定され, 組織の形成は, 形成時に接していた輝石の結晶軸に支配されて, 外側から内側に向かって進行したと考えられる.予察的に得られた単斜輝石のモードはほぼ一定であった.スピネルと単斜輝石の分布はお互いに密接に関係しており, スピネルが両輝石の境界に産するときは板状を呈する.スピネル粒子の多くは両輝石の境界と接している.これらの観察事実はスピネルが両輝石の境界に選択的に形成されたことを示唆する(小畑ほか, 1997).
著者
堀内 ゆかり 堀内 雅弘
出版者
九州産業大学 人間科学会
雑誌
人間科学 (ISSN:24344753)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.44-52, 2021 (Released:2021-03-26)
参考文献数
45

本研究では,知的障害者の肥満実態と関連要因について,知的障害者更生施設に入所している知的障害者92名(男性61名,女性31名)を対象に検討した。測定項目は,体格関連指標,血圧,血糖値,総コレステロール値,および質問紙による身体活動量(IPAQ)であった。その結果,女性の体脂肪率は,男性より有意に高い値を示した(p<0.05)が,体格指標(BMI),血圧,および血液成分に性差は認められなかった。また,性別問わず,ウェスト周径囲と体脂肪率,またはBMIとの間に有意な正の相関関係が認められた。IPAQから算出した1週間の総身体活動量は,男性の値が女性の値より有意に大きい値を示した(p<0.05)。以上のことから,知的障害者の肥満,および身体活動量には性差があること,性別問わずウェスト周径囲の増大が肥満の一因になっている可能性が示唆された。
著者
前田 昌也 佐藤 文夫
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.297-302, 2017-05-20 (Released:2017-06-20)
参考文献数
12

軽種馬の育成調教や競走成績に影響を及ぼす発育期整形外科的疾患(DOD)を回顧的に明らかにすることを目的に,国内の軽種馬生産牧場に対して,育成期全般に罹患したDODを含むすべての疾病について聞き取り調査を実施した.その結果,DODとして,腰痿,近位部関節の離断性骨軟骨症,骨端炎,肢軸異常,屈曲異常及び軟骨下骨囊胞があげられた.競走馬登録された個体の中で,種子骨炎,腱炎,外科手術を要する疝痛を罹患した個体は,病歴があげられなかった個体と比較して,初出走の時期が有意に遅延していた.一方で,購入前検査で発生率が高い遠位部関節の骨病変については競走への影響を訴える回答は得られず,深刻な症状を呈していない例が多いと考えられた.
著者
三木 徹 金丸 信一 尼岡 邦夫
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.128-134, 1987-09-10 (Released:2010-06-28)
参考文献数
11

北海道厚岸沖より得られたマダラの胃内容物を調査中に1個体のタウエガジ科魚類を発見し, 新属新種Neolumpenus unocellatusモンツキガジとして記載した.本種は比較的大きな胸鰭と1棘3軟条の腹鰭を持つこと, 体側に骨質状の側線管を持たないこと, 眼下感覚管孔が無いこと, 左右の鯉膜が峡部から幅広く離れる一皮摺を形成しないことなどによりウナギガジ亜科に含められる.さらに, 深く分枝した腹鰭軟状を持つこと, 腹鰭および臀鰭の棘が堅固であること, 胸鰭下部軟条が後方に伸長しないこと, 鋤骨および口蓋骨に歯が存在すること, 鰓孔の前端が眼の後縁下に達しないこと, 瞳孔の約1/2程度の非常に大きな頭部感覚管孔を持つこと, 吻が鈍く, その外郭は険しいこと, 尾鰭基底部の背方に1個の眼状斑を有することなどにより, 本種は同亜科内の既存の属および種と明瞭に識別される.
著者
中駄 邦博 高田 尚幸 高橋 弘昌
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.176-182, 2012 (Released:2013-03-31)
参考文献数
37
被引用文献数
2

本稿では核医学検査とCTを中心に,副甲状腺機能亢進症の画像診断の最近の動向について述べる。MIBI SPECTとCTの融合画像は各々のmodalityの限界を相補って,腫大副甲状腺の局在を正確に示すことができるので,手術成績の向上に貢献することが期待される。
著者
黛 弘道 Hiromichi Mayuzumi
出版者
学習院大学史学会
雑誌
学習院史学 = Gakushuin historical review (ISSN:02861658)
巻号頁・発行日
no.2, pp.1-26, 1965-11-25

論説(Article)
著者
王 勁草 Wang Jincao
巻号頁・発行日
2018

リクルート事件とは、1988年に発覚された通信大手のリクルート社の子会社リクルート・コスモス社が当時の政財界の大物に未公開株を賄賂として譲渡した贈収賄事件である。その結果、元官房長官の藤波孝生、元NTT会長の真藤恒、元リクルート社長の江副浩正など数多くの政官界、通信業界の大物が逮捕・起訴され、当時の竹下登内閣は総辞職するに至った。 これまでリクルート事件に関する研究の多くは事件経緯の紹介、政局に対する影響などの側面に集中してきたため、リクルート事件におけるマスコミの役割に関する研究、特にメディアと政治側の関係をはじめとする日本新聞の特性とリクルート事件の進展を踏まえながら検証する研究は少ないのが実態である。それゆえ、本研究では、リクルート事件を一つの事例として、政治汚職事件におけるマスコミ報道の役割、特にそのアジェンダ・セッティングパワーを検証することを目的としている。結論として、「公正中立」、「不偏不党」など報道者としての立場を失ったことは、リクルート事件報道の問題点であることが指摘される。その理由は、政党、特定の政治家との距離感による先入観が、新聞の報道姿勢、ないし議題設定機能を左右したことである。
著者
佐藤 克文
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

動物搭載型カメラと加速度行動記録計を組み合わせることにより、直接観察が出来ない水生動物の生態を解明する手法を開発できた。1)マンボウ:行動的体温調節を行いつつ、深海に生息するクダクラゲ類を捕食している証拠を得た。2)マッコウクジラ:突進遊泳した際に撮影された映像には、イカの墨とおぼしき懸濁物が撮影されていた。これは、マッコウクジラが活発な追跡遊泳によって餌生物を捕らえている事を意味している。3)深海ザメ:日周鉛直移動を繰り返す深海性のサメ2種は、いずれも潜降時の方が浮上時に比べて激しく尾鰭を動かしていた。これは、従来言われていたこととは逆に深海ザメが正の浮力を有することを示している。
著者
平康 博章 瀬山 智博 和智 仲是 中村 達 笠井 浩司 藤谷 泰裕
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集 第28回廃棄物資源循環学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.227, 2017 (Released:2017-11-29)

高水分の食品廃棄物に適した廃棄物処理・利用技術として、アメリカミズアブ幼虫に廃棄物を摂食させて減量し、成長した幼虫を飼料利用する技術に注目した。本研究では各種の条件が幼虫による処理に及ぼす影響について実験室内でモデル廃棄物を使用して検討した。処理に適した温度範囲を明らかにしたほか、廃棄物の水分含量が60-90w/wの範囲では廃棄物の重量減少率に差がなく、80%w/w以上では幼虫の体重増加が促進されるという結果を得た。また一般的な食品廃棄物に含まれる程度の塩分は処理効率に影響を及ぼさないこと、脂肪分については処理効率を低下させる可能性があり注意を要することなどを示唆する結果を得た。

1 0 0 0 OA 樹木とその葉

著者
若山牧水 著
出版者
春陽堂
巻号頁・発行日
1932

1 0 0 0 OA 田能村竹田

著者
豊南大島支郎 編
出版者
豊南書堂
巻号頁・発行日
vol.巻2, 1914
著者
丹羽 寛文
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.3241-3260, 2011 (Released:2011-11-30)
参考文献数
18

二重造影法は日本で開発されたと思われているが,二重造影法を最初に開発し報告したのは日本では無い.二重造影法はドイツのFischerが薄いバリウムを使って大正12(1923)年に発表したのが最初で,濃厚なバリウムを使っての大腸の二重造影法は,スエーデンのWelinが昭和28(1953)年に発表している.何れも大腸が対象で大腸ポリープの診断を目的としていた.筆者は若干変更した変法を昭和45年に報告し,その後かなりの症例を経験した.以下Fischer法とWelin法について詳述した.なお筆者は昭和45(1970)年7月にWelin教授をマルモに尋ねたが,すでに彼は定年で退官しており,後任のProf. Boijsenに共同研究者のAndren講師を紹介され,詳細を教わった.Fischer法は薄いバリウムを使っての二重造影法で,バリウムの付着が悪く諸施設で実施されてはいたものの評価は低く,その後忘れ去られた.一方濃厚バリウムを使うWelin法は,良好な二重造影像が得られた.原法ならびに筆者の変法による当時行った実例を提示し,Welin法並びにその変法の特徴,利点を詳述した.筆者が行ったのは,大腸ファイバースコープの開発とほぼ同時期で,両方法の開発発展に相互に良い影響があったと思っている.
著者
白土 修
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.10, pp.2133-2138, 2018-10-10 (Released:2019-10-10)
参考文献数
4
著者
中村 重信
出版者
公益社団法人 日本ビタミン学会
雑誌
ビタミン (ISSN:0006386X)
巻号頁・発行日
vol.86, no.11, pp.612-619, 2012-11-25 (Released:2017-10-10)
参考文献数
44

Wernicke's encephalopathy was first described by Wernicke in 1881. However, the disease is often overlooked in our daily clinical activities, since Wernicke's encephalopathy can not be definitely diagnosed in an emergency room. If Wernicke's encephalopathy is not treated properly with vitamin B_1, patients will usually suffer from Korsakoff syndrome or sometimes fall into death. Vitamin B_1 deficiency has been thought to be overcome by an abundant food supply or effective vitamin B_1 treatment. Increased alcohol consumption or unbalanced diet has introduced a new aspect of vitamin B_1 deficiency, especially Wernicke's encephalopathy which often leads to dementia. To prevent dementia due to Wernicke's encephalopathy, it has been recommended that a large dose of vitamin B_1 is administered to patients with consciousness disturbance. This article summarizes the pathophysiology, diagnosis and symptoms of Wernicke's encephalopathy as well as the dose of vitamin B_1 administered to patients with Wernicke's encephalopathy and the side effect of the vitamin B_1 therapy.
著者
加茂 綱嗣 平舘 俊太郎 轟 泰司
出版者
国立研究開発法人 農業環境技術研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ヒマラヤシーダーの落葉は野外において著しく雑草の成長を阻害することから、その成分の同定、土壌中での活性評価等を試みた。各種機器分析により、活性成分はアブシジン酸と同定した。火山灰土壌、沖積土壌および石灰質土壌のいずれもこの化合物の植物成長阻害活性を低下させなかった。試験により土壌へ吸着されにくいことが判明し、その理由は極性よりは立体的な要因が大きいことが示唆された。また、年間を通して落葉量を測定した結果、春から夏に落葉のピークがあることが確認された。その時期は落葉直後のアブシジン酸濃度も最も高かった。このことから、野外においてもアブシジン酸が雑草の成長抑制に寄与している可能性が示唆された。