著者
平岡 敬子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
pp.JJAM-2018-0010, (Released:2019-10-05)
参考文献数
9

目 的日本,アメリカ,インドネシアの女子大学生の子育て意識を比較することで,日本の女子大学生の特徴を明らかする。対象と方法2015年12月から2016年4月にかけて,日本,アメリカ,インドネシアの女子大学生を対象に質問紙調査を実施した。調査内容は子供の教育・子育て役割など子育てを問う11項目(4件法)及び基本属性から構成される。収集したデータの分析にMann-WhitneyのU検定,カイ二乗検定,Spearman相関分析を用いた。結 果日本185名,アメリカ101名,インドネシア188名の計474名から回答を得られた。どの国の学生もそのほとんどが子供を望んでおり,教育に男女の差をつけるべきではないと回答した。アメリカとインドネシアの学生の99.0%以上は,子供にはできるだけ高い教育を受けさせるべきだと回答したが,日本の学生の場合,そのように回答したものは66.1%であった(p<0.01)。反対に,「そう思わない」が3.3%,「どちらかというとそう思わない」が30.6%で,合わせて33.9%は高い教育を受けさせるべきとは思っていなかった。また,日本の学生は,「子育ては女性の仕事である」と考える割合が31.4%で,アメリカの学生(28.0%)やインドネシアの学生(20.7%)より高く,インドネシアの学生とは有意な差が見られた(p<0.05)。子育てにおける父親と母親の役割を別と考えている学生は,日本の場合67.6%,インドネシアの場合75.0%であり,アメリカの学生(25.0%)と比べて有意に多かった(p<0.01)。親権については,日本の学生(54.1%)とインドネシアの学生(72.2%)は,「子供が小さい場合,離婚後の親権は母親が持つ方が良い」と回答し,アメリカの学生(19.0%)に比べると有意に多かった(p<0.01)。結 論日本の学生は,子供の教育や進路指導に関しては性別による差をつけるべきではないと考えているが,「幼い子供は母親が育てるべき」など子育てに関しては性別による役割の差があると考えていた。また日本の学生にとって,子供にかかる高い教育費が子育てをするうえでバリアとなる可能性が推察された。
著者
早坂 恵莉 志鎌 瑶 赤塚 清矢
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.53-58, 2019 (Released:2019-10-07)
参考文献数
9

【目的】 医療系大学生は医療や健康に関する関心が高く,良好な生活習慣の維持に努めていると予測され,行動変容ステージは高位であると予測される。今回,医療系大学生を対象に,身体活動量,運動耐容能,生活習慣および行動変容の指標を用い評価した。【対象】 A大学保健医療学部の理学療法学科,作業療法学科,看護学科に在籍する学生30名(男性15名,女性15名)【方法】 身体特性として,身長,体重,推定体脂肪率,推定骨量,推定骨密度,推定筋肉量を測定した。 ランプ運動負荷試験にて,無酸素性作業閾値での酸素摂取量と二酸化炭素排出量を測定し, 身体活動量は 1 週間の平均歩数を用いた。また,質問紙を用いて健康度と生活習慣,行動変容,栄養摂取状況を調査した。【結果】男女ともに健康日本21(第 2 次)で推奨する目標歩数,日本人の食事摂取基準(2015版)のエネルギー摂取量を下回った。また,DIHAL. 2の健康度・生活習慣パターン判定より,半数以上が「要注意型」「生活習慣要注意型」「健康度要注意型」に該当し,行動変容評価では,「前熟考期」から「準備期」に該当した。【結語】 医療系大学生のヘルスプロモーションにおいては,個人が個々の生活習慣を自覚した上で性差を考慮し,身体活動量のみならず食事に関する状況を踏まえ,行動変容ステージを把握しアプローチする必要があると考える。
著者
坂出 祥伸 大形 徹 大庭 脩
出版者
関西大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

私たちは、上記の課題について、哲学・医学・古文字学の三方面から二年かけて研究した。私たち三名の研究者が毎週1回集まって(引書)を読み、その注釈と翻訳を行った。また私たちは2年間に5回の研究発表会を開いた。第1回1993年9月11日京大会館 猪飼祥夫「脈書」と「引書」の性格第2回1993年11月4日京大会館 工藤元男睡虎地泰簡「日書」に現れた治病・鬼神関係資料をめぐって第3回1994年10月22日近つ飛鳥博物館 永田英正 長城守備隊の勤務第4回1994年11月20日京大会館 大形徹 新出土資料より見る鬼と気の問題第5回1995年1月29日京大会館 坂出祥伸 出土医書にみえる自然リズムにもとづく治病・養生 大庭脩 武威早灘坡王杖簡冊の復原 以上の共同研究によって、私たちは以下のような新しい知見を得た。1)張家山出土<引書><脈書>には早くも、天・地の気の運動と人間の身体の気の運動とを同調させれば、長生が獲得できるという考えが説かれている。2)<引書><脈書>には、疾病の原因として、気の流れの不調が挙げられている。しかし、鬼による病因論は、これらの資料には見えない。3)馬王堆漢墓医書と同様に、張家山出土医書も、鍼による治療はまだ記述されていない。それらは灸による治療を記述しているに過ぎない。また、これらの資料には、十二経脈に関する祖型的記述は見えているが、しかし、それらはまだ五臓と関係づけられていない。
著者
筒井 雄二
出版者
日本動物心理学会
雑誌
動物心理学研究 (ISSN:09168419)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.57-70, 2003 (Released:2008-01-16)
参考文献数
45

This study examined the effects of administration of anticholinergic drugs and medial septum lesion on the performance of the successive delayed matching-to-sample (S-DMTS) task in rats in order to clarify the relationship between the central cholinergic system and the modality effect in rats' short-term memory. A pair of visual and/or auditory stimuli was presented with delay intervals to rats. They were required to distinguish whether the modality of the 2nd stimulus (S2) for the pair was the identical to or different from that of the 1st stimulus (S1). Scopolamine at 0.03-0.1mg/kg (i. p.) and mecamylamine at 1-3mg/kg (i. p.) disrupted the performance of S-DMTS task irrespective of the modality of S1, whereas methyl-scopolamine and hexamethonium did not. These results suggest that muscarinic and nicotinic receptors in rats' brain are correlated with short-term memory for both visual and auditory stimuli. Lesion to medial septum also disrupted the performance of S-DMTS task when the visual stimulus was presented as S1, however, the performance was not changed when the auditory stimulus was employed. These findings suggest that the medial septum is correlated with the mnemonic processes of visual but not of auditory stimuli.
著者
花輪 尚子 才木 祐司 山口 昌樹
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.49-56, 2008-02-25 (Released:2017-07-28)
参考文献数
24
被引用文献数
2

The purpose of this study is to evaluate the sedative effect of fragrances which have existed in Japan since long time ago such as sakura, ume and fuji. 17 healthy female Japanese subjects were enrolled (21.5±1.3yr). The salivary amylase activity (sAMY) was analyzed during the inhalation of fragrance. Using questionnaire, subjective evaluation was conducted. aAMY was significantly lower during inhalation of fragrance than control. Inhalation of fragrance affected subjects' work performance. Our results indicated that the Japanese fragrances induced the effect in Japanese females, as assessed by both analysis of sAMY and work performance.
著者
諸星 美智直
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.173-159, 2008-01-01 (Released:2017-07-28)

函館市中央図書館蔵「蠣崎文書」は、松前藩家老将監流蠣崎氏の別家蠣崎伴茂(松涛)に始まる藩士の家に伝わった文書群で、『万古寄抜萃』(万延元年)、無題狂歌写本(『狂歌百人一首闇夜礫』の写本)、『鶏肋録』、『松涛自娯集』など方言音韻の特徴が強く認められる文書が多い。このうち、『万古哥抜萃』・無題狂歌写本には母音のエをイと表記する例が多いが語頭の混同例はまれで、現在の浜ことばとは異なる傾向が指摘できる。母音のイ段をウ段に表記する例が「し」を「す」とする例を中心に見られ、力行・タ行を濁音表記する例も語頭以外で多用されている。文書中には和漢洋に亙る古典籍から実用書に至る様々な文献からの抜書がなされており、『鶏肋録』所収の『徒然草』抄写本の本文にもイとエとの混同、力行・タ行に濁点を付した例が多く拾える。このような音韻表記は、意図的というよりは書写者たる松前藩士の学問が方言音韻の環境の中でなされたことによる無意識的な書記行為に起因する可能性がある。
著者
福本 一郎 根本 俊光 佃 朋子 越塚 慶一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.3, pp.201-205, 2015-03-20 (Released:2015-04-17)
参考文献数
14

当科において2009年10月から2011年12月の27カ月間に急性感音難聴として入院加療を行った95例を検討し, 診断後に聴力が悪化した症例とその他対照群とを比較した. 聴力悪化の条件は250Hz から4,000Hz の5周波数の聴力閾値平均が10dB 以上悪化, ないし連続した2周波数で各15dB 以上悪化したものとした. 悪化群は95例中22例 (23.2%) で, 割合については過去の報告と大差はなかった. 突発性難聴の重症度分類を用いると, 悪化群22例は対照群73例に比して難聴のグレードは高かったものの, 聴力予後は不良ではなかった. 22例の中にはステロイド依存性難聴 (6例) や内耳窓閉鎖術施行例 (4例) がみられたが, 外リンパ瘻疑い症例も含め原因不明なもの (10例) も多く認めた. 急性感音難聴と診断された後に聴力が悪化した場合は, 副腎皮質ステロイドの慎重な漸減や内耳窓閉鎖術など, 症例に応じた治療法の選択が重要であると考えられた.

1 0 0 0 OA 律令の研究

著者
滝川政次郎 著
出版者
刀江書院
巻号頁・発行日
1931
著者
唐川 正洋
出版者
関西医科大学医学会
雑誌
関西医科大学雑誌 (ISSN:00228400)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3-4, pp.188-195, 1993-12-20 (Released:2013-02-19)
参考文献数
16

左主幹部を責任病変とする急性心筋梗塞は非常に重篤であり,早期の診断と適切な処置が必要である.それゆえ,心電図より冠状動脈の狭窄,閉塞の程度を推測することは大切である.緊急冠状動脈造影を行った302例のうち,左主幹部病変を含む左前下行枝近位部で閉塞が認められた89例の初回急性前壁心筋梗塞の心電図について検討した.その結果,3枝病変例,左主幹部病変例では1,2枝病変例に比し心筋梗塞急性期にみられる典型的な前胸部誘導のST上昇を認める頻度は約50%と低く,むしろST低下を認めた例が30%存在した。また広範な心内膜虚血時に見られると報告されているaVR誘導のST上昇は多枝に病変があるほど頻度が高く,特に左主幹部病変例では92%の例に認められた.以上の所見より急性心筋梗塞時に見られたaVR誘導のST上昇は重症冠状動脈疾患,とりわけ左主幹部病変の診断に有用であると考えられた.