著者
山中 敬一
出版者
中央大学
雑誌
法學新報 (ISSN:00096296)
巻号頁・発行日
vol.121, no.11, pp.397-437, 2015-03

詐欺罪成立要件につき、「財物」または「財産上不法の利益」の移転につき、「財産的損害」を必要とするかどうかについては争いがあるが、通説は、一項、二項ともに「財産的損害」を既遂の要件とする。判例においては、近時、重大な錯誤があり、財物や財産的利益の移転があれば既遂を認め、財産的損害が発生したかを問わないように見えるものが多くなっている。本稿では、実質的個別財産説を採りつつ、その実質の内容とその判断基準を明らかにしようと試みた。 本稿では、詐欺罪を近代の取引社会の所産と見て、取引の中で、詐欺罪は、たんに給付と反対給付という狭義の取引関係から生じるものではなく、寄付金詐欺、補助金詐欺のような片務的な行為も、これも取引関係に含めることができるとする。片務的行為の場合、財産的損害が発生したかどうかは、「社会的目的」が「不達成」に終わったかを基準とするという理論が唱えられているが、寄付行為者の「満足感」などといった「社会的」目的の達成は、財産犯における基準ではありえない。本稿では、それを経済的な取引目的の不達成の場合に財産的損害が発生するとする構想(取引目的不達成理論)を展開し、その理論を判例において実証する。
著者
玉木 伸茂 室谷 拓也 原田 貴人
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.83, no.850, pp.16-00500-16-00500, 2017 (Released:2017-06-25)
参考文献数
20

It is important to improve spray characteristics of an energy conversion engine in order to reduce carbon dioxide and exhaust gas emission. The purpose of this study is to design and develop high-dispersion injection nozzle for direct injection Diesel engine. This paper describes about that effects of the measurement and the geometric shapes of nozzles on spray characteristics and design of the nozzle which is obtained more excellent spray characteristics. When the measurement, the geometric shapes and the internal structure of nozzle were designed the most suitable conditions, breakup length becomes approximately 10 % shorter and spread of spray i.e., spray angle becomes large about 30 %. Moreover, Sauter mean diameter obtained is about order of 10 μm which is smaller than that with the nozzle developed in the previous study.
著者
根本 裕史
出版者
広島大学
巻号頁・発行日
2009

博士論文
著者
足立 浩平
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.139-161, 2002-09-30 (Released:2017-05-01)
参考文献数
180

計量心理学は心理データの統計解析法の研究開発を主なテーマとし,心理学の事情に応じて独自の多変量データ解析法を萌芽・発展させてきたが,その経緯や最近の研究動向を報告する.まず,現在も重要な「古典」であるサーストン尺度構成と古典的テスト理論を概観した後,記述的な多次元解析法(数量化法・拡張主成分分析・多次元尺度法),および,潜在変数分析(因子分析・構造方程式モデリング・項目反応理論)について記す.以上の報告に加え,心理学における統計法の普及(心理統計教育)や,計量心理学と関連の深い数理心理学にも言及する.
出版者
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
雑誌
アジア・アフリカ地域研究
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.198-226, 2017

<p>双子を希望する女性たち ―『ガールズトーク』にみるウガンダ女性の結婚・出産観―<br/>中澤 芽衣<br/><br/>ネパール山間医療の過去と現在 ―村人と生きる,パルパ郡タンセン病院―<br/>中村 友香<br/><br/>海は道,空は地図<br/>中野 真備<br/><br/>声を上げる活動家たち<br/>鶴田 星子<br/><br/>暴動の記憶<br/>宮園 琢也<br/><br/>'Moderate' Fatness is Desirable: Beliefs Related to Body Size in Mukono, Central Uganda<br/>Seera Georgina<br/><br/>広西壮族自治区のトン族集落における居住空間 ―風水と「政策移動」―<br/>黄 潔</p>
著者
佐野 浩彬 田口 仁 花島 誠人 伊勢 正 佐藤 良太 高橋 拓也 池田 真幸 鈴木 比奈子 李 泰榮 臼田 裕一郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

<b>報告の背景と目的</b> <br>2016年4月14日21時26分に発生した震度7の地震(Mj6.5)と,4月16日1時35分に発生した地震(Mj7.3)およびそれ以降に続く余震(2016年熊本地震)に対して,防災科学技術研究所(防災科研)では災害対応の一環として,地図情報の作成・集約・共有による情報支援を実施した.防災科研が独自に行っている地震や液状化,降雨,火山,土砂災害などの観測・予測データや,熊本県庁から提供された道路規制情報や避難所情報,通水復旧のインフラ情報などをWeb-GISに統合し,俯瞰的な被害状況を把握できる仕組みを構築した.各種情報が集約された地図は,防災科研が構築した熊本地震のクライシスレスポンスサイト(http://ecom-plat.jp/nied-cr/index.php?gid=10153)において公開したほか,避難所情報などの公開が難しい一部の情報については,熊本地震災害対応にあたる特定機関向け地図を構築して提供した. 本報告では,熊本地震における地図情報の作成・集約・共有における災害対応支援のなかで,熊本県庁をはじめとする各種機関が集約・発信する情報が,どのように地図情報として一つの地理空間情報基盤上に整理されたのかについて報告する. <b><br>熊本地震における地図情報支援</b> <br>4月14日に発生した震度7の地震を受けて,防災科研では地震による被害状況把握ならびに情報集約のためのWeb-GISを構築した.当初は防災科研が観測した震度分布や推定全壊棟数分布のデータをWeb-GISに統合した.また,地震発生翌日の4月15日には,熊本県庁に防災科研研究員が派遣され,熊本県や中央省庁などと連携し,各機関から提供される災害情報を,構築したWeb-GIS上に統合した.直接Web-GIS上に取り込める形で提供された情報には,国土地理院の「被災後空中写真」やITSジャパンの「通れた道マップ」,地震推進本部の「活断層図」などが挙げられる.また,熊本県庁から提供された道路被害情報や避難所情報などはテキスト形式やExcelで整理されたもの,独自の地図で描画されたものなど,Web-GISに直接地図情報として取り込むことができなかったものもあり,それらは住所情報などを頼りにして位置情報を付与することでWeb-GIS上に統合した.各機関から集約・整備したデータは約45種類,データ数として424を数える(6月27日時点).Web-GIS上で集約されたデータは,利用者がニーズに応じて必要な情報を適宜選択して表示することができる.例えば,通水復旧状況のレイヤと避難所情報のレイヤを組み合わせることで,給水支援が必要な避難所を分析できたり,避難所と推定全壊棟数分布,道路規制情報の3レイヤを重ね合わせることで,生活支援が必要な地域と,支援に向かうためにたどり着くための最適ルートを事前に検討することが可能となる. <b><br>地図情報作成・集約・共有における課題</b> <br>被害情報をWeb-GIS上に統合することで、災害対応支援への活用が可能となるが、情報の統合化においては様々な課題が明らかとなった。例えば、避難所情報については国土交通省があらかじめ国土数値情報のなかで整備している避難所情報もあれば、DMATが独自に収集し整理している広域災害救急医療情報システム(EMIS)の避難所情報、また熊本県庁で集約されたものや熊本市で集約されたものなど、災害発生直後に各種機関が独自に情報収集を始めてしまったため、一つの情報として集約することが困難な状態だった。また、避難所情報の統合にあたっては、各機関が整理する情報の避難所名称に差異があったり、本来は指定されていない避難所が開設されているなど、単純な統合化・集約化が難しいという課題があった。こうした各種機関が独自に情報を収集、集約すると、その後の情報統合化が難しくなるため、あらかじめ共有情報の標準化(COP,Common Operational Picture)を検討しておくことが重要となる。今後の課題としては、地図情報の作成・集約・共有における自動化や高度化、災害情報におけるCOP実現に向けた検討が挙げられる。 &nbsp; <br> <b>謝辞:</b>本報告の一部には、総合科学技術・イノベーション会議のSIP(先着的イノベーション創造プログラム)「レジリエントな防災・減災機能の強化」(管理法人:科学技術振興機構)の予算を活用した。
著者
相良 司 萩原 将文
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.461, pp.495-500, 2010-03-02
参考文献数
23

本論文では,自然言語の文書から知識を学習し,想起と推論を行う言語処理ニューラルネットワークを提案する.提案システムでは,自然言語の文が入力されると,まず前処理として文の知識への分解と単語の深層格推定が行われる.この前処理に基づき,ネットワークが作成される.提案システムのネットワークは文層,知識層,10種の深層格層,辞書層から成る.10種の深層格層とは,対象格や場所格などといった単語の意味的役割のニューロンが格納される層である.深層格層の導入により,複雑な文章の扱いが可能となった.また,学習させた知識から未知の知識を推測できるように,辞書層を導入した.辞書層では,日本語語彙大系を用いて単語が属している概念が検索される.辞書層は,検索された概念が格納されることで,脳の長期記憶部の役割を果たす.ネットワークの学習では,へブの学習則に則り,結合を強化する学習が行われる.学習文と関連した質問への応答実験により,提案システムが自然言語の文書から知識を学習し,想起と推論が可能なことを確認した.

1 0 0 0 OA 東洋史綱要

著者
小柳司気太 述
出版者
哲学館
巻号頁・発行日
vol.下編, 1898
著者
平子友長 [ほか] 編著
出版者
梓出版社
巻号頁・発行日
2016

1 0 0 0 OA 江戸名所花暦

著者
岡山鳥 編
出版者
博文館
巻号頁・発行日
vol.春,夏, 1893
著者
矢野 眞和
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.5-20, 2000-05-10 (Released:2011-03-18)
参考文献数
15

Globalization can be described as the flow of goods, capital, technology, people and value across borders. It is a process which affects the socioeconomic policies, including educational policies, of different country in different ways.The purpose of this paper is to examine the concept and meaning of globalization, and to look at strategies for integrating the dimension of globalization into education, focusing in particular on the impact of the global economy and new information technology. It includes a discussion of the breakdown of Japanese economic nationalism in the 1990s, an exploration of why education is important for responding to globalization, and a description of the main problems of the marketization of education.The key to Japan's economic success in the postwar period lay in the development of the doctrine of economic nationalism, through which the social progress of workers and their families was advanced through the pursuit of the expansion and security of firms. This economic nationalism was emphasized by the system of lifelong employment, and the rapid growth of export industries in the 1975-90 period.The economic recession in the early 90s marked the breakdown of Japanese economic nationalism, and was accompanied by an increasing awareness of a global economy and innovation of information technology.A new consensus of the role of education is based on the idea that nations are able to win a competitive advantages in the world wide knowledge based economy through investment in new technology and upgrading the quality of human resources by the marketization of education.This idea, however, threatens to increase the social inequalities and undermine the foundations of social solidarity. In order to reduce these problems it is necessary to rebuild the educational and employment institution and to upgrade the quality of local labor forces and industries.
著者
川西 千弘
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.1-10, 2011

本研究の目的は,好ましい顔と好ましくない顔の認知的表象における構造的特性の相違を探ることであった。92名の女子大学生が実験に参加し,4人の刺激人物(好ましい顔の刺激人物2名と好ましくない顔の刺激人物2名)について,各々15個の行動(好ましい行動5個,好ましくない行動5個及び中立的な行動5個)をする可能性を評定した。その結果,好ましい顔の人物がポジティブ行動をする可能性のほうが,好ましくない顔の人物がネガティブ行動をする可能性より高いというポジティビティ・バイアスが確認された。また,多次元尺度法の分析から,好ましい顔におけるポジティブ行動情報間のほうが好ましくない顔におけるネガティブ情報間より緊密に体制化されていることが示された。<br>