著者
前嶋 敏
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.182, pp.115-145, 2014-01-31

本論文は、一七世紀中葉~一八世紀前半の米沢藩中条氏における戦国末期~近世初頭の当主の系譜に対する認識について、中条氏に伝来した系図・由緒書等および同氏の文書整理・管理の状況から検討するものである。本論文では以下の点を指摘した。①中条氏では、一七世紀中葉~後半頃の段階においては、戦国末期の当主が忘れられている状態であり、とくに中条景泰という当主の名を認識していなかった。しかし、一八世紀前半にはそれを景資という当主の改名後の名としている。なお、さらにその後に作成された系図等では景資と景泰は別人と理解されている。②中条氏では、一七世紀中葉以降には、文書の整理・収集等を通じて系譜の復元が行われていた。そして元禄四~七年の間に景泰の名を記す文書を収集し、その名を認識するにいたったと考えられる。また同氏では一七世紀後半までの文書整理と同じ方針でそれ以後も管理を継続していた。このことは、中条氏が同氏の系譜・由緒等に対して高い関心を持ち続けていたことを示しており、戦国末期の当主に対する認識をその後さらに変化させたことにもつながっていたと思われる。
著者
相良 洋子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.1163-1170, 2009-11-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1

月経随伴症状の代表的なものとして月経困難症と月経前症候群を取り上げ,一般的事項と心身医学的対応について概説した.月経困難症では,一般的な対処方法についての正しい情報を提供し,同時に月経を主体的にとらえる姿勢を養うことが重要である.器質的疾患がある場合には,それが患者のライフサイクルに与える影響をも視野に入れて対応する.また性的外傷体験をもっているような場合には,特に受容的態度が必要である.月経前症候群では,まず前向的な症状調査で正しく診断することが重要である.そのうえで,この症候群がbiopsychosocialなものであることを認識し,薬物療法と同時に患者の思考や行動パターンにもアプローチしていく.
著者
永尾 雅哉
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

Marrubium vulgareという植物の抽出液中に6-octadecynoic acid (6-ODA)という三重結合を有する珍しい脂肪酸見いだしたため、その機能について解析した。まず合成により量を確保した上で、核内受容体のPPARγのアゴニストとして機能し、前駆脂肪細胞の分化系を用いて、脂肪蓄積促進活性があることを確認した。また、GPR40という別の細胞膜に存在する受容体を介して、膵臓β細胞株であるMIN6において用量依存的にインスリンの分泌を促進することを見いだした。また、飽和脂肪酸であるパルミチン酸の脂肪毒性による小胞体ストレスの誘導に対して保護的な効果を示すことを見いだした。
著者
Jaehwan KIM
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.19-0258, (Released:2019-08-12)
被引用文献数
4

An 11-year-old, castrated male, Yorkshire Terrier was presented with acute vomiting after chicken bone ingestion. The dog had been diagnosed with hyperadrenocorticism previously and showed acute splenomegaly and signs of systemic inflammatory response syndrome during hospitalization. On diagnostic imaging, acute splenic vein thrombosis was found, concurrent with pancreatitis and gastritis. The spleen showed marked enlargement and hypoechoic lacy appearances on ultrasonography, mimicking splenic torsion. On the histopathologic report, only splenic hemorrhage and congestion with large splenic vein thrombosis were identified. After splenectomy, the dog completely recovered and was discharged.
著者
遠藤 幸男
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.34, no.12, pp.1046-1053, 1980-12-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
36

テレビ放送におけるゴースト対策の研究開発の動向について, ゴーストの測定および評価法の開発, 電波吸収壁やSHF放送の実用化など, 最近の動向を主に解説する.
著者
古今和歌集より
出版者
東芝レコード
巻号頁・発行日
1959-03
著者
西條 政幸
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究により.世界で初めてウイルス学的に証明されたアシクロビル耐性HSV-1による新生児脳炎患者の報告をした.DNApol関連ACV耐性HSV-1の性状を解析し,多くの耐性株は神経病原性が低下しているものが多いものの,中には病原性が維持されているウイルスも存在する.また,DNApol関連ACV耐性HSV-1のほとんどがガンシクロビルに感受性を有し,逆にフォスカルネットには交叉耐性を示すことが明らかになった. ACV耐性HSV感染症の増加等が予想されることから,今後,病原ウイルスの薬剤感受性を調べる耐性の構築と,その結果に基づく適切な治療ができるようにする必要がある.
著者
鈴木 将史
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.167-170, 2004-02-27

2つの事象AとBの独立性については,いくつかの同値な定義が与えられるが,学校教育の現場では,事象の独立性について生徒が正確に理解することの困難さがしばしば指摘される。本報告では,2つの事象の独立性については,条件つき確率を用いた定義の方が,直観を反映していて理解しやすいと結論づける。しかし3つ以上の事象の場合へと一般化しようとすると,調べなければならない式が多くなり,確率の積で定義する方が簡潔で優れている。学校教育でもこのような観点で定義を見直すと,生徒の理解が深まるのではないだろうか。
著者
de Seiiĉi Kato
出版者
Aoŝima
巻号頁・発行日
1959
著者
佐藤 広英
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.17-28, 2012-09-30 (Released:2017-05-02)
被引用文献数
2

本研究の目的は,他者の匿名性を情報の種類の観点からとらえ,コミュニケーション行動に及ぼす効果を検討することであった.研究1では,匿名性を他者情報の種類の観点から分類するため,CMC場面を想像させる場面想定法を用いて検討を行った.その結果,他者情報は,私的情報,属性情報,識別情報に分類され,特に他者の属性情報が初対面の相手に対するコミュニケーション行動に影響を及ぼす可能性が考えられた.研究2では,匿名なCMCにおいて他者の属性情報を実験的に操作し,コミュニケーション行動に及ぼす効果を検討した.結果は次の3点に集約された.第一に,他者の属性情報は,効果は弱いものの,コミュニケーション中の不安感を低減させ,発言量を促進することが示された.第二に,他者の属性情報は,敬語表現の増加やパラ言語の減少など,対面場面に近いコミュニケーション行動を促進していた.第三に,自己開示および親密感に対する他者の属性情報の効果は見られなかった.最後に,他者の私的情報および識別情報による効果について考察を行った.
著者
松田 康子
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.132, pp.149-165, 2018-08-30

This paper attempts to consider current issues and future visions of a qualitative study on the lived experience of people with mental health consumers/survivors/ex-patients. Note that no difference exists between the collection of data regarding their lived experience and exploitation or plunder. Though model stories based on their lived experience, they were confined to acceptable stories in society. If lived experience explains model stories, I fear that social environment may not take diversity into account, causing not inclusion but exclusion. In future visions, I suggested that researchers should be cognizant of recognizing diversity, asking a primary research question.“what is it”in order to discover and give a name again. Another important point is that researchers attempt to adopt a caring perspective in their studies.
著者
羽根田 利夫
出版者
天文同好會
雑誌
天界 = The heavens
巻号頁・発行日
vol.12, no.137, pp.313-315, 1932-08-25
著者
周 燕飛
雑誌
AGI Working Paper Series
巻号頁・発行日
no.2017, pp.1-24, 2017-08

最低賃金が長期にわたって相対的に低い水準に抑えられ、働く貧困層(ワーキングプア)が増加している中、基本生計費に相当する賃金額の支払を企業に促す、いわゆる「生活賃金」運動は、米英をはじめ一部の国や地域において1990年代以降に盛んに行われている。日本でも、労働組合や一部の研究者による生活賃金の試算が2000年代以降に行われている。しかし、日本では生活賃金運動は米英のように盛んではなく、生活賃金はまだ馴染みの薄い概念である。そこで、本稿は、日本の「ワーキングプア」の賃金水準の現状を紹介しつつ、米英の文献を中心に、生活賃金運動の背景、生活賃金の理論体系、生活賃金条例に対する企業の反応、生活賃金の推計方法について整理した。さらに、日本人における生活賃金のあるべき水準について、既存の推計値と比較しながら、独自の試算も行った。試算の結果、日本の標準世帯(夫婦と子ども2人の4人世帯)における生活賃金は、片働きの場合が2,380円(2015法定最低賃金の298%相当)であり、共働きの場合が1,360円(2015法定最低賃金の170%相当)となっている。男性、40代以上、大学・大学院卒の高学歴者、勤続年数20年以上の者、正社員、大企業の従業員、専門・技術的職業や管理的な仕事に従事している世帯主は、平均賃金が高く、生活賃金を得ている確率も高くなっている。