著者
桝本 晃章
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.568-570, 2008 (Released:2019-06-17)

原子力の広報は一般広報と違い,世論獲得競争である。世の中には様々な考えがあり,異論や異説がある。このことを十分に認識したうえで,共感と納得をいただくため,説明をし,広報をするのだ。そのためには“相手を知り,己を知る”必要がある。また,透明性を高めるためには,「全部出した」といえる状況を組織内部に作り出すことも必要である。メディアの記者を始めとして,一般的には,納得をしてもらうため,討論よりも,時に,ダイアローグ(対話)が重要である。一方で誤った報道には毅然とした対応も必要である。 中越沖地震では,TV報道の影響の大きさが改めて認識された。文字のメディアとは異なり,即時的,直感的な訴えをするTV報道への対応を真剣に考えなければならない。
著者
新堀 左智 日高 文子 上地 由朗 Niihori Sachi Ayako Hidaka Yoshiaki Kamiji
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.18-27, 2015-06

本研究は2013年に世田谷区立松ヶ丘幼稚園5歳児年長組を対象として実施した。幼稚園園庭のプランターを用いた「イネ栽培体験」を基軸に,園児や保護者を対象に「ポットイネの観察」を合わせた2つの活動を展開した。イネを通じた食育活動から,子どもが示した反応の記録と保護者に実施したアンケート結果を絡めて,本活動の効果や役割を検討した。子どもは,イネ栽培の導入として位置づけられる概要説明時から栽培期間,調整作業を終えるまで,イネに興味を持って積極的に向き合っていた。このことは,イネ栽培を通じた他者との関わりを含めて「楽しさ」の芽生えが作業を「遊び」にしていることに加え,植物栽培および食べ物つくりにとって格好の場である幼稚園で実施したことが要因になっていると考えられた。また,本活動によって子どもが興味を持ってイネと関わることにより植物を育てる面白さを感じ,自分のおコメを得るという目的意識の中で,責任感や連帯感,思いやりを育むといった多岐にわたる効果が得られた。
著者
山本 利一 佐藤 正直
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.45-53, 2013

本研究は,中学校技術・家庭科(技術分野)の生物育成に関する技術を指導する際,タブレット端末を学習支援に活用した授業を構築し,実験授業を通してその効果を検証するものである.タブレット端末の特徴である,モバイビリティを活かして,栽培活動の場面において生育方法に関する情報を収集したり,カメラ機能を活用し栽培記録を取りそれらを整理することができる.実験授業では,中学3年生233名を対象にタブレット端末を4時間活用し,その教育効果を検証した.その結果,タブレット端末を利用することで栽培学習に関する興味・関心が高まると共に,栽培技術に関する知識の定着に効果が示された.
著者
小口 高 近藤 康久
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

オマーン内陸部のワディ・アル=カビール盆地は、大規模な山地であるハジャル山脈の南麓に位置する。盆地には涸れ川(ワディ)が分布しており、とくに東から流入するワディ・アル=カビールと、北から流入するワディ・フワイバが顕著である。本地域は1988年にユネスコの世界文化遺産に登録された「バット、アル=フトゥム、アル=アインの考古遺跡群」の一部を含み、石積みの墓などの完新世中期の人類遺跡で知られる。さらに旧石器時代の遺物も発見されており、日本、米国、ドイツなどの考古学者が近年活発に調査を行っている。 演者らは2013年初頭にワディ・アル=カビール盆地とその周辺の地形と地質を調査した。その結果、興味深い斜面地形、河川地形、表層堆積物が確認された。その一例は、盆地の北東部に位置する比高300 m程度の山地と山麓の地形(図1)である。山地の中部~下部の斜面には、基板岩の構造を反映する帯状の凹凸がみられ、凸部(図1の暗色部、A)には石器の材料となる良質のチャートが含まれる。山地斜面の谷の両脇には開析された崖錐斜面(B)が分布する。山麓の一部には扇状地がみられ、相対的に古いもの(C)と新しいもの(D)を識別できる。さらにその下方にはワディ・アル=カビールが形成した氾濫原が分布している(E)。崖錐斜面や扇状地の地表面および堆積物から、中期旧石器などの考古遺物が発見された。 既存研究によると、中東地域の開析された崖錐斜面は氷期~間氷期の気候変化を反映する。現地観察によると、扇状地や氾濫原における完新世中期以降の地形変化は概して不活発であり、それ以前に大規模な堆積を含む顕著な地形変化があったと考えられる。今後、地形変化の実態と人類史との関係を、さらなる現地調査を通じて詳しく検討する予定である。
著者
塚本 友康 清水 愛 山本 敦 小玉 修嗣 上茶谷 若 井上 嘉則
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.58-64, 2010
被引用文献数
1

夾雑成分の多い試料から親水性農薬を簡便かつ迅速に測定するために,陰イオン交換基と長鎖疎水基を併せ持つ新規逆相陰イオン交換型(RP-SAX) 固相抽出剤を合成した.RP-SAX固相抽出剤は,グリシジルメタクリレート,グリセリンジメタクリレート,ステアリルメタクリレートを懸濁重合によって合成し,陰イオン交換基としてジメチルエチルアミンを導入した.合成したRP-SAXをシリンジ型カートリッジに充填し,野菜抽出液中からのアセフェートの固相抽出により,その機能を評価した.野菜抽出液中のアセフェートは定量的にRP-SAXに吸着し,50% (v/v) メタノールで調製した 30 mmol/L リン酸三ナトリウム溶液 3 mL で溶出された.その溶出液をHPLC分析した.アセフェートの検出は紫外可視光検出器で行った.アセフェートは 5 mg/L となるように野菜抽出液に添加した.測定の結果,野菜抽出液中からのアセフェート回収率は77~100% であった.
著者
梶原 健寛 前馬 恵美子 加賀谷 重浩 井上 嘉則 上茶谷 若 梁井 英之 齊藤 満 遠田 浩司
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.629-634, 2011-08-05
参考文献数
22
被引用文献数
1 5

カルボキシメチル化ペンタエチレンヘキサミン(CM-PEHA)を導入したキレート樹脂を用いてAsを分離濃縮することを目的とし,Fe(III)を担持させたCM-PEHA型樹脂を用い,Asの吸着・溶出に関する基礎検討を行った.Fe(III)担持CM-PEHA型樹脂は,As(V)をpH 4 - 6で最大に吸着した.As(III)はほとんど捕集されなかったが,次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いてAs(III)をAs(V)に酸化することにより吸着可能であった.吸着したAs(V)は水酸化ナトリウム溶液を用いることで容易に溶出でき,ICP発光分光分析にて定量可能であった.これらにより,試料水中のAs(V)量,As(III)とAs(V)との合量をそれぞれ求めることが可能であり,これらの差からAs(III)量を求めることでAs(III)とAs(V)とを分別定量できる可能性が示された.本法は,地下水認証標準物質(ES-H-1)に含まれるAsの定量に適用可能であった.
著者
井上 千晶 長島 玲子 松本 亥智江 山下 一也 Chiaki INOUE Reiko NAGASHIMA Ichie MATSUMOTO Kazuya YAMASHITA
出版者
島根県立大学短期大学部出雲キャンパス
雑誌
島根県立大学短期大学部出雲キャンパス研究紀要 (ISSN:18824382)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.9-17, 2010

本研究の目的は尿失禁を有する地域在住一般女性高齢者の特性を明らかにすることである。在宅で生活する65歳以上の女性高齢者82名に対し、聞き取り調査と身体機能測定及び体組成計測を行った。今回は、尿失禁の有無と頻度、自覚的重症度と身体機能、筋肉量との関連を検討した。結果、尿失禁の有無、自覚的重症度と長座位体前屈、尿失禁の頻度とTUG、開眼片足立ち、FRに関連が見られた。また、筋肉量では、体幹筋肉量と尿失禁に関連が見られたが下肢筋肉量の減少と尿失禁に関連があるという結果は得られなかった。身体機能と筋肉量の分析から、尿失禁と体幹筋肉量、バランス機能、柔軟性、歩行能力に関連があることが示唆された。
著者
須永 将史
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.241-263, 2018-05-31 (Released:2019-06-20)
参考文献数
31

本論文は,身体接触を伴うケア実践において性別がどのように話題化され,扱われるのかを焦点とする.扱うデータは,2011 年3 月11 日の東日本大震災以降,仮設住宅等でなされてきた足湯ボランティア活動を使用している.ケア実践における身体接触は,親密性を提示しうる一方,プライバシーやセクシュアリティに抵触する可能性があり,両義的なものである.本論文では,こうした背景のもと,参与者がどのように相互行為を処理していくのかを解明する.相互行為の解明に当たっては,会話分析の手法を採用する.とりわけ重要なのは,身体接触を通じて参与者の性別がどのように話題化されるのかという点にある.本論文において筆者は,参加者が性別の話題化を,「冗談」として構成する実践を記述する.この実践により,参与者たちは,ケアの両義性という問題をシリアスに扱うことを回避し,円滑に相互行為を進めているのである.
著者
冨江 直子
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.95-119, 2017-05-31 (Released:2019-06-20)
参考文献数
50

米騒動は,米価の高騰に苦しんだ人びとの生活要求の叫びであった.米を求める民衆の蜂起は,日本全国に拡大し,大暴動となった.「米騒動後」の社会においては,普通選挙運動や労働運動を中心とする社会運動が大きく飛躍し,近代的市民の諸権利獲得運動の新たな段階の到来が語られた.米騒動は,民衆の生活要求というものが,政治的・社会的に無視することのできない大きな力をもつことを知らしめたのであった. しかし,米を求める民衆の暴動と「米騒動後」の社会とは,無媒介につながっていたわけではない.米騒動は,同時代の知識階級の人びとによる意味づけの過程を経て,「米騒動後」に来るべき社会構想へと媒介されていった. 本稿は,生存権への関心から,米騒動をめぐる〈意味づけの政治過程〉を分析する.近世と近代の二つの「生存権」論が交差し,交替していく過程をそこに見ることができるからである.米騒動は,近代社会における市民の権利義務――シティズンシップ――としての生存権への道の始点に位置づけられた.それは同時に,伝統的世界における民衆の生存権――モラル・エコノミー――を求める道の終点でもあった.
著者
盛山 和夫
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.14-27, 2016-05-31 (Released:2019-06-20)
参考文献数
24

社会のあり方をめぐっては,かつては資本主義か社会主義かというイデオロギー対立があった.今日,その意義は失われているが,代わりに,いわゆる「大きな政府か小さな政府か」というイデオロギー対立が出現している.一方の極にあるのは新自由主義で,市場システムの効率性を前提に,社会保障など政府の経済への介入はできるだけ少ない方が望ましいと考える.他方の極には,福祉の理念的価値を重視するあまりに,福祉サービスや支援を提供することに伴う資源条件や制度的しくみへの考察を「不純」なこととして排除する福祉絶対主義がある.この立場は,脱生産主義といった考え方やワークフェアへの短絡的な批判などに現れている. 新自由主義は,じつは経済理論としても間違っているのだが,経済学者の間では正しいものと信じこまれていて,マスメディアでのプレゼンスは高い.他方,福祉絶対主義は資源条件と制度的しくみを無視する点においてやはり空論的である.また,ここまで極端ではなくても,福祉価値を重視する社会福祉論には財源問題への答えを用意しない「マナ型福祉論」が多く,それは新自由主義と対抗する上で説得力に欠ける.それらに代わって,社会保障および社会福祉の制度をめぐる議論は,市民的共同性をめざすという福祉の理念的価値を重視すると同時に,その経験的な実現可能性も重視するという二つの条件を満たすべきである.これはコモンズ型の福祉論として展開されることになる.
著者
酒井 勝司
出版者
Carcinological Society of Japan
雑誌
甲殻類の研究 (ISSN:24330108)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.23-28a, 1986 (Released:2017-09-08)
被引用文献数
9 10

Upogebia narutensis sp. nov. is the fourth upogebid species found in the Inland-Sea, Japan. This species is closest to U. spinifrons from Australia.
著者
吉浜 忍
出版者
沖縄国際大学社会文化学会
雑誌
沖縄国際大学社会文化研究 (ISSN:13426435)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.43-71, 2008-03
被引用文献数
2

近年、戦争遺跡が注目されている。戦争遺跡を「戦争の語り部」として活用する取り組みは、戦争体験者が減少するなかでますます重視されている。本稿では、沖縄における戦争遺跡の保存活用の歴史を全国の取り組みと関連して紹介する。さらに戦争遺跡の保存活用の先進的な役割として、沖縄県南風原町の南風原陸軍病院壕の町文化財指定と整備公開の取り組みについて具体的に記述し、あわせて全国や沖縄県における戦争遺跡の文化財指定の現状と課題について言及する。沖縄の戦争遺跡は沖縄戦の「生き証人」であり、体験者に代わって沖縄戦を語ってくれる。そのためには戦争遺跡の保存活用、文化財指定が必要不可欠である。In recent years, the preservation of wartime ruins has received increasing attention. The role of wartime ruins as witnesses to war becomes increasingly important as the numbers of actual war survivors decrease year-by-year. In this paper, the writer discusses the history of efforts nationwide to gain official recognition for war ruins. Further, the efforts to gain recognition for the underground Haebaru Imperial Army Field Hospital in the town of Haebaru in Okinawa, as well as the establishment of a park adjacent to the hospital site are discussed in detail as an example of an advanced case of preservation and use of wartime ruins. Further, the conditions of wartime ruins preservation in Okinawa are placed in a wider national context as preservation efforts increase. Wartime ruins in Okinawa from the Second World War have become "living witnesses"which continue to convey the facts of the war as actual human witnesses slowly disappear. The importance of official recognition for the preservation and use of wartime ruins is, thus, indispensable.
著者
赤嶺 卓哉 吉田 剛一郎 高田 大
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.785-787, 2012-09-25
参考文献数
4

体育大学女性スポーツ選手19名(平均年齢19.8±1.0歳)と一般女性10名(平均年齢22.5±2.1歳)の全員に対しDXAによる骨塩量測定を施行した.さらに骨代謝に関連する血液検査を,同意を得た上記選手19名中17名に行い,以下の結論を得た.(1)一般女性群と比較して,陸上長距離選手群では除脂肪体重が高く体脂肪率が低い傾向が,柔道群では体脂肪率が低く腰椎・脛骨骨密度が高い傾向が,それぞれ統計学的に有意に認められた.(2)水泳群では一般女性群に比し,脛骨骨密度が低い所見が有意に観察された.(3)17名の選手群の内65%が血中カルシトニンの低下を,47%がエストラジオール[E<SUB>2</SUB>]低下をそれぞれ示したが,選手E 2低下群に骨塩量が不足している所見は,今回の調査では認められなかった.
出版者
BOC出版部

憲法九条の改悪を許さず、アメリカの世界戦略に奉仕するための軍隊をなくそう 土屋公献「9条世界会議」 松村真澄9条世界会議に取り組んで 小澤久「握手」は「武力」を遥かに超える いちだまり体で動かす9条、9条で動かす体! 安藤博「シンボルとしての9」 成瀬慧「9条世界会議」に辿りつくまで 綿津靖子痛感した メディアへの期待-国際自主企画「憲法9条とメディア」を開催して 丸山重威いままた浮かび上がる「靖国」の闇 9条世界会議「9条・ヤスクニ・歴史『和解』」シンポジウムから 古川美佳憲法9条世界会議、参加者あふれる-場外でも演説、異例の幕開け- 岩垂弘9条世界会議に行ってきました 浮田久子9条世界会議に参加して 松本和美命を大事にしあえる世界に-9条世界会議に参加して- 春田明子9条と世界 鈴村彩「世界」会議だから出会えた! 保坂治男「9条世界会議」を終えて、考える 古川博資人間存在の度しがたさと9条 成瀬政博イラク支援ボランティア 高遠菜穂子ドイツで広がる「9条」の輪 木戸衛一資料戦争を廃絶するための9条世界宣言核不拡散条約(NPT)再検討会議準備委員会に対する9条世界会議の声明G8に対する9条世界会議声明報告二〇〇八年 反サミット運動大学と運動の交差する地点から言葉を G8対抗国際フォーラム 入江公康・白石嘉治反サミットキャンプに見たゼネストの情景 栗原康詩 同盟 堀場清子コスタリカ通信2 「軍隊のない国」から 笹本潤窓 「自衛隊イラク派兵は憲法九条一項違反」と宣言した名古屋高裁四・一七判決 田巻紘子岩手から 未明の激震に驚く 伊藤エミ子沖縄から 桑江テル子新潟から 中越震災から四年目の山古志 押見操子<台所の科学力>第4話 足もとから科学しよう(微生物と仲良くしてステキな暮らしを!) 松崎早苗読書室『軍隊のない国家 27の国々と人びと』 矢野秀喜『不在者たちのイスラエル 占領文化とパレスチナ』 中野真紀子TOPICS会と催しあごらのあごら
著者
佐藤 美幸 山本 貴志子 百田 武司 三村 聖子 作田 裕美 西亀 正之
出版者
広島大学大学院保健学研究科
雑誌
広島大学保健学ジャーナル (ISSN:13477323)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.51-56, 2002-09

水中毒は精神科のあらゆる障害において見られるが,原因としては未だ明らかになっていない.しかしながら水中毒は重篤な合併症を生じ,生命の危険性も高いことからも,早期に発見し,予防していくことが重要である.本研究では,バイオインピーダンス法を用いて精神障害者の体内水分量を知り,その貯留の程度をアセスメントする事で水中毒の予防に役立てないかと考え,精神分裂病患者と健康な一般女性,病的多飲水患者とそうでない患者のインピーダンス値を比較し,それぞれの間にどのような差が生じているのかを検証した.その結果,精神分裂病患者の細胞内水分量,細胞外水分量の両者とも,一般女性のそれより少なかった.また,病的多飲水患者は細胞外水分量が非多飲水患者に比べて多いが,細胞内水分量は細胞外水分量に比べて増加しておらず,水分量のバランスが悪いといえる.また,精神障害者においてしばしば肥満も問題となるが,今回インピーダンス法を用いて測定した結果,体脂肪率も高値を示していることが明らかになった.まとめ: 1) 精神障害者の体内水分量は健康な人に比べて有意に低い. 2)バイオインピーダンス法は精神障害者の水中毒予防の指標として応用可能である.We find cases of water intoxication among patients of every sort of mental disorder. However, its cause is still unknown. Water intoxication causes serious complications, placing patients' life in danger. It is, therefore, important that its symptoms be identified at its early stage and its occurrence be prevented. In this study, we used the bio-impedance method in order to find out the level of water retained in the schizophrenic patients' body and examined ways to prevent water intoxication. The impedance values were compared between the schizophrenic patients and healthy women as well as between polydipsia and non-polydipsia patients. As a result, we found that both the extra-cellular and the intra-cellular water levels of the schizophrenic patients were significantly less than those of the healthy women. The extra-cellular water level of the polydipsia patients was significantly greater than that of the non-polydipsia patients. On the other hand, the polydipsia patients intra-cellular water level was not as high as their extra-cellular water level, indicating imbalance of water levels within the polydipsia patients body. Obesity is frequently an issue among mental disorder patients : the impedance method showed that body fat rate of these mental disorder patients was rather high. Summary 1)The amount of the body water level of the schizophrenic patients is significantly low compared with the healthy women. 2)The bio-impedance method can be applied as an index of the water intoxication prevention of the schizophrenic patients.