著者
三輪 悦夫 高柳 博次 中川 致之
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1978, no.47, pp.48-52, 1978-03-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
17
被引用文献数
16 5

葉位による化学成分含量の相違について,一番茶,二番茶を対象に検討した。(1) 葉位が下がるほど含量が減少した成分は,全窒素,タンニン,カフエインであった。茶期別にみると,一番茶に全窒素が多く,二番茶ではタンニン,カフエイン含量が多かった。(2) 葉位が下がるほど含量が増加した成分は,遊離還元糖,フラボノール類,塩類可溶性ペクチン,全ペクチンであった。(3) カテキン類のうち,特にエピガロカテキンガレートは,上位の葉および二番茶に多かった。(4) アミノ酸類のうち,テアニン,グルタミン酸,アルギニン,アスパラギン酸,セリンは,一番茶の上位の葉に多く,二番茶では著しく減少が認められた。(5) 無機成分含量のうち,上位の葉に比較的多く含まれる成分は,カリウム,リン酸,マグネシウム,亜鉛であった。下位の葉に多く含まれる成分は,カルシウム,マンガン,アルミニウムであった。本研究は,著者の1人三輪が,農林省茶業試験場において,国内留学中に行ったものであり,実施にあたり御指導,御協力をいただいた阿南技官,天野氏に,また,無機成分分析で御指導をいただいた池ケ谷技官に深く感謝いたします。
著者
三谷 憲正
出版者
佛教大学国語国文学会
雑誌
京都語文 (ISSN:13424254)
巻号頁・発行日
no.4, pp.172-185, 1999-10-02

これまでの先行研究は、いずれも昭和一〇年の第一回芥川賞を基点としてそれ以降の両者を論じてきていた。が、ここで考えてみたいのは、太宰治の言説の表層にタームとして表れ出でなかった〈川端康成〉についてである。太宰治の「断崖の錯覚」「東京八景」「畜犬談」などの、一見不可解とも思われる叙述の裏側に、〈川端康成〉という補助線―特に「伊豆の踊子」「雪国」「禽獣」―を仮に設定してみることによって、その不可解感のよって来たる所を解明できないか、という試みである。本稿はそのことによって、太宰文学の抒情が、王朝文学の伝統を受け継ぎそれを現代に蘇らせた〈川端的抒情〉とは異なり、すぐれて〈土着的な日本〉の〈抒情〉だったのではないか、という点の解明を企図した。
著者
竹腰 誠 柏木 悠 神 和人 平野 智也 藤戸 靖則 相馬 満利 石濱 慎司 船渡 和男
出版者
日本体育大学
雑誌
日本体育大学紀要 = Bulletin of Nippon Sport Science University (ISSN:02850613)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.1051-1061, 2021-08

本研究の目的は,日本代表選手を含む大学アルペンスキー選手の体力測定値とパフォーマンスの関係性を検討し,その測定値の有効性と世界一流選手(World)と大学アルペンスキー選手(College)の体力レベルの差を明らかにすることでトレーニングへの一助とすることを目的とした。被験者は,17名の日本代表選手を含む大学男子アルペンスキー選手(Collage)であった。測定項目は,形態・身体組成,柔軟性,筋力,非乳酸性パワー,乳酸性パワー,そして有酸素性パワーの測定であった。アルペンスキー競技のパフォーマンスには,国際スキー連盟(FIS)が定めるFISポイント(回転,大回転,スーパー大回転)を採用した。体力測定項目とFISポイントの関係性には,ピアソンの積立相関係数およびスピアマンの順位相関係数を用いて評価した。また,CollageとWorldの体力の差の検討には,先行研究Neumayr et al.(2003)の報告を参考した。FISポイントと体力測定値の関係性は,形態・身体組成と柔軟性以外の全ての項目と有意な負の相関関係がみられた。FISポイントとの関係性がみられた膝屈曲トルクは,WorldがCollageより大きな値を示し、最大43%の差であった。その次に大きな差がみられた測定項目は,2 mmol/lの相対的な有酸素性パワーであった。大学生アルペンスキー選手の膝伸展屈曲トルク,非乳酸性パワー,乳酸性パワーおよび有酸素性パワーの体力要素は,アルペンスキー競技パフォーマンスと有意な相関関係が認められ,世界レベルを目指すための体力トレーニングの目標値が示された。
著者
平野 幸久 井上 裕
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1293, pp.114-116, 2005-05-30

問 平野さんは、1992年に英ダービーで、トヨタ自動車初の欧州工場を立ち上げています。中部国際空港は、その時の経験と似ていましたか。 答 ええ。自動車の工場も、まず生産システムを作り、そこで組み立てる部品は、様々なメーカーに発注して何度もテストを繰り返し、そのうえで良い物を選び出します。人も採用後にしっかり訓練します。
著者
一條 都子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.2-15, 1993

一九七〇年代のスコッティシュ・ナショナリズムの高揚は、最も国民統合の進んだ国家と考えられていたイギリス社会に大きな影響を与えた。同時期に、西ヨーロッパの各地でエスニックな意識の高揚が見られ、スコッティシュ・ナショナリズムも含めて社会科学者の関心を呼んできた。本論では、マイノリティ・ナショナリズム高揚の社会的背景を、特にスコットランドの事例に注目して、明らかにすることを試みる。一九七〇年代の西ヨーロッパ社会でのマイノリティ・ナショナリズムの高揚は、いくつかの歴史的条件によって準備されていたが、第二次大戦後の社会変動によってもたさられた。こういった先進産業社会でのマイノリティ・ナショナリズムの高揚は、現代社会におけるエスニシティの機能への注目を促し、アイデンティティ追求の場としてのエスニシティ、政治的要求表出のための資源としてのエスニシティ、同一社会内の複数のエスニシティの処遇の方法といったチャレンジングな問題を提出する。
著者
新島 旭
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.41-54, 2001 (Released:2018-05-30)
参考文献数
28

1994年に発見、報告されたレプチンは白色脂肪細胞で生産され放出されるホルモンで食欲を抑制し、消費エネルギーを高めて肥満を防止する物質であることが明らかとなった。その後の研究で視床下部にレプチンレセプターが存在することが証明され、レプチンの食欲抑制効果、自律神経出力への効果は視床下部を介して発現することが示唆された。さらに、レプチンの静脈内投与により迷走神経活動の抑制、交感神経活動、とくに白色脂肪枝、褐色脂肪枝での活動促進が観察され、脂肪分解、熱産生の促進が示唆された。レプチンは自律神経活動を調節することにより異化作用の促進、同化作用の抑制を起こし、体脂肪量の調節に役割を演じている。本稿では上記について概説し、レプチンの作用経路についても考察した。
著者
白岩 伸也
出版者
教育史学会
雑誌
日本の教育史学 (ISSN:03868982)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.45-57, 2017 (Released:2018-04-01)
参考文献数
15

After the Potsdam Declaration, the Japanese government had to decide on the treatment of former military educational institution graduates (hereinafter referred to graduates), while attempting to transform the country’s self-image from “Imperial Japan” to “Democratic Japan”. The Ministry of Education tried to transfer many graduates to other schools. However, various discussions over the measure developed. This paper clarifies the formation of the measures for graduates in early postwar Japan by focusing on the trend of “demilitarization” and “democratization” and its scope.In August 1945, the Ministry of Army and Navy began to negotiate with the Ministry of Education to transfer graduates to other schools. As a result, the Cabinet decided upon “preferential transfers” for graduates. However, when students started to criticize and CIE (Civil Information and Education Section) started to intervene, preferential transfers were abolished in November. “Restrictive transfers” that limited the number of graduates to ten percent of a school’s capacity was determined in February 1946. Nevertheless, opinions criticizing restrictive transfers or insisting upon the necessity of re-education appeared. In addition, the discrepancy between the text of the Constitution of Japan and the Fundamental Law of Education and the measures was pointed out.As described above, the measures were formed through “consultation” and “crossbreeding” with the Ministry of Army and Navy, the Ministry of Education, and CIE. The scope of “demilitarization” was interpreted differently by each organization, so that “demilitarization” and “democratization” developed a relationship of mutual conflict and reliance. It may be considered that the achievement of “demilitarization” and “democratization” was hindered, thus affecting later historical developments.
著者
畠山 兵衛 鈴木 金道 飯塚 堯介 中野 準三 右田 伸彦
出版者
日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.1399-1402, 1967

リグノスルホン酸およびチオリグニンの過酢酸分解において,457mμの吸光度の減少と280mμのそれとの間には比例関係があることに基づき,両リグニンを過酢酸で酸化した場合の淡色化と,各種官能基の含有率の変化および低分子化との関係を考察した。<BR>1.280mμの吸光度に関与する構造型:フェノール性水酸基,カルボニル基および環開裂に由来するカルボキシル基をもっ6種の構造型を選び,これらの構造型を有するモデル化合物の280mμにおける吸光度を測定し,各構造型がリグニンの280mμの吸光度に関与する割合を調べた。各構造型の関与率は合計70%以上を示した。しかし,これらのモデル化合物は457mμにおいて吸光を示さないから,以上の各構造型はそのままの状態では可視部に吸光を示さない。<BR>2.過酢酸酸化および水素化ホウ素ナトリウム還元によるリグニンの色の変化:未処理,酸化処理,還元処理および酸化後に還元処理したリグニンにっいて,C.I.E.のXYZ系でリグニンの色を表示すると,明度は酸化,還元のいずれの処理によっても向上するが,酸化してから還元処理すると,著しく向上する。<BR>3.ゲルロ過法による分子量分布の比較:Sephadex G-25を用い,ゲルロ過法による分子量分布を測定し,過酢酸酸化による変化を検討した。その結果,リグニンの分子量が低下することを認めた。<BR>以上の結果を総括して過酢酸酸化によるリグニンの淡色化には,発色団あるいは助色団となる官能基あるいは芳香核が酸化によって減少することばかりでなく,低分子化も重要であると結論した。