著者
宍倉 正展
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.245-254, 2003

A tectonic geomorphological study is one of the best methods of evaluating the timing and the crustal deformation of pre-historic earthquake. To reveal the cycle of interplate earthquakes along the Sagami Trough, I investigatedthe emergedshoreline topography andthe fossilizedsessile assemblages in the Miura Peninsula andthe Boso Peninsula. The distribution pattern of coseismic vertical displacement during the 1703 Genroku Kanto Earthquake inferredfrom the height distribution of the paleo-shoreline suggests that the fault source model consists of a dual fault system of the Fault A andB. Fault A is also the source of the 1923 Taisho Kanto Earthquake. The geometry and ages of the emerged shoreline topography divided into several levels indicate that the characteristic earthquake generatedfrom Fault A has occurredabout every 400 years. One of several events, it is accompaniedwith a slip of Fault B, which has a recurrence interval of 2000-2700 years.
著者
Baojun Zhao Shuyu Xue Wanchao Zhu TianShu Lv Qinguo Wei Shuai Shang Honghai Zhang
出版者
The Genetics Society of Japan
雑誌
Genes & Genetic Systems (ISSN:13417568)
巻号頁・発行日
pp.18-00018, (Released:2018-12-19)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

The Siberian weasel (Mustela sibirica) is widely distributed in mainland Asia, but its introduction into Japan and subsequent expansion have affected the Japanese weasel (M. itatsi). To provide a useful tool for population genetic studies and control of M. sibirica, we developed 10 polymorphic microsatellite markers. Among 40 individuals of M. sibirica collected in Hubei Province, China, the number of alleles per locus varied from 2 to 19, with the observed heterozygosity ranging from 0.050 to 1.000 and the expected heterozygosity ranging from 0.049 to 0.920. None of the loci deviated from Hardy–Weinberg equilibrium. These markers will be useful in further studies investigating the population structure and natural history of M. sibirica, and may thus provide new insights for the efficient management of this species.
著者
梶田 真
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.108-127, 2014-03-01 (Released:2019-07-12)
参考文献数
35
被引用文献数
2

本稿では,福島第2原子力発電所が立地する福島県富岡町を事例に,原子力発電所の経済効果の世代間の差異に焦点を当て,原子力発電所の建設・稼働による地域社会・経済の再編および経済効果の変化の受容について検討した.主に文献・統計資料を検討した分析の結果,経済面では原子力発電所関連産業を中心とした構成に再編され,社会面では①在来住民,②原子力発電所の建設以降に流入・定着した住民,③流動性の高い短期在住者,の三つのグループに再編され,地方圏一般とは異なり,②や③の人口が大きな構成比率を占めていることが明らかになった.また,原子力発電所依存経済の時期限定性の問題は,このようなかたちで再編された地域社会の下で出現し,②のグループ,特に原子力発電所建設期に青年層として流入し,人口規模のピークを構成している1951~1955年生とその周辺のコーホートに最も大きな影響を与えていることも示された.
著者
NAOI Moeka KAMAE Youichi UEDA Hiroaki MEI Wei
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
pp.2020-027, (Released:2020-02-10)
被引用文献数
15

Atmospheric rivers (ARs), narrow water vapor transport bands over the mid-latitudes, often cause great socio-economic impacts over East Asia. While it has been shown that summertime AR activity over East Asia is strongly induced by preceding-winter El Niño development, it remains unclear the extent to which seasonal transitions of El Niño Southern Oscillation (ENSO) from winter to summer affect the AR activity. Here we examine the relationship between the seasonal transitions of ENSO and the summertime AR activity over East Asia using an atmospheric reanalysis and high-resolution atmospheric general circulation model (AGCM) ensemble simulations. A rapid transition from preceding-winter El Niño to summertime La Niña results in more AR occurrence over northern East Asia via northward expansion of an anomalous low-level anticyclone over the western North Pacific compared to sustained or decayed El Niño cases. The northward expansion of the anticyclone is consistent with a steady response of the atmosphere to the anomalous condensation heating over the Maritime Continent and equatorial Pacific. Meridional positions of the extratropical AR occurrence and circulation anomalies are different between the reanalysis and AGCM simulations, which is possibly contributed by a limited sample size and/or AGCM biases and suggests that seasonal prediction of AR-related natural disaster risk over East Asia on a regional scale remains a challenge.
著者
松阪 崇久
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.5-18, 2014-08-02 (Released:2017-07-21)

ヒトはなぜ笑うのだろうか?古くから数多くの研究者が取り組んできた問いだが、その答えは未だに完全に明らかになったとは言えない。この問いには、視点の異なる様々な内容が含まれている。この壮大な問いの答えに近付くためには、まず、この問いに具体的にどのような論点が含まれているかを整理する必要がある。そこで本論では、ニコ・ティンバーゲンが提示した「行動に関する4つのなぜ」の分類を参照しながら、笑いに関する研究の論点の整理をおこなった。具体的には、近接要因(笑いの発生要因・メカニズム)、究極要因(生存・繁殖上の機能)、発達過程、進化史の4つの視点について、どのような研究がおこなわれているかを概観した。それぞれの領域において、どのような問題が未解決のまま残されているかにも触れた。究極要因と進化史についての研究がやや遅れているが、今後の発展の余地が大きく残されていることを示した。
著者
市村哲 矢澤崇史 戸丸慎也 渡邉宏優
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.1285-1290, 2014-07-02

ゲーミフィケーションは,ゲームの要素や考え方をゲーム以外の分野で応用していこうという取り組みであり,ゲームの持つ人を楽しませ熱中させる要素や仕組みを用いて,ユーザのモチベーションを向上し,日常の行動を活性化させようとするものである.さらにSNSの機能を用いることにより,他者と自分とを比較して競争心を煽る,または一人でやっているわけではなくみんなとやっているという共同作業の楽しみによるモチベーションの増加も狙えると言われている.本稿では,ゲーミフィケーションを用いて家事をゲーミフィケーション化する試みについて報告する.今回,家事のなかでも面倒と思われている掃除を対象とした.掃除機に対して加速度を検出できるデバイスを取り付け,そのデバイスを介してゲームの要素を付与することで,少しでも楽しく掃除が出来るようにすることを試みた.評価実験より,ゲーム的要素を加えたことにより掃除がより楽しくなったという結果が示される結果を得られた.
著者
海津 一朗
雑誌
和歌山大学教育学部紀要. 人文科学 (ISSN:1342582X)
巻号頁・発行日
no.71, pp.179-186, 2021-02-08

Following Kazuo Osumi's method of linking historical figures with the method of "like", a database of historical figures is created using the classical texts of Japan and China owned by Kodansha Gakujutsu Bunko (Academic Library,Kodansha Ltd.).It elucidates the self-perception of Japanese Japan as a miniature of the Han Empire through the cases of Emperor Temmu, Kiyomori Taira, and Emperor Godaigo who identified themselves as Liu Bang,Wang Mang, and Liu Shu.In addition to this,my paper pointed out the existence of 'like'due to the birth of the causal concept of retribution.This was a global transgender 'like'that transcended national and gender boundaries.The Japanese medievalists lived in such a world.
著者
小野瀬 裕子 草野 篤子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.123-133, 2001-02-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
22

本研究ではアメリカ合衆国が主導権を握っていたGHQの憲法草案作成の背景を整理した.日本と同じ第二次世界大戦で敗戦国となったドイツとイタリアの新憲法では, ベアテ草案の「男女平等」と「教育の機会の平等」はどの様に条文化されているか比較して考察を加えることで, ベアテ草案の特徴を明確にした.その結果を以下にまとめる.(1) GHQ草案の作成に至る経緯GHQ最高司令官のマッカーサー元帥 (アメリカ合衆国) は, 憲法改正について当初は日本側が自主的に検討すべき問題であると捉えていたが, 日本政府の草案が保守的で, 大日本帝国憲法の表面的変更にとどまるものであることを知り, また, 極東委員会が対日管理を1946年2月26日からFECに移行することを決定したことから, GHQはこれに先立って憲法を改正するためにモデル憲法を準備し提供することが効果的だと考えた.(2) 第二次世界大戦敗戦国の新憲法との対比戦後のドイツとイタリアの新憲法には, ベアテが起草しGHQによって削除された「母性保護」「非嫡出子差別禁止」「労働における男女平等」と同様の条文を見いだすことができた.ベアテ草案にあり, 3力国の憲法にはない内容として「家庭における男女平等」のなかに「個人の尊厳」という言葉がはいっていたことをあげることができた.ベアテが戦前の日本の家制度を否定し, その意味を明確にするために入れた注目すべき言葉であったといえる.(3) アメリカ合衆国憲法における家族の扱いと男女平等の実現のための憲法修正に対する動向日本はGHQ占領下において, 最高司令官マッカーサーによりアメリカ合衆国を介して間接統治されていた.アメリカ合衆国憲法では, 「家族」に関しては, プライヴァシーの範疇であると考え, 憲法に条文として規定することはなかったこと, 詳細な社会権の規定は憲法の下位規範である法律に委ねられていたこと, アメリカ本土で当時, 女性組織が女性保護法と対立するものと考えて男女平等のための憲法修正に反対していた事実がある.一方, ベアテ草案第6条「性別における差別の禁止」, ベアテ草案第18条「家庭における男女平等」は日本国憲法に残った条文であるが, アメリカ合衆国憲法にはなく, 本土よりも1歩進んだ条文であったということができる.(4) ベアテ草案削除に関してベアテ草案の「家族における男女平等」は残ったものの, その他の「家族」に関する条文や「労働における男女平等」などの条文の多くがGHQによって削除された理由として, 日本の歴史的背景が大きく関係していると考えられる.また, GHQの主導権を握っていたアメリカ合衆国憲法での状況として, 「男女平等」や「家族」に関するベアテ起草と同じ内容の社会権が, 憲法に条文として導入されることはなかった事実があることがわかった.
著者
Taiga Kunishima Ryosuke Tanaka Kentarou Hirashima Ken Maeda
出版者
The Japanese Society of Systematic Zoology
雑誌
Species Diversity (ISSN:13421670)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.37-41, 2021-03-05 (Released:2021-03-05)
参考文献数
29

One female specimen of Stiphodon multisquamus Wu and Ni, 1986 was collected from Arida-gawa River, Wakayama Prefecture, Japan, in November 2018. As the previously known range of this species was from the South China Sea, including Malaysia, Vietnam, and China, to the Ryukyu Archipelago in Japan, this specimen was reported as the first record from the Japanese mainland and the northernmost record of this species. Stiphodon multisquamus is an amphidromous fish of which pelagic larvae develop in marine habitats. It was believed that this specimen was transported from the southern region by ocean currents during the pelagic larval phase and recruited into the river in Wakayama Prefecture.
著者
大向 一輝
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.329-332, 2020-10-01 (Released:2020-11-16)
参考文献数
12

国内に存在するあらゆる種類の文化資源を対象とするジャパンサーチは、日本のデジタルアーカイブの系譜におけるひとつの到達点である一方、「すべての資料が集まるデジタルアーカイブ」が2019年にはじめて実現された理由、ならびに国立国会図書館を中心とした体制が構築された理由は自明ではない。本稿では、ジャパンサーチ誕生の経緯に関する公開情報を整理するとともに、社会的な文脈を含めた議論を通じて本特集の各論を補足する。
著者
小林 健彦
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.57, pp.81-103, 2021-01

日本では、古来、様々な自然災害や人為的災害が人々を襲い、人々はその都度、復旧、復興させながら、現在へと至る地域社会、国家を形成、維持、発展させて来た。日本は列島、付属島嶼を主体とした島嶼国家であり、そこでは「水災害」が多く発生していたが、こうした地理的理由に依る自然災害や、人々の活動に伴う形での人為的な災害等も、当時の日本居住者に無常観・厭世観を形成させるに十分な要素として存在したのである。文字認知、識字率が必ずしも高くはなかった近世以前の段階でも、文字を自由に操ることのできる限られた人々に依った記録、就中(なかんづく)、災害記録は作成されていた。特に古い時代に在って、それは宗教者(僧侶や神官)や官人等に負う処が大きかったのである。正史として編纂された官撰国史の中にも、古代王権が或(あ)る種の意図を以って、多くの災害記録を記述していた。ここで言う処の「或る種の意図」とは、それらの自然的、人為的事象の発生を、或る場合には自らの都合の良い様に解釈をし、加工し、政治的、外交的に利用、喧伝することであった。その目的は、災害対処能力を持ちうる唯一の王権として、自らの「支配の正当性、超越性」を合理的に主張することであったものと考えられる。それ以外にも、取り分け、カナ文字(ひらがな)が一般化する様になると、記録としての私日記や、読者の存在を想定した物語、説話集、日記等、文学作品の中に於いて、各種の災害が直接、間接に記述される様になって行った。ただ、文学作品中に描写された災害が全て事実であったとは言い難い。しかしながら、それも最初から嘘八百を並べたものではなく、素材となる何らかの事象(実際に発生していた災害)を元にして描かれていたことは十分に考えられるのである。従って、文学作品中には却って、真実としての、当時の人々に依る対災害観や、ものの見方が反映され、包含されていることが想定される。都が平安京(京都市)に移行する以前の段階に於いては、「咎徴(きゅうちょう)」の語が示す中国由来の儒教的災異思想の反映が大きく見られた。しかしながら、本稿で触れる平安時代以降の段階に在って、それは影も形も無くなるのである。その理由に就いては、はっきりとはしていない。しかしその分、人々に依る正直な形での対自然観、対災害観、対社会観の表出が、文学作品等を中心として見られる様になって来るのである。本稿では、以上の観点、課題意識より、日本に於ける対災害観や、災害対処の様相を、意図して作られ、又、読者の存在が意識された「文学作品」を素材としながら、文化論として窺おうとしたものである。作品としての文学に如何なる災異観の反映が見られるのか、見られないのかに関して、追究を試みた。今回、具体的素材としては「伊勢物語」を取り上げながら、この課題に取り組んだものである。
著者
平田 文 石坂 正大 沢谷 洋平 柴 隆広 浦野 友彦
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.134-142, 2021-01-25 (Released:2021-02-25)
参考文献数
20
被引用文献数
5

はじめに:要介護高齢者が地域で生活を続けるためには,サルコペニアなどの老年症候群の徴候を早期に発見し,適切な対応をしていくことが重要である.本研究の目的は,地域在住の要支援・要介護高齢者における嚥下機能の特徴を調査し,嚥下機能,栄養状態,サルコペニアなどの身体機能の関連性を明らかにする.方法:対象は,通所リハビリを利用している要支援1,2,要介護1の高齢者90名(男性55名,女性35名,平均年齢77.2±8.3歳).調査項目は,聖隷式嚥下質問紙,20品目摂取可能食品数調査,サルコペニアの簡易スクリーニング方法であるSARC-F,舌圧,握力,骨格筋指数(SMI),簡易栄養状態評価表(MNA-SF)だった.結果:聖隷式嚥下質問紙で「嚥下障害あり」「嚥下障害疑い」と判定された嚥下機能不良群は75名(83.3%),「嚥下障害無し」と判定された嚥下機能良好群は15名(16.7%)だった.対象者の30%以上に症状を認めた質問は,「食事中にむせることがありますか」「食べるのが遅くなりましたか」「硬いものが食べにくくなりましたか」だった.嚥下機能を従属変数とし,6つの調査項目全てを独立変数として強制投入したロジスティック回帰分析の結果,SARC-Fにおいて有意差を認めた(OR 1.994,95%CI 1.154~3.446,p=0.013).判別的中率は82.8%だった.結論:地域在住の要支援・要介護高齢者は嚥下障害のリスクが高く,特に咀嚼を含む口腔期に症状を呈していることが明らかになった.さらに,嚥下機能とSARC-Fに関連性を認めた.サルコペニアを早期に発見し予防することは,嚥下障害を防ぎ在宅生活を継続するために重要であることが示唆された.
著者
坊農 真弓
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.90, 2015-12-15