著者
大利 昌久
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.255-256, 1975-12-15 (Released:2016-09-05)

The spider, Heteropoda venatoria, has been known to be an effective natural enemy of pest insects like cockroaches and flies. The field study on the geographical distribution of this spider was made during the periods from 1963 to 1966 and from 1972 to 1973. It covered 174 points in 42 prefectures. Results were as follows : 1. This spider was recorded at 137 points in 35 prefectures. 2. This spider was found more abundant in the southern parts of Japan, as Kyushu and Chugoku districts and in the Pacific side of Honshu Islands including many southern remote islands. 3. The northern boundary of habitats of this spider was found to lie on the area of six different prefectures, namely Ibaraki, Tochigi, Gumma, Nagano, Toyama and Ishikawa Prefecture. Those prefectures lie at 36°-38°North Latitude and in the zone of the annual mean temperature of 12°-14℃.
著者
大和 政秀 谷亀 高広
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.jjom.H20-02, 2009-05-01 (Released:2018-03-30)
参考文献数
127

ラン科植物は菌類との共生に強く依存して生活している植物群であり,特に種子発芽後の初期成長時には共生菌からの炭素化合物の供給に完全に依存している.ラン科の中には葉緑素を失った種(菌(類)従属栄養植物)も存在するが,このような種は世代を通じて共生菌からの炭素化合物の供給に依存している.ランの主な共生菌としては,従来,不完全菌類であるリゾクトニア属菌が知られてきたが,近年の分子生物学的手法の導入によって,様々な菌群がランの共生菌として同定されるようになった.共生菌には樹木に外生菌根を形成する菌群も含まれ,このような場合には樹木・共生菌・ランの間に3者共生の関係が営まれていると考えられる.この外生菌根菌の共生は,特に菌従属栄養性のランで報告例が多い.共生菌は主に担子菌であるが,外生菌根形成能を有する子嚢菌が共生菌として同定される例も報告されている.また,特定の菌群に対して高い特異性を示す例も数多く明らかにされている.ラン科植物は環境の変化に弱く希少植物となっているものが多いが,共生菌に関する知見はこのようなランの生活史の解明と保全にとって重要である.本総説ではこれまでの知見をまとめ,可能な限りこの関係についての整理を試みるとともに,ラン科植物の保全活動における共生菌への理解の重要性についても考察した.
著者
菊池 哲平
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.92-101, 2019-03-30 (Released:2019-09-09)
参考文献数
15
被引用文献数
3

本稿は,2007年の特別支援教育の開始以降,わが国の教育心理学的研究がどのようなエビデンスを提供してきたのかについて,エビデンス・レベル分類(案)による概括を行うものである。2007年以降に学会誌に掲載された585本の研究論文について,研究デザインを基にしたエビデンス・レベル分類を行った。論文発表数としては「自閉症スペクトラム障害」と「発達障害全般」が多かったものの,「聴覚障害」「言語障害」「ADHD」のエビデンス・レベルが高かった。「自閉症スペクトラム」及び「発達障害全般」に関する研究は,シングル・ケース・デザインに基づくものが多いため,これらの研究に対してシステマティック・レビューを行うことでエビデンス・レベルを高めていくことが考えられた。さらに2007年以降は「通常の学級」をフィールドとした研究が多く発表されており,エビデンス・レベルも比較的高かった。一方,「特別支援学級」をフィールドとした論文は少なく,これからの取り組みが期待される。結果として,教育心理学的研究が特別支援教育の有益なエビデンスを提供していることが示唆された。
著者
小島 道生
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.491-499, 2020 (Released:2020-12-03)
参考文献数
24

本研究では,自閉スペクトラム症者を対象としたアンケート調査により,自尊感情と主観的幸福感の特徴について検討した。自閉スペクトラム症者27名と同年代の対照群60名との比較を行ったが,自尊感情と主観的幸福感について違いはなかった。ただし,自閉スペクトラム症のある学生の自尊感情や主観的幸福感は,社会人に比べて低い可能性が示唆された。したがって,高等教育機関に所属する自閉スペクトラム症のある学生への支援においては自尊感情や主観的幸福感へも配慮を行いながら,支援の在り方を見つめ直すことが重要であると考えられた。さらに,自閉スペクトラム症者と同年代の対照群に共通して自尊感情が高いと主観的幸福感も高くなることが示唆された。
著者
加藤 武雄
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.29, no.9, pp.559-567, 1956-09-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
6

In this paper, the results of the investigations of the Tachiyazawagawa are reported. The results are summarised as. follows:- 1. The water temperature of the river is lower than that of the Mogami (main stream) throughout the snow-melting season. The diffe-rence, lies 1.3 and 5.1. 2. The upper reaches of the river consist of the Nigorisawa, the Honsawa (the main stream) and the Akasawa. Among the three, the Nigorisawa is most influenced by the volcanic activity of Mt. Gassan, judging from the chemical analysis of the water taken from the stations in the drainage system. 3. The content of the dissolved oxygen in the water undergoes the diurnal change. The relation between the oxygen content and the water temperature nearly shows the negative correlation. 4. The chloride content of the river decreases regularly with the increase of the flow except during the snow-melting season.
著者
大澤 昇平
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
2015

審査委員会委員 : (主査)東京大学特任准教授 松尾 豊, 東京大学教授 元橋 一之, 東京大学特任教授 阿部 力也, 東京大学特任講師 森 純一郎, 国立情報学研究所教授 武田 英明
著者
壇 俊光
出版者
情報法制学会
雑誌
情報法制研究 (ISSN:24330264)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.24-31, 2020 (Released:2020-06-05)

The Provider Liability Restriction Act, which demand providers to disclose sender information, has been in effect for 15 years since 2002, and it has become clear that there has been an accumulation of court cases and legislative issues. This article aims to introduce the current issues.
著者
平野 敏明 小池 勲 塚原 千明
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.98-100, 2004 (Released:2007-09-28)
参考文献数
10

We collected a total of 296 pellets of Eastern Marsh Harriers Circus spilonotus from their winter roosts (two sites) in Watarase Marsh, Tochigi Prefecture between January 2002 and late February 2004. Out of these pellets 18 contained a total of 24 pieces of lead shot. Although most of the pellets (14) contained only one piece of shot, two pellets included two and three pieces of shot. Among the prey species found in the pellets along with lead shot, ducks accounted for 55.6%, and doves and crows 11.1%. A significantly higher frequency of lead shot in Marsh Harriers pellets was found in January and February, during the open season for game birds. Although lead poisoning is not yet known to have had any profound effect on the harriers using the study site, care must be taken to protect them from lead poisoning.
著者
蓮沼 誠久 近藤 昭彦
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.95-101, 2014 (Released:2017-02-01)
参考文献数
10

低炭素社会の構築に向けて,再生可能で食糧と競合しないリグノセルロース系バイオマス資源からバイオ燃料や化学品を生産する 「バイオリファイナリー」 の確立が求められている。糖プラットフォームを用いるバイオエタノール生産を例に取ると,そのプロセスは、結晶化したバイオマスを膨潤化する前処理工程,バイオマスを加水分解する酵素処理工程,微生物による発酵工程,生産物の分離回収工程から成り立っており,省エネルギーかつ低コストなプロセス開発の成否が実用化の鍵を握っている。微生物の細胞表層にセルラーゼを集積させる「細胞表層工学技術」は,酵素生産と糖化,発酵をワンパッケージ化することが可能であり,プロセスを簡略化することができる。また、高価なセルラーゼ製剤の生産に必要となる材料や設備の省略が可能となる。一方で,発酵を効率化するには,微生物細胞内の代謝メカニズムを機能的な方向に改変する必要がある。筆者らはトランスクリプトーム解析やメタボローム解析等のマルチオミクス技術を活用して微生物の代謝系を遺伝子レベルや代謝物レベルで網羅的に解析することで新規の微生物改変戦略を立案し,その発酵性能を向上させることに成功してきた。微生物をより優れたエタノール生産工場にするためには,代謝をシステムとして理解し,合理的に改変することが重要である。本稿では細胞表層工学技術と代謝工学技術を組合せた微生物によるバイオエタノール生産について紹介する。
著者
野口 孝俊 浦本 康二 鈴木 武
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.20-29, 2014

第二海堡は,軍事要塞として明治32年に人工島が竣工し,建設後100年が経過している.その間,第二海堡は1923年の関東大震災によって被害を受け,長年の風浪等により劣化・損傷・崩壊が進行している.現在,護岸の保全を行い,その一部は当時の護岸を復旧させることを検討している.本稿は,工学的立場から,国内で初めての海上人工島築造に対する海堡建設計画,建設技術,設計技術など明治期土木構造物の建設技術をとりまとめ,現代技術への展開について考察を行った.
著者
大沼 靖彦
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.29, no.9, pp.1065-1073, 1977-09-01

女性骨盤の発育と性機能の成熟との関係を検するため,6〜14才の男女について,骨盤外計測,身体一般計測及び性ホルモンのLH・FSH・Estrogen (Es)・17-KSの測定を行つて,次の成績を得た. 1) 女子骨盤は,身長・スパンなどの長管骨の成長に男女差のない6〜10才の小児期においても男子に比べて有意差をもつて大きく,その形態も有意差をもつて男子に比べ前後径が大きい円形に近いことが特徴的である.この年令層では性ホルモン値には差異はないことから,かかる男女差は性差による先天的遺伝因子の相異によるものと推測される. 2) 性ホルモンのLH及びEs値が月経発未前の1年以内に有意差の上昇を示し,これと平行して骨盤指数の有意差の増大もこの時期の9→10才及び10→11才の間にみられた. 更に,月経発来時期の前後それぞれ2年計4回の連続計測による各計測値の年間の伸び率の検討により,卵巣Es分泌の冗進する月経発来の直前に身長とともに骨盤も著しく発育するが,長管骨に比べて骨盤の発育の方が有意差をもつて大きく,且つその後,身長の成長は止まるが,骨盤の方は月経発来後の少なくとも1年間は更に有意差の伸長を示し,且つ前後径が横径に比べて有意差をもつて更に成長して成人女性型の骨盤に近づくことが示された.月経発来の頃の女性骨盤の顕著な発育には性機能の成熟特に卵巣Es分泌の亢進が大きな役割を果たしていることが示唆される.
著者
谷口 さやか 武田 篤
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.8, pp.1546-1551, 2015-08-10 (Released:2016-08-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1

Parkinson病(Parkinson's disease:PD)は運動症状だけでなく,多彩な非運動症状を呈する.主な非運動症状には認知・精神機能障害,睡眠障害,自律神経障害,感覚障害がある.一部の症状は運動症状の発症前に出現することから,画像診断や補助検査法と併用することで発症前診断に役立つ可能性がある.また,非運動症状は生活の質(quality of life:QOL)を低下させる要因であり,早期の発見と治療が重要である.
著者
石井 史 屋代 庫人 田中 美紀 杉山 茂樹 橋本 洋
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
健康医学 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.590-594, 2004-12-20 (Released:2012-08-27)
参考文献数
9
被引用文献数
1

目的:炎症性腸疾患の患者は増加してきており,特に潰瘍性大腸炎は人間ドックの便潜血反応陽性を契機に発見されることがある.方法:ドックの便潜血反応陽性で発見された潰瘍性大腸炎の例を呈示し検討した.結果:ドックの便潜血反応陽性で大腸検査をした症例201人中の2例(1%)に潰瘍性大腸炎を認めた.この2症例はともに軽症例(直腸炎型,左側大腸炎型)であり,迅速に治療を開始し,治療経過は良好であった.診断後に問診を詳細に取り直してみると,潰瘍性大腸炎によると思われる症状があっても気付いていなかったり,血便は痔からによるものと自己判断していた.結論:便潜血反応検査は大腸癌のスクリーニングが主たる目的であるが,潰瘍性大腸炎症例の増加に伴い,ドックの便潜血反応陽性を契機に診断される症例が増えると予想される.潰瘍性大腸炎を無症状あるいは軽い症状で発見できることは有意義であり,ドックで行っている便潜血反応検査もその一助を担っていると思われる.