著者
池田 峻
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.1_316-1_340, 2020 (Released:2021-06-16)
参考文献数
22

代議制民主主義において、有権者から選出されていない官僚を政治家はいかに統制しているのだろうか。本研究は、政治家が審議会への諮問の強制という手段を用いて統制を行っていると主張するものである。 審議会は行政の民主化などを目的に設置される行政機関であるが、その実態は官僚が望む政策を追認する 「隠れ蓑」 に過ぎないという見方が根強く残る。これに対し本研究は、政治家が法令に 「○○審議会に諮問しなければならない」 旨 (これを手続的指示と呼ぶ) を書き込むことによって、官僚の逸脱を防ごうとしている側面があることを示してゆく。 では、いかなる条件で手続的指示が行われるだろうか。本研究ではゲーム理論を用いて政権党・官僚制・審議会の関係を定式化し仮説を導出したあと、2002年時点に存在する全ての審議会を対象とした計量分析によってそれを検証する。 分析の結果、①政官の理想点の乖離が大きい、②審議会の権威が小さい、③審議会と政権党の理想点が近い、④政権党が現状の政策に不満を持っているという四つの場合においてより多くの手続的指示が行われることが明らかとなった。この結果から、官僚は政権党の戦略によって審議会を利用させられており、審議会が統制手段として用いられているという見落とされてきた側面が浮かび上がる。
著者
吉田 倫子
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は観光を糸口として文化財のバリアフリー整備にどこまで踏み込んでいるかを明らかにするものである。バリアフリー整備状況は城郭の地理的条件だけでなく,管理者の意向によって異なっている。観光施設としての満足度とバリアフリー整備の意識には関連があることもわかった。年齢や性別も影響している。また,管理者はバリアフリー整備を必要する方と直接対話することで,制度上困難な整備でも仮設で対応しようとする意向があることがわかった。若い世代がそうした配慮に好意的であり,歴史的価値の認識にも影響しないことから,可能な限りのバリアフリー整備を検討していくことが必要である。
著者
市原 学 杉村 智子 大坪 靖直 黒川 雅幸 笹山 郁生 永江 誠司
出版者
人間環境学研究会
雑誌
人間環境学研究 (ISSN:13485253)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.2_23-2_26, 2008 (Released:2009-06-03)
参考文献数
11

In a recent article, Killeen (2005) proposed the statistic prep, the probability of replicating an effect, as an alternative to traditional null-hypotheses significant tests (NHST). In this article, two experiments were conducted and their analytical results based on prep and traditional p values were compared: non-significant results based on p values were reinterpreted as meaningful results in light of power analysis, calculating the effect size and prep value. The tendency of p value analyses not to reveal non-significant results (i.e. the file drawer problem) and the improvement of decision-making methods are discussed.
著者
鈴木 宏彰 森 達哉 米谷 嘉朗
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2018論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.2, pp.249-256,

国際化ドメイン名 (IDN) はドメイン名を表現するための文字として漢字,ひらがな,キリル文字等,非 ASCII 文字の利用を可能にする仕組みである.IDN で利用可能な文字集合の中には,異なる文字コードが割り当てられているにもかかわらず,見た目が非常に似た文字が存在する.例えばラテン文字の `a' とキリル文字の `а' はその一例である.このような異なる文字の外形的類似性を利用し,URL 偽装によるフィッシングを行う IDN ホモグラフ攻撃が知られている.本研究は代表的な TLD として,COM,NET,および JP のドメイン名を対象とし,IDN ホモグラフ攻撃に使われている,あるいはオリジナルのドメイン名所有者がホモグラフ攻撃を防ぐために防衛的に設置した可能性があるドメイン名の大規模な調査を行う.また抽出したドメイン名を持つウェブサイトを分析し,どのような目的,サービスに使われているかを調査する.
著者
安原 隆雄 黒住 和彦 亀田 雅博 菱川 朋人 佐々木 達也
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

ヒト間葉系幹細胞由来多能性幹細胞を用いて、凍結保存の状態から溶解し直接移植する群とカプセル化細胞移植する群に分けて治療効果を検討する。対象とするのは一過性中大脳動脈閉塞モデルラットであり、行動学的評価・組織学的評価を中心に行う。うつ様症状に対する治療効果も重要な評価項目とする。虚血の程度をエコーにより確認し、血流遮断時の虚血負荷、運動機能、うつ様症状、組織学的評価(脳梗塞体積、炎症性変化、神経新生の程度等)を個体ごとに確認し解析する。過去に、脳梗塞モデル動物で直接移植とカプセル化移植の比較を行ったことはなく、細胞治療の意義・作用機序の解明に迫る研究である。
著者
小山 治
出版者
The Kantoh Sociological Society
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.25, pp.73-83, 2012-09-10 (Released:2015-06-12)
参考文献数
18

The purpose of this paper is to clarify how undergraduates in social science faculties perceive the criteria for hiring new university graduates and how they adjust to these criteria in preparing for interviews. The major findings are as follows. First, undergraduates refer to a public image of talent and recognize that it is relevant to the criteria for hiring new university graduates and recognize that to be themselves is more effective in order to pass the job interviews. Second, they discern that employers evaluate both generic skills like teamwork and nonverbal information. Third, they elaborately prepare a presentation about themselves that they believe plays to the criteria for hiring new university graduates. In conclusion, the implication of these findings is discussed.
著者
釜田 茂幸 清家 和裕 亀高 尚 牧野 裕庸 小山 隆史 安野 憲一 宮崎 勝
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.691-695, 2009-06-01 (Released:2011-12-23)
参考文献数
17

Stage I大腸癌根治切除4年後に孤立性仙骨転移を来したまれな症例を経験した.症例は75歳の男性で,平成13年7月に近医でS状結腸癌のためS状結腸切除術を施行され,病理組織学的検査では高分化型管状腺癌,mp,n0,ly0,v0,Stage Iと診断された.平成18年5月,肛門痛の増強のため当科外来を受診した.仙骨に孤立性腫瘍を認め,他に明らかな原発巣はなかった.生検の結果,大腸癌孤立性仙骨転移と診断した.化学放射線療法では無効であったため,腫瘍のfeeding arteryから動注化学療法(以下,TAIC)を13クール施行した.臨床的に明らかな腫瘍径の変化や腫瘍マーカーの降下はなかった.多発肺転移が出現したため全身化学療法へと変更したが,術後6年8か月目に死亡した.大腸癌骨転移に対しては手術だけでなく,化学放射線療法,TAICなども含めた集学的治療が必要となる場合がある.まれな転移を示した本症例に対し,文献的考察を加えて報告する.
著者
藤田 豊八
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 = The Toyo Gakuho
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.247-257, 1916-05
著者
近畿大学体育会本部
雑誌
近大スポーツ
巻号頁・発行日
no.20, pp.1-6, 2009-01-13
著者
長野 和雄
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.81, no.719, pp.9-17, 2016 (Released:2016-01-30)
参考文献数
24
被引用文献数
3 4

This study quantifies the intensities of degree and frequency of Japanese common expressions that modify adverbially an inflectable word. The 107 and 111 college-aged subjects were asked to arrange 19 words of degree and 16 words of frequency in order of the intensity, respectively. The diagonal paired comparison test was also applied to both 21 degree words and 21 frequency words using 1210 and 1200 college-aged subjects. Based on the derived intensities and the investigation conducted by Oda in 1969, the valid usage of these expressions in order to analyze open-ended responses and to constitute an ordinal scale was discussed.
著者
元濱 奈穂子
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.89, no.2, pp.207-219, 2022 (Released:2022-09-10)
参考文献数
26

本稿は、大学教育の質保証において「抵抗」とカテゴライズされてきた教員の行為が生じる要因を、医学部医学科のアセスメントテスト「臨床実習前OSCE」を事例として検討した。フィールドワークからは、臨床実習前OSCEが定義する能力の必然性を説明する論理として機能していた「段階的発達観」がこの制度の支持と「抵抗」をわける論点となっており、この発達観の非共有が多くの教員の「抵抗」につながっていることが示唆された。
著者
内田 隆 青木 孝
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 43 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.483-486, 2019 (Released:2020-07-31)
参考文献数
6

本研究では,通電によるジュール熱でパンを作る電気パン実験の起源をあきらかにするため,電極式調理の歴史について文献調査と聞き取りを行った.その結果,電気パンの起源は陸軍の阿久津正蔵らが開発した炊事自動車で,電極式調理による製パンよりも前に炊飯が先に実用化されていたことがあきらかになった.終戦後にこの技術が活用されて家庭用電極式炊飯器である厚生式電気炊飯器やたからおはちが製造されたこと,さらに,現在はパン粉用パンの製造量の半分程度が電気パンと同じ電極式調理でつくられていることがわかった.