著者
岡本 信照
出版者
日本イスパニヤ学会
雑誌
HISPANICA / HISPÁNICA (ISSN:09107789)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.56, pp.1-19, 2012

本稿はアントニオ・デ・ネブリハのラテン語で書かれた著作である『弁明書』(1507?) を通じて彼の言語思想を浮き彫りにしようとするものである。<br>1505年、ネブリハがウルガータ聖書の校訂に従事していたとき、異端審問長官ディエゴ・デ・デサに聖書釈義の原稿を没収された。『弁明書』とは、ネブリハが弁護を依頼する目的でシスネロス枢機卿宛に差し向けた書簡である。そのため、この小冊子には人文主義者としてのネブリハの真意が明確に顕れていると考えられる。この書簡の内容を分析すると、この人文主義者は聖書の原典の言語を重視しており、一種の言語純化論者であったことが明らかとなる。<br>最終的には、彼の『カスティーリャ語文法』(1492) の編纂目的が前述の言語観と同一の源から、いかにして発したかを示す。
著者
野口 敦弘 納富 一宏 斎藤 恵一
出版者
バイオメディカル・ファジィ・システム学会
雑誌
バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 (ISSN:13451537)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.31-39, 2013-06-28 (Released:2017-09-04)
参考文献数
13

現代社会において,暗証番号やパスワードの不正利用による被害が大きな社会問題となっている.被害の代表例として,銀行ATM操作時における背後からの覗き見による暗証番号の盗難が挙げられる.そこで,本研究では,背後からの覗き見対策として,タッチスクリーン押下時に取得可能な特徴を自己組織化マップにより学習・分類し,その類似度から本人の識別を行うリズム認証手法について提案する.リズム認証は,ボタンがないため,入力情報が読み取られにくいことが利点として挙げられる.また,銀行ATMと同様に,タブレットPCやスマートフォンもタッチスクリーン上で入力を行うため,本手法により,覗き見攻撃耐性ができると考える.本稿では,リズム認証におけるタッチスクリーンデバイスを用いた本人認証手法の適用性について検証することを目的として,ピアノ経験者,本学情報学部または情報工学専攻の学生,その他の人に対して実験を行った.その結果,ピアノ経験者が最も高い99.2%の平均認証精度を得た.
著者
原田 篤史 漁田 武雄 水野 忠則 西垣 正勝
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.1997-2013, 2005-08-15

現行のユーザ認証方式は,汎用性と利便性の高さから文字をベースとしたパスワード方式が主流となっているが,人間にとって長くランダムな文字列を記憶することは容易ではなく,新たなパスワードを設定するたびにユーザは記憶に関する大きな負担を要求される.そのため,人間の画像認識能力の高さを利用して認証情報の記憶の負荷を低減させる画像認証方式が注目されている.しかし,多くの画像認証方式は毎回の認証時にパスワード画像がディスプレイ上に表示されるため,認証時の覗き見攻撃に対して脆弱であった.そこで本論文では,有意味なオリジナル画像に対してモザイク化をはじめとする不鮮明化処理を施すことで一見して無意味な画像を作成し,それをパスワード画像として用いることで覗き見攻撃への耐性を有する画像認証方式を提案する.正規ユーザは,パスワード画像登録時に不鮮明化処理を行う前のオリジナル画像を見ることができるため,不鮮明化されたパスワード画像をオリジナル画像の持つ意味と結び付けて記憶することができる.そのため,認証試行時には画面上に表示される自身の不鮮明なパスワード画像を容易に再認識することが可能となり,記憶の負荷は小さくなる.一方,オリジナル画像を見ることのできない他のユーザが当該ユーザの認証行為を覗き見たとしても,意味を認識できない不鮮明なパスワード画像を記憶にとどめておくことは困難である.また,他者が正規ユーザからパスワード画像の意味を言葉で教えられたとしても,不鮮明なパスワード画像を教えられた意味どおりに認識することは困難であるため,本方式は正規ユーザからのパスワード漏洩に対してもあるレベルの耐性を有する.
著者
金森 朝子 久世 濃子 山崎 彩夏 バナード ヘンリー マリム・ティトル ペーター 半谷 吾郎
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.29, 2013

&nbsp;ボルネオ島マレーシア領サバ州北東部に位置するダナムバレイ森林保護区は,第一級保護林に指定されている低地混交フタバガキ林である.保護区内にある観光用ロッジ Borneo Rainforest Lodge周辺2平方 kmでは,エコツアーのガイドや観光客によって豊富な動物相が確認されており,今後はエコツーリズムだけでなく学術研究や学習活動の利用が期待されている.しかし,これまでに生息相の把握を目的とした本格的な調査は行われておらず,基礎的なデータ整備を行う必要がある.そこで,本研究ではカメラトラップ法による調査を実施した.また,調査期間中には,数年に一度爆発的な果実量の増加をひきおこす一斉結実が起こった.哺乳類相の季節変化についても知見を得たのであわせて報告する. 調査方法は,赤外線センサーを内蔵した自動撮影カメラを,調査地内にあるトレイル 8本(計11km)に 500m間隔で 20台設置した.カメラは,常に 20台が稼働するように,約 1ヶ月間隔でカメラ本体もしくは SDカードと電池交換を行った.調査期間は,2010年 7月から 2011年 8月までの約 14ヶ月間,総カメラ稼働日数は 6515日であった.その結果,少なくとも 29種の哺乳類が撮影された.もっとも高い撮影頻度指標(RAI)の種は,順にマメジカ 0.11(撮影頻度割合の33.8%),ヒゲイノシシ 0.07(24.3%),スイロク0.02(7.5%)だった.その他,撮影頻度は低いものの,ボルネオゾウ,オランウータン,マレーグマ,ビントロン,マーブルキャット,センザンコウなどが撮影された.また,一斉結実期には,マメジカ,ヒゲイノシシ,スイロクの RAI値と果実量の増加に正の相関がみられた.ヒゲイノシシは,一斉結実期よりコドモを連れた親子の写真が増加する傾向がみられた.これらの結果を用いて,本調査地の哺乳類相と一斉結実による影響を詳しく紹介する.
著者
オットマン エスタ・ティーナ
出版者
Japan Association for Middle East Studies (JAMES)
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.1-28, 2016-03-15 (Released:2018-03-30)

戦争と暴力が健康に及ぼす影響、とりわけ精神的健康に及ぼす影響については世界保健機構の年次報告書でもしばしば強調されてきた。しかしイスラエル・パレスチナ紛争では、紛争当事者たちは、住民たちが物質的にも精神的にもすこやかに暮らすために必要な政治的・領土的妥協を行うことを延々と拒み続け、紛争は「解決不能な紛争(イントラクタブル・コンフリクト)」と呼ばれるほどに長期化している。そしてこの状況に非当事者たちは当惑状態にあるとも言える。暴力が中東・北アフリカ一帯に広がる現在においては、こうした当惑はいっそう強まっている。公式レベルでの紛争解決プロセスも断続的に行われてきたとはいえ、過去から現在に至るまでその主眼は国家間の平和構築にあった。たとえ「国家対被占領実体」という非対称な構図であっても、国家間の平和構築がモデルとなっている。他方、紛争のエートスは、紛争当事者の語りや民族/国民的(ナショナル)な言説によって決定づけられている。こうした語りや言説では、多大なる苦難と破壊を作り出してきた破局の出来事の歴史とは「例外的」なものだとする主張が繰り返されている。個人・集団いずれのレベルでも、こうした主張を繰り返す人びとは、深刻な精神的抗争状況の内に閉じ込められており、それはある形での集合的トラウマの存在を暗示するものとなっている。この点は、和平支持者たちが反発を受けて締め出されることが頻発し、和平のための更なる政治的取り組みが実質的に妨げられている点にも表れている。集合的トラウマとは、戦争のトラウマ以上の射程を持つ概念だと言い得るものであり、それが和平への大きな障壁として検討される必要は明らかである。この問題を迂回しての和平の進展はない。しかし、「トラウマ」とは、それ自体進化過程にある、矛盾を抱えた記号表現(シニフィアン)である。すなわち「トラウマ」とは、存在論的かつ認識論的論争の主題なのだ。本論文は、トラウマをめぐる認識論および「集合的トラウマ」の社会的構築、ならびにトラウマの世代を超えた継承の理論の批判的分析を狙いとし、かつ、これらトラウマにかかわる諸問題が、イスラエル・パレスチナ紛争においてはナチスによるホロコーストとパレスチナ人の経験したナクバと複雑な関係性をもつなど、独特な形で連関している点についての評価を行う。この長きにわたるパレスチナ・イスラエル紛争についての研究の大半は、歴史的な係争事案となってきた資源の分割を志向している。しかし、苦しみを抱えたものたちがその苦悩が抱える病的な循環構造を再考するなどして、トラウマは過去についての理解の破損だと捉え直し、トラウマとは記憶のもつ傷だと解釈されるならば、そのときこそ紛争の根源にあるものはひび割れた記憶だということになる。紛争当事者たちの姿勢を心理的・集合的トラウマの重なり合いという視座のもとに位置づけることは、当事者たちのトラウマ的病状ゆえにいかに紛争それ自体が永続的な閉塞状況に閉じ込められているのかという点を決定的に照らし出す。広く言うなれば、紛争のエートス(あるいは複数の紛争のエートス――というのは当該地域にはパレスチナ人の代表を自己主張するパレスチナ政府が二つあるためである)とは、トラウマゆえに事態を進展させられない一連の諸アクターの間で作られるものだとして理論化するか、あるいはトラウマの結果として間接的ないしは無意識にトラウマをシニカルな形で言説として利用する一連の諸アクターの間で作られるものだとして理論化することができる。いずれの理論も、政治的な和平合意の交渉能力に対して大きなインパクトをもつ。こうした新たなアプローチは、ある国際的な研究者たちから支持を得ている。かれらは「トラウマをもたらす出来事の理解、およびトラウマをもたらす出来事が経験され、感知され、知覚され、記憶され、忘却される方法に関心を抱くようになっており、同様に、それらの出来事が世界政治のなかの複数の規範、アイデンティティ、そして利害関心に影響し、かつ影響される方法にも関心を抱くようになった。」(Resende and Budryte, 2014, loc. 245)それゆえ本論考はこうした新たなアプローチのなかに位置づくものである。
著者
山腰 修三
出版者
慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所
雑誌
メディア・コミュニケーション : 慶応義塾大学メディア・コミュニケーション研究所紀要 (ISSN:13441094)
巻号頁・発行日
no.62, pp.149-160, 2012-03

1 問題の所在2 全国ニュースとローカルニュースにおける2008年「慰霊の日」報道の比較3 2010年以降の全国ニュースにおける「慰霊の日」報道4 全国ニュースの「慰霊の日」報道における「他者」としての沖縄像

1 0 0 0 東洋史研究

著者
東洋史研究会 [編]
出版者
政經書院
巻号頁・発行日
1935
著者
IWASA Mitsuhiro
出版者
東京昆蟲學會
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.781-797, 1995-12-25
参考文献数
21
被引用文献数
1

The thirty-five species belonging to 11 genera of Japanese Sepsidae are reviewed with a comprehensive key for identification. Themira kanoi is described as new to science : this species is identical with T. paludosa sensu IWASA, nec Elberg. A formerly known species, Themira nigricornis MEIGEN is proven to be T. lutulenta OZEROV. Ortalischema maritima OZEROV and Sepsis bicornuta OZEROV are newly recorded from Japan.