著者
日野 治子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.120, no.5, pp.993-1008, 2010-04-20 (Released:2014-11-28)
被引用文献数
1
著者
西原 克成
出版者
特定非営利活動法人 日本顎咬合学会
雑誌
日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学 (ISSN:13468111)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1-2, pp.58-75, 2011-08-30 (Released:2014-01-14)
参考文献数
35

医学研究の中に環境エネルギーを導入して著者はエネルギーに立脚した「顔と口腔の医学」を創始し出版した.今日のわが国の乳児期の育児法を新しい医学の観点から概観し,わが国の伝統的育児法にてらして誤った方法を正すことが急務である.誕生直後の赤ちゃんの主なふるまいは,吸啜と手足の動きをともなった鼻呼吸と排泄である.現代の従来型のわが国の乳幼児の育児法には,赤ちゃんに影響する環境エネルギーと哺乳動物の乳児の特徴に関する注意点が完璧に欠落している.すべての哺乳動物には,種特異性の母乳吸啜期間がある.ヒトの授乳期間は2歳半から3歳までである.ヒトの子が授乳期中に母乳の代わりに食物を食べれば,病気になり,重篤なケースでは死亡することもある.非常に早期に食物を幼児に与えても,咀嚼できずに丸呑みとなり容易に緑便となり,病気となる.その結果彼らは口呼吸となる.わが国では,多くの小学生が不活化し無気力化し,やがてひきこもりとなる.わが国では,1965年まで続けられていた伝統的な育児法を復活させなければならない.充分なる吸啜運動トレーニングを赤ちゃん時代に積んでいれば,鼻呼吸と吸啜運動がやがて正しい咀嚼運動に容易に受け継がれるのである.
著者
松岡 瑛理
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.59-76, 2016-02-01 (Released:2020-06-20)
参考文献数
31

本稿の目的は二〇一三年以降、在日韓国・朝鮮人へと向けられるヘイトスピーチに対抗して起こった「カウンター」と呼ばれる抗議活動のなかの帰化者(日本国籍を取得した元在日)やダブル(日本人と在日を両親に持つ人々)が運動参加へと至った回路を提示することだ。 在日韓国・朝鮮人の反差別運動はこれまで国籍や氏名などの民族的要素を持った参加者が、日本社会から押しつけられる否定的イメージを肯定的イメージへと政治的に是正するアイデンティティ・ポリティクス(IP)の戦略にもとづいていた。しかし筆者が行った調査では、九〇年代以降増加の一途を辿る帰化者やダブルは属性ゆえに在日社会の境界に置かれ、IP型運動から離脱する傾向が強いことがわかっている。 一方でカウンター活動に参加する帰化者・ダブルへのインタビューから、運動離脱者との共通点・相違点が明らかになった。IP型運動への反発という点では共通しつつも、活動参加者らは日本社会で受けた差別経験から、出自への蔑視をより強く認識する傾向にある。さらに、活動における役割分担は機能的で、属性を問わない。出自を問う代わりに対ヘイトスピーチ活動に専念できることが、参加継続のサイクルを生んでいた。以上のように、本稿ではマジョリティ/マイノリティという二項対立にもとづき反レイシズム運動を分類する先行研究に対し、属性を越えて参加者がゆるやかに統合される新たな運動枠組みの可能性を提示した。
著者
西田 明美 宮本 めぐみ 宮崎 ひさみ 新塘 久美子
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.205, 2017 (Released:2019-06-01)

目的 在宅で過ごす重症心身障がい児(者)(以下、重症児(者))に対する経管栄養がその重症児(者)にとって妥当なのか評価が難しい。先行研究では、経腸栄養剤はそれぞれ含有する栄養素が異なり、選択によっては微量栄養素の欠乏が起こり得ることがあげられている。当施設利用時のある重症児と接した際に、爪床の所見からセレン欠乏を疑い、セレン値を測定した。今回当施設通所中の重症児(者)の栄養評価を行ったので報告する。 方法 1. 研究対象者:2歳から27歳の当施設通所中の重症児(者)18で超重症児(者)10名、準超重症児(者)7名、経管栄養児(者)1名。疾患は脊髄性筋萎縮症1型、福山型先天性筋ジストロフィー、ウィルス性脳炎後遺症、染色体異常等。 2. 当施設通所者各々の1日の栄養を把握し、家族と相談しながら通所時に朝からの注入をセレン含有量の多い煮干し・かつおだしを含む味噌汁へ変更。味噌汁は当施設でだしを取っている。定期的に採血(セレン)を行う 3. 本研究は当施設の倫理委員会の承認を得て実施した。 結果 初回測定結果セレン値(正常値10.6〜17.4μg/dl)は8.0μg/dl未満は5人、8.0〜10.5μg/dlは5人、10.6μg/dl以上は1名でほとんどが低値であった。注入後約2カ月で8.0μg/dl未満は1名、8.0〜10.6μg/dlは1名、10.6以上μg/dlは2名とセレン値が上昇し、爪床の所見の改善も認められた。 結論 経管栄養だけでなく経口からミキサー食を摂取している重症児(者)のセレン値も低かった。セレン値が正常範囲である重症児(者)も含めて家族に煮干し・かつおだしを提案し、当施設での水分を味噌汁へ変更した。セレン値測定により自宅でのだしやミキサー食を試す家族が増えた。当施設利用者の10名がセレン欠乏を認め、通常の食材でのセレン補充で効果を認めたので報告する。
著者
水野 千恵 髙村 仁知
出版者
日本生物高分子学会
雑誌
食品・臨床栄養 (ISSN:21873259)
巻号頁・発行日
vol.e2016, pp.1-12, 2016 (Released:2019-02-12)

硬度の異なるミネラルウォーターを用いて無洗米を炊飯し、これらが飯の性状 と嗜好性に及ぼす影響を検討するとともに、Ca、Mg がどれだけ摂取できるか検討 した。官能評価の結果、Ca の多い Vittel(硬度 300mg/L)、Mg の多い海洋深層水 (硬度 330mg/L および硬度 700mg/L)を炊き水に用いた飯は、蒸留水で炊いた飯 と同様に好まれた。Contrex(硬度約 1,560mg/L)、および海洋深層水(3,200mg/L) で炊飯した場合は、色、味の項目で評価が低かった。Contrex では、b*値(黄み) が高くなった。無洗米炊飯の場合、Ca および Mg の回収率は約 100%であった。 無洗米をミネラルウォーターで炊いた場合、浸漬水に用いたミネラルウォーター のミネラルを補給できることが期待できる。
著者
今安 聰 川戸 章嗣
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.4, pp.274-280, 1999-04-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
15
被引用文献数
1
著者
平野 照之
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.335-344, 2017 (Released:2017-06-16)
参考文献数
28

要約:脳梗塞の抗凝固療法には,急性期治療薬および再発予防薬としての位置付けがある.臨床現場では,脳梗塞急性期に未分画ヘパリンの持続静注を用いることが多いが,そのエビデンスは乏しい.一方,非弁膜症性心房細動を有する脳梗塞の再発予防における経口抗凝固療法の意義は確立している.直接阻害型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant, DOAC)またはワルファリンから患者プロファイルに適したものを選んで使用する.
著者
西田 伸 川原 一之 安河内 彦輝 江田 真毅 小池 裕子 岩本 俊孝
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.3-10, 2022 (Released:2022-02-09)
参考文献数
22

宮崎県西臼杵郡高千穂町上村の藤野家と,同じく高千穂町土呂久・佐藤家に保管されていた「熊の手足」の資料についてDNA解析を行い,情報の少ないツキノワグマ(Ursus thibetanus)九州個体群の遺伝的特徴について調査した.聞き取り調査から,明治中期~大正初期に祖母山系で捕獲されたと推測された佐藤家資料において,ミトコンドリアDNA コントロール領域648bp(ハプロタイプ:KU01)の解析に成功した.KU01は西日本系群に含まれる新しいタイプであった.先行研究の結果と合わせて考えると,絶滅したとされる九州個体群は他国内集団とは遺伝的に分化した独自の地域集団を形成していた可能性がある.
著者
Tatsuya ISHIKAWA Naoki NAKAYAMA Junta MOROI Norikata KOBAYASHI Hideya KAWAI Tastushi MUTO Nobuyuki YASUI
出版者
The Japan Neurosurgical Society
雑誌
Neurologia medico-chirurgica (ISSN:04708105)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.273-278, 2009 (Released:2009-06-25)
参考文献数
18
被引用文献数
22 30

The concept of optimum closure line was applied to a series of 51 consecutive middle cerebral artery aneurysms (14 ruptured, 37 unruptured) in 41 patients, 16 men and 25 women aged 29-79 years (mean 59.1 years). Visual inspection through the operating microscope revealed 3 types of aneurysm based on the origin of the aneurysm: bifurcation type (n = 39), trunk type (n = 9), and combined type (n = 3). Clipping along the optimum closure line should restore the vascular structure to the original configuration. Combination clip techniques were useful to form a curved closure line. This technique requires adequate operative fields with dissection of the aneurysm and related arteries from the neighboring structures as far as possible. The closure line concept is helpful to decide how to apply clips for particular aneurysms to avoid risks of ischemic complication and future recurrence. Combination clip techniques are often necessary to match a curved closure line.
著者
池田 昌代 小根澤 遥 上坂 奈未 高橋 来実 望月 菜穂 平澤 マキ 関 千代子 澤山 茂
出版者
一般社団法人 日本食育学会
雑誌
日本食育学会誌 (ISSN:18824773)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.9-17, 2014-01-25 (Released:2015-05-09)
参考文献数
25
被引用文献数
3

The purpose of this study is to obtain basic data to develop a food education program for university students. We investigated the use of student cafeterias and analyzed the energy and nutrient intake of various dish combinations.The criteria for lunch items that university students gave priority to were preference, price, and nutrition balance. Gender differences were observed regarding the frequency of use of school cafeterias, criteria for lunch item selection, and purchase price. Energy and nutrient intake was different across dish combinations. Male students tended to select only “noodle bowl/dish”combinations, which led to greater salt intake; additionally, in such dishes, vitamins, dietary fiber, and iron were present in much fewer quantities than in other dish combinations. Female students tended to select “rice, main dish, and side dish” combinations, which had more calcium, dietary fiber, and iron than other combinations.For university students to put food education into practice in cafeterias, it is necessary to understand about appropriate energy and nutrient intake. Students should be educated about what dish combinations provide the right amount of energy and nutrient intake so that they can independently make decisions regarding this in the future. To facilitate this, the maintenance of a suitable (or “healthy”) meal environment is important.”
著者
倉掛 正弘 山崎 勝之
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.384-394, 2006-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
36
被引用文献数
11 3

うつ病予防の重要性が指摘され, 欧米では早くから心理学を基盤とする児童期, 青年期を対象としたうつ病予防介入が実施され, 大きな成果を上げてきた。日本においては, うつ病の低年齢化が指摘されているにもかかわらず, 現在, 児童を対象としたうつ病予防介入は全く行われていない。このような現状をふまえ, 本研究では, 心理学的理論にもとつく教育現場で実施可能な小学校クラス集団を対象とするうつ病予防教育プログラムの構築, 実践, その教育効果及び効果の持続性の検討を行うことを目的とした。プログラムは, うつ病の構成要因とされる認知・感情・行動の3つの要因に対し, 総合的に介入を行い, 抑うつ傾向を改善することで, うつ病予防を目指している。さらにこのプログラムを実際の小学校教育現場において実践し, その教育効果と効果の持続性について検討を行った。その結果, 教育効果とその効果の持続性が部分的に確認され, 本プログラムが, うつ病予防総合プログラムとして有効であることが示唆される結果が得られた。
著者
佐貫 治夫 山石 健次 丹下 昇
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.151-155, 1975-05-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
31

羊毛製品は従来難燃性とされてきたが, 条件によってはかなりよく燃えひろがることがあり, 時代のすう勢, 燃焼性測定法の進歩とともに可燃性に区分づけられる場合もみられるようになった.そこで羊毛集合体はどのような条件で燃焼するのかを明確に把握するための一つの試みとして, 含気率と周囲の関係湿度とを変化させた場合について検討した.その結果, 含気率99.0~99.5%を境として, これより含気率が大きい場合には周囲がかなり高湿度状態でもよく燃え, レーヨンと同程度の燃焼性を示した.しかしこれ以下のコンパクトな構成の場合には著しく燃焼性が低下し, レーヨンに比べて燃えにくくなり難燃性として挙動することがわかった.
著者
臼井 英吉
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.272-275, 1979-05-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
4

清酒業界では, 活性炭を60年にわたって使用している。使う側に立っての炭への注文はいたって厳しく, 時にはその中に酒を造る側の責任転嫁も含まれていたかに聞く〇ともあれ長年のかかわり合いが, このようにすでに一つの歴史の姿をとっていることに, 今更らのように驚かされる。本稿をもって, 将来一層有効な活性炭使用への指標としたいものである。
著者
山本 和英
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.25-62, 2000-10-10 (Released:2011-03-01)
参考文献数
15

韓国語の言語処理, 特に韓国語を原言語もしくは目的言語とする機械翻訳における, 韓国語の言語体系と形態素処理手法を提案する. 本論文の韓国語体系の特徴は, 機械処理を考慮した体系であるという点にある. すなわち, 形態素解析の解析精度や機械翻訳における品詞設定の必要性に応じて, 韓国語各品詞に対して仕様の検討を行ない, 設計を行なった. また分かち書きや音韻縮約といった韓国語の特徴をどのように機械処理すべきかについても述べる. 韓国語形態素解析では, 品詞と単語の混合n-gramによる統計的手法を基本としながら, 韓国語固有の問題に対しては残留文字などの概念を導入するなどして独自の対応を施した. 以上の品詞体系と形態素解析エンジンによって, 単語再現率99.1%, 単語適合率98.9%, 文正解率92T6%という良好な解析精度が得られた. また韓国語生成処理では, 特に分かち書き処理についてどのような規則を作成したのかについて提案を行なう. 以上の形態素体系と処理の有効性は, 機械翻訳システムTDMTの日韓翻訳, 韓日翻訳部に導入した際の翻訳精度という形で文献 (古瀬, 山本, 山田1999) において報告されている.
著者
浪岡 淳
出版者
日本科学哲学会
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.43-55, 2002-05-25 (Released:2009-05-29)
参考文献数
19

Is the concept of "person" a substance-concept (i.e. a sortal which determines the primitive mode of being for the entities falling under it), or a phased-sortal (a sortal such that its instance need not fall under it throughout its existence)? Recently some philosophers opposing to the traditional view maintain that we are not always persons and that what determines our identity-criterion fundamentally is the biological concept of "human animal". In this paper I argue that this "Animalist" conception is unsound and that the primitiveness of our animal nature should not exclude the concept of "person" as our substance-concept. I suggest, however, that "person" as a genuine substance-concept requires a fresh understanding, foreign to the traditional definition in terms of a set of certain psychological attributes.
著者
スクワイア シーラ・J 山田 晴
出版者
地理科学学会
雑誌
地理科学 (ISSN:02864886)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.269-275, 1993 (Released:2017-04-27)
参考文献数
31

本稿は,湖水地方(Lake District)におけるビアトリクス・ポターゆかりの観光旅行について考察する。主として定性的な調査の結果に依拠しながら,田舎や,イングランドの農村生活についての諸価値が広まる過程で,ポターがどのように利用されるのかを論じる。こうした諸価値は,イングランドらしさをめぐる諸概念や,田舎と都会の対立関係と結びついている。ビアトリクス・ポター(1866〜1943)は,最大級の評価を受けているイングランドの児童文学作家である。国際的にも成功した彼女の絶大な人気は,今日では彼女の著書(その大半が今日も版を重ねている)の売り上げだけでなく,様々な商品や観光旅行,宣伝活動などにも反映されている。こうしたビアトリクス・ポター関連産業の存在は,彼女の作品が評価され続ける理由をめぐって,いろいろと問題を提起する。ヴィクトリア朝末期の人であったポターは,ピーターラビット(1902),ティギーおばさん(1905),あひるのジマイマ(1908),といったキャラクターを生み出し,第一次世界大戦以前に名声を確立した。しかし,今日,彼女の作品は,それが生み出された文脈とは異なる多様な文脈で読まれている。そのため,作品は異なった意味をもつようになっている。文化研究(Cultural studies)の業績は,テキストと読者,生産者と消費者の関係を論じてきた(Jackson, 1989; Gregory and Walford, 1989; Burgess, 1990)。とりわけバージェス(Burgess, 1990)は,ジョンソン(Johnson, 1986)に依拠しながら,意味の変成に焦点を当て,メディアのテキストは多様な読み方が可能な象徴体系の一部であると論じている。同様の議論は,地理学者がこれまでほとんど無視してきた児童文学の解釈や,観光旅行の解釈についても展開できる。本稿は,観光客となった読者が,ビアトリクス・ポターのテキストや彼女にインスピレーションを与えた湖水地方の舞台だてから,どんな意味を汲み上げているのかを論じる。文学観光旅行,つまり著作や作家との関連で有名な場所への旅は,様々な文脈から注目されてきた(Lowenthal and Prince, 1965; Newby, 1981; Butler, 1985, 1986; Curtis, 1985; Pocock, 1982, 1987; Squire 1988, 1990; Ousby, 1990)。しかし,アーリ(Urry, 1990)やヒューズ(Hughes, 1991)が指摘するように,観光旅行については解釈論的分析がほとんど無視されていることもあって,文学観光旅行の研究はまだまだ遅れている。観光旅行の展開とともに,経済的な利益を求めて,風景は新たに意味づけられる。こうした意味を,訪問する観光客がどう解釈するかについて,定性的な研究はほとんどない。湖水地方におけるビアトリクス・ポターゆかりの観光旅行は,こうした観光的意味の生産と消費の研究に,格好の舞台を提供してくれるのである。
著者
テイラー ピーター・J 山田 晴通
出版者
地理科学学会
雑誌
地理科学 (ISSN:02864886)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.197-220, 1992-10-28 (Released:2017-04-27)
参考文献数
49
被引用文献数
1

The Scottish Geographical Magazine is an internationally circulating journal published three tirnes a year. The annual subscription is £27.00 and those intending to submit items for publication in English should send these to the Editor, Dr A S Mather, Department of Geography, University of Aberdeen, St Mary's, Old Aberdeen AB9 2UF, Scotland U. K.
著者
東 克明
出版者
日本科学哲学会
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.81-94, 1999-11-10 (Released:2009-05-29)
参考文献数
6

This paper deals with van Fraassen's 'no-collapse' interpretation, or 'modal interpretation'. In this interpretation he avoids 'collapse' by supposing that quantum mechanical states, unlike classical states, specify possibilities rather than actualities. But my argument will show that van Fraassen's interpretation is confronted with some difficulties concerning values of observables.