著者
石田 裕子 安部倉 完 竹門 康弘
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1-14, 2005-08-08 (Released:2009-01-19)
参考文献数
43
被引用文献数
3 4

城北ワンド群に生息するトウヨシノボリ縞鰭型について,生息場所スケール(ワンド間比較)と微生息場所スケール(底質型間比較)での分布様式と摂餌生態を調査した.縞鰭型は,本川では採集されず,ワンド内でのみ生息が確認された.とくに,年間を通して小型で底質の小さい閉鎖的なワンドに多く生息していた.微生息場所スケールでは,泥や落葉が多い底質に多く生息していた.充満度(体重に対する消化管内容物湿重量の割合)は5月に高く,とくに,5月の0歳魚で高かった.消化管内容物には,止水環境に生息するケンミジンコ科やシカクミジンコ属などの動物プランクトンや,チビミズムシやユスリカ類などのベントスが多く出現した.これらの結果は,トウヨシノボリ縞鰭型の生活様式が,ワンドの止水環境に適応していることを示している.いっぽう,繁殖期と稚魚期には新設ワンドに多く生息しており,繁殖期の成魚は長径16∼21cmの大きな石の下面に産卵していた.したがって,トウヨシノボリ縞鰭型の生息場所には,餌場としての泥や落葉が堆積した止水域の生息場所と,産卵場としての侵食が卓越した石底のある生息場所が必要なことが示唆された.また,淀川大堰の運用が淀川の環境とヨシノボリ類の個体群に与える影響を考察した.
著者
竹塚東子 著
出版者
岩戸屋
巻号頁・発行日
vol.前編, 1806
著者
佐藤 悠人 中北 英一 山口 弘誠
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2016

2008年神戸市都賀川で豪雨による突然の出水により5名の方がなくなるという悲惨な事故が起こった.河川付近にいる人々をゲリラ豪雨から安全に避難させるため,わずか数分でも早いゲリラ豪雨の予測技術の確立,高精度化がより一層急務であると言える.中北らはゲリラ豪雨に発達するタマゴ内部に高い渦度が見られることを発見し,渦度がゲリラ豪雨の危険性予測に極めて有効な指標であることを示しゲリラ豪雨の予報システムを開発した.しかしなぜ高い渦度を持つ積乱雲が発達するかというメカニズムについては未だに明らかでない点が多く,メカニズムの解明が重要である.そこで本研究では渦度とタマゴ発生・発達の理論的背景を解明するために積乱雲初期の渦度分布構造を詳細に解析し,新たな知見を得ることを目的とした.中北らはゲリラ豪雨のタマゴが鉛直渦管構造を持っていることを発見し,これはスーパーセル発達過程初期に見られる渦管構造と類似していることを示した.これによりスーパーセル初期の渦管の発達を表現する流体力学の理論を用いて上昇流の位置を推定できると考えられる.そこで本研究では観測されたレーダー反射因子差<i>Z</i><sub>DR</sub>を用いて上昇流の位置を推定し,理論から導かれる上昇流の位置と一致するか検証を行った.鉛直渦度方程式から上昇流の両脇で正負の渦度が形成されることがわかっており,上昇流がゲリラ豪雨の事例で確認できるか<i>Z</i><sub>DR</sub>を用いて検証した.融解層以上の<i>Z</i><sub>DR</sub>に注目したところ,High<i>Z</i><sub>DR</sub> Columnが確認された.これにより本事例に上昇流が存在しているということがわかりHigh <i>Z</i><sub>DR</sub> Columnの位置と理論から推定される上昇流の位置を比較したところ,上昇流と渦度が対応していると考られるという結果を得た.しかし下層に雨粒がなければ上昇流があってもHigh <i>Z</i><sub>DR</sub> Columnが見られないこと,強い上昇流の位置を正確に知ることができないことからより詳細な上昇流解析を行うためには実際に鉛直風速を算出する必要がある.そこで清水らの手法を用いたTriple Doppler手法から鉛直風速を算出した.ペアーの渦管の間には周囲と比較しても強い上昇流が存在しており,<i>Z</i><sub>DR</sub>による上昇流部推定の結果と矛盾しないことがわかった.
著者
大泉 伝 斉藤 和雄 伊藤 純至 レ デュック
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2016

本研究では、「京」コンピュータに最適化した気象庁非静力学モデル(JMA-NHM)を用いて、広域を対象とした超高解像度実験を行い、それによって豪雨の予測が向上するかを調べた。豪雨の数値予報に影響を与える次の3つの要因について調べた:(1)解像度(5, 2 km, 500, 250 m)、(2)乱流クロージャモデル:Mellor-Yamada-Nakanishi-Niino(MYNN)とDeardorff(DD)スキーム、(3)島の地形。 MYNNを用いた解像度2kmと500mの実験では、強い降水帯が実況より北西に位置し、島を完全に覆わなかった。DDを用いた実験では、実況と同様に降水帯が完全に島を覆い、再現性が良かった。高精度な地形を用いた解像度250mで実験が、降水帯の位置と伊豆大島内の降水分布を最もよく再現した。本研究の結果から、数値モデルによる豪雨の予報では、広い領域を高解像度で計算する事によって、降水の再現性が良くなることを示した。
著者
澤田真吾 吉谷幹人 浜中雅俊
雑誌
第73回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.1, pp.661-662, 2011-03-02

本稿ではweb上よりバンドメンバーの音楽活動に関する情報を西暦や日付と共に自動収集する手法を提案する.従来,特定の人物の情報をWeb上から時間表現とともに収集する研究はあったが,Web上に出現する時間表現は無数に存在するため人物と関係のない情報も多く集めてしまっていた.本研究では,取得する情報を,人物の生存期間,バンドの所属期間やソロ活動期間,曲の発売やコンサートの日時などの順に時間の幅を限定していくことで,無駄な情報を大幅に省き,より人物と関係の深い情報の抽出が可能となる.
著者
田中 秀明 井舟 正秀 諏訪 勝志 藤井 亮嗣 川北 慎一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.B4P2120, 2010

【はじめに】神経痛性筋萎縮症は急性の激痛で発症,痛みの消失とともに出現する(肩周囲の)弛緩性運動麻痺,多くが自然回復,の3つの特徴がある.本症はウイルス性の腕神経叢炎と言われているが現在の所,明確な病理学的裏づけがないのが現状である.臨床症状と他疾患の除外によって診断される「症候群」と考えるべきと言われている.今回,本症を経験する機会を得たので報告する.<BR>【症例紹介】50歳代男性,職業は事務職.左利き.<BR>【説明と同意】本人に説明を行い,本報告の同意を得た.<BR>【経過】1ヶ月前より発熱があり内科を受診.その2日後,左肩から上腕の疼痛あり,翌日には両前腕に疼痛が広がり,神経内科を受診。採血では炎症所見が認められ,RA疑いで整形外科へ紹介.整形外科ではRAは否定され,多発性筋痛症の疑いでリハビリテーション科へ紹介.両三角筋、棘上筋、棘下筋、左前腕筋などに著明な萎縮がみられ肩周囲の筋力はMMTで右3-レベル,左4レベル,握力は右18kg,左19kg,両肩に夜間痛,両上腕・前腕外側、母指・示指背側の感覚異常を認めた.関節可動域に関しては特に制限は認めなかった.車の運転やデスクワーク,更衣動作などに障害があった.針筋電図検査施行され右肩周囲と左前腕・手指筋にPSW,fbを認め神経原性筋萎縮症と診断された.以後,週1回来院し関節可動域運動,筋力維持・増強運動の自主練習内容の確認と評価を実施した.運動療法開始当初の目標は拘縮予防と筋力維持・増強とし,肩関節以外の上肢筋力運動,腱板の収縮が可能となり次第,セラバンドでの筋力強化を代償動作が入らない程度の回数で実施してもらった.また抗重力が不可能な時期は仰臥位、腹臥位で上肢の重力を除いた状態での三角筋を最大限に動かす運動を実施した.例としてテーブル上をバスタオル等で抵抗をなくしすべらせる方法での運動について指導した.2ヵ月後,握力は右25kg,左26kgに増加したが肩周囲に関しては症状の変化はほとんどなかった.6ヵ月後,握力は右27kg、左27kgと増加したが肩周囲の筋力に変化はなかった.感覚異常も左前腕は初期に比べ中等度まで,その他は軽度まで改善した.肩周囲の関節可動域に関しては若干制限を認めるも自己練習にて維持は出来ていた.10ヵ月後,左肩周囲の筋力は5レベルに改善,右も4レベルと抗重力運動が可能となり握力は左右30kg,感覚異常も左前腕は軽度まで軽減,その他はほぼ正常に改善した.筋力増強運動に関してはセラバンドの種類を変更し負荷を強めていった.1年後,握力は右37kg,左35kgと改善.感覚異常も左前腕に若干の違和感を残しその他は改善した.1年5ヵ月後,左41kgと改善,針筋電図施行され右肩周囲と左前腕・手指筋のPSW・fbの減少,polyNMU・NMUの出現を認め改善傾向と説明をうけた.左前腕の感覚異常は消失した.以後,経過観察必要なため定期的に来院している.<BR>【考察】神経痛性筋萎縮症の予後として90%以上が回復良好とされ1年以内36%,2年以内75%,3年以内89%と報告がある.少なくとも2年以上の長期観察が必要であるとされている.不全麻痺例や,完全麻痺であっても3ヶ月程度で正常にまで回復するものがあり,非変性型の神経障害も起こりうると推測される.一方,予後不良因子としては,痛みが長く持続・再燃するもの,障害範囲が広く腕神経叢全体と考えられるもの,下位神経根領域が主体のもの,3カ月以内に回復の徴候がないもの,などがあげられている.上位型の麻痺に比べて下位型の麻痺の回復が不良な理由について,障害部位から麻痺筋までの再生距離が長いことによって説明しようとする考えがある.発症後1-4週の早期に回復傾向が現れるものでは,予後は良いとされている.本症例においてはリハビリテーション科受診までに改善した部分はあったとのことで傾向は見られていた.その後,下位においては徐々に改善してきたが、上位は改善の傾向が見られるまでに1年近く時間を要した.理学療法としてはごく一般的な内容で自動運動が不可能な時期においては拘縮予防を中心に自己にて可能な上肢関節の他動運動,自動介助運動の指導を行い、自動運動が出現してくれば筋力増強運動を実施した.通院頻度は職業もあり頻回には来院できない為,的確な自己運動方法を指導することや,経過が長期にわたるため医師からのインフォームドコンセントや精神面でのフォロー,合併症予防につとめることが重要な要素であると考えられた.<BR>【理学療法学研究としての意義】希少な症例の症候や治療内容を提示することで,疾患に対する理解やよりよい治療方法を確立することに意義があると思われた.今回の症例は,報告数の少ない症例で理学療法の介入点について更なる検討が必要と思われた.
著者
野田 遊 Yu Noda
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.171-183, 2020-03-01

本研究は、行動行政学の知見をふまえ、大阪都構想の賛否への情報提供の影響を分析したものである。これまで、都構想の肯定・否定の情報提供は、政党や政治家、学者や評論家から積極的になされ、推進派は肯定的な情報を、反対派は否定的な情報を強調し、賛否を誘導してきた。本研究では、都構想の肯定・否定の情報を実験手法により提供のうえ賛否への影響を分析し、市民の動機づけられた推論の影響が非常に大きい点を抽出した。
著者
野地 貴弘 綾 史郎 馬場 葵
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.I_1447-I_1452, 2011

This paper deals with the hydraulic and hydrologic properties of the habitat of fish in a river and surrounding area. It especially focuses on the habitat of the <i>Acheilognathus Longipinnis</i> in the lower reach of the Yodo River, because the restoration of its habitat is the most important and urgent work for the Yodo River eco-system. The estimation of flood disturbance required for the life history of the fish was examined in the Akagawa sand bar and Shirokita Embayments, where both areas were its most important habitat 40 years ago, through the return period of the magnitude of the flood discharge, the frequency of the water surface elevation, which were obtained by the statistics of the water surface elevation records, and the magnitude of the order of the velocity and the shear velocity and their distributions, which were obtained through the 2-D numerical simulation. The results will be usable for the selection of the location of the newly constructed habitat, and its design.
著者
岡 照晃 小町 守 小木曽 智信 松本 裕治
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.1641-1654, 2013-04-15

生の歴史的資料の中には,濁点が期待されるのに濁点の付いていない,濁点無表記の文字が多く含まれている.濁点無表記文字は可読性・検索性を下げるため,歴史コーパス整備の際には濁点付与が行われる.しかし,濁点付与は専門家にしか行えないため,作業人員の確保が大きな課題となっている.また,作業対象が膨大であるため,作業を完了するまでにも時間がかかる.そこで本論文では,濁点付与の自動化について述べる.我々は濁点付与を文字単位のクラス分類問題として定式化した.提案手法は分類を周辺文字列の情報のみで行うため,分類器の学習には形態素解析済みコーパスを必要としない.大規模な近代語のコーパスを学習に使用し,近代の雑誌「国民之友」に適合率96%,再現率98%の濁点付与を達成した.
著者
湯川秀樹 [著] 細川光洋選
出版者
講談社
巻号頁・発行日
2016
著者
高橋 玲央 金子 徳秀 藤代 一成
雑誌
第77回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, no.1, pp.103-104, 2015-03-17

ユーザがインタラクティブかつ直感的に3次元キャラクタを操ることを目的にした既存のモーションリターゲティング手法には, 人と類似した骨格構造をもつキャラクタモデルに適用可能な手法と,人の骨格構造から大きく外れたキャラクタモデルに適用可能な手法がある. 既存手法では,単一のユーザモーションから両方の骨格構造のキャラクタに対するモーションを生成することは難しかった. 本手法は両手法を統合し,人と類似した骨格構造のキャラクタに対しては,より少ない学習モーション数で適用可能である一方,人と骨格構造が大きく異なるキャラクタに対しても,ユーザの入力モーションとキャラクタ固有のモーションの合成を可能にする.
著者
高柳 勉 ウィモンスリ ポンタウィワット 横塚 弘毅
出版者
日本応用糖質科学会
雑誌
応用糖質科学 (ISSN:13403494)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.121-127, 1995

1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide (EDC)またはp-chloromercuribenzoic acid(PCMB)を用いた化学修飾によりブドウインベルターゼの活性は低下した.基質であるラフィノースを添加することによりEDCまたはPCMBによる不活性化反応の速度は減少した.酵素のK<SUB>m</SUB>値はEDCまたはPCMBによる不活性化によって影響されなかった.EDCによる不活性化反応の間に多くのカルボキシル基が修飾されていることが観察され,この修飾は酵素の活性部位だけでなく酵素の表面でも同時に起こっていると推測された.PCMBにより,酵素を完全に失活させるためには酵素1分子当り一つのスルフヒドリル基が修飾されることが必要であった.EDCとPCMBによるこれらの化学修飾の結果はカルボキシル基とスルフヒドリル基が酵素活性に必須であることを強く示唆した.