- 著者
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門田 昌子
寺崎 正治
- 雑誌
- 川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, no.1, pp.67-74, 2005
本研究の目的は,体験抽出法を用いて実際の対人相互作用を測定し,パーソナリティと実際の対人相互作用において使用されたソーシャル・スキルとの関連,パーソナリティが,対人相互作用において使用されたソーシャル・スキルを媒介して,主観的幸福感に及ぼす影響について明らかにすることであった.また,使用されたソーシャル・スキルと対人相互作用の質との関連について検証した.さらに,質問紙法を用いてソーシャル・スキルを測定し,パーソナリティとソーシャル・スキルおよび主観的幸福感との関連について検討した.分析の結果,パーソナリティと実際の対人相互作用において使用されたソーシャル・スキルとの間には関連が見られず,パーソナリティが対人相互作用において使用されたソーシャル・スキルを媒介して,主観的幸福感に及ぼす影響については明らかにされなかった.一方,質問紙を用いた分析では,外向者ほど,ソーシャル・スキルが高く,そのことが主観的幸福感の高さをもたらしていることが示された.対人相互作用に関する分析において,有意な結果が得られなかった理由として,分析対象者数の少なさが考えられた.よって,本研究結果から,実際の対人相互作用におけるソーシャル・スキルが,パーソナリティと主観的幸福感との関連を媒介していないと結論付けるのは尚早であると思われた.対人相互作用におけるソーシャル・スキルの使用と対人相互作用の質との関連については,反応性スキルを使用したと認知している人ほど,質を高く評価し,主張性スキルを使用したと認知している人ほど,質を低く評価することが示された.ソーシャル・スキルの中には,対人相互作用の質を高めるものや低めるものが存在しているのではないかと推察され,今後より多面的にソーシャル・スキルを捉える必要があるだろうと思われた.