著者
山内 慎子 MENG Xin
出版者
政策研究大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

この研究では、中国において農村出身の労働者が都市へ移住することによりその子供たちの学力や健康にどのような影響が生じるかを分析した。都市へ移住する安価な労働力は中国の急速な経済成長を支えてきたが、その裏で農村に残った子供は親と離れることから生じる問題を抱え、学力低下や健康状態の悪化が懸念されていた。我々の独自のパネルデータを基にした実証分析を行い、親の出稼ぎ期間が長いほど子供の身長・体重や学業成績が低まる傾向があることを示した。またこうした家庭では、子供が家で勉強時間がとれていなかったり同じ学年を複数回履修していることも見て取れた。これらの結果は数々の学会で報告され国際的に広く発信された。
著者
小沢 喜仁 渋谷 嗣 菊地 時雄
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

酢酸菌が生産するバクテリアセルロース(BC)を取り上げ,ナノ・オーダーの天然繊維の優れた機械的特性に注目して,独自に工夫した材料開発を行った。BC繊維は従来の炭素繊維強化炭素材料に使用される炭素繊維と比較して1000分の1の細かな構造を実現するとともに,その機械的特性に及ぼす成形条件の影響を明らかにし,第3成分添加による性能向上と,摩擦摩耗特性におけるBC繊維や第3成分添加の効果について考察を行った。従来の軸受けやボールベアリングなどが使用できないマイクロマシンや資材な部品における可動部分の摩擦特性を大きく向上させ,新たな用途を生み出す可能性を示した。
著者
有吉 貴教 中西 勉 デン ガン
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.335-336, 2012

本研究では,高強度歯車に用いられる浸炭焼入れ鋼を対象として,表面の凸部を滑らかにし,かつ,経済性と自然環境を考慮した加工法を開発する目的で,流動性火山灰を用いた表面仕上げ法を検討した.その結果,火山灰は,砥粒加工で用いられるシリカやアルミナを多く含むこと,火山灰は,鉱油に混ぜことで適切な流動性を持つこと,流動性火山灰を用いた表面仕上げ法は,浸炭焼入れ鋼の表面を簡便に滑らかにできることがわかった.
著者
田坂 直季 小坂 直敏
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.21, pp.1-5, 2012-08-02

音響信号に対する時間長の伸縮やピッチ変換は,通信や音楽応用などにおいて重要である.また,これらの処理に優れた方式には,時間領域での TD-PSOLA 方式と,周波数領域でのフェーズボコーダ方式がある.本稿では,われわれが新たに提案したフェーズボコーダ方式と,TD-PSOLA 方式について,時間伸縮,ピッチ変換を適用し,品質を比較して評価する実験を行い,その性能を評価した.その結果,いずれの方式も変換の度合いが大きくなると品質が劣化すること,時間伸縮ではフェーズボコーダの方が音質がいいことが確認できた.For time-scaling and pitch conversion of acoustic signal, TD-PSOLA in the time-domain and Phase-Vocoder in the frequency-domain are well known framework. We apply time-scaling and pitch conversion to newly proposed phase vocoder and TD-PSOLA, and run an evaluation test of sound quality for these two synthesis methods.
著者
山口 祐人
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

26年度は(1)ソーシャルメディアにおけるユーザの属性推定、及び(2)ソーシャルメディアにおけるユーザ行動の分析という研究に取り組み、主要査読付き国際会議での発表などの成果を得た。研究(1)では、ネットワーク上のノードの分類という広く研究されている手法の拡張を行った。ネットワーク上でのノードの分類を用いると、ソーシャルメディアユーザの属性推定のみではなく、他の様々なネットワークにおけるノードの属性推定が可能である。既存研究では接続ノード間の属性の相関をあらかじめパラメータとして指定する必要があった。例えば、あるソーシャルメディアでは同性同士が友人になるという相関が強いのに対し、別のソーシャルメディアでは異性同士が友人になる相関が強いことがある。提案手法では属性の相関に対するパラメータを指定することなく、どのような相関にも適用することが可能である。研究(2)では、Twitterにおいて、ユーザが他のユーザをフォローするという行動を分析した。また、Twitterにおいてユーザが他のユーザを”タグ付け”するという行動を、タグ付けを主とする他のソーシャルメディアと比較した。その結果、”フォロー”、”タグ付け”という行動に関する様々なパターンが発見された。例えば、相互にフォローしているユーザ同士は”friends”といったタグ付けをすることが多いのに対し、単方向でのみフォローしているユーザ同士は”sports"などのトピックを表すようなタグ付けをすることが多いことが分かった。これら2つの研究は、異種ソーシャルメディアの統合に繋がると期待される。ユーザの属性をキーとして様々なソーシャルメディアを統合していくことが可能であると考えられるし、またユーザの行動の根底に潜むパターンの解明により、異種ソーシャルメディアに共通するパターンをキーとしての統合が可能であると考えられる。
著者
青木 成美 中野 泰志 永井 伸幸 猪平 真理
出版者
宮城教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

成人弱視者の視覚補助具の活用経験について、質問紙調査と面接調査を行った。その結果、弱視レンズを活用してきた者が最も多く、拡大読書器を活用してきた者が次に多いことがわかった。また、必要に応じて活用する補助具を変更した弱視者もおり、その際に専門家だけでなく弱視当事者の意見を参考にしていた。3 年間の調査研究の結果、 弱視者が自らの視覚補助具活用経験を生かし、他の弱視者を支援するためのプログラム作成の基礎データが収集できた。
著者
守津 隆
出版者
昭和堂
雑誌
日本の哲学 (ISSN:1346051X)
巻号頁・発行日
no.14, pp.122-135, 2013-12
著者
村田 伸 津田 彰 稲谷 ふみ枝 田中 芳幸
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.88-95, 2005-04-20
被引用文献数
24 29

本研究は, 在宅障害高齢者110名(平均年齢83.1歳, 男性17名, 女性93名)を対象に, 転倒歴と注意力及び身体機能を評価し, 転倒に影響を及ぼす要因を検討した。転倒経験群28名, ニアミス(転倒しそうになった)体験群33名, 非経験群49名の3群間の比較において, 転倒経験群とニアミス体験群のTrail making test-Part A(TMT-A)は, 非経験群より有意に小さく, 身体機能の自己認識の逸脱は有意に大きかった。また, 転倒経験群の最大一歩幅, 歩行速度, 足把持力, 足関節背屈角度の4項目は, ニアミス体験群と非経験群より有意に低値を示した。さらに, 転倒歴の有無を目的変数としたロジスティック回帰分析の結果, 注意の指標としたTMT-A, 足把持力, 足関節背屈角度のオッズ比が有意であった。本結果は, 立位姿勢保持が不安定な在宅障害高齢者では, 身体機能の低下, とくに足把持力や足部可動性などの足部機能の低下が転倒の危険因子であることのみならず, 注意力の低下も転倒を引き起こす重大な要因であることを明らかにした。
著者
宇高 順子 阿萬 裕久
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

小・中・高等学校家庭科では、「何をどれだけ食べたらよいか」の量の把握が困難とされてきた。そこで、調理後の食品容積から調理前の食品重量を把握できる「料理容積法」を開発した。この方法を応用して、小学校で、量を扱わないでバランスの良い1食分の献立作成学習方法として、野菜の量で主菜と副菜を2グループ化して、少ないものと多いものを組み合わせることによりバランスがとれる、料理の実物大写真教材を開発した。また、中学校の1日分のバランス献立作成web教材を開発した。
著者
伊藤 敏彦
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は音声インターフェイスにおいて、対話のリズムが、ユーザの快適性や安全性にどれほどの影響を与えるか明らかにし、これらの要素を音声インターフェイスに導入するための新たな枠組みを提案することである。そこで、これらに関する対話リズムを生成するためのモデル化のさらなる改良と、音声対話システムへの実装、システム処理速度向上などを行った。結果、これまでの音声対話システムに比べ、人間らしさ、安心感などの評価を上げることができたが、制作システムの処理速度、タイミング認識精度、音声認識・言語理解精度などの不完全さにより、人間と同等の評価まで上げることはできなかった。
著者
安田 寛 DR. JANE Freeman Moulin KUKI MOTUMOTU Tuiasosopo BRIAN EDWARD Diettrich
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

19世紀の日韓の讃美歌曲はミクロネシアとポリネシアの中ではミクロネシアとハワイとに共通するものが多く、これに比べるとハワイを除くポリネシアの讃美歌曲との関係が比較的薄い。讃美歌から近代歌謡が形成される筋道に関しては、タヒチに見られるように、讃美歌と土着の歌謡とが融合する場合があり、サモアに見られるように讃美歌曲を独自に作曲する場合がある。日本を含めた太平洋全域における讃美歌の普及と捕鯨活動との密接な関係がある。
著者
山田 俊治
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

新聞と文化が接続する問題系を問うことを目的として、「東京日日新聞」の創刊から悉皆調査した結果を年表化することによって、文明開化期と内国勧業博覧会以後との間で絵画評価に落差があることが判明した。それは、「美術」概念を適用することで、文明開化期の写実的な西洋油画一辺倒の評価が、日本画の精神性が評価されるようになる変化であった。そればかりではなく、古典講習科の設置や漢籍の出版など古典回帰と見られる現象も観察できた。