著者
三河 佳紀 小野 真嗣 渡辺 暁央 小薮 栄太郎 三上 拓哉
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.98-103, 2015-06-01 (Released:2015-12-01)

日本における鉄軌道事業者は車両老朽,自然災害及び人為的過誤による様々な不具合や事故に直面している。昨今においては,そのような不具合や事故は発生直後即座に各種報道機関を通して大きく取り上げられる傾向にある。各鉄軌道事業者は乗客の安全確保のため最大限の対策を講じているものの,今後も全ての不具合や事故を完全に除去することは不可能であろう。本研究では,北海道における鉄軌道事故データを収集しデータベースを構築した。このデータベースを用い,事故現場を可視化することで事故傾向を調べたところ幾つかの特徴があった。本研究を通じ,著者等は鉄軌道事業者に対して取組可能な改善努力計画の提案を行う予定である。具体的には,不具合や事故の発生を極力避けるために,鉄道運営の高専版教育プログラムを提供する。本稿では,著者等が行った鉄軌道事故の記録収集やそのデータベース構築に関する手法について中間報告を述べる。
著者
木下 耕介 Kinoshita Kosuke
出版者
名古屋大学大学院文学研究科附属日本近現代文化研究センター
雑誌
Juncture : 超域的日本文化研究 (ISSN:18844766)
巻号頁・発行日
no.3, pp.140-153, 2012-03

In recent years, both in Hollywood cinema and Japanese cinema, we can find an interesting phenomenon in which a considerable number of narrative films has presented stories of two diegetic worlds intersecting with each other. For example, in Hollywood cinema, blockbuster franchises such as the Matrix series (1999-2003), Harry Potter series (1993-2010), and Avatar (2009) with no exception have constructed two diegetic worlds. Typically in these films, one is the world we occupy (our so-called "reality") and the other is usually a strange, fantastic world. In Japanese cinema, animation films such as Perfect Blue (1998) and Summer Wars (2009) also deal with this dual-diegesis narrative. Notably, this kind of dual-diegesis narrative is rather unusual, according to the norm of classical Hollywood cinema. For what reason have these films become popular both in United States and in Japan? This essay tries to answer this question, apprehending the dual-diegetic structure as a spatial metaphor for today's information society in which we have two lives: one dwelling in reality and the other in cyberspace. Cyberspace is a quite new concept for ordinary people, therefore we sometimes feel embarrassed, puzzled, or even uneasy and terrified in cyberspace. The dual-diegesis narratives we find onscreen are in a sense reflections of this sort of cultural experience we have. However, at the same time, from another point of view, dual-diegesis narratives can also be said to offer us a visual sketch, which I call a "folk mindscape," visually and spatially depicting a cognitive map of cyberspace with which we can comprehend our new cultural experience with a greater sense of security in our minds. Dual-diegesis narratives can also be understood as arguments or statements over the issue of embodiment/disembodiment. The pair of theoretical terms is now familiar in the discourse of posthumanism, the new theoretical trend which tries to question the definition of humanity, decentering the cultural position human beings have historically held and relocating it in a new context which includes concerns for state-of-the-art information technologies, animal rights and so on. In dual-diegesis narratives, the arguments over such theoretical issue take the shape of the protagonists' journey, in which he/she departs from (corpo-)reality and explores the virtuality, but finally comes back to reality, where he/she originally belongs. From the two standpoints mentioned above, this essay tries to interpret contemporary popular films as having something to do with our new cultural experience, which was brought on rather abruptly, when we were left unprepared, by the information technology revolution.
著者
藤本 学 大坊 郁夫
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.51-60, 2007 (Released:2008-01-10)
参考文献数
35
被引用文献数
1 2 1

本研究の目的は,会話展開への影響という側面から,会話者の発話行動傾向の独自性を明らかにすることである。そこで,議題について共通見解を出すために討論を行う討論条件と,お互いを知るために雑談を行う親密条件を設定した小集団会話実験を実施した。実験では48名(男性18名,女性30名)の大学生が,討論条件または親密条件にランダムに配置され,初対面の同性3人による18分間の会話を行った。分析では,まず,主成分分析を利用したパターン解析の手続きにより,会話展開行動のパターンを抽出した。その結果,条件別にそれぞれ5種類の会話展開パターンが抽出された。つぎに会話者の個人特性が発話行動に及ぼす影響について検討するために,重回帰分析を行った。その結果,討論条件では外向性や表出性が積極的な会話展開パターンと関連を示した。一方,親密条件では個人特性と会話展開パターンの関連性は希薄であることが明らかとなった。各条件で抽出された会話展開パターン,及び会話者個人の性質の影響について議論された。
著者
稲垣 具志 寺内 義典 橘 たか 大倉 元宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_933-I_941, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
10
被引用文献数
6

これまで,通過交通が問題となる生活道路では,抜け道利用者に着目した交通安全対策が多く実施されてきた.本稿は,抜け道利用者ではない地区関係者の走行速度に着目し,抜け道利用者の速度との傾向の違いについて明らかにすることで,地区関係者向けの安全啓発・教育を実施する意義について検討することを目的とする.東京都内の2地域を対象としてナンバープレート調査と走行速度調査を同時に実施し,地区関係者と抜け道利用者別の走行速度分布を取得した.これらを比較したところ,地区関係者には抜け道利用者と比べて低速走行する傾向が一部確認できたが,地区関係者においても生活道路を高速走行する運転者が無視できない程度に存在し,地区関係者を対象とした速度低減対策を構築する必要性が示された.
著者
佐々木 保行
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.137-146, 1996-03-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
88
被引用文献数
2

本論文は, 父親の育児関与とそれが父親におよぼす影響についての概観を試みたものである. これまでわが国の発達研究者の多くは, 父親の子どもへの影響についてほとんど考慮してこなかった. 親子関係に関する大部分の研究は, 主として母子関係の研究に集約されている. そのため父性や父子関係の研究は, 大変少ないのが現状である. 他方, 欧米の研究者では, 家族を社会システムとしてとらえる見方が次第に濃厚になっている. その理由は, 母親, 父親, 子ども, の家族メンバーが, お互いに直接あるいは間接に影響しあう存在だからである. 近年, 父親の文化的イメージは, 養育する父親として, また子どもと同様, 発達する父親としてとらえられている.
著者
伏木田 稚子 永井 正洋
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.44143, (Released:2021-06-22)
参考文献数
35

本研究では,生涯学習を支える情報リテラシーの育成に着目し,シニア世代が大学開放事業において幅広く継続的に学知を学ぶ上で,授業内容にどのような観点を取り入れるべきかを探索的に検討した.具体的には,コンピュータの利活用に関する実態を幅広く把握した上で,性別や年齢,最終学歴など,学習者の基本情報を考慮しながら,コンピュータの利用目的,活用経験,利用不安の関係を分析し,授業実践の要件を明らかにすることを目的とした.TMUプレミアム・カレッジの履修生53名を対象に質問紙調査を行った結果,1) コンピュータの未所有者や初心者への配慮,2) 基礎を押さえた段階的な授業構成と初歩からの支援,3) 授業での活用機会の充実と日常的な利用の促進によるコンピュータの利用不安の軽減が,シニア世代の情報リテラシー教育に重要な観点であることが示唆された.
著者
駒形 嘉紀
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.10, pp.2639-2644, 2013-10-10 (Released:2014-10-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

血球貪食症候群は,骨髄などにおいて活性化された組織球が自己の血球を貪食する病態で,別名血球貪食性リンパ組織球症とも呼ばれる.うち自己免疫疾患に伴うものをマクロファージ活性化症候群と呼び,サイトカインストームと呼ばれる炎症性サイトカインの異常産生により,発熱・高フェリチン血症などの臨床症状を呈する.しばしば重症となり致死的な経過をたどるため,ステロイドなどによる強力な免疫抑制療法が必要である.
著者
當間 孝子 宮城 一郎 比嘉 由紀子 岡沢 孝雄 佐々木 均
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.65-71, 2005-06-15 (Released:2016-08-07)
被引用文献数
20 29

2004年6月12-18日に, 琉球列島の西表島の森林地帯の2ヵ所で, 蛙の声をCDプレイヤーで鳴らし, 直ぐ近くにCDCライトトラップを設置し蚊類を採集した.第一地点で合計777個体, 2地点で257個体のハエ目の昆虫が採集された.それらのうち, 次の4種の吸血性昆虫(雌)が両地点で目立って多く採集された.マックファレンチビカは第一地点で580個体(74.6%), 第二地点で193 (75.1), ヤエヤマカニアナチビカ19(2.4)と27 (10.5), ヤマトケヨソイカ106 (13.6)と20(7.8), また, ルソンコブハシカが第一地点のみで39個体(5.0%)が採集された.これらの蚊にケージ内でヌマガエルを暴露すると, 吸血行動が見られ, 多くの個体が吸血した.このことからこれらの蚊は自然界でカエルの鳴き声に誘引され, 吸血していると思われる.

7 0 0 0 OA 運動年鑑

著者
朝日新聞社 編
出版者
朝日新聞社
巻号頁・発行日
vol.大正15年度, 1926
著者
林 正久
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.26-46, 1991-01-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
48
被引用文献数
3 4

テフラ,鉄津を指標とした沖積層の分析や微地形分類,風土記など歴史的資料の検討によって出雲平野の地形発達を考察した.完新世の海面高頂期は6,000~5,000y. B.P. で現海面上3~4m,水道状の内湾が形成され,島根半島が切り離された.3,600y.B.P.頃から2,700y. B. P. にかけての時期に,小海退がみられ,海面は-2m以下にあった.3,600y. B. P. に噴出した三瓶山の火砕流が大量の砂礫を供給し,海退期の内湾を急速に埋積し,その結果,半島は再び陸続きとなり,内湾は東西2つの潟湖に分離した.その後,海面は現在とほぼ等しくなり潟湖の埋積が続く.『出雲国風土記』の記す時代は潟湖埋積の一時期にあたる.当時は斐伊川が西流していたため,西の潟湖の方が速く埋積された.近世以降は鉄穴流しによる大量の土砂が宍道湖を急速に埋積するとともに,古い三角州面も埋積した,出雲平野はその形成に海面変動のほか,火砕流と鉄穴流しが大きな影響を与えている点に特異性がある.
著者
権藤 愛順
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.143-190, 2011-03-31

本稿では、明治期のわが国における感情移入美学の受容とその展開について、文学の場から論じることを目標とする。明治三一年(一八九八)~明治三二年(一八九九)に森鷗外によって翻訳されたフォルケルト(Johannes Volkelt 1848-1930)の『審美新説』は、その後の文壇の様々な分野に多大な影響を与えている。また、世紀転換期のドイツに留学した島村抱月が、明治三九年(一九〇六)すぐに日本の文壇に紹介したのも、リップス(Theodor Lipps 1851-1914)やフォルケルトの感情移入美学を理論的根拠の一つとした「新自然主義」であった。西洋では、象徴主義と深い関わりをもつ感情移入美学であるが、わが国では、自然主義の中で多様なひろがりをみせるというところに特徴がある。本論では、島村抱月を中心に、「新自然主義」の議論を追うことで、いかに、感情移入美学が機能しているのかを検討した。
著者
上山 浩次郎
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.138, pp.195-209, 2021-06-25

本稿では,教育機会の不平等における地域と社会階層の関連構造を検討した。地域による教育機会の不平等に関する研究は,これまでコンスタントに行われてきた。ただし,地域的要因が社会階層などの他要因に還元できると解釈されうることから,地域を属性的な要因として位置づけることには批判も存在してきた。そこで,本稿では,進路選択に対して,地域変数と社会階層的変数が,どのように関連しているのかを計量的に把握することを試みた。分析の結果,たしかに,進学行動に対して,地域変数は社会階層的変数を通して格差を生成していた。だが,社会階層的変数に還元できない形でも地域変数は格差を生成していた。さらに,両者を比べると,社会階層的変数を媒介しない形の方が,格差を生成する度合いが大きい。ここからは,地域的要因は,社会階層的要因とは相対的に独自に教育機会の不平等という現実を生成していることがあらためて示唆される。
著者
藤田 明史
出版者
大阪女学院大学・短期大学
雑誌
紀要 (ISSN:03877744)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.67-76, 2004

研究ノート2004年8月に行なわれたアテネ五輪は、2001年9月11日に発生した「米国同時多発テロ」事件後の最初のオリンピックであった。21世紀初頭の暴力が蔓延する世界にあって、平和の祭典といわれるオリンピックのあり方が改めて問われている。オリンピックは本当に平和的であろうか。本稿はオリンピックと戦争の関連性について、「競争」、「停戦」、「政治の美学化」という3つの視点から歴史的に考察する。The 2004 Olympic Games in Athens were the first Olympiad after 9.11 in the year 2001. People have begun asking how the Olympic Games, a festival of peace, will confront the world where violence prevails at the beginning of the 21st century. Are Olympic Games really peaceful? In this paper, we are going to make historical considerations about the relation between Olympics and war, taking into account the three factors of competition, truce and aestheticization of politics.