著者
檜高 育宏 河内 正治
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.126-128, 2004-04-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
6

右前胸部痛を主訴とし, 肋間神経痛と診断された76歳男性の胃潰瘍の症例を経験した. 右肺上葉切除術と右肋間神経痛の既往があり, 肋間神経痛の診断でペインクリニックに紹介された. 痛みの性状は締め付けられるような痛みで, 夜間に多く, 2~8時間持続する. また非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) の内服で痛みは一時的に減弱し, アロディニアは認めなかった. 不眠と食欲不振の訴えもあり, 体重減少を認めたため, 持続硬膜外鎮痛を行い, 胸部痛は消失したが食欲は戻らなかった. さらに腹痛が出現したため, 上部消化管内視鏡検査を受け巨大胃潰瘍が発見された. 内科に転科し治療を受け, 胸部痛, 腹痛ともに消失し食欲も回復した. 胸痛のみを主訴とする胃潰瘍はまれであるが, NSAIDs服用例では念頭におくべき合併症である.
著者
宮本 淳子 増田 靖
出版者
日本コミュニケーション学会
雑誌
日本コミュニケーション研究 (ISSN:21887721)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.5-27, 2019-11-30 (Released:2019-12-03)
参考文献数
52

This paper presents characteristics of “interactive” communication to promote innovation. In recent years, many researchers have shown interest in “interactive” communication in science and technology communities as a means of promoting innovation. However, collaboration and “interactive” communication do not guarantee success, which is dependent on the quality of the communication and the methods employed. This paper investigates the development of successful collaboration in the field of innovative technology. We examined the specific case of removing old paint using laser beams to elucidate an “interactive” communication method that promotes innovation. We conducted three in-depth interviews with key members of the development team and a group interview involving all participants and analyzed and interpreted the data using the framework of “Katari=Antenarrative” theory. As a result, the following factors were identified as characteristics of “interactive” communication promoting innovation: “chains of awareness and meaning transformation in a ternary relationship,” “Katari to create empathy,” “mutual responsiveness,” and “listener’s flexibility.” Furthermore, we brought up “Katari-tsutae” as a new concept of “Katari=Antenarrative” theory. In conclusion, we suggest that innovation will be promoted by recognizing and practicing these four characteristics of “interactive” communication when working on technology development.
著者
千木 容
出版者
石川県林業試験場
雑誌
石川県林業試験場研究報告 (ISSN:03888150)
巻号頁・発行日
no.37, pp.9-12, 2005-03

海岸クロマツ林が比較的健全に保たれている金沢市と加賀市の林分について土壌調査を行ったところ、両調査地とも、土壌の理学性から見ると砂丘未熟土であったが、金沢市の林分は、土壌の化学性から見ると黄色系弱乾性褐色森林土の特徴を呈していた。一方、加賀市調査地は、砂丘未熟土の特徴が、強く残っており、その傾向は上木P1が大きかった。両調査地ともかつては、砂が移動する砂丘地であったので、金沢市調査地は、加賀市調査地よりも土壌の化学性が変化したものと考えられる。
著者
瀧川 裕貴
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.215-223, 2011 (Released:2012-01-31)
参考文献数
17
被引用文献数
2

社会階層研究における理論の不在が指摘されるようになってすでに久しい.産業化の進展に伴う階級間の機会格差の消滅を予言した近代化理論と逆に階級対立の激化を予言したマルクス主義は,ともに決定的に誤っていたことが明らかになった(原・盛山 1999).その後に提唱されたいわゆるFJH 仮説は,産業化諸国における社会移動の「機会格差」の質的パタンの同一性を主張するもので,確かに実証データとの適合度は高い(Featherman et al. 1975).だがこの仮説は,なぜ産業化が進展した後でも階級間の「機会格差」が残り続けるのかを,理論的に説明するものではない. もう少し的を絞った問題としては教育,特に高等教育への進学における社会階層格差の存続をいかにして説明するべきかという問題がある.もちろん,これは社会階層全般における持続的不平等の問題と密接に関連している.高等教育を媒介として階層間の機会格差が持続するからである.さて,高等教育における持続的不平等とは,産業化の進展に伴い教育機会は全般的に大きく拡大したにもかかわらず,階層間の進学率の格差が残り続ける現象をいう.このような現象は,いくつかの例外を除き産業化を達成した諸国において共通に観察されている. 高等教育における持続的不平等の問題については,近年になっていくつかの注目すべき理論的考察が提出されてきている.なかでもR.ブリーンとJ.ゴールドソープが提唱した相対的リスク回避モデルは,大きな注目を集め,多くの実証的追試を産んだ3), 4).にもかかわらず彼らの相対的リスク回避モデルの定式化は不必要に煩雑であり,かつ多くの点で理論的な問いに答えるためには不十分であることは否めない.そこで,本稿ではブリーンとゴールドソープのモデルに対して筆者が与えた新たな定式化を紹介し,このモデルの意義と限界について説明を試みたい.
著者
伊井 公一 山中 健行 鈴木 一弘 廣瀬 健人 神野 佑輔 山田 和政
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.763-767, 2017 (Released:2017-12-20)
参考文献数
27
被引用文献数
2 1

〔目的〕TUGテストにて転倒リスクが低いと判断される高齢者の転倒要因を明らかにし,転倒予防について検討した.〔対象と方法〕TUGテストが13.5秒以内の高齢女性29人を,非転倒群と転倒群に分類した.歩行課題と起立-歩行課題における定常歩行に至る歩数,起立-歩行課題における起立動作時の前方重心移動速度,身体運動機能,転倒恐怖心を調査し,2群間で比較した.〔結果〕非転倒群(19人)と比較して転倒群(10人)は,起立-歩行課題で定常歩行に至る歩数が1歩多く,前方重心移動速度は有意に遅く,また転倒恐怖心のみ有意に低かった.〔結語〕転倒経験のある転倒低リスク高齢者の転倒要因は転倒恐怖心であり,転倒予防として動作方法の工夫もそのひとつの手段であると考えられた.
著者
佐藤 三佳子 岩井 浩二 鬼塚 英一郎 高畑 能久 森松 文毅 佐藤 雄二
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.159-163, 2011-04-15 (Released:2011-05-31)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

ブタ大動脈を原料としてエラスチン加水分解ペプチド(エラスチンペプチド)を調製し,その摂取がヒトの皮膚弾力性にもたらす影響について検討した.はじめに,エラスチンペプチド経口摂取後のヒト血液中のアミノ酸濃度の変化を観察した.成人男性5名を被験者として,12時間絶食後にエラスチンペプチドを摂取させた.その結果,エラスチンペプチド経口摂取後に血中の総アミノ酸量が増加し,増加したアミノ酸の組成は,摂取したエラスチンペプチドのアミノ酸組成に類似していた.また,ハイドロキシプロリンおよびアルギニンがそれぞれペプチド態として血中に検出され,エラスチンペプチドの少なくとも一部はペプチド態として血中に移行していると考えられた.次に,39名の中高齢者を3群にわけ1日量0, 100, 200mgのエラスチンペプチドを8週間継続摂取させ皮膚弾力性を測定した.100mg, 200mg摂取群において摂取開始8週目に摂取前と比較して有意に皮膚弾力性が上昇した.またその変化率は0mgと比較して200mg群で有意に高値を示した.以上より,エラスチンペプチドの経口摂取はヒトの皮膚弾力性を向上させることが示唆された.
著者
原田 憲一
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.117-126, 1979-02-15

Ⅰ.まえおき 老人が妄想的になることは稀でない。しかし老人の妄想はあまり臨床医の注目をひかない。それは老人では一般に,ましてや器質性痴呆や記憶障害を多少とも示す老人ではとくに,その妄想のために実際上の処遇に困ることは少ないし,若年者の妄想の場合のように老人はその妄想をふりかざしてわれわれに立ち向ってくることが少ないからであろう。さらに,妄想のような産出性心理現象が,器質性精神症状によって形を崩されるため,精神病理学的にも関心が薄められる。いいかえれば,老人一般,とくに老人の痴呆が1つの生物学的欠陥として心理学的関心から遠ざけられる時,一緒に,そこにみられる妄想現象も関心からはずされてしまうのである。 老人の妄想を論じる場合,当然疾病学的な問題がある。妄想を伴った器質性精神病か,年をとった分裂病か,老人の妄想反応か,あるいはパラノイアやパラフレニーかなど。また器質性精神病にしても,それが老年痴呆か,動脈硬化性痴呆か,などの問題がある。しかし,ここではこの観点からの分析は敢えて行なわない。器質性痴呆のあるなし,記憶障害のあるなしに関係なく,精神障害をもって入院を余儀なくされている老人を私が臨床的に診察している過程で,私の注意を惹いた老人の妄想についての2つの側面,特徴について述べる。
著者
石井 寛崇 井上 敏文
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
雑誌
Synthesiology (ISSN:18826229)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.84-91, 2019 (Released:2019-10-30)
参考文献数
3

不凍タンパク質は氷結晶に吸着し、その成長を抑制する機能を有するユニークなタンパク質である。我々は氷結晶の粗大が冷凍食品の品質低下の原因となることから不凍タンパク質を応用することを目指し、大量精製法の開発と用途開発を進めていった。しかし、効果が期待できる冷凍食品が限定されることに加え、製造コストの課題が残った。その後、方針を変更し、社外への市場調査を実施したところ、新たな応用分野への広がりの可能性が見えてきた。利用者の要望に対応した製品の開発を進め、2016年に研究用不凍タンパク質試薬としての販売を開始した。現在、その製造販売を行いながら、各分野の課題解決に向けた取り組みを進めている。