著者
岡安 隆 柳田 伸顕 古田 高士
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

〈研究分担者柳田伸顕〉研究代表者の岡安隆氏はある種の微分方程式を巧みに使うことにより、最近、Euclid空間内の完備な正定曲率超曲面を具体的に構成し日本数学会のジャーナルに出版している。そのアイデアを使いWeingarten超曲面を具体的に構成しようとしていた。研究はうまく進んでいると聞いていたが、昨年の12月に突然その岡安隆氏が亡くなったので、その内容は永久に分からなくなってしまった。なお研究分担者の柳田伸顕は、Weingarten超曲面を具体的に構成とは直接関係はないが、ある種の群のChow環を岡安隆氏の影響を受け、幾何学見地から調べてやはり今年度、日本数学会のジャーナルに出版している。〈研究分担者古田高士〉ユークリッド空間内に、直交群の部分群の作用の下で不変であるという高い対称性をもった、完備極小超曲面を構成することができ、それらは13種類の多様体のいずれかに微分同型で、各種類において合同でないものが無限個構成することができることを示した。EBombieri, EDeGiorgiとEGiustiによる構成をその他の余等質=2の表現に拡張したものであるとともに、Bombieri達の証明法とは全く違う手法をとることにより、非常に簡単に大域的な解の存在を示すことができた。このタイプの極小超曲面は岡安自身の1999年度~2000年度の基盤研究(C)で得られたものしか知られていず、まったく新しい発見である。この手法は双曲空間に自然に作用する直交群の部分群で余等質=2の表現について、完備極小超曲面の構成について理論が発展できる。
著者
村上 志津子
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

生殖機能を司る視床下部のコナドトロピン放出ホルモン(LHRHまたはGnRH)産生ニューロンは、脳外の鼻プラコートで発生し、脳内へ移動して中隔-視索前野-視床下部系へと分化する。本研究では、脳内に進入したLHRHニューロンが中隔・視索前野を中心とする領域に移動し、定着するメカニズムを知る手がかりとして、中隔LHRHニューロンと視索前野LHRHニューロンの定着部位の違いは誕生日時の違いから生じる可能性を調べた。プロモデオキシウリジン(BrdU)による誕生日時の標識実験では、早生まれのLHRHニューロンは中隔一視索前野の全領域に分布するのに対し、遅生まれのLHRHニューロンは腹側の視索前野には分布しないことが判明した。領域別によるLHRHニューロン数の定量実験は、後期胚におけるLHRH抗体の免疫染色性低下なと技術的な問題により統計可能なデータが得られず、継続中である。組織学的観察から、脳内に進入したLHRHニューロンは嗅神経の分枝とともに嗅球尾側の腹内側部から背尾側方向へ移動し、この経路の終点てある中隔領域でガイド構造となる神経線維から離れて腹側方向へと向かうことが想定された。E5.5生まれのLHRHニューロンが腹側の視索前野に分布しない理由のひとつとして、中隔から腹側方向への移動が阻害された可能性が考えられる。ラミニン様構造を持つ液性分子ネトリンの発現をin situ hybridizationによって調べた結果、E7.5におけるネトリンmRNAは中隔ではなく前脳腹側の視床下部領域に強く発現していた。嗅上皮や嗅神経にはネトリンmRNAの発現はみられず、ネトリンが脳内におけるLHRHニューロンの移動に関与する可能性が示唆される。特に前脳背側の中隔から視索前野に向かう腹側方向への移動に関与する可能性があり、今後の検討課題と考える。
著者
任 之家 堀田 良和 鈴木 智 野波 健蔵 安田 憲太 平林 大輔 古屋 光啓
出版者
自動制御連合講演会
雑誌
自動制御連合講演会講演論文集 第50回自動制御連合講演会
巻号頁・発行日
pp.92, 2007 (Released:2008-12-11)

QTWは科学観測等での利用を目的として開発中の無人航空機で、プロペラ付翼のティルト角を変更することにより、ヘリコプタモードからエアプレンモードへと連続的に飛行することが可能である。ヘリコプタモードの姿勢ダイナミクスをシステム同定手法により分析し、LQIコントローラを設計した。また、任意のティルト角でのマニュアル飛行を可能にする装置(PFCS)と自律制御器を組み合わせ、オペレータ支援用自律制御システムを設計し、有効性を検討した。
著者
城戸 淳二
出版者
自動制御連合講演会
雑誌
自動制御連合講演会講演論文集 第51回自動制御連合講演会
巻号頁・発行日
pp.324, 2008 (Released:2009-04-14)

Organic light-emitting devices (OLEDs) are expected to be the next generation flat panel displays and have been commercialized for mobile phones and car audios. In addition, the performance of white-light-emitting OLEDs have been steadily improved and, today, they are considered to be the light source of the next generation. In this talk, the recent development of high performance OLEDs will be discussed.
著者
宮内 泰介 古川 彰 布谷 知夫 菅 豊 牧野 厚史 関 礼子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、ヨシをはじめとするさまざまな半栽培植物(または半家畜の動物)に焦点を当て、かかわる人間の側のしくみ・制度を論じることにより、自然のあり方とそれに対応する人間社会のあり方を統一的に把握するモデルを提示することを目標としている。本研究の最終年度に当たる平成19年度は、(1)宮城県の北上川河口地域でヨシ(葦)(Phragmites australis)原の利用のしくみと変遷についての現地調査を継続し、まとめにかかる一方、(2)研究会を開いて多様な専門分野の研究者が集まり、本研究の総括的な議論を行った。その結果、(1)の北上川河口地域での調査では、ヨシ原が歴史的に大きく変遷しており、それと地域組織や人々の生活構造の変遷が大きくかかわっていることが明らかになった。自然環境-自然利用-社会組織の3者が、相互に関連しながら、変遷している様子が見られ、さらに、そこでは、強固なしくみと柔軟なしくみとが折り重なるように存在していることが分かった。また、(2)の総括では、(i)「半栽培」概念の幅広さが明らかになり、(a)domestication(馴化、栽培種化)、(b)生育環境(ハビタット)の改変、(c)人間の側の認知の改変、の3つの次元で考えることが妥当であり、さらには、さまざまなレベルの「半」(半所有、半管理.)と結びついていることが明らかにされた。(ii)また「半栽培」と「社会的しくみ」の間に連関があることは確かだが、その連関の詳細はモデル化しにくいこと、したがって、各地域の地域環境史を明らかにすることから個別の連関を明らかにしていくことが重要であることがわかった。 (iii)さらに、こうした半栽培の議論は今後の順応的管理の際に重要なポイントになってこと、これと関連して、欧米で議論され始めているadaptive governance概念が本研究にも適応できる概念ではないかということが分かった。本研究は、そうした総括を踏まえ、成果を商業出版する方向で進めている。
著者
木暮 ミカ
出版者
明倫短期大学
雑誌
明倫歯科保健技工学雑誌 (ISSN:13440373)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.37-40, 2006-03

自分の歯を健康的な色と形にすることにより,笑顔を魅力的に改善する方策の検討を目的とし,特に顔面における健康的な色の調和という観点から総合的な色の調和を図るための歯科色彩調和論について解説した後,歯を審美的に治療するための治療法について,最新の歯科補綴物や昨年発表された暫間的な色調改善法である歯のマニキュア「ホワイト・コート^<TM>」の紹介と,顔面筋のストレッチによるいわゆるスマイルラインの改善法などを紹介した.
著者
櫻井 芳雄 金子 武嗣 青柳 富誌生
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、多様な記憶情報の活用を担う機能的神経回路、すなわちセル・アセンブリの活動を神経科学的に実証することを目的とした。様々な記憶課題を考案し、それらを遂行中のラットからマルチニューロン活動を記録し解析した。その結果、時間弁別課題、報酬確率予測課題、順序弁別課題など多様な記憶課題の遂行中に、海馬、扁桃体、前頭前野などでニューロン活動が変化することがわかり、さらにそれらの部位間で同期的に活動するニューロン集団、つまりマクロなセル・アセンブリの活動を検出することができた。
著者
寺田 勇文
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、近年増加しつつあるブラジル、ペルー、フィリピンなど外国からの移住者に焦点をあて、かれらの日常の宗教生活、宗教実践のありかた、その問題点、ひいては日本社会における多文化共生等を実現していく上での問題点、課題を検討することを目的としている。調査にあたっては、とくにカトリック教会東京大司教区を事例とし、参与観察、関係者に対するインタビューを通じて、宗教実践のありかたを把握するように努めた。その結果、とくにフィリピンの人々が東京大司教区の教会において、フィリピン人共同体を形成し、英語またはフィリピン語のミサに出席するなどして定期的に活動をつづけていることが理解された。ただし、これらのフィリピン人共同体の多くは、たとえ同じ教会のなかにあっても日本語ミサを中心とする日本人の共同体とはほとんど接触を持たずに活動しており、言語や民族的背景をこえたより統合的な教会共同体の実現には至っていない。日本人信徒とフィリピン人信徒とは同じカトリック教会に所属しているとはいえ、それぞれの国におけるカトリック信仰受容の歴史、教会形成の歴史的背景が異なり、社会における教会の位置づけ、社会的空間としての教会の利用のしかたにも違いがみられ、さらに信心業などの点でも大きな差異がみられる。この研究においては、主として外国人移住者(とくにフィリピン人)の立場から、現在の日本におけるカトリック共同体の現状を把握し、上述のような問題点を指摘している。
著者
林 邦彦 斎藤 英雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.51, pp.173-180, 2006-05-18
被引用文献数
3

近年、スポーツ映像などで自由な視点からの映像の要求が高まっている。従来手法[5]では、サッカースタジアムのような大規模な空間で、カメラの中間視点画像しか合成できなかった。この従来手法は、空間の3次元モデルを復元をせずに、入力画像間の対応点を算出することで自由視点画像を生成している。そこで、本稿では、サッカーシーンを幾何的な特徴に応じて、動的領域と静的領域に分割し、各領域を平面近似して、それぞれ3次元モデルを簡易的に復元することによって、中間視点画像に限らない自由視点画像を生成する手法を提案する。本手法では、対象の3次元モデルを復元するために、まず、カメラキャリブレーションを行う。その際、サッカーグラウンドにマーカーを置く事はできないので、グラウンド面の平面パターンを利用してカメラキャリブレーションを行う。分割された各領域のうち、選手やボールである動的領域がグラウンドに垂直に立つ1枚の板(ビルボード)で表されるものとして3次元モデルを復元する。一方、静的領域に対しては、複数の平面領域に分割し、各平面の3次元モデルをあらかじめ復元する。本手法をサッカーシーンに適用し、従来生成できなかった中間視点以外の自由視点画像を生成することで有用性を示す。We propose a new method for synthesizing free-viewpoint images from multiple view videos in soccer stadium. The previous method[5] can synthesize virtual viewpoint images at intermediate viewpoint between real cameras. The previous method estimates only pixel-wise correspondences between input images for synthesizing virtual viewpoint images without a 3D reconstruction. In this paper, we propose a new method that can synthesize virtual viewpoint images at free-viewpoints which are not limited at intermediate viewpoint by reconstructing simple 3D models after dividing a soccer scene into static regions and dynamic regions. To reconstruct the object soccer scene, we perform camera calibration without marker objects because we can't put such objects on the soccer ground. For reconstructing of dynamic regions, we employ a billboard representation of dynamic regions. The billboard representation can realize a simple 3D reconstruction and transform textures into the appropriate appearance of the aspect of dynamic regions at virtual viewpoint. For reconstructing of static regions, we divide two planes that are a ground region and a background region. We reconstruct 3D models in each region beforehand. By applying our method to a soccer scene, we can synthesize free-viewpoint images which are not limited at intermediate viewpoint by employing only pixel values of real images.
著者
渋谷 真樹
出版者
奈良教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

2007年8月のスイス調査では、日本語学校(教室)2箇所にて、継承語としての日本語教育を参観した。また、国際児7人、母親6人、教師5人に対して、日本語を中心とした日本文化への意識について、聞き取りをした。2008年2月のスイス調査では、日本語学校(教室)2箇所もて、継承語としての日本語教育を参観した。また、国際児7人、母親・父親4人、教師2人に対して、日本語を中心とした日本文化への意識について、聞き取りをした。また、日糸国際児が主催するコミュニティについて調査した。これらの調査から、1 国際結婚をしてスイスで子育てをしている日本人女性の中には、自分の子どもが日本語を習得することを希望する人々が少なからず存在する。その希望は時代によって異なり、ここ20年で日本語教育熱が増加・一般化している。2 スイスの日糸国際児が日本語学習の機会が得かられるか否かは、居住地域(日本人が多く住む都会の方が得られやすい)や、親が子育てに割ける時間(共働きの場合は得にくい)、家族の日本語学習への姿勢(非日本人の親やその家族が協力的な場合は得られやすい)などに影響される。3 スイスの都市部には、継承語としての日本語教育の場が複数存在し、国際児を中心とした子どもの実態に合わせた教育が行われている。最長のものでは、20年以上の歴史をもつ。4 聞き取り調査を行った国際児は、子ども期に日糸であことをからかわれる等した者もいたが、おおかた自分と日本とのつながりに対して肯定的であった。子ども期に日本語学校・教室で学んだ者は、当時は日本語学習を面倒または負担に感じていたと語る者が多かったが、現時点では、日本語能力獲得できたことを高く評価していた。一方、日本語を習得しなかった国際児は、習得した方がよかった、これから習得したい、と語る者が多く、現に成人して学習する者も複数いた。
著者
中村 陽子 宮原 伸二 人見 裕江
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.195-204, 2000-12-25
被引用文献数
1

戦後日本においては疾病構造の変化, 医療技術の高度化, 病院化の進展の中で, 死亡に関しては, 在宅での死は減り, 病院での死が急増しているのが現状である.1965年には死亡者全体の29%が病院死であったが, 1995年には74%になり, 日本人の死に場所は家から病院へと変わった.死についての今日の人々の意識や実態は, 高度経済成長期をへて, ここ30年の時代環境で大きく変化した.さらに, 現在多くの国民は在宅死を再び望むようになってきた.高齢者の在宅死を可能にするためには, 医療福祉の役割として, 現在存在するサービスを整備するだけでは課題への対応は困難であり, 新たなケアマネジメントが重要となってくる.具体的な内容としては, 死への不安や恐怖に対して, あらゆる専門職との連携が重要となる.特に心理の専門家やボランティアとの連携が, 看取りにおける心の援助を可能にすると思われる.家族・地域を包括した看取りの教育が急務である.死の教育こそが看取りの文化を継承していく.また, 都市の看取りを考える場合, これまで日本にあった隣近所による助け合いの精神に基づいた相互扶助の援助に変わる, 新しい援助が重要になってくると考えられる.地域共同体意識の低い都市においては, 地域が看取りの力を持ちうるためのまちづくりが重要な課題である.介護者に犠牲を強いることのない, 介護を生きがいのある魅力あるものにし, 自己決定に基づく死に場所選びを可能にするため, 医療福祉として統一された援助が重要となる.医療福祉はその役割を負う.
著者
関根 亮二
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

申請者は、初期発生で重要な遺伝子発現パターンの非対称化がNodal-Leftyシグナル系のみで可能なのか、そのパターンの形成に重要な要素は何なのかという疑問をもった。本研究は、Nodal-Lefty系を培養細胞内へ再構成し、非対称パターン形成が再現できるかどうかの検証を通じて、その疑問に答えることを目的としている。申請者は、人工Nodal-Lefty系を培養細胞(HEK293細胞)に導入し、小さな高Nodal発現領域の自律的な形成を確認し、さらにNodal伝播の亢進によりより大きな発現領域の形成を実現した。さらに、Lefty2による抑制力の向上によるさらなるパターンの改善の糸口もつかんだ。
著者
新堀 敏基 相川 百合 福井 敬一 橋本 明弘 清野 直子 山里 平
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.13-29, 2010 (Released:2010-12-28)
参考文献数
60
被引用文献数
6 10 1

気象庁では、火山現象予報の一つとして、2008年3月31日から降灰予報の業務を開始した。この論文では、降灰予報を高度化するために気象庁・気象研究所で開発している降灰予測システムを用いて、降灰量の量的予測を行う方法について論じる。降灰予測の方法は、まず初期値となる噴煙柱モデルを、仮想質量をもつ火山灰トレーサーで構成する。次に、トレーサーの時間発展を移流拡散モデルにより計算する。火山灰移流拡散モデルは、気象場に気象庁メソ数値予報モデル(MSM)を用いたラグランジュ記述のモデルであり、移流・拡散・降下・沈着の各過程を考慮している。そして沈着したトレーサーの仮想質量から、単位面積あたりの重量(面密度)として降灰量を算出する。噴煙柱モデルに気象レーダーで観測された噴煙エコー頂高度を用い、降灰量の算出にMSMより細かい水平格子間隔を用いて、本方法を2009年2月2日浅間山噴火の事例に適用した。観測値と比較して、降灰域の定性的な特徴は概ね予測でき、分布主軸上の降灰量も同じオーダーで予測可能であることが示された。