著者
鈴木 万幾子 内山 剛 高橋 均 伊藤 充子 清水 貴子 小林 寛 大橋 寿彦
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.586-589, 2009 (Released:2009-11-13)
参考文献数
7
被引用文献数
3 1

症例は57歳男性.全般性痙攣で発症し,左前頭葉に病変をみとめ,脳生検では反応性astrocyteの増生と血管周囲性のT細胞優位のリンパ球浸潤がめだった.病変は自然消退し,18カ月後に左小脳脚の病変を再発したが,ふたたび自然消退した.初発から2年後に脳梁に再発し,当初は多発性硬化症をうたがったが,ぶどう膜炎を合併,ステロイド抵抗性であり,再生検でびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と診断した.自然軽快する症候性病変をくりかえした中枢神経系悪性リンパ腫の1例について,2回の脳生検病理と臨床経過を報告した.
著者
野尻 純子 柳川 敏彦
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.237-245, 2019

<p><b>目的</b> 本研究の目的は,自閉症スペクトラム障害(以下ASD)を疑われた児の母親に対してステッピングストーンズ・トリプルP(以下SSTP)を実施し,その効果を明らかにすることとした。</p><p><b>方法</b> 対象は,A市の健診後に発達支援教室を利用する児の母親36人であった。児は2歳から6歳で,広汎性発達障害日本自閉症協会評定尺度(以下PARS)が9点以上でASDが疑われた。対象者を介入群と対照群の2群に無作為に割り振り,両群にSSTPを実施した。介入群から介入前後と3か月後,対照群から介入2か月前と介入前後に各々3回ずつ質問紙の回答を得た。質問紙は,親が報告する子どもの困難な行動(SDQ),親の子育てスタイル(PS),夫婦間の関係の質と満足度(RQI),親の子どもへの不適切な行為(JM)の4つの尺度であった。介入前後の効果を介入群と対象群の1回目と2回目の尺度得点を用いた共分散分析で求め,介入3か月後の効果を介入群内の3回の尺度得点を用いた分散分析でそれぞれ調べた。</p><p><b>結果</b> 児の平均年齢は3.7±1.4歳,PARS平均得点は20±6.8点のASDを疑われた児であり,児の発達指数(DQ)の全領域平均は76.1±18.8点で知能は境界域にあった。介入前後で得点分布に有意差があったものは,SDQ(行動問題,難しさの合計),PS(過剰反応,多弁さ,総合スコア),JMであり,RQIに有意差は見られなかった。介入後3か月後時点では,介入群内においてSDQ(行動問題,難しさの合計,過剰活発),PS(すべての項目)で1回目と3回目で有意差があった。</p><p><b>結論</b> SSTPを受けることで親の子育てに良い変化がみられ,児の問題行動が改善され,育てにくさが減少した。叩くなどの児への不適切な行為に改善が見られたことで,SSTPが親の養育態度の変化につながることが示唆された。</p>
著者
山村 幸江 吉原 俊雄
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.61-65, 2009 (Released:2010-06-01)
参考文献数
21

耳下腺腫瘍の診断におけるRI検査の有用性を検討した. 99mTcO4- シンチグラフィーはWarthin腫瘍とオンコサイトーマでは集積を示し, 診断の補助に有用である. 67Gaシンチグラフィーは耳下腺の高悪性度癌では一般に集積を示すが, 低悪性度癌での集積は半数程度であり, 良性腫瘍の多形腺腫やWarthin腫瘍にも集積する. 従って 67Gaシンチは主に高悪性度耳下腺癌の遠隔転移と再発の検索に有用である. 最近普及が進んでいるPETは, 悪性腫瘍の全身検索や再発の早期診断に有用であり, 67Gaシンチと比較して病変検出率は高い.
著者
伊藤 純雄 菊地 直 加藤 直人
出版者
農業技術研究機構中央農業総合研究センター
雑誌
中央農業総合研究センター研究報告 (ISSN:18816738)
巻号頁・発行日
no.14, pp.1-15, 2010-01

3種類の汚染土壌を充填した枠團場で,延べ39品種のホウレンソウ類を秋と春に栽培して,各品種の可食部におけるCd濃度の差が,生育条件により変動するかを検討した。1)最も濃度が低いフダンソウは,濃度が高いホウレンソウ品種に対して平均で30%程度のCd濃度を示した。ホウレンソウ品種間の比較では,最も低い品種のCd濃度平均値は,濃度が高いホウレンソウ品種の平均値の50%程度であった。しかし,品種ごとのCd濃度順位は,栽培条件による変動もあり,個別の試験で得られるCd濃度順位は必ずしも一定しない。2)既往の実験データを含む,延べ115品種,総計684点のホウレンソウ類のCd濃度品種間差データを「Cd指標」および「ゆらぎ」としてとりまとめた。Cd濃度が高まりやすい品種はモナリザ,アスパイアー,サンパワー,パシオン,ハンブルグ,サンピアテン,イーハトーブ,サマーステージ,タイタン,東海,など,Cd濃度が高まりにくい品種は,シュマイザー,ブレード,次郎丸,コンバット,アトラス,やまと,とフダンソウで,下位品種の「Cd指数」平均値は,上位10品種の0.52倍であったが,これらの結果は今後のデータの蓄積や解析手法の改良によって変化する可能性がある。3)「Cd指数」と比較して「ゆらぎ」が大きい品種は,栽培条件によってCd吸収が変化する可能性がある。また,データ源が一点だけの品種が多数あることや品種の入れ替わりが早いことから,今後もデータを蓄積,改訂する必要がある。
著者
佐藤 智美
出版者
日本教師教育学会
雑誌
日本教師教育学会年報 (ISSN:13437186)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.86-96, 2018-09-29 (Released:2020-07-06)
参考文献数
17

The purpose of this study is to examine why the rate of female principals increased from the 1990s to the 2000s. The study focuses on the professional movements of female teachers and “the support organizations for female teachers” that aim to attain gender equality in school.   In Oita prefecture, the focus of this investigation, the rate of female principals climbed more rapidly from the 1990s until the early 2010s than in any other prefecture. Additionally, the rate of members of the Japan Teachers Union in the area was also relatively high. By interviewing ten female elementary school principals and members of “the support organizations for female teachers” made of Japan Teachers Union female club and the retired female school principals club, this study makes the following observations.   Female principals in the 1990s had to protest gender inequality to progress with their careers. Cooperating with “the support organizations for female teachers”, they made efforts to increase the number of female principals to expand women’s rights.   Owing to the efforts made by female teachers in the 1990s, female teachers after the 2000s were able to obtain many different positions in their schools, and could be promoted to the principal level almost as smoothly as male teachers. They introduced gender equality education and attempted to provide female leaders as role models to their students. Cooperating activities between female teachers and supporting organizations decreased in the later 2000s because they did not think that further cooperation was necessary.   In conclusion, the factors that increased the rates of female principals in Oita prefecture from the 1990s until the 2010s were the efforts and solidarity of female teachers cooperating with supporting organizations. These factors were different from the policy of Gender Equality and the promotion of protection by the established Elite, which has been proposed by previous research.

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1905年07月10日, 1905-07-10
著者
井上 雅道
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.499-522, 2013-03-31 (Released:2017-04-03)

帝国の時代にあって、生-権力は、多様な身体・意識・行為によって構成されるマルチチュードとの交渉の中で、いかにセキュリティを構築し自らを形成しているのか。本稿では、現実の世界がさまざまな出来事を通じて演劇的に構成される仕方を分析する「ドラマトゥルギー」の手法=視点を用いながら、アメリカの大学警察(ケンタッキー大学警察部)の史的かつ民族誌的記述を通してこの問いを考察したい。この目標に向けまず、大学警察が「いれば煙たがられ、いなければ文句を言われる」二律背反に直面するようになった経緯を、1960年代から1970年代にかけての学生運動とその後の歴史的文脈の中で検証する。続いて、いなくて文句を言われることがないよう警察が被疑者・犯罪者を「見る・排除する」プロセスが、いることで煙たがられることのないよう警察が自らをキャンパス共同体(マルチチュード)に「見せる」プロセスといかに交錯しているかを分析し、警察が被疑者・犯罪者とキャンパス共同体を含む三者関係の中で、死に対する(=排除する)権利を行使する「見る主体」と生に対する権力を行使する「見せる主体」とを統合するようになったこと、またこの統合が大学における生-権力=セキュリティの強化をもたらしていること、を明らかにする。その後「生-権力は際限なく強化され、私たちを無力化している」という先行研究の議論の妥当性を検討すべく、近年-特に9・11同時多発テロ以降-セキュリティが強化されたまさにそれゆえに、警察官の意識・行為において見る主体(「死に対する(=排除する)権利」)と見せる主体(「生に対する権力」)の統一が崩れ、そこにある種の危機が現れていることを明らかにする。更にこの危機を「生-権力の臨界」として概念化し、それが呼び起こすマルチチュードの新しい自由・自律への含意を論じた後、この含意を「大学のエスノグラフィー」の可能性の中で検討する。
著者
赤沢 克洋 上杉 恵一郎 田村 坦之
出版者
環境科学会
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.9-21, 2002 (Released:2011-03-05)

世界各国はCO2排出抑制に向けた政策対応を迫られており、炭素税や排出権取引など多くの政策手段が検討されている。そこで本研究では、日本における炭素税の導入可能性と国際間排出権取引参加の是非を検討することを目的とした。評価基準としては、国際競争力と産業間格差に焦点をあてた。 最初に、政策評価のための非線形数理モデルを構築した。本モデルは、応用一般均衡モデルをベースとして、CO2排出削減政策に対する産業主体の行動を組み込んだものであり、各国ごとの利潤最大化行動を定式化した上部構造と3つの下部構造から構成される。下部構造では国内最終需要、輸出量、CO2費用の決定を定式化しており、上部構造と相互依存関係を持たせている。このような定式化により、本モデルは、国際間の競争をも考慮した各国各産業への影響を評価することができる。 炭素税と国際間排出権取引に関するシナリオを設定し、モデルによるシミュレーションを行った。炭素税に関するシナリオ分析から、炭素税導入により国内価格の上昇が1%弱、利潤の低下が2%弱となり、また国際競争力への影響が小さいと推定された。しかし、国際競争力に関して産業間格差が生じていた。国際間排出権取引に関するシナリオ分析から、国際間排出権取引に参加することは、利潤や国際競争力の点から有利であり、炭素税導入と比較して大きな産業間格差を生じないことがわかった。以上から、産業間格差への対策を必要とするものの炭素税が導入可能であり、加えて国際間排出権取引に参加することが有効な政策手段であると結論づけた。
著者
山下 皓一 安間 荘
出版者
東海大学海洋学部
巻号頁・発行日
pp.33-43, 1997 (Released:2011-03-05)
著者
木村 勉 田中 真 遠山 文雄
出版者
東海大学工学部
雑誌
東海大学紀要 工学部 (ISSN:05636787)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.73-78, 2004

As human activities in space increase, the hazard of space debris impacts becomes an ever more serious concern. In particular, breakups of artificial objects increase space debris. Debris of more than 10 cm in diameter have been detected by ground-based radars and optical observations. The orbital data of these objects are cataloged by NASA. This paper describes the orbital analysis of space debris generated by breakups. We analyzed orbital data for the 4th stage engine of the Indian PSLV rocket, the Russian COSMOS 1813, and the Chinese CZ-4 rocket. As a result of this study, we developed a new determination method of the breakup time.
著者
工藤 陽子
出版者
同志社大学
雑誌
同志社大学留学生別科紀要 (ISSN:13469789)
巻号頁・発行日
pp.47-61, 2001-12

これまでに同志社大学留学生別科でメインテキストとして使用されたことのある日本語教科書を,初級,中級,上級とレベルごとに2種類ずつ選び,その中に見られる外来語について若干の考察を試みた。その結果,初級のテキストと中級のテキストとでは,そこに見られる外来語中の基本外来語の占める割合にはあまり差はなく,上級のテキストになると,基本外来語の占める割合がかなり低くなり,動詞慣用句や,動詞との共起の点て注意すべきものも多く見られることがわかった。その一方で,上級のテキストにおいても,実際の日常会話などでよく耳にする外来語系ナ形容詞についてはほとんど見られず,こうした語をどのような形で授業の中で取り上げていくかを考えることも,今後の課題の一つである。
著者
今野 正規
出版者
關西大學法學會
雑誌
關西大學法學論集 (ISSN:0437648X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.119-152, 2013-05-11
著者
塩浜 裕一 坂本 宏昭
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.15, no.7, pp.7_324-7_334, 2015 (Released:2015-12-25)
参考文献数
10

水道配水用ポリエチレン管は、ポリエチレン材料と一体構造管路の特性により、高い耐震性を持っている。ここでは、管に使用されているポリエチレンの特性、ポリエチレン管による一体構造管路の耐震計算例、地震動や地盤変状を想定した耐震実験及び東日本大震災などの大地震での被害調査などについて述べる。