著者
田畑 仁 堀田 育志 土井 淳裕 川合 知二
出版者
公益社団法人 日本表面科学会
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.200-207, 2005-04-10 (Released:2007-12-21)
参考文献数
15

Relaxor type ferroelectrics are treasure boxes both for basic physics and practical applications. Among them, Ba(Zr, Ti)O3 is one of the candidate materials for elucidating the mechanism of relaxor phenomena. It has homo-valent B-site ions of Zr4+ and Ti4+. Therefore, there is no driving force to push the ions into ordered structure. On the other hand, it has a possibility of co-existence of multi phases (so-called pinching effect). In case of the bulk state, we have found that the relaxor behavior is strongly affected by the annealing conditions. To make clear the intrinsic parameter for the relaxor, we have demonstrated the artificial control of the positioning of the B-site ions by the superlattice technique. The stacking periodicity and the compositional combination of BaTiO3 and BaZrO3 are changed systematically with this method and the sign of the relaxor is detected.

1 0 0 0 OA 敵討亀山噺

出版者
巻号頁・発行日
vol.[6],
著者
秋山 雅彦
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.5-15, 2008
参考文献数
52
被引用文献数
6

最終間氷期は,エーム期および深海底堆積物層序のMIS 5eと同時期を示す用語とされることが多い.しかし,エーム期は後期更新世の開始期として国際的な標準層序に位置づけ13.1万年前〜11.6万年前と定義し,最終間氷期については12.5万年前にヨーロッパにおける樹木花粉が卓越することで特徴付けられる温暖期とすることが望ましい.IPCCによる今世紀末の気温上昇の予測は,循環型社会シナリオとされるB1シナリオでも,1.1〜2.9℃とされ,放射強制力の変化は0.6〜2.4W/m2とされている.最終間氷期の気温上昇の直接的原因は地球軌道の変化による放射強制力の増加で,全地球平均の上昇値は僅かに0.2W/m2とされているが,北極地域の夏の時期ではその値は60W/m2に及ぶ.このことによる最終間氷期の気候変動はきわめて大きく,それに伴う海面上昇も大きかったことが分かっている.近年の急激な気温や海水面の上昇はこれまで人類が経験したことのないほど急激な現象であると報道されることが多い.しかし,最終間氷期の気候変動が現在のそれを越える規模であったことを考えると,産業革命以降になって化石燃料の燃焼による人為的な要因と区別して,自然要因の解明を行うことが是非とも必要になろう.
著者
新井 智一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2010年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.20, 2010 (Released:2010-11-22)

1.研究の目的 近年,ごみ処理場の老朽化に伴う建て替えとその場所をめぐる問題が各地で生じている.本研究は,東京都小金井市における新ごみ処理場建設場所の決定過程を検討し,建設場所の決定要因について考察する. 2.二枚橋処理場の閉鎖と新処理場建設問題 東京都小金井市・調布市・府中市は1957年に,「二枚橋衛生組合」を設立し,3市の縁辺部にまたがる二枚橋処理場で一般廃棄物を焼却処理してきた.1980年代以降,処理場の老朽化が問題となり,組合は2006年度限りで処理場を閉鎖することを決定した.他市と共同処理について協議を進めてきた2市と対照的に,小金井市は財政再建や武蔵小金井駅南口再開発事業などの政治的課題の処理に追われ,ごみ問題を議論してこなかった. 小金井市は国分寺市に対し,ごみの共同処理と,小金井市が市内に新処理場を建設することを打診し,2006年に合意した.小金井市は二枚橋処理場跡地と,ジャノメミシン工場跡地を新ごみ処理場建設候補地とし,市民検討委員会による議論や市民説明会を経て,二枚橋処理場跡地を新ごみ処理場建設場所と決定した. 3.2候補地の問題点 二枚橋処理場は野川流域の低地に所在し,北側には国分寺崖線が走る.加えて,南東部に所在する調布飛行場の滑走路延長上に位置するため,煙突の高さは約60mに制限されていた.そのため,煙突から排出される煙や悪臭が,崖線上の小金井市東町1丁目・5丁目付近に被害を及ぼしてきたとされる. 一方,ジャノメミシン工場跡地は,小金井市が市役所新庁舎の建設を見込んで取得した市有地である.小金井市の中心に位置し,北側をJR中央本線に接し,南側には小金井第一小学校や小金井市立図書館,西側にはマンションがある. 4.新処理場建設場所の決定要因 二枚橋処理場周辺地区の住民は,50年にわたり環境的不公正を受けてきたとされるものの,新処理場建設にあたり,「受苦圏」が変化することはなかった.市長選挙・市会選挙の投票率や,市民説明会の参加者・質問者数を分析すると,新処理場建設候補地周辺の2地区を除き,この問題をめぐる小金井市民の関心は高くなかった.また,市民検討委員会の議論を検討すると,小金井市の行政は,処理方法をめぐる議論を新処理場建設場所決定後に先送りすることによって,ジャノメ跡地に建設することを避けようとする意図があったと推測できる. 一方,二枚橋処理場周辺地区の住民も,公害についての独自調査や,他地区・他市へのアピールをおろそかにしてきた.これに対し,ジャノメ跡地周辺地区の住民は市民検討委員会において,同跡地での開発が地下水に影響を与える可能性があるとする,市の地下水保全会議の見解を指摘した.このことは,市民検討委員会においてジャノメ跡地の評価を下げた大きな要因となった.新処理場建設問題をめぐる市民の無関心と,2候補地周辺住民による対応の違いが,二枚橋処理場跡地に新処理場を建設することとなった大きな要因であると考えられるのである.
著者
紀平英作編
出版者
京都大学学術出版会
巻号頁・発行日
2007
著者
内山 勝 ドシェ ピエール
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.19-30, 1989
被引用文献数
17 2

ロボットが両手でひとつの対象物を操作する作業について, 静力学および運動学的観点より理論解析し, 協調動作を記述するための作業座標, およびその座標系における一般化力, 速度, 位置を首尾一貫した形で導く.そして, この結果に基づき, 左右の手にマスタ, スレーブの区別をつけない位置と力のハイブリッド協調制御系の構成を示す.理論解析では, 両手の運動を対象物中心で考えるために, 仮想ステッキという概念を新たに導入し, さらに一般化逆行列の理論を用いることにより, 両手の運動を対象物の絶対運動と内部運動に分解する.この分解された作業空間において, 協調動作を記述するための一般化力, 速度, 位置を導く.こうして導かれた一般化力, 速度, 位置は, 左右の手の関第力, 速度, 位置の対称な関数となっている.したがって, この座標を作業座標として構成されるハイブリッド制御系は, 左右の手にマスタ, スレーブの区別をつけることなく, 対象物の絶対運動および内部運動に対応した位置と力をそれぞれ独立に制御することが可能である.これより, 両手で対象物を保持して運ぶ作業が, 非マスタスレーブ方式により実現される.
著者
桝田 正治 小西 国義
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.419-424, 1993 (Released:2008-05-15)
参考文献数
9
被引用文献数
2 3

ホウレンソウ種子は10~20°Cで良く発芽し, 25°C以上で著しく抑制された。25°Cで30%程度の発芽率を示す種子群を, 36N (濃硫酸) •30分間あるいは18N•60分間処理すると, 硫酸無処理の果皮除去種子と同様に80~95%の高い発芽率を示した。しかし,30°Cでは硫酸処理種子および果皮除去種子とも約50%の発芽率にとどまった。果皮を物理的に割っても発芽率は向上したが, その効果の程度は小さかった。硫酸処理後, 水ポテンシャル-1.3MPaのポリエチレングリコール溶液 (PEG-6000) に1週間 (10°C)プライミング処理した種子は, 供試6品種とも30°Cの高温下で置床後8日以内に80%以上が発芽した。プライミング処理のみでは, その効果は小さかった。果皮表面の走査電子顕微鏡観察によると, 硫酸処理によって果皮クチクラが崩壊し表皮に多数のくぼみが現れ, その底に径1~2μmの小孔が認められた。このことより, 硫酸処理による発芽促進は, とくに果皮クチクラの崩壊により胚への酸素透過性が高まったことによるものと推察された。