著者
範 聖璽 野口 尚孝
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.61-68, 2007-01-31 (Released:2017-07-11)
参考文献数
8

デザインの創造的思考において,デザイン対象が属するカテゴリー(デザインしようとしているものがどのような名前で呼ばれるのか)を考える場合,いかにそのカテゴリーが示す対象の原型(プロトタイプ)のイメージを残しておくか,あるいはいかに新たなイメージを創出するかという視点の置き方によってデザイン対象のとらえかたと表現内容が大きく変わる。本報では,デザイン目標表現(デザイン対象の言語的表現)の相違から来る視点の相違と,デザイン対象のカテゴリーにおけるプロトタイプ・イメージの影響との関係を2つの実験によって確かめ,独創性の高いデザインを生み出すためのデザイン目標表現のあり方についての手がかりを探った。その結果,デザイン対象が属するカテゴリーの認知意味論的な基本レベルより上位のカテゴリーによるデザイン目標を与え,そこからその下位概念として基本レベルでの対象を考えさせるか,意図的にデザイン対象を含む,より大きな文脈でのデザイン目標を与えることにより,独創性のあるデザインを創出させることができることが分かった。
著者
範 聖璽 野口 尚孝
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.53-60, 2007-01-31 (Released:2017-07-11)
参考文献数
7
被引用文献数
1

デザイン行為では,通常デザイン要求が言語表現で与えられるが,それを視覚空間的形態イメージに変換する過程がデザイン思考過程であるといえる。デザイン要求を表す目標表現は,デザイン思考における探索空間を限定するといえるが,実際のデザイン行為においては,同じデザイン要求であっても,その解釈の相違によって,結果としての視覚空間的形態表現も異なる。本研究では,「子供用のイスのデザイン」というデザイン要求を学生に課した実験により,その要求を解釈したコンセプトにおける言語表現の概念構造と,それに対応する視覚空間的形態表現との関係を,認知意味論のカテゴリー階層構造という視点からとらえ,デザイン要求の解釈の仕方の違いが形態表現における創造性とどのような関係があるかを確かめた。その結果,与えられたデザイン要求の解釈において,意味空間カテゴリーの中心的な解釈よりも,周縁的解釈の方が,作品の形態表現における新規性が高い傾向があることが分かった。
著者
淵田 茂司 門倉 正和 所 千晴
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
Journal of MMIJ (ISSN:18816118)
巻号頁・発行日
vol.137, no.12, pp.116-122, 2021-12-25 (Released:2021-12-25)
参考文献数
15
被引用文献数
2

Acid mine drainage (AMD) generation is a serious problem from the environmental and economic perspectives, because it contains a large amount of heavy metals and because there are high costs associated with maintaining the facilities, purchasing neutralizing agents, and disposing sludges; which are required for the treatment process. In this study, changes in AMD quantity and quality for the next decades were predicted by a three series tank model in three stages, by combining the first order kinetic calculation of sulfide minerals' dissolution for two metal mines (X and Y) in Japan. Results from the AMD quality model represented the decrease of heavy metal concentrations below the effluent standard values in 30–140 years, by considering dilution and/or additional dissolution by heavy rain and snow melting, although these predicted values diverged by our previous model. However, the low correlation coefficient values (0.23–0.63) observed between the measured values of heavy metal concentration and the values calculated by our new model, mean that other chemical reactions, such as sulfate and/or carbonate mineral dissolution could greatly affect the AMD quality. In fact, there was no correlation between the metal potential calculated by our model and the real distribution of sulfide minerals at X mine. Our results therefore indicate that specific geochemical reaction and geological information should be included in the AMD quality prediction model, to estimate more accurately the fluctuation of each heavy metal concentration during different seasons.
著者
山田 徹雄
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学紀要 (ISSN:03899543)
巻号頁・発行日
no.21, pp.p1-10, 1988-03

「経済的必然性」をもたない国有化とエンゲルスによって規定が与えられた「ビスマルク的国有」なる概念は, ドイツ資本主義或いは日本資本主義の研究に, 重要な視角を与えてきたが, 逆に, その概念への固執によって「ビスマルクによる鉄道の国有」を多面的かつ, 広く全ドイツ的にみる視野が失われてきた。本稿においては, 「ドイツ帝国」と「プロイセン邦」という複眼を持って, この問題にアプローチする。
著者
田口 周 橋本 晋吾 長谷 公隆
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.23-28, 2019 (Released:2020-02-01)
参考文献数
13

超高齢社会は我が国において重大な問題の1 つであり,その進展に伴う課題点として認知症患者の増加が挙げられる.認知症対策に関する様々な取り組みが試みられているが,それに関連して認知機能評価および訓練は重要である.また,近年,Virtual Reality を始めとした先端技術が医療及び介護分野も含めて様々な領域で応用されている.その先端技術の1 つとして近年注目されているMixed Reality を認知機能などに対して応用する試みについて紹介する.
著者
榎原 毅 鳥居塚 崇 小谷 賢太郎 藤田 祐志
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.155-164, 2021-08-15 (Released:2021-08-20)
参考文献数
19
被引用文献数
9

国際人間工学連合は人間工学(HFE;Human Factors and Ergonomics)のコア・コンピテンシーを改訂した.HFEの改訂コア・コンピテンシーの単位は7領域に集約・再整理され,システムズアプローチ視点がより強調される形となっている.改訂コア・コンピテンシーに基づき,今,社会の要請に応えるHFE専門家を育成するために必要と考えられるリサーチ・イシューとして,1)ステークホルダ関与に基づく解決策の提案,2)システムズアプローチに基づくシステム要素の調和,そして3)HFE主導による,あるべき近未来労働・生活様式ビジョンの策定,の3つのポイントを提案した.これらはHFEの世界的な動向を鑑み,国内のHFE研究者,実務者,専門家が今,学び,実践すべき重要なリサーチ・イシューである.
著者
南部 真理子
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学大学院論集. 人間科学研究編 = Graduate students' working papers in human sciences (ISSN:13482122)
巻号頁・発行日
no.2, pp.101-108, 2004-03-18

本論文は, 子どもの関係発達論の立場から人間の関係性についての研究である。研究テーマは, 「子どもの虐待における人間の関係性」であり, それは, 文献, 臨床による研究を基盤にしている。虐待問題は, 現代社会における子どもの様々な問題を解く糸口となり, 本来あるべき人間関係を損なうのが虐待問題であると考える。本文の着目点は, 子どもの虐待を人間の関係性の問題であると捉えるがゆえに, 「子どもとセラピストとの関係性」を従来の「枠組み」と異なる捉え方をするところある。本論文は, 「虐待を受けた子どものプレイセラピー」の焦点を「子どもとセラピストとの関係性」にあわせ, 「虐待を受けた子どものプレイセラピー」の空間, 時間の「枠」のあり方について考察し, 臨床事例を通して再構築された「枠組み」について論じるものである。
著者
福光 優子 尾関 仁志 住居 丈嗣 石光 照彦
出版者
山口県農林総合技術センター
雑誌
山口県農林総合技術センター研究報告 = Bulletin of the Yamaguchi Prefectural Technology Center for Agricultural and Forestry (ISSN:21850437)
巻号頁・発行日
no.9, pp.88-95, 2018-03

山口県が育成した小輸系ユリ'プチシリーズ'をコンテナで栽培する場合、1コンテナに配合土を20L投入し、「プチソレイユ」、「プチロゼ」および「プチブラン」の冷凍球根(球周8~10cm)を適切に解凍した後、28~36球/コンテナ定植すると、周年を通じて切り花長60cm以上、花蕾数3輪以上の品質の良い切り花が得られる。「プチソレイユ」においては、冷蔵および冷凍処理球根を組み合わせて栽培することで、同一施設内で年4作体系が可能である。球根増殖においては、りん片では、23℃8週間で子球形成後、自然低温もしくは17℃4週間処理した後、5℃6週間処理を行うことで、発芽が促される。小球根も同様で自然低温もしくは、5℃6週間処理で休眠打破し、発芽する。コンテナ栽培において、8cm以上の球根を得るために適した栽植密度は、りん片では90g/コンテナ、4~6gの小球根では50球/コンテナである。
著者
谷内田 真一 髙井 英里奈
出版者
一般社団法人 日本膵臓学会
雑誌
膵臓 (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.10-16, 2016-02-25 (Released:2016-03-15)
参考文献数
27

膵臓がんは「がんの王様」に君臨している.膵臓がんは他のがん種と比較し特異的ながん腫で,4つの遺伝子異常のみ(KRAS,CDKN2A/p16,TP53,SMAD4/DPC4)が高頻度に認められる.その一方で,他のがん種と同様に低頻度ながらも治療標的となりうる遺伝子異常も有している.例えば,DNA損傷・修復パスウェイの遺伝子変異(BRCA1,BRCA2,PALB2,ATMなど)である.これらの遺伝子異常を捉えるために,手術や生検検体を用いたClinical sequencingが行なわれている.しかし,がんにはHeterogeneityがあり,一ヶ所だけの生検材料だけでは,がんの全体像を把握できない.さらに,がんが生検困難な部位に存在する患者や全身状態の悪い患者には生検は躊躇われる.低侵襲かつ複数回の検査が可能で,その時々にドミナントながんクローンを検出する技術が開発されつつある.“Liquid clinical sequencing”である.血漿から遊離DNAを抽出して,治療標的となる遺伝子異常を探索する.未だ発展途上の技術ではあるが,今後の“Precision Medicine”には必要不可欠な検査法といえる.
著者
坪井 良治 R Tsuboi
雑誌
東京医科大学雑誌 (ISSN:00408905)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.441-447, 2003-03-15
著者
尾関 仁志 光永 拓司 藤田 淳史 松本 哲朗
出版者
山口県農林総合技術センター
雑誌
山口県農林総合技術センター研究報告 (ISSN:21850437)
巻号頁・発行日
no.1, pp.37-45, 2010-03

アジアティックハイブリッドとヒメユリを花柱切断法で交配し、胚珠培養技術を用いて、小輪タイプの新品種「プチフレーズ」、「プチブラン」、「プチルナ」および「プチロゼ」を育成した。各品種の特性は、以下のとおりである。1.「プチフレーズ」は、花の直径が約11cmと小さく、花色が淡黄ピンクで、花被の斑点が小さく目立たない。2.「プチブラン」は、花の直径が約11cmと小さく、花色が黄白で、花被の斑点が小さく目立たない。3.「プチルナ」は、花の直径が約10cmと小さく、花色が明黄で、花被の斑点は全くない。4.「プチロゼ」は、花の直径が約12cmと小さく、花色が鮮紫ピンクで、花被の斑点は全くない。5.切り花栽培には4品種とも球周8cm以上の球根を用い、5℃で冷蔵処理した球根を10月下旬から11月に定植すると、到花日数は「プチフレーズ」が120〜130日、「プチブラン」が約130日、「プチルナ」が105〜115日、「プチロゼ」が125〜135日となる。6.球周10〜12cmの球根を母球として増殖すると、切り花栽培用の球根が「プチフレーズ」は0.5球、「プチブラン」は約4球、「プチルナ」は約10球、「プチロゼ」は約9球増殖される。
著者
藤井 哲雄
出版者
The Iron and Steel Institute of Japan
雑誌
鉄と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.1398-1411, 1976-09-01 (Released:2010-02-22)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1
著者
渡部 謙一
出版者
北海道教育大学
雑誌
北海道教育大学紀要. 教育科学編 (ISSN:13442554)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.315-325, 2020-08

現代日本において吹奏楽という音楽ジャンルは,数十年前「ブラスバンド」と呼ばれていた時代から比べ隔世の感を禁じ得ないほど発展し,一文化として定着していると言っても過言ではないと思われる。全日本吹奏楽連盟の加盟団体数は14000団体を超え,学校部活動を始め,生涯教育としても非常に数多くの人々によって愛好されている。また様々な楽譜や音源・映像等の出版物も流布されて多彩な活動が展開されている。しかしながら,演奏のためのメソードにおいて,多くの教則本が出されてはいるがそのほとんどは,観念的でイメージを優先した著述のものばかりで,必ずしもプリンシプルとして根源的な論述まで至っているものは,残念ながら,無い。中には科学的な根拠の不確かな「言い伝え」にも似たものも多く,学術的科学的根拠に基づいたものを見つけるのが難しいという現状である。本研究は,そういった楽器演奏のためのメソード,特に金管楽器の技術的根本に目を当て,演奏者の主観やイメージといったものが介在する以前の,どんな演奏者にとっても普遍的で重要な基本的な諸要素〜発音原理や呼吸法〜について論じるものである。
著者
佐伯 孝夫[作詞]
出版者
ビクター
巻号頁・発行日
1943-01
著者
小澤 一仁 前川 寛和 石渡 明
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.119, no.Supplement, pp.S134-S153, 2013-08-15 (Released:2014-03-21)
参考文献数
79
被引用文献数
3 6

南部北上山地は,シルル紀の酸性火山岩類を含む地層が分布し,シルル紀前期の花崗岩も確認されており,大陸性の地殻がシルル紀-デボン紀に存在していたと考えられる古い地塊である.この地塊の北縁と西縁には,オルドビス紀の島弧オフィオライト(早池峰(はやちね)・宮守(みやもり)オフィオライト)とオルドビス紀~デボン紀の間に形成された高圧変成岩類(母体(もたい)変成岩類)が分布し,これらは,オルドビス紀以降のおよそ数千万年で成熟した島弧地殻へと進化していった沈み込み帯の発達過程を記録している.本見学旅行では,早池峰・宮守オフィオライトのマントルセクションとほぼ同時~1億年後の沈み込み帯である母体変成岩を対象として,これまでの地質学・岩石学・地球化学的研究に基づいてオルドビス紀の島弧を復元し,当時の島弧マントルの進化過程について議論したい.