著者
天池 洋介
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.138, pp.15-30, 2018-03

アトキンソンはイギリスにおける失業保険削減と所得の不平等化に対して,制度的要因を分析することでその原因と内在的な必然性を考察した.労働市場の2部門モデルでは,失業保険給付が「よい仕事」への雇用補助金となり,「よくない仕事」からの労働移動を促進することで,賃金と生産性の累積的上昇過程の形成が検討できる.そのためアトキンソンの失業保険制度は,ウェッブなどの産業進歩論の系列に位置づけることが可能である.
著者
新崎 千江美 佐藤 豊三 白玉 敬子 大城 篤 金子 繁
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.22-24, 2013

沖縄県与那国町で露地栽培中のボタンボウフウにおいて葉の表裏,葉柄に微小な黄斑点を生じ,褐色粉状の胞子が大量に形成され黄化・葉枯に至る病害が発生した。病原菌の夏胞子は淡褐色,単細胞,広楕円形ないし倒卵形で表面に細刺があり,大きさは23~38.5×21~32.5μm であった。冬胞子は褐色2細胞で隔壁部がややくびれ,短棍棒形,長楕円形ないし雪だるま形,大きさは34~51×22~33μm であった。夏胞子の接種により病徴が再現され,夏胞子および冬胞子が形成された。本病原菌とカワラボウフウ属の植物に寄生するさび病菌との形態的比較に基づき,<i>Puccinia jogashimensis </i>と同定した。以上より本病をさび病(新称)とすることを提案する。

1 0 0 0 OA 小學纂注6卷

著者
清高愈撰
出版者
岡村屋庄助
巻号頁・発行日
vol.[3], 1822
著者
丸山 勝久 島 健一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.1777-1790, 2000-06-15
参考文献数
24

オブジェクト指向ソフトウェア開発において,フレームワークを再構成することは,その再利用性をより高くする効果を持つ.しかしながら,再構成操作は手動で行うには複雑である.本論文では,過去のアプリケーション開発時のメソッドの変更履歴に基づく重み付き依存グラフを用いて,フレームワークを自動的に再構成する手法を提案する.本再構成手法では,継承によりクラスを再利用した際,メソッド内部に存在する依存関係が保存あるいは破壊されるかどうかに応じて,依存関係の強さを指す重みを変動させる.重み付き依存グラフの矢印に蓄積された重み値に基づき,もとのフレームワークにおいて,そのまま再利用可能な固定部分と要求に応じて柔軟に変更する可変部分を分離することで,個々の開発者に特化したフレームワークの成熟化を実現する.適切に分離された固定部分と可変部分を含むフレームワークを用いることで,アプリケーション開発における実装の繰返しを軽減できる.本論文における評価実験では,開発者の記述コード量に関して,最大22%(従来手法に比べて約2倍)の減少率を確認した.While refactoring makes application frameworks more reusable,it is complex to do by hand.This paper presents a mechanism that automatically refactors methodsin object-oriented frameworks by using weighted dependence graphs,whose edges are weighted based on the modification histories of the methods.To find the appropriate boundarybetween frozen spots and hot spots in the methods,the value of the weight varies based on whether the dependencein the original methods has been repeatedly preserved or destroyedin the methods of applications created by programmers.The mechanism constructs both template methods that containthe invariant dependence and hook methods that are separatedby eliminating the variant dependence.The new template methods and hook methods tailored toeach programmer save him/her from writing superfluous codewhen reusing a framework.Experimental results show a reduction rate of up to 22%in the number of statements a programmer has to writewhen creating several applications;this percentage is double that achievableby a conventional refactoring technique.

1 0 0 0 OA 両国往復書謄

巻号頁・発行日
vol.[116], 1000
著者
真柳 誠
出版者
茨城大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

中国周縁国は過去から現在まで中国医学を受容・消化し、自国固有の伝統医学を形成してきた。これまで実施した現存古医籍の調査分析により、およその形成過程と特徴が明らかになってきた。日本・韓国とも初期は唐宋代医学全書の影響で、中国書から自国に適した部分を引用した臨床医学全書を編纂している。日本の『医心方』(984)、朝鮮の『医方類聚』(1477)などである。同時に固有の医薬も集成し、日本の『大同類聚方』(808)、朝鮮の『郷薬集成方』(1433)などが編纂された。中期は主に明代の臨床医書を引用しつつ、日本の『啓迪集』(1574)、朝鮮の『東医宝鑑』(1611)、ベトナムの『医宗心領』(1770)など自国化した医学全書が編纂される。かつ各国とも明代の各種医学全書を19世紀後半まで復刻し続けたが、そうした流行は中国にない。また漢字交じり自国語訳本も周縁国に共通する現象だった。一方、日本だけに特異的な現象が見出された。すなわち中国医学古典と、それらの中国における研究書が日本では100回以上復刻されたが、朝鮮では1点、ベトナム・モンゴルにはひとつもなかった。また中国医学古典の日本における研究書が江戸時代だけで760種ほど現存するが、朝鮮におけるそうした研究書は1点のみ、ベトナム・モンゴルにはひとつもなかった。なぜ日本だけかくも中国医学古典を研究したのだろうか。これは日本のみ島国という因子に由来しよう。つまり日本は中国との往来が極めて困難につき中国人から直接学べず、書物のみを師とし、難解な古典まで自ら研究した。かつ日本だけ中国との戦争や被支配の経験がなく、その強い影響を意識的に排して自国文化を強調する必要がなかった。それゆえ中国文化の深くまで親近感を持ち、古典を研究した。他方、朝鮮・ベトナムでは中国臨床医書は利用するが、臨床にあまり関係もない別国の古典研究などありえなかっただろう。他分野の漢籍でも類似現象が見出される可能性は高い。
著者
真柳 誠
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

漢字文化圏4国の古医籍約28000種の書誌データを調査し、定量分析した。その結果、日韓越は明代の中国南方で著された医書をモデルとし、自国化した体系を形成していたことが知られた。これは今日まで未知だった歴史現象である。当歴史観は各国で共有が可能であり、今後の相互理解と交流を進展させるだろう。
著者
小宮山昌秀
出版者
巻号頁・発行日
vol.[35],
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1242, pp.116-118, 2004-05-17

東京都の水道事業は控えめに見積もっても1400億円、うまくいけば3800億円で売れる——。日経ビジネスが平成14年度(2002年度)版の『地方公営企業年鑑』を用いて地方自治体が経営する水道と電気、ガスの各事業について民営化の可能性を試算したところ、こんな結果が出た。
著者
塚本 宏
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.87, pp.369-385, 1989-12-15

わが国における保険医学の"母"渡辺定の著書「寿命予測と生命保険」(1943年)は保険医学の教科書として,今なお不朽の名著の輝きを失っていない。彼はまた1950年代に,すでに今日の世界最長寿国を予想して「あなたの寿命革命」を世に問うている。保険医学と寿命学は死亡率研究という母から誕生した双子だと言ってもよいだろう。本学会が世代交替の時期を迎えている現在,古典的に過ぎるかも知れないことを承知で,若手会員のために先輩から継承した学問的系譜を「教育講演」の主題に選ぶこととした。話の順序として,まず1693年に発表されたE.ハリーの「ブレスラウ生命表」まで遡り,生命表の原理からはじめたい。近代的な生命保険事業における保険料計算の基礎も,進行中の超長寿社会における国民の平均余命の計算根拠も生命表なくしては成りたゝないのである。人類の寿命史上,奇跡ともいわれる日本人の長寿が何によってもたらされたのか,またどこまで長生きできるのかも興味あるテーマであろう。生命表だけでなく,老化や死亡の法則について先達の努力を跡づけておくことも必要ではなかろうか。そして超長寿社会が生命保険事業に与える影響も一度整理しておかねばならない。いま隆昌の一途をたどる「疫学」の方法論の一つに生命表を用いたコホート研究や介入実験が盛んに行われている。この方法論の先駆者であったわれわれが,蓄積されたデータとノウハウによって,社会へ還元すべき時代に入っていると思う。一例として「健康危険度予測」Health Risk Appraisalによる健康教育の実践をとり上げてみることにした。同時に,寿命予測の手法と相まって標準下体の条件法としての「年増法」の再検討にも触れてみた。
著者
益澤 秀明
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.265-270, 2015-09-30 (Released:2016-10-01)
参考文献数
32

びまん性軸索損傷は重度から最軽度の軽度脳外傷まで量的に連続する脳外傷病態スペクトラムである。脳挫傷などの局在性脳損傷が合併していても閉鎖性頭部外傷の転帰・後遺障害ではびまん性軸索損傷が主体とされる。びまん性軸索損傷後遺症は精神症状 (=脳外傷による高次脳機能障害: 認知障害と情動障害からなる) と神経症状 (小脳失調と中枢性運動麻痺) からなり, 軽重の違いはあっても共通している。 重度ほど自己洞察性が低下し病識・自覚症状が減少・消失するのも特徴である。後遺障害の程度は受傷直後からの意識障害期間と, また慢性期の脳萎縮・全般性脳室拡大の程度と有意に関連する。障害が軽度ほど, また若年齢ほど長期的には改善傾向が著しい原則がある。軽度脳外傷後の一部症例に遅発し遷延するʻ脳振盪後症候群ʼは脳外傷重度と関連せず, 症状に改善傾向がなく遅延増悪し, 自己洞察性が正常~亢進しているのが特徴である。