著者
五味 紀真
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

特別研究員報告書にも書いた通り、当初の研究実施計画を変更する必要があった。なお、変更に当たって研究の最終的な目標、および概略に関しては一切変更していない。本年度は第一に、一神教・多神教問題と精神分析との関係性についての基礎的な文献や先行研究を分析した。4月に行った発表「Den Entzug eines Gottes nachbereiten一神教の脱構築とエクリチュールの歴史についての覚書」では、デリダの脱構築と、フロイトの『モーセと一神教』を中心とした問題との関係性をある程度明確に分析することができた。また、レヴィ=ストローズから始まりジャン=ピエール=ヴェルナン、ピエール・ヴィダル=ナケに至る構造主義的な神話分析の研究を読解することによって、これまで本研究が主に依拠してきたハイデガー-キトラーによる「解釈学的・存在論的神話分析」と前者との差異を子細に分析することができた。後者においては木庭顕『政治の成立』から多くの示唆を得ることができた。また、精神分析に関しては、これまで主に分析してきたフロイト、ラカンに加え、メラニー・クラインら対象関係論の分析家たちの著作の読解も始めた。対象関係論は、研究実施計画にも記したドゥルーズらによる資本主義分析において大きな役割を果たしているため、デリダの脱構築と一神教の問題、およびドゥルーズの資本主義分析を関連付けて論じるために、ラカン派に劣らず重要であると思われる。残念ながら計画に記したように本年度中に以上の研究を博士論文としてまとめることはできなかった。今後も研究を継続し、実施計画にある通りの研究を完遂することを目指し、本研究を続けていきたいと思う。
著者
齋木 悠
出版者
名古屋工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

オンサイト発電用マイクロガスタービンで使用される小型燃焼器では,低レイノルズ数と高い出力変動に伴い,良好な燃焼特性の維持が極めて難しい.そこで本研究では,ガスタービン燃焼の典型的な熱流動であるメタン・空気同軸噴流火炎を対象として,同軸ノズル内壁に配備した微小噴流アクチュエータ群を用いた新たなアクティブ燃焼制御手法を構築した.火炎上流における渦運動およびメタン・空気の混合過程をアクチュエータにより柔軟に制御した結果,異なる出力条件において,保炎特性および燃焼排出ガス特性を著しく改善できることを明らかにした.
著者
萩原 素之 井村 光夫
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.441-446, 1991-09-05
被引用文献数
3

水稲種子を湛水土壌中に播種すると, 出芽・苗立ちが不良となるが, 酸素発生剤であるCaO_2を種子に被覆して播種した場合には出芽・苗立ちが促進される. これは, CaO_2が嫌気状態の湛水土壌中で発芽している種子に酸素を供給するためと一般に理解されてきた. しかしCaO_2を被覆した種子でも, 出芽後は, 鞘葉を通じて湛水中または空中から酸素が供給されなければ, 本葉抽出が抑制されることが知られている. 本実験では, それ自身では酸素を発生しないが, 土壌を酸化するKNO_3の種子被覆が湛水土壌中に播種した水稲の出芽・苗立ちにおよぼす効果を調査した. KNO_3被覆種子では無被覆種子に比べて出芽・苗立ちが早まり, 出芽・苗立ち率も高まった. KNO_3の効果は温度が低い場合には, CaO_2とほぼ同等ないし, むしろより顕著な傾向であった. これらの結果は, 湛水土壌中に播種した水稲の出芽・苗立ち不良の主要な原因は湛水土壌中の酸素不足ではないことを示唆している. したがって, 出芽・苗立ちの促進に種子への酸素供給が必須かどうか, また, CaO_2がなぜ出芽・苗立ちを促進するのかがさらに詳細に調査される必要があろう.
著者
清水 裕子 上田 伸男
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

快適性・感性の評価を客観的に行う方法を確立し、衣服の快適性・感性に影響を与える要因相互の関係を明らかにする目的で、客観的指標として脳波を取り上げ、解析を行った。また、衣服だけではなく、食物のおいしさ、好ましさと生理特性との関係を明らかにするために、検討した。結果は以下のとおりである。(1)極端な冷房による不快感と脳波の関係を検討した。冷房が苦手な被験者群と冷房が苦手でない被験者群との間では、主観評価、皮膚温について有意な違いがみられた。脳波については有意差ではなかったが、冷房の苦手な被験者群の方が、全般的にα波の出現は少ない傾向がみられた。(2)人体を圧迫する衣服に関しては、素材の異なる2種類のガードルで、サイズが合ったものと、ワンサイズ小さいものの合計4種類のガードル着用による快適感・覚醒感・圧迫感の調査と脳波の測定を行った。ガードル着用時のα波のパワーの比率は、日常的にガードルを着用していない被験者の方が全般的に減少しており、非着用者にはガードル着用による精神的な緊張がみられ、主観調査と共に、日常の着用状態による違いがみられた。(3)衣服の快適性の客観的な評価に、脳波の時間的空間的相関を検討する武者利光らの感性スペクトル解析法を用いて検討を行った。絹、綿、麻、ポリエステル新合繊を用い肌触りの異なる衣服を作成し、これらブラウスの着心地のよさとの関係を調べた。感性スペクトルは個人による差がかなり大きいが繊維による違いが認められた。(4)好きな食べ物と嫌いな食べ物を被験者に食べさせ、脳波、心電図、皮膚表面温度、鼓膜温度、心理評価を行った。脳波の変化としては、嫌いな食べ物を食べることにより、α波の低下、心拍数の増加がみとめられた。以上のような研究の結果、脳波測定と解析を用いて、衣服や食物に関した快適性の客観的な評価を行うことができることが示唆された。とくに、寒さを防ぐための衣服の効果、衣服による拘束のような不快感、食物の好悪に関した快・不快に直接反映されることがわかった。
著者
中村鼎五 編
出版者
金港堂
巻号頁・発行日
vol.巻1 記事之部, 1884
著者
立川 光 中原 壽喜太
出版者
香川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

当初は画像の各関心領域の演算を超高速画像処理専用ボードを用いてハードウェアで処理させる方針であったが、ソフトウェアによる方式にした。このため、フラフィカル ユーザーインターフェースの部分を作りやすい言葉(Visual Basic)で解析ソフトを開発中である。各画像を大域的領域に分割する組み合わせはほぼ無限大になるが、最適な手順を選択する方法として、ニューラル・ネットワーク、あるいは遺伝的アルゴリズムを用いることを検討し始めた。臓器レベルの画像だけでなく細胞レベルの動態機能解析にもとりかかり、カルシュウム・シグナリングなどの応用に期待がよせられている。
著者
境 脩 小林 清吾 榎田 中外 野上 成樹 堀井 欣一
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.21-34, 1978
被引用文献数
3 1

学童における永久歯の歯垢分布を, 疫学的手法により, 経年的に追跡調査し, 分析した。新潟市近郊の7小学校学童の昭和45年4月の時点で1学年から4学年851名の永久歯を対象とし, 歯の萌出状態, う蝕の発生状態, 歯垢の付着状態などを満6年間, 被検者各個人の各歯を歯面単位で追跡した。検査は年2回計13回行ない, データ処理に汎用コンピューターを使用した。<BR>口腔全体の歯垢の付着程度, 不潔度は学年の進行とともに減少していく傾向は確実であった。その減少速度はほぼ一定しており, 1年間およそ不潔度で0.36程度であった。不潔度を歯種, 歯面別に, 歯の萌出してからの期間, すなわち歯牙年齢を追って検討すると, 歯垢の経時的な分布にはそれぞれの歯種, 歯面で特徴がみられた。咬合面は萌出初期において不潔度は大きいが, 歯牙年齢の増加に従って急に減少する。臼歯部の頬, 舌側面は上下顎によって差があり, 上顎頬側面と下顎舌側面, 上顎舌側面と下顎頬側面は同様なパターンを示した。また, 上下顎同名歯での対合状態の差によって不潔度に差がみられ, 全く対合していない状態に比較して, 完全に対合した状態では不潔度は小さかった。<BR>これらの結果から, 不潔度の経年変化に及ぼす要因のうち, 咬合の完成による要因が, より重要であると考察した。
著者
堂野前 彰子
出版者
明治大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

韓半島との関係が深い日本海周辺地域に限定し、(1)文献研究と(2)フィールド調査を行うことから、日本海を利用した交易の様相を総合的に捉えることを試み、渡来人の移動とも重なる古代の「交易」ルートを解明することにより、古代日本文学や当該地域の寺社縁起譚、民間伝承等の新しい解釈を行った。また比較研究として琉球説話集『遺老説伝』や韓国仏教説話集『三国遺事』の研究に取り組み、「交易」の視点を導入した解釈や研究方法を提示した。
著者
竹田 等
出版者
北九州工業高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

研究目的近年、小学校第3学年から学ぶ理科(科学)離れが問題になっている。理由の一つに、小学生にとって学校などで色々なことを学ぶ機会があるにもかかわらず、学んだ知識が、どのようなことと繋がり何に役立てることができるのか分からないことが考えられる。その小学生にとって、平成23年3月11日に発生した東日本大震災は記憶に新しい。その震災で注目された一つに、太陽の集光利用がある。そこで、小学生が興味を示す太陽の集光を利用する方法として、食べた後に捨てられるポテトチップスなどの個包装の裏面の光沢を利用して簡単に作れる太陽光集光器を製作し小学生対象の出前授業用の実験教材を作ることとした。研究方法1. 集めたポテトチップスやチョコレートなどの個包装の裏面の油汚れなどを落とし光沢を出した。2. 不要なダンボールを利用して個包装を貼り付け太陽光集光器の試作品を作った。3. 水を入れた缶を2本用意し1本は試作した太陽光集光器で照射を行い、もう1本は太陽光の直射のみとして午前9時から午後4時まで温度測定を行った。4. 文部科学省新学習指導要領に準拠した「光の性質」を知る(学ぶ)ことができるように反射・集光・光の当て方と明るさや暖かさが分かる工夫を行った。5. 出前授業の実施に向け北九州市内小学校の行事を調査した。研究成果試作した太陽光集光器は、缶の水温を早く上昇させ太陽光集光器として使用できることが分かった。この集光器を、小学生第3学年の実験教材用に透明のアクリル材にお菓子の袋を貼り付け可視化を行いお菓子の袋を利用していることが見て分かる太陽光集光器を完成させた。また、光の性質を学ぶことができるように余ったアクリル材にも貼り付けて鏡として使える教材を作った。出前授業を北九州市内小学校の土曜日授業で計画していたが小学校では全学年対象の行事などにより実施できなかった。このことについて、今後の課題とした。
著者
松永 信博 千葉 賢
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

研究代表者は,有明海の環境研究を通して,梅雨期において諫早湾内では,諫早湾全体にわたる大規模な塩淡成層が形成し,ある時は湾奥部は通常海水の半分まで低塩分化し,ある時は通常海水に回復するという現象を見出した.本研究プロジェクトでは,この塩淡成層は有明海に流れ込む河川水によって作られ,成層構造の出現と消失プロセスは局地風に起因するという仮説の下,河川からの淡水供給と風応力を組み込んだ3次元流動モデルを開発し,再現計算を行った.その結果,成層構造は主に筑後川からの河川水に起因しており,諫早湾において卓越する北北東の風と南南西の風が成層構造の出現・消失プロセスに寄与することが明らかとなった.