著者
木野 稔也 福田 康二 古江 増裕 茆原 順一 泉 孝英 大島 駿作
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.23, no.7, pp.829-836, 1985

61歳男子の肺気腫症例に, 水性ディオノジール<sup>®</sup>を用いて選択的肺胞気管支造影を施行したところ, 6日目から発熱のほか咳嗽, 喀痰, 呼吸困難などの喘息様症状を呈し, 胸部X線写真上気管支肺胞に残留した造影剤を中心に浸潤影を認め, 検査所見では喀痰および末梢血好酸球増多, 血清IgE高値を示した症例を報告した. この症例は, 造影剤が残留した部位を中心に生じた喘息性肺好酸球増多症と診断することができるが, その病因として, 水性ディオノジール<sup>®</sup>の好酸球に対する chemotactic substance としての作用によるもののほか, 真菌抗原に対するI型およびIII型アレルギーの関与が示唆されたことから, アレルギー性気管支肺真菌症としての診断基準をも満すことになり, 造影剤とともに偶然に真菌抗原が長期間気管支肺胞内に貯留したことによって生じた可能性などを考察した.
著者
金子 かつこ 渕野 剛生 安武 正剛 内藤 郁夫 飯岡 正麻 芝木 儀夫
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.45, pp.248-249, 1998-10-30

Effects of color on perceived qualities of textile materials were studied by using dyed polyester chips. Six hues were investigated. Five color chips of textile with constant lightness and 4 to 5 chips with constant chromaticness were chosen in each hue. 25 Girl students were investigated their own 6 fundamental qualities by means of SD-method after demonstration of the textile chips at constant conditions. The effects of Munsell chroma and value were studied by means of correlation coefflcients and slopes of regression straight line. The lightness value affects on senses of shade of color, roughness, lightness, hardness, and the chromaticness value does on the sense of activeness.
著者
高宮 正貴
出版者
The Japanese Society for the Philosophy of Education
雑誌
教育哲学研究 (ISSN:03873153)
巻号頁・発行日
no.95, pp.51-70, 2007

The purpose of this paper is to clarify the relationship between J. S. Mill's utilitarianism and his educational thought. For Mill, utilitarianism must ground educational thought so long as it shows the purpose of human life.<BR>The following points will be discussed in this paper.<BR>1. The feature of Mill's utilitarianism is to introduce not only the first principle, "the Greatest happiness principle, " but also "secondary principles" such as liberty and virtue. Each "secondary principle" has its own priority unless it conflicts with each other. Education and instruction are regarded as "secondary principles" as they enable people to learn the tendencies of actions. Education restricts the application of "the principle of liberty, " which is one of the "secondary principles." "The principle of liberty" affirms the liberty of "self-regarding" action, but nonage and children, who cannot act rationally, are not qualified to be endowed with this liberty.<BR>2. According to Mill, utilitarianism requires moral education for its realization and justification. This moral education must be conducted by developing one's own individuality. The purpose of this moral education can be accomplished not only by providing systematic education, but also by using the forces of social institutions, public opinions, and religion.
著者
稲垣 卓造 飯島 祥二
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.308-318, 2009-12-01
被引用文献数
1

室内仕上げ面の光沢が、室内の雰囲気評価とそこで想定される行為の選択にどのような影響を与えるかを実験で確かめた。実験変数として、光沢以外にも両者に大いに影響を与えると考えられる色彩、光源、家具配置などを組み込んだ。9要因を組み合わせた27の室内模型をプロジェクターで投影し、20人の被験者を対象に実験を行った。実験計画は、直交配列により9つの主効果と2つの交互作用が吟味できるよう割り付けた。雰囲気評価の結果を因子分析にかけたところ、3因子が抽出された。ぬくもり、静穏さ、清新さと名付けた。壁と床の色相、壁の光沢、パーティションの高さと家具配置の交互作用が雰囲気評価に大きな影響力をもたらすことが明らかとなった。行為の選択についても3因子が抽出された。くつろぎ、知性、孤独と名付けた。ここでも、床の光沢の主効果と、パーティションの高さと家具配置の交互作用が目立った効果を示した。双方の結果から、半光沢の仕上げが「中途半端であいまいな」印象を与えるためか、好ましくない結果を与えることが明らかにされた。また、パーティションの高さと家具配置の交互作用も大きなウエイトを占め、光沢とともに空間構成と人間の行動に大きな影響力を与えることも明らかとなった。
著者
藤川 和俊 長 篤志
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.38, no.10, pp.21-24, 2014-02-25

礼服等に用いられる黒色織物の見えの高級感を表す指標の一つに,L*値という黒さを表わす値がある。見えの高級感を表現している要因は他にも存在すると考えられるが,明らかになっていない.本研究では,織物の光沢特性と見えの高級感の関連性について研究した.ドレープ構造をもつ織物の輝度分布を計測し,画像処理と主成分分析によって見えの高級感と関連性の高い光沢特性を発見した.結果として,その光沢特性とL*値の組み合わせによって高級感を表せることがわかり,定量化の可能性を示せた.
著者
古賀 登
出版者
古代学協会
雑誌
古代学 (ISSN:04522524)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.109-123, 1965-11
著者
堀場 雅夫 村上 太一
出版者
日経BP社
雑誌
日経トップリーダー
巻号頁・発行日
no.352, pp.6-10, 2014-01

堀場 シンプルな言い方やけど、ものが売れなくなったことやろな。昔はとにかくものがなかった。材料がない、生産設備がない、人材がいない。ないない尽くしの中で、ちゃんとしたものさえ作ることができれば売れた。 今は正反対や。
著者
金指 努 綾部 慈子 竹中 千里 肘井 直樹
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.97, no.2, pp.95-99, 2015-04-01 (Released:2015-06-02)
参考文献数
21
被引用文献数
2

東京電力福島第一原子力発電所事故に起因する, 森林から渓流生態系への落葉を介した放射性セシウムの移動を明らかにするために, 福島県伊達郡川俣町の小渓流において, 渓畔域に分布するコナラの生葉, 林床の枯死・脱落葉 (落葉) および渓流 に堆積している落葉に含まれるセシウム 137 (137Cs) 濃度の関係を明らかにした。コナラの葉は, 生葉から落葉となり, 渓流に 堆積して分解される過程で, 137Cs 濃度が減少していた (2013年)。2012 年と 2013 年の落葉期 (11月) に, 林床に落下したコナラ葉と, 各翌年の3月に, 渓流に堆積しているコナラ落葉の137Cs 濃度を比較すると, 渓流のコナラ落葉の方が低くなった。 また, 林床に落下したコナラ落葉, 渓流に堆積しているコナラ落葉および渓流に堆積しているその他の落葉は, それぞれの各年における137Cs 濃度に大きな変化はなく, 今後も長期間, 渓畔林から渓流生態系へ落葉を介して137Csが移動する可能性が示唆された。
著者
横山 美江
出版者
医学書院
雑誌
保健師ジャーナル (ISSN:13488333)
巻号頁・発行日
vol.71, no.7, pp.598-604, 2015-07-10

はじめに フィンランド(図1)は北欧型福祉国家として,母子保健をはじめとした社会サービスが広く行き届いた国である。このような社会環境を反映してか,フィンランドはさまざまな指標で世界の上位にランクされており,セーブ・ザ・チルドレンの「お母さんに優しい国ランキング2014」でも世界第1位を獲得した1)。 このように,フィンランドでは,妊娠期から子育て期に至るまで切れ目ない支援がなされている。この切れ目ない子育て支援の中核をなしているのがネウボラである。 「ネウボラneuvola」とは,フィンランド語で「アドバイスの場所」を意味している(ネウヴォneuvoがアドバイス・情報の意味)。ネウボラは,妊娠期から就学前にかけての子どもと家族を支援するための地域拠点(ワンストップ)であり,かかりつけ保健師(担当保健師)が中心となって支援にあたっている。 今日,このようなフィンランドの子育て支援が,日本においても注目されてきており,「日本版ネウボラ」をめざした母子保健システムを構築する自治体も出てきている2)。 筆者(横山)は,フィンランドのヘルシンキ大学との共同研究を10年近く実施している。その関係で,フィンランド国立健康福祉研究所(National Institute for Health and Welfare)とも共同研究を始めており,フィンランドの母子保健について学ぶ機会を得た。このフィンランド国立健康福祉研究所は,研究機関であると同時に,母子保健をはじめとした国の健康政策に関するガイドラインの作成も担っている機関である。 共同研究者である同研究所のTuovi Hakulinen-Vitanenは,フィンランドにおける母子保健のガイドライン作成にも携わっており3-6),フィンランドの母子保健の専門家である。 本稿では,フィンランドの母子保健の専門家とともに,フィンランドの母子保健システムと切れ目ない子育て支援の中核をなしている「ネウボラ」について紹介する。