著者
福田 秀志 富樫 一巳
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ニホンキバチ共生菌のスギ丸太における繁殖に適した含水率は100~150%の間で、含水率がこれよりも低いあるいは高い条件では共生菌の長期間の繁殖は困難と考えられた。巻き枯らし木において、ニホンキバチは樹種・処理時期に関わらずほとんど発生せず、共生菌を持たないオナガキバチがヒノキ11 月処理木から主に発生した。カシノナガキクイムシの生態から考案した総合防除対策を行った結果、新たな被害木の枯死を激減させることができたが、穿入生存木の枯死を助長させる結果となった。
著者
廣松 勲
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本年度は、マルティニック島の作家ラファエル・コンフィアンとハイチ系ケベック移民作家ダニー・ラフェリエールの小説作品を中心にして、研究活動を続けた。同時に、分析上の方法論の精緻化を目的として、トランスカルチャーという鍵概念および社会批評分析(Sociocritique)関連の書籍を収集・分析してきた。まず、昨年度の研究対象であったパトリック・シャモワゾーとエミール・オリヴィエに関する研究は、論文や研究発表として公表した。「社会批評分析」という方法論については、受け入れ研究者である堀茂樹先生のゼミが制作した論文集に、研究論文として投稿した。本論文「文学研究における社会」では、文学研究において「社会的なるもの」がいかに読まれてきたのかを検討することで、「社会批評分析」の系譜を辿った。この方法論の再検討は、トランスカルチャーが文体・テーマ・思想を介していかにテクストに書き込まれているのをより説得的に分析するために、非常に重要なものであった。次に、本年度の研究対象であるコンフィアンとラフェリエールに関しては、新刊が5冊程度刊行されたこともあり、それらを収集した上で、研究対象となる作品の選定を改めて行うことになった。いずれも多作の作家であり、新作刊行も予想してはいたものの、この再選定の作業には、予定以上の時間を要してしまった。とはいえ、本年度の研究結果は、今後、以下の2つの学会において公表する予定である。まず、ラフェリエールに関しては、彼を含めたケベック移民作家に関する口頭発表を、2014年5月25日にお茶の水女子大学にて開催予定の「日本フランス語フランス文学会全国大会」において行う予定である。今回の発表は、「カナダ文学の現在 : ケベックを中心に」と題されたワークショップの一環である。次に、コンフィアンに関しては、2014年11月1日に韓国の高麗大学において開催予定の「Association d'études de la culture et des arts en France (CFAF)」において発表を行う予定である。
著者
白波瀬 達也
出版者
「宗教と社会貢献」研究会
雑誌
宗教と社会貢献 (ISSN:21856869)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.55-63, 2013-10

日本カトリック司教協議会 社会司教教育員会編『なぜ教会は社会問題にかかわるのかQ&A』 カトリック中央協議会、 2012年2月、 B6判、 143頁、 630円(税込)
著者
Manabe Syukuro Stouffer Ronald J.
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.85, pp.385-403, 2007-07-25
被引用文献数
1 16 14

Based upon the results obtained from coupled ocean-atmosphere models of various complexities, this review explores the role of ocean in global warming. It shows that ocean can play a major role in delaying global warming and shaping its geographical distribution. It is very encouraging that many features of simulated change of the climate system have begun to agree with observation. However, it has been difficult to confirm the apparent agreement because the density and frequency of the observation are insufficient in many oceanic region of the world, in particular, in the Circumpolar Ocean of the Southern Hemisphere. It is therefore essential to intensify our effort to monitor not only at the surface but also in the subsurface layers of oceans.
著者
真鍋 淑郎
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.933-937, 1994-03-31

大気中の二酸化炭素増大に伴う気候変化の研究は大気・海洋結合モデルを使ってすでにいくつか行われており, おもに数10年先の予測がなされてきた.(Bryan et al., 1982;Schlesinger et al., 1985;Bryan et al., 1985;Bryan et al., 1988;Washington et al., 1989;Stouffer et al., 1989;Manabe et al., 1990;Manabe et al., 1991;Hansen et al., 1988;Cubasch et al., 1992).しかし, より遠い将来の予測はあまり注目されてこなかった.炭素ガスが増加すると, 地球の平均温度の永年的上昇を通じて海洋大気の結合システムの大規模現象が影響を受け, 気候が大きく変わるので, その効果は非常に重大である.たとえば, 海洋の熱塩循環が大きく変わる可能性がある.氷期の終わりころ, 温度上昇と氷床融解にともなって海洋循環が突然変わったらしいというBroeckerの議論(Broecker, 1987)も, その可能性を示唆する.ここでは, 海洋大気結合気候モデルを用いて, 炭酸ガス量の2倍ないし4倍増加による全球気候の数100年間の変動を計算した.結論的には, 500年後の全球平均気温上昇は, 炭酸ガス2倍増の場合は3.5度, 4倍増の場合は7度に達する.また, 海水の熱膨張による海面水準の上昇はそれぞれ1mと1.8mに及ぶことがわかった(氷床の融解が加わると, 海面上昇はこれよりさらに大きい).さらに, 炭酸ガス4倍増の時は, 海洋の温度構造や力学構造が著しく変わる.すなわち, 海洋の熱塩循環はぱったり止み, 温度躍層がぐっと下がる.というまったく新しい安定な状態に落ち着いてしまう.このような変化は海洋深層との物質の交換を阻害するので, 大気海洋結合系の炭素循環や生物地球化学過程に大きな影響を及ぼす可能性がある.
著者
山根 周 深見 奈緒子 布野 修司 鈴木 英明 武末 佐恵加
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、インド洋海域の港市において、イスラーム・ネットワークやインド商人のネットワークに着目し、都市、建築の空間的特質とその地域的連関等を臨地調査に基づき明らかにした。アラビア海・インド洋西海域世界においては、グジャラート地方を中心としたインド西部の商人による交易や移住が、東アフリカ沿岸の建築、都市の形成に大きな影響を与えていたことが明らかになった。一方、ベンガル湾海域世界に位置する東南アジアの港市では、タミル・ナードゥ地方を中心としたインド南東部の商人や労働者の交易、移住が建築、都市の形成に影響を与えたことが明らかになった。
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.392, pp.65-67, 2006-01-27

2005年3月に結果が出たJR岩見沢駅の駅舎建築デザインコンペには,376点の応募が殺到した。著名な建築家をはじめ,並み居る強敵を押しのけ当選したのは,東京都品川区に事務所を構えるワークヴィジョンズ。代表を務める西村浩氏(38歳)は,大学の土木工学科出身だ。 同氏のオフィスには,岩見沢駅や住宅などの建築模型のほか,橋や遊歩道といった土木の模型が所狭しと並ぶ。
著者
茅根 由佳
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

本年度の前半期には、まず、インドネシア政治に関する既存研究によって得られた知見と比較検討した。既存研究のまとめ作業を行うに際して、関連のインドネシアの政党政治研究であるマルクス・ミーツナー(Marcus Mietzner)の近著Money Power and Ideology: Political Parties in Indonesia.の書評を執筆した。また、本年度の後半期からは、1年次から2年次にかけてインドネシアのジャカルタで収集した資料をとりまとめる作業に集中した。本研究で得られた考察を発展させ、来年度中に博士論文を書き上げることを前提として、現時点での研究成果を発表するために関連の学術誌(『アジア研究』等)に論文「民主化期のインドネシアにおける石油天然ガス政策と政治過程の変化 -チェプ鉱区権益問題を事例として- 」を投稿している。本論文においては、インドネシアの資源政策においては、大統領及び執政府が石油ガスなどの資源産業の生産性を維持するため、積極的に外国投資を誘致してきたのに対し、野党政治家を始めとする議会が国有企業を支援してこれに対決姿勢を強めた過程を検討した。本論文が分析対象とした、2004年から2009年までの第1期ユドヨノ政権においては、資源政策における執政府の主導権が確立されていたが、2009年から2014年までの第2期ユドヨノ政権では経済ナショナリズムの圧力が強まり、政府外アクターや憲法裁の影響力が政策方針を変化させようとしていくこととなった。こうした第2期ユドヨノ政権における資源政策をめぐる政治過程の変化については論文を執筆中であり、東南アジア研究に投稿したいと考えている。
出版者
日経ホーム出版社
雑誌
日経マネー (ISSN:09119361)
巻号頁・発行日
no.283, pp.22-25, 2006-08

眺めの良い都内某ホテル38階のラウンジ。スーツ姿の温厚そうな男性が姿を現した。KAPPAさん(ハンドルネーム)。東大医学部出身のエリート医師で、趣味はガーデニングに音楽鑑賞。「勝ち組」に属する彼の持つもう一つの顔が、カリスマバリュー投資家だ
著者
伊香 俊哉 永井 均 林 博史 芝 健介 内海 愛子 福永 美和子 粟屋 憲太郎 高取 由紀 宋 志勇 戸谷 由麻
出版者
都留文科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究の主な目的は、第2次大戦後の連合国による対日対独戦犯裁判を解明するための資料調査・収集である。調査・収集は日本、中国、台湾、韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フィリピン各国の公文書館や図書館など約30ヵ所で実施した。また日本、中国、フィリピンではヒアリング調査も実施した。収集資料の成果は資料紹介・論文・著書として発表されている。戦犯裁判研究の国際交流のため2014年にドイツ研究者とワークショップを開催した。
著者
林 力丸 河井 昭治 佐藤 周一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

高圧分光学のうち、円偏光二色性(CD)のその場観察を行うための耐高圧セルを開発するため、石英光学セル、サファイヤ光学セル、人工合成ダイヤモンド耐高圧セルによるCD測定を検討した。これを用いてポリアミノ酸、各種タンパク質・酵素の円偏光二色性(CD)測定を高圧下で行った(「その場」観察)。特にαヘリックスやβ構造と共にタンパク質立体構造の耐圧力性を比較し、タンパク質構造形成の原理を解明することを目的にし、以下の結果を得た。1)高圧下(400MPa以下)でのCD測定を行うため、光学窓に石英とサファイヤを用いるセルを組み立て、紫外領域における測定限界の改良と、人工ダイヤモンド窓による光学セルを作成し、ダイヤモンドに含まれる不純物のCD測定に与える影響を検討した。その結果、近紫外CDの測定が可能なことを明らかにした。2)高圧下(500MPa)でポリグルタミン酸とボリリジンのαへリックスとβ構造の崩壊過程を観察するため、pH条件を酸性からアルカリ性に変化させて、pHと圧力の関係を測定した結果、ダイヤモンド窓は220nmに吸収があることがわかり、α、β両構造を明確に分離できなかった。3)リボヌクレアーゼAとカルボキシペプチダーゼYおよびそれらの1残基置換変異型酵素の圧力効果を解析し、タンパク質構造の圧力安定性を測定し、リボヌクレアーゼAのPhe120とカルボキシペプチダーゼYのシステイン残基の構造への寄与を明らかにした。4)ダイヤモンド窓をもつ耐圧セルにより、タンパク質の近紫外CDを測定し、圧力の三次構造に与える影響を解析した。特にリボヌクレーーゼAの280nm付近の高圧下のCDを測定し、この圧力変性が二状態遷移であることを明らかにした。
著者
本多 良太郎
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

25年度は試作Cylindrical Fiber Tracker (CFT)の製作とそのビーム試験を予定通り行った。試作CFTは本実験で使用する実機と同サイズであり、構造的に複雑なCFTの開発の実証とその性能の確認を主な目的として開発された。試作CFTはビーム方向にファイバーを張る、通称φ面と、らせん状にファイバーをまきつける、通称UV面から構成され、全読み出しチャンネル数は1200ch程度となった。特にUV面はらせん状にファイバーをまきつけるという工作上の困難があるが、これを達成することが出来た。ビーム試験は東北大学サイクロトロンRIセンターにおいて、陽子ビームを用いた性能評価を行った。その結果から、CFTは十分な性能を有しており散乱断面積を測定することが出来ることがわかった。次に、読み出し回路に関して述べる。本実験でCFTを読み出すための高集積MPPPC読み出し回路の開発を行った。本回路はVME 6U規格の基板に2個のEASIROCチップを搭載することで、64chのMPPCを一台で読み出すことの出来る回路である。この回路により、MPPCの読み出し単価を1500円まで下げることが出来た。我々の最終目的はバリオン間相互作用の一般的理解であり、その中でもとりわけ重要なΣp間の研究をJ-PARCで行う予定であった。ところが、25年度6月にJ-PARCで放射能漏洩事故があり予定されていたビーム計画が白紙、および遅延となってしまった。そこで、私は博士論文のためにテーマを関連研究であるJ-PARC E10実験に移し、核中でのΣN相互作用の研究を行うことにした。その結果、核中でのΣN相互作用の性質が、原子核の構造に依存することがわかった。また、その結果を日本物理学会で報告した。
著者
畑川 政勝 井上 誠 庄垣 雅史 岸本 健治 吉田 梨影
出版者
公益社団法人日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術學會雜誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.1932-1938, 1992-11-01
被引用文献数
13

The modulation transfer function (MTF) has been used for evaluation of radiographic image quality. However, in digital radiographic system such as a computed radiography (CR), the MTF can not be used in the same way of an analog system for evaluation because digital system is not shift-invaliant system. Then, we suggest the "MTF_<final>" which includes geometric unsharpness, detector unsharpness, unsharpness of the sampling aperture and unsharpness of the display (Laser-printer). It is an analog component in the digital system and in agreement with the definition of the MTF. Furthermore, an overall aliasing has to be used with MTF_<final> for evaluating the digital system because it is one of the important factors of the digital system. The MTF_<final> and the overall aliasing can be obtained from the overall MTFs of the center alignment and the shifted alignment.