著者
菅野 理子 本多 庸悟 金子 俊一
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.25(1992-CVIM-082), pp.95-102, 1993-03-18

ゴッホやマティスなどの絵画は、それを見れば容易に描いた画家を推測できるような、タッチ(筆触)やマチェール、ヴァルールなどにおける独自の特徴を持っている。本研究は油絵におけるタッチに的をしぼり、タッチを自動的に抽出して、その特徴を定量的に記述することを目的とする。ここでは、タッチが色彩によって抽出できるものとし、人間の色知覚に基づいたマンセル表色系を用い、タッチをその色相に基づく領域として抽出し、実験を行った。研究の過程において、色補正変換を含むRGB/マンセル表色系変換システムも作成して用いた。実験の結果、タッチを色相だけから抽出することの可能性と困難さが示されたが、一応の知見が得られたので報告する。
著者
菅原 浩
出版者
長岡造形大学
雑誌
長岡造形大学研究紀要 = Nagaoka Institute of Design Bulletin (ISSN:13499033)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.30-35, 2022-03

Here we discussed the significance of animism in haiku poetry. We focused the “monistic animism” suggested by Nakazawa Shinʼichi, which states that animism can capture the invisible realm that the modern Western culture have failed to think about. We argue that haiku poems aim to become “the thing itself,” thereby creating poetic language to open the “communication” to something fundamental beyond human perception. From this perspective we read animistic haiku poetry by various poets, arguing that animist haiku culminated in Natsuishi Banʼyaʼs Science of Giant Rocks and Trees.
著者
西川 尚志 橋本 直
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:21888914)
巻号頁・発行日
vol.2020-EC-55, no.27, pp.1-6, 2020-03-11

日常生活の中には行為に付随して音が発生するものがあり,そのような音の聴覚フィードバックが行為のパフォーマンス向上につながることが示唆されている.我々は本来音の発生しない行為であっても,その行為と連動した音を提示することで同様の効果が得られるのではないかと考えた.そこで本研究では読書に着目し,文字表示に同期した効果音を提示することで文章の理解度や物語への没入感にどのような影響があるかを調査した.本稿では実験のために開発した電子書籍リーダーについて説明し,提示方法として,文字数に基づいた効果音提示,音韻数に基づいた効果音提示,無音の 3 条件を比較した結果について報告する.
著者
渡辺 雅子
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.573-619, 2007-05-21

本稿では、日米仏のことばの教育の特徴を比較しつつ、その歴史的淵源を探り、三カ国の「読み書き」教育の背後にある社会的な要因を明らかにしたい。まず日米仏三カ国の国語教育の特徴を概観した後、作文教育に注目し、各国の書き方の基本様式とその教授法を、近年学校教育で養うべき能力とされている「個性」や「創造力」との関係から比較分析したい。その上で、現行の制度と教授法、作文の様式はどのように形作られてきたのか、その革新と継続の歴史的経緯を明らかにする。結語では、独自の発展を遂げてきた各国の国語教育比較から何を学べるのか、日本の国語教育はいかなる選択をすべきかを、「国語」とそれを超えたグローバルな言語能力に言及しながら考えたい。
著者
富井 規雄 佐藤 圭介
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1254-1261, 2013-11-15

鉄道において,事故等によってダイヤに乱れが生じた時の対応(運転整理)について,現状と今後のあり方を述べる.運転整理は,複雑で大規模な組合せ問題であり,また,迅速な対応が求められること,さまざまな状況を加味した評価関数の確立が難しいこと,予期せぬ事態の発生にそなえなければならないことなどといった難しさがあり,そのために,現状においては,ほぼ人手によって行なわれている.本稿では,利用者の視点にたった運転整理が重要であることを指摘し,そのような観点からの研究開発事例を紹介するとともに,今後望まれる研究開発項目を述べる.
著者
福田 智子 Tomoko Fukuda
出版者
同志社大学文化情報学会
雑誌
文化情報学 = Journal of culture and information science (ISSN:18808603)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1-2, pp.88-84, 2021-03-31

バイエルン州立図書館所蔵『源氏物語』は、辻英子氏により紹介された写本である。その筆跡から、小野お通筆とされている。従来、徳川秀忠が娘の千姫の輿入れに際し作らせた嫁入り本である可能性が指摘されていた。そこで、改めて検証してみると、写本が収められている箱の表に、清和源氏義光流、小笠原家の家紋「三階菱」が記されていることに気づく。この箱がお通書写本と同時に製作されたものとするならば、お通の活躍時期に、嫁入り本を必要とする可能性のある女子として、慶長五年正月、松平阿波守至鎮に嫁した、小笠原秀政女、萬姫が浮上する。なお、本書とともに「葵紋」が伝来するのは、彼女が徳川家康の養女であったことと関わるか。また、箱表の図柄は宇治の情景か。