著者
中井久夫著
出版者
東京大学出版会
巻号頁・発行日
2013
著者
林 博史
出版者
関東学院大学経済学部教養学会
雑誌
自然・人間・社会 (ISSN:0918807X)
巻号頁・発行日
no.45, pp.51-67, 2008-07

アジア太平洋戦争において、アメリカは対日戦を進めていく上で、日本人の意識分析をおこない、それを心理戦に活用していった。そこでの分析は、戦闘を有利に進めるためだけでなく、戦後の対日占領政策とも密接に関連するものであった。そのために戦闘のなかで捕獲した捕虜の意識分析をおこなっていたが、サイパン戦の結果、米軍は初めて多数の日本民間人を収容し、民間人の意識分析をおこなうことができた。その調査報告書の全文を翻訳し紹介する。この報告書の内容は、まだ予備的な内容で十分に深められているとは言えないが、民間人が米軍への投降を拒む理由が、けっして愛国的な熱情や天皇への崇拝などではなく、米軍に捕まると殺されるか拷問されることへの恐怖であることがはっきりと示されている。
著者
林 博史
出版者
関東学院大学経済学部教養学会
雑誌
自然人間社会 (ISSN:0918807X)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.3-16,

第2次世界大戦において心理戦は重要視され、特にアメリカは日本兵捕虜への尋問や没収した文書の分析を通じて、日本人の意識分析をおこなった。その際の重要なテーマの一つが日本人の天皇観であった。本稿は、アメリカの戦時情報局海外士気分析部臨時国際情報サービスが作成した『日本の天皇』と題されたレポートを手がかりに、戦中の日本人が自らのアイデンティティと天皇をどのように重ね合わせていたのかを分析したものである。その結果、個々人が自らの願望を天皇に投影させ、自らの考えの正しさの根拠を天皇に託するというあり方を明らかにし、そうしたあり方が天皇の戦争責任追及がなされなかった一因としてあり、さらに今日にいたるまで日本人の主体形成上の大きな問題となっていることを指摘している。
著者
日下部 典子
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.278-284, 2017

<p>産後の母親のメンタルヘルスを考えたとき,産後うつ病,マタニティ・ブルース,育児ストレスなどがあり,母子の心身の健康のために有効な介入が望まれている.たとえば産後うつ病の発症に妊娠中のメンタルヘルスが大きく関与していることが明らかとなっている.すなわち,妊娠中のメンタルヘルスを明らかにし,うつ症状の緩和やストレス低減を図ることは,妊婦はもちろん,出産後の女性のメンタルヘルスにとっても重要である.そこで,本研究では,妊婦49名(平均年齢31.82歳)を対象に,うつ状態とストレスコーピングおよび被援助志向性との関連を明らかにすることを目的とした.EPDSの結果から,18%にうつ症状が,さらにそのうち半数がうつ病の可能性が濃厚であった.またうつ得点の高い対象者は「夫へのサポート希求」,「夫以外の知り合いへのサポート希求」が有意に低く,「回避・諦め」コーピングと「被援助への懸念」が有意に高かった.階層的重回帰分析の結果,「夫へのサポート希求」がうつ傾向に影響を及ぼす要因であることが明らかとなった.以上のことから,妊娠中の女性約2割にも抑うつ症状が認められ,妊婦への抑うつ状態軽減の対策が必要であることが明らかとなり,サポート希求コーピングの獲得,被援助懸念への認知修正が抑うつ状態緩和に関係することが示唆された.妊娠中のうつ軽減は妊婦自身はもちろん,産後うつ予防にも有効であると考えられる.</p>
著者
国土地理院 編
出版者
建設省国土地理院
巻号頁・発行日
vol.昭和35年 第1部, 1961
著者
細木 一成 福山 勝彦 鈴木 学 丸山 仁司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A4P2076, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】国立社会保障・人口問題研究所が発表した西暦2050年の日本人の平均寿命は、男性80.9歳、女性89.2歳と予測している。このように平均寿命は伸び今後、高齢者の数がますます増加してくるのは明白である。時間的に制約のある病院、介護老人施設、訪問リハビリテーションで理学療法士が行う個別の理学療法は限界があり、病院や施設内、在宅で後部体幹筋などのリラクゼーション効果を得ることは不十分で、理学療法を有効に活用できないと考える。体幹筋の筋緊張の軽減や、リラクゼーション効果を得る手段として、乗馬療法やフィットネス機器のジョーバなどが多く研究され紹介されている。その中でもジョーバは簡便に行えるが、立位、座位バランス能力が低下した高齢者においては、使用することが困難であろうと予測する。これに対する一つ手段として、座位にて振幅運動を利用したロッキングチェアによる運動により同様の効果が得られないかと考えた。ロッキングチェアよるリラクゼーション効果判定の手段として、施行前後のFFD(finger-floor distance)および重心の前方移動距離の変化を測定し、若干の知見を得たので報告する。【方法】被験者は理学療法士養成校に在学する腰痛等に既往のない成人男女10名(男性5名、女性5名、平均年齢24.1±6.2歳)とした。5分間の安静座位を取らせた後FFDおよび重心の前方移動能力の測定を行なった。方移動能力の測定は福山らの方法に順次、アニマ社製グラビコーダGS-10を使用した。被検者を床反力計上に5cm開脚位、2m前方の目の高さにある目標点を注視して起立させた。まず10秒間の安静時重心動揺を測定した。次に体幹を屈曲させたり踵を浮かせたりすることなく身体を前方に最大移動した状態で保持させ、10秒間の重心動揺を測定した。前方移動時のMY(MEAN OF Y:動揺平均中心偏位)値から安静時のMY値を減じ、さらに足長(踵の後面から第1趾先端までの距離)で除し前方移動能力とした。次に被験者をロッキングチェア(風間家具のヨーロッパタイプ)上に安楽と思われる姿勢で座らせた。床に足底を接地した状態で、下肢の筋力を使わず体幹筋の運動により10分間、前後に揺らすことを指示した。振幅させる周期は被験者の任意とし10分間安楽に行なえるように配慮した。ロッキングチェアでの10分間の運動後、運動前と同様の方法でFFDと前方移動能力の測定を行なった。運動前後のFFDおよび前方移動能力の値についてウィルコクソンの符号順位和検定を用いて比較検討した。有意水準は5%未満とした。なお統計処理には統計解析ソフトSPSS 11.5J for Windowsを使用した。【説明と同意】被験者に対し目的・方法を十分説明し理解、同意を得られた方のみ実施した。実施中に体調不良となった場合は速やかに中止すること、途中で被験者自身が撤回、中断する権利があり、その後になんら不利益を生じず、また個人情報は厳重に管理することを伝えた。【結果】FFDは運動前で平均2.1cm±10.9cm、運動後で平均5.2cm±11.4cmと運動後に有意に増加した(p<0.05)。前方移動能力は平均27.4%±8.2%、運動後で平均31.7%±4.8%と運動後に有意に増加した(p<0.05)。【考察】今回のロッキングチェアでの運動によりFFD、前方移動能力が増大したことについては、後部体幹筋、下腿後面筋に対するリラクゼーション効果により体幹、下肢の柔軟性が増大したものと推察する。佐々木らによれば体幹の筋緊張、体幹回旋筋力といった体幹部分の機能異常や能力低下が、寝返り、起き上がりなどの動作を困難にしていると述べている。高齢者の寝返り、起き上がりなどの基本動作能力の維持・向上を考えると個別に行なう理学療法以外に、高齢者自身が行う自主的な運動が必要となってくる。このような運動は継続することが重要で、簡便さが必要になり複雑な運動や、負荷が強ければ継続が困難となる。簡便で安価に導入できるロッキングチェアの持続運動は、体幹筋の過緊張が原因で寝返り、起き上がりが困難となっている高齢者に対して、有効で動作の遂行に好影響を及ぼすものと推測する。【理学療法研究としての意義】ロッキングチェアを使用した持続運動は後部体幹筋、下腿後面筋に対するリラクゼーションに効果があり、高齢者自身が行う運動に対し有効であると考える。
著者
太田 知裕 小松 将三 徳武 昇
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.120, no.6, pp.409-419, 2002 (Released:2003-01-28)
参考文献数
53
被引用文献数
1 3

アレンドロネート(アレンドロン酸ナトリウム水和物;ボナロン®錠5 mg)は,骨表面に結合し破骨細胞による骨吸収を抑制する窒素含有のビスホスホネートである.第3世代のビスホスホネート化合物であるアレンドロネートは,骨吸収面に特異的に分布し,破骨細胞と骨面で形成される閉鎖環境下で,破骨細胞より分泌される酸によるpH低下(酸性)により骨面から遊離され,破骨細胞内に取り込まれる.取り込まれたアレンドロネートは,コレステロール合成系であるメバロン酸合成経路を抑制し,低分子量GTPタンパク質のプレニル化を阻害し,細胞骨格への影響などを介して破骨細胞の機能を抑制する.アレンドロネートの破骨細胞に対する骨吸収抑制作用は可逆的で,作用発現の100倍以上の濃度においても細胞障害性を示さない.長期投与でも骨石灰化抑制を起こさず,骨折治癒に影響を与えない.このことから,骨質に対して安全性が確立した骨粗鬆症治療薬である.骨粗鬆症において最も危惧される病態は,骨折を生じることである.アレンドロネートは,国内において骨密度の増加に加え,骨折の抑制効果が確認されている. 現在,閉経後や老人性の骨粗鬆症に加え,ステロイド投与など薬剤による二次性の骨粗鬆症が注目されている.この点,アレンドロネートは海外において治療効果の高い骨粗鬆症治療薬として位置付けられており,約100カ国で認可され,約450万人以上の患者に使用されている.アレンドロネートは,骨粗鬆症においてEBM(Evidence Based Medicine)の考え方をいち早く取り入れた薬剤である.本稿ではアレンドロネートの薬理作用及び臨床効果について概説する.

1 0 0 0 Othello Font

著者
Amanj Khorramian Tomoko Taniguchi Takeaki Uno Ryuhei Uehara
雑誌
研究報告アルゴリズム(AL) (ISSN:21888566)
巻号頁・発行日
vol.2018-AL-168, no.2, pp.1-8, 2018-05-18

Othello, also known as Reversi, is a quite well known strategy board game for two players on a board of size 8 ×8. The set of all reachable patterns is not yet known for this game. In this paper, we finally obtain all reachable patterns on 5 × 6 board by developing nontrivial algorithm on a supercomputer. We observe the scale of complete search-tree is big even for a board of size 5 × 6 and parallelize a distributed frontier search using shared memory to reach the final depth of the tree. To reduce the memory requirement, the tree is horizontally compressed using a novel method, and the frontiers are maintained in a novel data-structure. Moreover, an efficient number system is proposed and utilized for representing the states of the game, and a symmetry of the states is applied during the search. We assume that the board and pattern are rotation symmetry, but we assume that the mirror symmetry gives the different pattern. Eventually, the whole tree is traversed in 2 hours by visiting 257,387,474,170 different states using random access memory shared among 576 processing cores. We aim to find specific font patterns among the states of the final depth. However, 83,175,694 of the states are located at the final depth, at which we start looking for font patterns. Before that, a set of 96 characters of size 6 × 6 is binarized, and their (5 × 6)-compatible patterns are taken for lookup by considering all possible symmetries. In this way, a font of 96 characters is designed.
著者
加藤 哲久
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.83-90, 2016-06-25 (Released:2017-05-09)
参考文献数
47
被引用文献数
1 1

単純ヘルペスウイルス1型(Herpes simplex virus type-1;HSV-1)は,軽度で合併症を伴わない粘膜感染から致死的な感染により,広範囲のヒト病態を引き起こす.HSV-1 Us3遺伝子は,α-ヘルペスウイルスに広く保存されるセリン・スレオニンリン酸化酵素をコードしている.次々と蓄積される知見が,Us3はHSV-1感染の極めて重要な制御因子であることを示唆している.しかしながら,Us3が司るHSV-1病態発現能の分子メカニズムは不明なままであった.本稿では,特に生体レベルにおけるUs3の重要性に注目し,HSV-1 Us3の役割に関する現在の知見を概略する.

1 0 0 0 岬町史紀要

著者
岬町教育委員会編
出版者
岬町教育委員会
巻号頁・発行日
1989
著者
北澤 保之 志賀 典之
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C0564-C0564, 2008

【はじめに】森川嗣夫らの報告では、サッカーの傷害は特殊なポジションであるゴールキーパーやヘディングでの競り合いの際生じる頭頚部および顔面の傷害を除くと下肢に大半の外傷が発生している。日本サッカー協会の統計からも足関節靭帯損傷、ハムストリングスの肉離れ、膝内障が多く、サッカーチームのメディカルサポートにあたっては外傷発生に関与した下肢の動きの観察と対応が必須となる。今回成人男子及びJr.サッカーチーム選手のメディカルチェックにあたり、外観上の形態観察で回内・外足を分類する木田貴英らの推奨するDr.Anthony Redmondの視覚的足部アライメント測定方法Foot Posture Index(以下FPI法)とダイナミックアライメントの指標とされるKnee in toe out(以下KITO)およびKnee out toe in(以下KOTI)と負傷との関連性について検討した。 <BR><BR>【対象と方法】成人レギュラー選手 15名 30脚 (男性のみ、平均年齢24才)両内果間1グリップ幅の自然立位とし写真撮影を行った。FPI法に基づき8項目を右・左評定し、各素点の合計で+16から-16の範囲で回内・外足の総合判定を行った。また、膝内・外反、下腿内・外旋の程度を膝蓋骨中央よりの垂線の偏移程度で+10から-10の範囲に分類し、静的(static)アライメント(以下sKITO、sKOTI)の素点とし、クロス集計により3×3の9群にカテゴリー分類を行い、シーズン中の足・膝部捻挫、骨折等の怪我の有無と比較検討した。<BR><BR>【結果】負傷選手は3名、受傷率20%であり、FPI法では15脚が回外足でその内、当該負傷脚を含む11脚が「回外足かつsKOTI」のカテゴリーに属した。Yates補正カイ二乗検定で、危険度5%未満で有意差があると判定された。よって今回の評価法及びカテゴリー分類において「回外足かつsKOTI」群は足・膝部捻挫、骨折等の怪我にハイリスクであると言える。<BR><BR>【考察】従来の踵骨角評価では、Rexxamによると日本人の70%は回内足と報告されている。そのためunhappy triad(不幸の3症候)に代表する扁平回内によるKITO過負荷での外傷の注目度が高いが、今回の対象および評価法では足底筋他の筋肉が良く発達し、足部アーチ機能がしっかりしており、総合判定で回外足が多かった。そして「回外足かつsKOTI」の形態的な個体要因は外傷を誘発しやすい原因基盤のひとつとして考えられた。<BR><BR>【まとめ】足部における生体力学作用は非常に複雑で難解である。FPI法は形態観察から足部を総合的に評価でき安全かつ簡便な為、サッカー選手のトレーナー活動として下肢の動きを観察する上での一助として有用性を感じた。また、当該カテゴリー選手の運動量調整に際しては疲労度を含めたより繊細なマネージメントの必要性が確認された。
出版者
巻号頁・発行日
vol.[5],
著者
高橋 このか 渡邊 慶和 南野 謙一 後藤 裕介
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.163-166, 2017

あるコーヒーショップでは,店内スタッフ間の情報共有ツールとして『連絡ノート』を活用している. 今回『連絡ノート』の有用性を実証するため,スタッフ全員の情報共有の重要性についてモチベーションを関連付けた『共有表』を作成し,5週間の記入を実施した. 実施前後アンケートにより,スタッフの情報共有に対する意識の変化を分析した. 今後は『連絡ノート』の機能を満たしながら,更に情報共有を円滑にし,モチベーションを高めるための情報ツールを検討していく.