著者
奥田 智喜 Tomoyoshi Okuda
雑誌
総合政策研究 (ISSN:1341996X)
巻号頁・発行日
no.40, pp.159-160, 2012-04-30
著者
内田 智也 大久保 吏司 古川 裕之 松本 晋太朗 小松 稔 野田 優希 石田 美弥 佃 美智留 土定 寛幸 藤田 健司
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.75-81, 2018 (Released:2018-04-20)
参考文献数
22
被引用文献数
2

【目的】投球中の肩関節ストレスの軽減には,良好な下肢関節動作が重要となる。そこで,本研究はFoot Contact(以下,FC)以降のステップ脚膝・股関節の力学的仕事量と肩関節トルクの関係について検討した。【方法】中学生の投手31 名の投球動作解析で求められた肩関節内旋トルクについて,その平均から1/2SD を超えて低い群(以下,LG)10 名と1/2 を超えて高い群(HG)10 名の2 群に分け,ステップ脚膝・股関節の力学的仕事量(正・負仕事)を群間比較した。【結果】FC から肩関節最大外旋位(MER)におけるLG の膝関節屈曲-伸展の負仕事量が有意に低値を示した。【結論】ステップ脚膝関節伸展筋力は良好な投球動作獲得に寄与し,FC 以降の膝関節の固定および下肢関節からの力学的エネルギーを向上させることは肩関節ストレスを軽減させると考えられた。
著者
青柳 圭祐 清藤 麻子 菅原 浩二 大林 雄次 五味 智 伊藤 佳夫
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第47回, no.ハードウェア, pp.5-6, 1993-09-27

rj406[1]は限られたチップ面積で可能な限り大きな処理能力を実現することを目指して設計された32ビットRISCマイクロプロセッサである。本稿ではrj406の命令セット、割り込み機能、コプロセッサ命令について述べ、シミュレーションの結果をもとに評価する。
著者
金子 幸裕
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.102-108, 2013-05-01 (Released:2013-06-03)
参考文献数
39
被引用文献数
1 1

低出生体重(LBW)は心臓手術成績を悪化させる因子である.わが国では先天性心疾患(CHD)を有する児の1/3 がLBW であり,LBW 児の治療成績はCHD 全体の治療成績を左右する.LBW 児の心疾患に対して,正常出生体重児と同じ時期に手術を施行するのが望ましいとされているが,実際には半数程度の例で手術を遅らせる判断がなされており,手術を遅らせない症例と成績はほぼ変らない.姑息術より心内修復術が望ましいとされているが,超低体重児や合併疾患を有する例ではハイブリッド手術や経皮的カテーテル介入なども行われている.LBW が治療成績に与える影響は心疾患の種類によって異なるので,体重,心疾患の種類,合併疾患などに応じて症例ごとに治療方針を立てることが望ましい.
著者
木塚 朝博 浅見 高明 谷井 克則
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム (ISSN:13487116)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.173-183, 1994-08-10 (Released:2016-12-05)
参考文献数
25

Previous studies showed that three reflex EMG responses were recorded from the stretched muscle, when the wrist flexors were stretched by sudden angular displacements of the wrist joint in the extension direction. The first response, with short latency is called the M1 component and is thought to be a monosynaptic spinal reflex. The second and third responses, with long latency, are labelled M2 and M3 components and are assumed to be transcortical reflexes. It has been reported, however, that the M3 component is not reliable in occurrence. The amplitudes of reflex components are known to be modified by voluntary movement. Premotor time (PMT) in the reaction time movement is not studied in relation to aspects of the reflex EMG responses including long latency components. The present study was performed in order to investigate whether the PMT under conditions of stretch stimulus (SS-PMT) differs from that under conditions of light stimulus (LS-PMT) and touch stimulus (TS-PMT), and how the PMTs are related to the aspects of the appearance of the reflex EMG responses. Nineteen healthy males, ranging in age from 21 to 28, participated in this study. The DC torque motor was used to evoke the reflex EMG activities of the wrist flexors. The results are summarized as follows: 1) In all subjects SS-PMT was significantly shorter than TS- and LS-PMT. The results suggest that input from the muscle spindle to cerebral cortex shortened the PMT. 2) The short and long latency reflex components appeared preceding the voluntary EMG burst. The latency of M1, M2, and M3 was 19.1ms, 49.2ms, and 71.7ms, respectively. 3) The subjects were classified into three groups (A, B, C) according to the presence or absence of reflex components (M1, M2, M3) and these EMG amplitudes. SS-, TS- and LS-PMTs in group A were significantly shorter than the PMTs in group B, and each PMT in group B was significantly shorter than in the group C. 4) In group A the amplitude of M2 was significantly higher than the M1 amplitude. The M3 component was not identified, since the M2 component was followed by voluntary EMG burst. In group B the M2 amplitude was significantly higher than the M1, and the M3 amplitude appearing before the voluntary EMG burst was significantly smaller than the M2 amplitude. In group C the amplitudes of M1, M2, and M3 were larger in that order. These results suggest that the PMT is related to the presence or absence of the long latency components and those amplitudes.
著者
成瀬 厚
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.3-28, 2020

<p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;本稿は,英語圏におけるオリンピック研究を整理したものである.本稿で取り上げたオリンピック研究の多くは,上位分野であるメガ・イベント研究に位置づけることができ,学際的な観光研究から発したこの分野には都市社会学や地理学の貢献が大きかった.オリンピックという複雑で大規模なイベントの性質上,本稿では多様な研究分野を扱っているが,オリンピック研究における都市研究を含む広義の地理学的な主題を探求するのが本稿の目的である. <BR>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;IIIでは初期のイベント研究における社会的インパクトの分類―経済,観光,物理的,社会・文化的,心理的,政治的―に従って,多様な分野におけるオリンピック研究を概観した.IVでは地理学的主題をもった研究に焦点を合わせ,オリンピック都市,グローバル都市間競争,都市(再)開発,レガシー・環境・持続可能性,市民権と住民参加という分類で整理した. <BR>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;地理学者によるオリンピック研究は2000年前後から,過去の開催都市を概観する形で,それ以降盛り上がりをみせる地理的主題を持つオリンピック研究を牽引したといえる.当初から国際的なイベントであった近代オリンピック競技大会は,今日において大会招致がグローバル都市間競争の一端となり,大会関連開発は新自由主義的な都市政策の下で官民連携によって行われている.さまざまな問題を抱え,オリンピックはどこに向かうのだろうか.</p>
著者
二瓶 亙 亀村 朋子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.52-75, 2018

近年、視聴率が高い作品が多い連続テレビ小説(通称、朝ドラ)について、NHK放送文化研究所朝ドラ研究プロジェクトでは、作品ごとに視聴者調査を行って朝ドラの視聴実態と好調要因を探る研究を行っている。今回の『ひよっこ』調査は『まれ』『あさが来た』『とと姉ちゃん』『べっぴんさん』に続く5作品目の調査である。作品に対する満足度の平均は85%で、『とと姉ちゃん』と同レベル。「丁寧な登場人物の描写」に多くの視聴者が共感し、「善人しか出てこないこと」で安心してドラマを楽しんだという人が多かった。また、登場人物それぞれが幸せな結末を迎えるハッピーエンドだったことが、終盤の高評価につながった。一方で、4作ぶりのモデルのいない作品であり結末が予想できないこと、あるいは会話劇主体で話の進行が遅かったことから、視聴者が、全体のストーリー展開を楽しむ長期的視点ではなく、日々のエピソードや登場人物を楽しむ短期的視点で見るほうが『ひよっこ』をより楽しむことができたと推察された。本来は長期的視点でドラマを見る人も、『ひよっこ』の作風に合わせて見方を変え、時には短期的視点でドラマを楽しんでいたことも分かった。
著者
徳永 達己
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.621-626, 2013-10-25 (Released:2013-10-25)
参考文献数
7

Labour Based Technology (LBT:労働力を主体とする施工技術)は、労働力が豊富で、インフラ整備が必要とされる農村などの地方において適用されている施工法である。特にインフラ整備のみならず、コミュニティ開発の側面からも有効な施工方法であることから、主に開発途上国において関心を集めている。しかし、これら既往研究ではプロジェクト管理者の立場から見た実施運用、および地域住民によるインフラ整備に対する需要の観点からLBTの適用可能性について深く検証した考察はない。本研究は、LBTのより効果的な導入を図るため、地方道路管理者および地域住民を対象として潜在的なLBTの需要を検証するとともにLBTを導入するうえで最も適切な時期(季節)について特定するものである。
著者
芳賀 麻衣子 西村 ひとみ 関 洋子 新野 靖
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.16, pp.133, 2004

【まえがき】 にがりは、最近の健康ブームで販売量を伸ばしており、豆腐製造のみならず、炊飯、調理にも用いられ、希釈されたものは飲料として販売されている。にがりは製塩において塩を採り切った残りの液であり、MgやNaなどの塩化物を主とした高塩分濃度溶液であるが、その品質規格はなく、成分表示がされていないものも多く、品質の実態は明らかでない。そこで、市販のにがり商品を収集して品質の実態調査を行った。<br>【試験方法】 にがり13点について、主成分(Cl,SO<sub>4</sub>,Ca,Mg,K)を「塩試験方法」((財)塩事業センター)により定量した。微量成分はPO<sub>4</sub>,As,Co,Cd,Cu,Hg,Mn,Mo,Ni,Pb,Ti,V,Znを対象とし、PO<sub>4</sub>はモリブデンブルー法、As,Hgは水素化物/ICP-AES法、その他の金属元素はキレートディスク濃縮/ICP-AES法で定量した。<br>【結果】にがりには、海水をそのまま濃縮したにがりと海水をイオン交換膜で濃縮したにがりがあるが、両者の間にはCa濃度に大きな差があり、後者のにがり商品に高濃度で含まれていた。各商品の全塩分濃度は26.7%から32.3%と大きな差はないが、その中のMg濃度は1.0%から5.0%、NaCl濃度は2.4%から21.9%と商品によって濃縮度がまちまちであり、同量使用した場合、調理品の仕上がりや味覚などへの影響が考えられた。微量成分では、Zn,Cu,Ni,Fe,およびMnを多く含む商品もあったが、海水からにがりへの濃縮倍率から、海水溶存成分以外が混入していると考えられた。その他、Moが海水の濃縮度に比例して含まれていた。また、海洋深層水利用商品について、その他の商品との品質差は見られなかった。
著者
長谷川 正哉 金井 秀作 尾前 千寿 大塚 彰 沖 貞明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.A1031, 2005

【はじめに】<BR>足底圧(以下COP)や足底圧軌跡(以下COP軌跡)に関する研究は計測機器の発展により容易に可能になった.中村らによると裸足歩行では立脚期におけるCOPは踵部中央から出発して足底のやや外側に片寄って小趾球に達し,ここから内側に向かって母趾球を通り母趾に抜けるとされている.さらにCOPやCOP軌跡は杖の使用や,靴の着用により変化する事が多く報告されている.しかし,健常人の裸足歩行におけるCOPの研究においても,正常パターンから逸脱したものを散見する.そこで本研究では,健常人のCOPに影響を及ぼす因子を検討する.第一報として足趾機能および歩行速度がCOP,特に母趾荷重量に及ぼす影響を報告する.<BR>【方法】<BR>対象は足趾や足部に既往の無い健常成人12名とした.足趾機能の評価には足趾によるジャンケン(グー=全趾屈曲・チョキ=母趾と他趾の独立した運動・パー=外転)を指標として用い,全て可能なものをN群,一つでも不可能なものをP群とした.10mの歩行路を通常速・高速にて歩行させ,Nitta社製F-scanを使用しCOPの計測を行った.母趾部分のCOPピーク値を計測し,歩行速度およびN群P群における比較を行った.また歩行中の重複歩距離,歩行速度,歩数をデジタルビデオカメラにより計測し,各群間における比較を行った。<BR>【結果】<BR>N群における母趾荷重量は通常速時9.69±4.78kgf,高速時15.4±7.64kgfとなり,P群における母趾荷重量は通常速時10.07±3.67kgf,高速時11.53±4.71kgfとなった.歩行速度の上昇に伴いN群における母趾荷重量に有意な増加を認めた.P群における有意差は認められなかった.N群およびP群における比較では有意差は見られなかったが,高速時における母趾荷重量に増加傾向を認めた.重複歩距離は通常速時に比べN群では平均130%,P群では平均107%増加した.歩数および歩行速度における有意差は認められなかった.<BR>【考察・まとめ】<BR>P群では歩行速度が増加しても母趾荷重量はわずかな増加しか認められなかったが,N群では顕著な増加が認められた.母趾荷重量のピーク値はいずれも踵離地以降に計測されており,母趾荷重が蹴り出しに影響を及ぼす可能性が示唆された.加えて,母趾荷重量の増減が重複歩距離に影響を及ぼす可能性が考えられた.牧川らは蹴り出し時の母趾の重要性を指摘しており,今回の実験においても同様の結果が得られたと考えられる.N群では母趾荷重量に増加傾向を認めており,その結果大幅な重複歩距離の延長につながったと考えられる.一方,P群では蹴り出し期の母趾荷重が不十分な為に,強い蹴り出しが行えずN群より重複歩距離の伸び率が少ないと考えられた.足趾機能が踏み返し期の母趾荷重量を通して重複歩距離に影響を与えるというメカニズムが考えられた.
著者
地神 裕史 椿 淳裕 佐藤 成登志 遠藤 直人
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C4P2231, 2010

【目的】<BR> 近年、モータリゼーションの発展やライフスタイルの変化により歩行の機会が減少し、そのことが様々な骨関節系のトラブルを引き起こしている。外反母趾もその一つで、歩行機会の減少やファッションの欧米化に伴う履物の変化から、足趾や足底筋膜の機能不全、縦・横アーチの低下を引き起こし、二次的に生じるといわれている。医療保険の適応となる病的な外反母趾の診断基準には合致しない、いわゆる外反母趾予備軍は本邦において老若男女問わず増加傾向にあるといわれており、様々な分野でクローズアップされている。<BR> 正常歩行における推進力は足関節や前足部が地面を蹴り出すことによって得られるが、外反母趾患者やその予備軍の蹴り出しは、母趾の先端まで使えず母指球に多大なストレスを与えている場合が多く、そのことが更なる痛みを助長していると推察される。<BR> よって今回、歩行時に痛みを有さない健常者の足圧分布を測定し、母趾や母趾球に加わる圧変化と足部の形態学的異常との関係を明らかにすることを目的に本研究を行った。<BR>【方法】<BR>対象は歩行時に下肢に痛みを有さない健常者12名(25~64歳、平均年齢44.8±16.4歳)とした。方法は、足部の形態学的評価として(1)足長、(2)足囲、(3)アーチ高、(4)アーチ長、(5)アーチ高率(アーチ高/足長×100)、(6)外反母趾角度(Hallux Valgus Angle:HVA)、(7)第1中足骨の縦軸線と第2中足骨の縦軸線の角度(M1M2角)、を測定した。歩行能力の評価としてTimed up and go testを実施した。また、歩行時の足圧分布を足圧分布測定機器(ニッタ株式会社製)にて測定した。歩行時の立脚後期の蹴り出しの際に前足部に加わる足圧分布を母趾球エリア、母趾エリア、第2~5趾エリア、それ以外、の4分割にし、各々のエリアに加わる圧変化と形態学異常との関係を検討した。測定はすべて右側で統一し、歩行条件は最大速歩とした。<BR>【説明と同意】<BR>対象者への説明と同意は、書面と口頭にて研究概要と目的を説明し、同意書に署名をいただいた。なお、本研究は新潟医療福祉大学の倫理審査委員会の承認を経て行った。<BR>【結果】<BR> アーチ高は平均3.4±0.5cm、外反母趾の程度を判断するHVAは平均17.1±4.6°、M1M2角は平均13.8±1.8°であった。立脚後期の蹴り出し時に前足部にかかる圧の総和を100%としたときの、各エリアにおける圧分布は、母趾球エリアで34.2±14.2%、母趾エリアで16.2±5.3%、第2~5趾エリアで9.6±6.2%、それ以外のエリアで40.0±13.7%であった。蹴り出しの際の母趾球と母趾に加わる圧の比率を母趾球の圧/母趾の圧(母趾球/母趾比)で表すと平均で2.2±1.0であった。形態学的にはHVAが15°以下、M1M2角が10°以下であれば正常範囲と言われているが、今回HVA15°以上は58.3%、M1M2角が10°以上が91.7%であった。HVA15°以上の7名を外反母趾群、15°未満の5名を正常群と分けた場合、外反母趾群の母趾球/母趾比は2.8±0.7あり、正常群の1.3±0.7と比較し有意に増大していた(p<0.05)。<BR>【考察】<BR> 歩行時に下肢に痛みを有さない健常者を対象に計測を行ったが、半数以上の対象者がHVA15°以上で形態学的な異常が認められた。様々な先行研究で近年無痛性の外反母趾が増加していることを報告しているが、本結果はこれらの先行研究を支持する結果となった。<BR> 今回、蹴り出しの際の母趾球と母趾の使用割合を明らかにする為に母趾球/母趾比を算出したが、この値は外反母趾群が有意に増大していた。この結果は歩行時の推進力を得るために必要不可欠な蹴り出しが、外反母趾群では母趾の先端ではなく、母趾球で生み出されていることを意味している。そもそも外反母趾は第1中足趾節関節で母趾が外反変形した状態と定義されるが、この状態は第1中足骨の内反を伴うことが多いとされる。このような形態学的な変化は長・短母趾屈筋の収縮時の作用方向を変化させてしまうため、蹴り出しの際に母趾の先端で蹴り出すことが難しくなると考える。<BR>【理学療法研究としての意義】<BR>今回用いた母趾球/母趾比は、歩行時の蹴り出しをどの部位で行っているか評価し、特定の部位に過剰なストレスが加わっていないか評価する上で有用な指標であると考える。また、このような指標を用いて歩行解析を行うことで二次的な外反母趾変形による痛みの出現や、変形の進行を防止する上で非常に重要であると考える。
著者
山田 結香子 地神 裕史
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.H4P1229, 2010

【目的】本研究の目的は,立位及び歩行時における足圧分布を測定し,外反母趾変形による足部及び足趾へかかる圧を明らかにすることで,変形の増悪や有痛性外反母趾を引き起こす要因となりうるか検討することである.<BR>【方法】対象は日常生活における歩行に影響を及ぼす疾患のない健常成人女性18名とした.年齢21.6±0.6歳,身長160.1±3.5cm,体重52.9±6.2kg(平均値±標準偏差)であった.足部の形態学的評価として足長,第1趾側角度,アーチ高,アーチ高率,Leg-heel angle(以下LHA)を測定した.今回,X線計測に最も近い外反母趾角測定法とされている第1趾側角度において15°の基準を設け,15°以上を外反母趾群,15°未満を正常群として2群に分配した.足圧分布測定機器(BIG-MAT1/4,Nitta株式会社製)を使用し,静止立位を10秒間測定後,10m歩行路上にセンサーシートを固定し,歩行時に踏むように指示した.数回練習を行い,自然歩行にて3回測定した.前足部に加わる足圧分布を母趾球エリア,母趾エリア,第2~5趾エリア,その他のエリア,に4分割した.更に足趾を除いた部分を均等に3分割し,中間にあたる部分を土踏まずエリアとして,計5エリアに分割した.解析項目は,母趾に対する母趾球の圧を調べるために,それぞれに加わる圧の比率を母趾球/母趾比として算出した.歩行時における解析区画は,蹴り出し時に相当するheel off~toe off(以下HO~TO)とした.なお,各エリアにかかる荷重値を被験者の体重で除して正規化し,各エリアで得られたデータはそれぞれ加算平均した.<BR>【説明と同意】全被験者に対し,本研究の目的及び内容について事前に説明し,同意を得た.<BR>【結果】形態学的評価の結果,足長を除く,第1趾側角度,アーチ高,アーチ高率,LHAの項目で群間において有意差がみられた(p<0.01).母趾球と母趾に加わる圧の比率を母趾球の圧/母趾の圧(母趾球/母趾比)で算出した.静止立位及び歩行共に群間に有意差は得られなかった.しかし,各群でそれぞれ母趾圧に対する母趾球圧の大きさを検討したところ,静止立位では両群において,歩行時では外反母趾群において,母趾に対する母趾球の圧が有意に大きな値であった(p<0.01). <BR>【考察】静止立位及び,歩行における蹴り出し(HO~TO)の際の母趾と母趾球の使用割合を母趾球/母趾比として算出し,群間での比較と母趾圧に対する母趾球圧の割合を検討した.静止立位における体重の全体量は,まず距腿関節で距骨にかかり,そこからアーチの支持点方向へと3箇所に分散されていく.静止立位では足趾への荷重量は小さく,相対的に母趾球の荷重量が大きくなったことが考えられる.変形の増悪や有痛性外反母趾を引き起こす要因となり得る程の圧が加わっているとは考えにくく,外反母趾変形が静止立位時に足趾や足部に及ぼす影響は極めて小さいことが推察された.歩行における蹴り出し時,外反母趾群では母趾球にかかる圧が母趾にかかる圧に対し有意に大きい結果となった.これは外反母趾変形を有する足部では,歩行における蹴り出しの際に母趾球により多くの圧が加わることを示唆している.外反母趾変形では,形態学的変化に伴う母趾作動筋の位置変化により,母趾の機能不全が生じるといわれており,加えて,外反母趾変形を有する者の歩行では,母趾での蹴り出しが消失するとの報告もある.以上のことから,外反母趾変形を有する者は母趾球で踏み切っていると考えられる.この母趾球部での離床が歩行時推進期の度に生じるということは,母趾球部へ日常的に反復的なストレスが加わることになる.外反母趾の疼痛発生のメカニズムは,形態的異常の生じた部分と靴等との外部環境の間に過剰な負荷や異常な圧上昇が生じることによる.このことから,今回本研究で得られた,外反母趾変形を有する者の蹴り出しの際にみられる母趾球圧上昇は,更なる変形の増悪やそれに伴う有痛性外反母趾を引き起こす要因に成り得ることを示唆していると考える.<BR>【理学療法学研究としての意義】本研究において,第1趾側角度が15°以上の者は,18人中7人みられたが,外反母趾を自覚し何らかの対策を講じている者は1人もみられなかった.このように,外反母趾は身近な問題でありながら,軽度で無痛性の場合,放置されがちである.有痛性外反母趾成因の一つとして,外反母趾変形を有する足部での歩行を検討していくことは,二次的な疼痛の出現や,更なる変形の進行を防ぐ上で非常に重要であると考える.<BR>
著者
二瓶 亙 亀村 朋子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.2-21, 2018

近年高視聴率が続く連続テレビ小説(通称、朝ドラ)について、NHK放送文化研究所朝ドラ研究プロジェクトでは、作品ごとの視聴者調査から朝ドラの視聴実態と好調要因を探る研究を継続している。今回の『わろてんか』は6作品目。大阪で寄席を経営する主人公を中心とした群像劇で、人生には「笑い」が必要であるという作品テーマに共感した視聴者が多い。作品に対する満足度では、過半数の56%の人が[まあ満足]という評価を選択したため、この多数の[まあ満足]派が、結果的に今作の評価を支えたと考えて、その人たちの評価に注目して分析した。明るさに代表される[作品の雰囲気]や[ヒロインの周囲の人物]への評価が高く、実在の人物をモチーフとしていることから「困難な場面も乗り切れるだろう」という期待や安心感を持って最後まで見た人が多かった。また「気楽に見られる作品であったこと」も、最後まで視聴を離脱させない大きな力となった。朝ドラを比較的よく見た人では、朝ドラの戦時描写を見たくない気持ちはあるが、描写の主旨への理解度は高く、史実に沿って戦争を描くことはやむを得ないという人が9割と多かった。長期視点派50%、中間派23%、短期視点派27%。長期視点派は『わろてんか』を長期視点的作品として楽しみ、短期視点派は短期視点的作品として楽しんだ。
著者
小谷 真吾
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.109, pp.293-319, 2004-03

本研究では,家族内の子供のジェンダーについて,パプアニューギニアにおける女児の高死亡率に関する事例研究を行なうことによって,特に兄弟姉妹関係に焦点を当てながらその動態を追求する。現在,近代家族の構築性についての認識は近年の社会科学において広く共有され始めているが,家族内のジェンダーに関する分析において,多様な社会形態における子供のジェンダーに関する研究は,そこに多くの問題群が存在するにも関わらず,ほとんど行なわれてこなかった。その子供のジェンダーが関わっている問題の一つとして,低年齢層における「女児死亡」の問題がある。この問題は,男児選好についての研究をテーマとして追求されてきているが,社会の構築性及び多様性に対する視点が欠落している。筆者は,1998年11月から1999年11月までの約1年間,パプアニューギニア高地辺縁部に居住するカルリと呼ばれる言語集団において各種の調査を行ない,当該地域において「女児死亡」の問題が存在していることを明らかにし,その人口学的動態を分析した。その上で,参与観察に基づいた分析を行なうことによって,「女児死亡」は,親による差別によって起こるのではなく,「姉」が「弟」の世話をするという,当該地域に特有の兄弟姉妹関係によって起こっている可能性が高いことを示した。そしてその構築性について,親が多く死亡しているという人口構造が,兄弟姉妹を軸とする社会構造の背景となり,その結果「姉」の主体的な意思決定が導かれるという動態を明らかにした。本研究の結果に基づけば,親子関係のみに着目して「女児死亡」の問題,ひいては家族内のジェンダーを論じることは,問題を正しく理解できないだけではなく,解決の方法を探る上での障害になりかねないと考えられるのである。In this paper, I investigate the dynamics of the gender of children within the family, focusing on sibling relationship by analysis of the high mortality rate of female children in Papua New Guinea. Presently, while awareness of the constructiveness of the modern family has been shared among social sciences, the gender of children within the family construction in diverse social condition is seldom studied, in spite of a lot of relative problems. High mortality rate of female children is one of the relative problems. While this problem has been analyzed in biomedical paradigm focusing on parents "son preference", such focus overlooks the constructiveness of family or gender. I undertook various kinds of surveys in Kaluli, one of the language groups living in Highlands Fringe of Papua New Guinea, from November 1998 to November 1999. At first, by analysis of the dynamics of demographic feature, I found the high mortality rate of female children. Secondly, by participant observation, mechanism of the high mortality is revealed, in which a unique sibling relationship in this population, that "elder sister" must take care of "younger brother", will cause death of the "sister". Thirdly, I clarify the dynamics of the constructiveness, in which the social construction based on the sibling relationship constructed by the demographic condition that lacks of "parents" generation leads the autonomous decision making of the "sister". The results of this study object former studies, that discuss high mortality of female children or gender relationship within family focusing merely on the relationship between parents and children. Such studies are not able to understand the problems and obstruct the resolution of problems.