著者
北川 雄一
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.28-35, 2013 (Released:2014-02-28)
参考文献数
40
被引用文献数
1 2

せん妄は,意識,認知機能,知覚,注意が障害される病態である.術後比較的早期に錯乱状態に陥った患者が,錯覚や幻覚を訴えたり,医療従事者や介護者の指示を理解できなかったりそれに従うことができないなどの症状があれば,せん妄と診断できる.しかし,傾眠や抑うつ状態と類似の症状を呈することもあるため,診断に注意が必要な場合がある.術前からの精神神経疾患の既往などがある場合には,より診断が困難となる可能性もある.客観的な診断を行い,せん妄の程度を評価するために各種のスケールなどが用いられる.発症頻度は4~87%と報告により様々である.発症には,疼痛や麻酔,各種薬物などが危険因子として挙げられている. 国立長寿医療研究センターでの調査では,80歳以上の待機手術患者での発症率は73.9%で,高齢,術前MMSE低値,術前JNCS低値,興奮・多動の既往が術後せん妄発症の危険因子であった.
著者
佐藤 博幸
出版者
新潟医療福祉学会
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.23-35, 2019-03

障害者差別解消法施行下における障害者福祉に関する市民意識調査を実施し、障害当事者71人を含む180人から回答を得た(回収率70.59%)。この結果、市民の間で法律や制度に関する理解は一定の理解が進んでいるものの、近所づきあい等地域生活の場面や社会参加の機会に障害に根差した差別を体験したことのある障害当事者が60.56%に及び、障害の種別により被差別体験に差があることが明らかになった。障害当事者の地位向上を図るために、厳しい雇用環境の改善と併せ日常生活における合理的配慮の提供の理念が広がっていくことが望まれた。合理的配慮の提供を感じる人の割合は、直接的なコミュニケーション場面で高く、文書による連絡など間接的なコミュニケーション手段では低い傾向がみられた。一方、ノーマライゼーションが進展していると考える者は全回答者の36.67%にとどまり、法律や制度に対する認知度と障害者福祉の充実度に対するとらえ方に開差がみられた。今、障害者福祉は、障害者差別解消に向けノーマライゼーション理念の浸透を実感できる共生社会の実現に向けた取り組が求められている。障害当事者の活動を制限し、社会への参加を阻んでいる社会的障壁を取り除くことは、障害者福祉の直面してきた大きな課題である。障害の社会モデルを土台にした合理的配慮の提供の広がりは、この課題解決に向けこれからの障害者福祉を進展させていく大きな力になるものと考えられる。
著者
Sayaka Deguchi Kazuo Takayama Hiroyuki Mizuguchi
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Biological and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:09186158)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.608-615, 2020-04-01 (Released:2020-04-01)
参考文献数
50
被引用文献数
6

Liver transplantation and hepatocyte transplantation are effective treatments for severe liver injuries, but the donor shortage is a serious problem. Therefore, hepatocyte-like cells generated from human induced pluripotent stem (iPS) cells with unlimited proliferative ability are expected to be a promising new transplantation resource. The technology for hepatic differentiation from human iPS cells has made great progress in this decade. The efficiency of hepatic differentiation now exceeds 90%, making it possible to produce nearly homogeneous hepatocyte-like cells from human iPS cells. Because there is little contamination of undifferentiated cells, there is a lower risk of teratoma formation. To date, the transplantation of human iPS cell-derived hepatocyte-like cells has been shown to have therapeutic effects using various liver injury model mice. Currently, studies are underway using model animals larger than mice. The day when human iPS cell-derived hepatocyte-like cells can be used as cellular medicine is surely approaching. In this review, we introduce the forefront of regenerative medicine applications using human iPS cell-derived hepatocyte-like cells.
著者
田村 和彦
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

本発表は、漢族社会の親族研究の蓄積にたち、東南アジアの宗教・社会組織に関する議論において洗練された「親密性」と「公共性」(黄・日下:2014)を補助線として、「広場舞」と呼ばれる、近年の中国において急速に普及した集団ダンスという、従来、人類学的研究がほぼなされてこなかった、流動的で非組織的な対象について、その中核的な人物を中心とする関係性構築のあり方について考察を試みるものである。

1 0 0 0 OA 北米世俗観

著者
田村松魚 著
出版者
博文館
巻号頁・発行日
1909
著者
露口 小百合 明神 千穂 村上 恵 和田 珠子 伊藤 知子 今義 潤 江口 智美 久保 加織 高村 仁知 中平 真由巳 原 知子 水野 千恵
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

<b>【目的】</b>揚げる・炒める分科会ではこれまで揚げ種重量の10倍程度の油を用いた一般的な揚げ方法での様々な研究を行なってきた。しかし、最近では環境問題や健康への配慮から少量の油で揚げる「シャロウフライ」と呼ばれる方法が注目されている。そこで今回は揚げ種が浸る程度の少ない油量で揚げた場合の揚がり具合について検討した。<br>&nbsp;<b>【方法】</b>試料として豚カツ(業務用冷凍豚一口カツ)およびサツマイモ、揚げ油はキャノーラ油を用いた。油の量は「ディープ」(油の深さが揚げ種の厚さの2倍)、「シャロウ1」(同1倍)、「シャロウ1/2」(同1/2倍)とした。温度調節付きガスコンロと26cm径のフライパンを用い、豚カツは180℃、5分間、サツマイモは160℃、6分間揚げた。揚げ操作中に揚げ種の中心温度と油温の変化を測定し、揚げ操作後の重量変化より吸油率と脱水率を算出した。官能評価はパネル6~8名で、評点法(外観、油臭さ、におい、味、揚がり具合、テクスチャー、総合)と順位法で行った。<br>&nbsp;<b>【結果】</b>脱水率は、豚カツ、サツマイモともに「シャロウ1/2」で低かった。吸油率は、豚カツでは油量による差はみられなかった。中心温度は「シャロウ1/2」では温度上昇が遅かった。官能評価の評点法は、豚カツ、サツマイモともに外観、におい、揚がり具合、テクスチャーおよび総合において「シャロウ1/2」が有意に低い評価であった。順位法では、豚カツは、「ディープ」、「シャロウ1」、「シャロウ1/2」の順に好まれた。サツマイモの「シャロウ1/2」では仕上がりが不均一で水っぽく感じられ、脱水率の結果と一致していた。以上の結果から、油量の違いは揚がり具合に影響を及ぼすことが明らかになった。
著者
中平 真由巳 水野 千恵 明神 千穂 村上 恵 和田 珠子 安藤 真美 伊藤 知子 今義 潤 江口 智美 久保 加織 高村 仁知 露口 小百合 原 知子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2014

<b>【目的】</b>近年、簡便な揚げ調理として、少量の油で揚げる「シャロウフライ」が注目されている。前回、「シャロウフライ」は通常の揚げ調理に比べて、官能評価が低いことを報告した。しかし、これは官能評価に影響を及ぼす要因である脱水率が統一されていない条件下であった。そこで今回は、脱水率を統一して「シャロウフライ」の再評価を実施した。<br><b>【方法】</b>試料は豚カツ(業務用冷凍豚一口カツ)、揚げ油はキャノーラ油を用いた。油量は、通常の揚げ調理である揚げ種の厚さの2倍の深さ(D)、厚さの1倍(S1)、および厚さの1/2倍(S1/2)とした。温度調節付ガスコンロを用いて180℃で揚げ調理を行い、揚げ種の中心温度と油温の変化を測定した。揚げ油の物理化学的性状値として、酸価、カルボニル価、粘度、極性化合物量、および色を測定した。揚げ種について脱水率を算出し、分科会のメンバーをパネル(n=18)として官能評価を評点法(外観、油臭さ、におい、味、揚がり具合、テクスチャー、および総合)により実施した。<br><b>【結果】</b>通常調理(D、揚げ時間5分)と同じ脱水率を得るために、S1は6分、S1/2は8分を要した。官能評価の評点(外観、におい、揚がり具合、テクスチャーおよび総合)において、S1とS1/2は揚げ時間の延長により、有意に高い評価が得られた。揚げ油の化学的性状値は、カルボニル価、極性化合物量、および色においてS1/2では揚げ時間の延長とともに上昇した。以上の結果から、シャロウフライは的確な揚げ時間の延長と揚げ作業の継続により、Dと同等の風味評価を確保できることが明らかとなった。一方、シャロウフライでは、使用油の劣化は大で、油の劣化に繋がることが明確になった。
著者
松葉佐 智子 甲野 祥子 鍵屋 慎一
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2016

【目的・概要】揚げ物はカロリーが高く、揚げ油の後始末が面倒という印象を持たれおり、家庭で揚げ物を作る頻度は減少傾向にある。一方で揚げ物が好きという人の割合は7割弱という調査結果があるため、実状は揚げ物に対する嗜好は高いと考えられる。本研究では家庭で行っている揚げ方の違い(油量の違い;深油揚げ、浅油揚げ、ノンフライ)による脂質含有量を測定するとともに食味官能評価を行った(実験1)。また揚げ物は温め直して食する機会も多いため、家庭で良く用いられる、電子レンジ、オーブントースターで温め直した揚げ物の食味官能試験を行い、揚げたての状態とのおいしさの変化を明らかにした(実験2)。<br>&nbsp;【結果】(実験1:揚げ方)食材全体が油に浸かる油量で揚げる方法(深油揚げ)、1cm程度の深さの油量で裏返しながら揚げる方法(浅油揚げ)、油をほとんど使わないノンフライの3種類の揚げ方で調理した鶏むね肉のから揚げを比較したところ、深油揚げよりも浅油揚げのから揚げの方が1個当たりの脂質含有量が有意に高かった。また、ノンフライでは深油揚げ、浅油揚げのどちらの揚げ方と比較しても有意に少なく、約半分程度であった。一方、食味官能試験においては深油揚げ、浅油揚げの間に差は見られなかったが、ノンフライよりも外観、味ともに有意に評価が高く、総合評価で「おいしい」という結果が得られた。(実験2:温め直し)揚げてから6時間経過した鶏むね肉のフライを電子レンジ、およびオーブントースターで温め直したもの、および揚げたてのものについて食味官能試験を行った。その結果、総合評価ではオーブントースターと揚げたての間に有意な差は見られなかったものの、評価項目中の「肉のジューシーさ」、「肉のやわらかさ」において揚げたての方が有意に高い評価が得られた。
著者
渡邉 之人 梅田 崇之 島村 潤 嵯峨田 淳
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.588-596, 2020 (Released:2020-04-27)
参考文献数
33

本稿では,低解像度画像を対象とした特定物体認識を考える.遠距離から撮像する場合や,物体が小さい場合など,実用上物体が常に充分な大きさで含まれているとは限らない.解像度が低下し,多くの詳細なテクスチャが失われると,認識精度は大きく劣化してしまう.そこで本研究では,超解像により画像の細部を復元することで,特定物体認識の精度劣化を改善するアプローチを検討する.超解像と特定物体認識の特徴抽出とを行うネットワーク,および,特定物体認識を志向してネットワークをend-to-endで学習する損失関数を提案する.3種類のデータセットを用いた実験を行い,本手法の有効性を明らかにする.
著者
上田 晃三 清野 佳紀
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.57-60, 2008 (Released:2010-12-06)
参考文献数
11
被引用文献数
2

骨の成長・発達は,骨格の構築とともに身体の発育において非常に重要な因子である.多くの骨はいきなり形成されるのではなく,軟骨組織による足場の形成を経て骨へと変換される.このプロセスには種々の細胞間シグナル伝達,遺伝子の転写因子といった内因性の要因や力学的付加など外因性因子を含む数多くの因子が絡み合って,骨形成に影響を与えている.骨形成の一般的な過程とともに,特徴的な症状を呈する骨疾患の成因を通じて,骨形成に関与する主要な因子を概説する.
著者
遠海 友紀 岸 磨貴子 久保田 賢一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, no.Suppl., pp.209-212, 2012-12-20 (Released:2016-08-09)
参考文献数
4
被引用文献数
5

本研究の目的は,初年次教育の学習活動において学生自身が到達目標を設定することが,学生の自律的な学習態度へどのような影響を与えるのかを明らかにすることである.初年次教育の授業において学生がルーブリックを作成し評価に用いる実践を行った.質問紙調査の結果,ルーブリックを自分達で作成することにより,多くの学生が目標と省察を意識しながら学習活動を行ったことが分かった.また,学生の自由記述を分析した結果,ルーブリックを自分達で作成することは「目標への意識」「課題に対する動機づけ/責任感」「課題の成果に対する省察」「評価に対する公平感」「多様な評価の観点の気付き」と関連していたことが分かった.
著者
足立 由深 竹下 千恵 若槻 有香 岩田 京子 加藤 由加里 上野 ゆき穂 見尾 保幸
出版者
JAPANESE SOCIETY OF OVA RESEARCH
雑誌
Journal of Mammalian Ova Research (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.64-70, 2005 (Released:2005-06-04)
参考文献数
13
被引用文献数
7

ヒト初期胚発生過程の非侵襲的連続観察を目的に,Time-lapse cinematographyを構築した.倒立顕微鏡ステージ上に純アクリル製ミニチャンバーを置いた.ミニチャンバー周囲の水槽を通してCO2ガスを加温加湿後注入した.培養用マイクロドロップ(3 μl)を作製し,ミニチャンバー内に静置した.マイクロドロップが至適培養条件(37℃,pH: 7.45±0.02)に維持できるよう設定温度,CO2ガス流量を調節した.ICSIの適応で,本研究に同意の得られた症例(n=65)のICSI後卵子1個を無作為に選択し,非侵襲的一定条件下に40時間連続観察した.ICSI卵子(n=65)中84.6%(n=55)が正常受精し,分割卵に発育した.形態良好胚(G1, 2)率は76.4%(n=43)であった.形態良好胚群と不良胚群に分け,胚発生の時間経過,核小体前駆体配列および卵細胞質辺縁透明領域(halo)出現の有無を比較した.胚のクオリティと胚発生過程の時間経過,NPB配列には一定の傾向はなく,halo出現が初期胚のクオリティとの関連性を認めた.
著者
林 昌洋
出版者
一般社団法人 日本臓器保存生物医学会
雑誌
Organ Biology (ISSN:13405152)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.279-286, 2011-12-10 (Released:2014-11-26)
参考文献数
17

While careful consideration to avoid a second scourge like thalidomide is required, disadvantages for mothers and fetuses by restraint of necessary drug prescription because of too much concern about the effects on fetuses must be avoided. Information sources to evaluate teratogenicity of drugs themselves include epidemiological investigations, case reports, and animal reproduction studies and are considered more reliable in this order. And breast milk is the best source of nutrition and it also serves as a source of substances providing immunity for a newborn infant. However, there are times when nursing mothers may have to take some kind of medication, so it is necessary to evaluate the effect of drugs that are transferred to infants through breast milk, and to select medications with minimal adverse effects.