著者
山田 宏 坂田 則行
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

プラークの発達に伴って形成される頸動脈と胸部大動脈の線維性被膜を正常領域と比べた結果,管軸方向の単軸引張りについて伸展性の顕著な低下と応力の顕著な増大が見られ,これはコラーゲンとI型コラーゲンの顕著な増大とエラスチンの顕著な減少と関連付けられた.また,プラークを有する頸動脈モデルの有限要素解析より,液体状の脂質コア内の圧力は血圧に比べて顕著に小さい結果が得られた.さらに,生理的内膜肥厚の生じた環状の頸動脈について,3層に分離して残留応力を解放して伸展試験と有限要素解析を実施することで各層の影響を評価する手法を併せて確立できた.
著者
野並 芳樹 近藤 樹里 山本 彰 山城 敏行 笹栗 志朗
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.91-95, 2003-03-15
被引用文献数
9 5

症例は66歳,男性.37度前後の微熱と右胸部鈍痛を訴えて入院した.胸部画像検査で右胸腔に小児頭大の被覆化された腫瘤様陰影を認め,好酸球増多を伴う白血球増加(38,900/μl)とCRPの中等度高値を示したため,当初,膿胸を疑った.血清Granulocyte Colony Stimulating Factor (以下G-CSF)値が高値を示し,且つ,腫瘍の経皮的針生検では細胞壊死が広範に認められたが,一部に癌の疑いがあったため,G-CSF産生肺癌の診断のもと,下葉切除,上中葉部分切除,胸壁,および横隔膜部分切除を行った.切除肺,胸壁,腫瘍の総重量は約1600グラムで,腫瘍は抗G-CSFモノクローナル抗体による免疫組織化学染色で陽性を示す肺大細胞癌であった.術後2週間で血清G-CSF値は正常域となった.その後,paclitaxel + carboplatin併用の抗癌化学療法を行ったが,手術6ヵ月後に血清G-CSF値の上昇とともに,胸壁の切除断端より再発を来たし,手術8ヵ月後に癌性胸膜炎による呼吸不全で死亡した.手術を行ったG-CSF産生肺大細胞癌の本邦報告例は自験例を入れて15例あるが,術後数ヵ月以内に死亡している症例が多い.また本例は術前IL-6も高値を呈し,G-CSF以外のサイトカインとも関連を持った症例であると考えられた.
著者
倉田 紘文
出版者
別府大学国語国文学会
雑誌
別府大学国語国文学
巻号頁・発行日
no.16, pp.14-22, 1974-11

子規と鶏頭 子規の位置と「ありぬべし」 「十四五本」と「七八本」
著者
池田 静香
出版者
長崎市遠藤周作文学館
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

申請者は、主に遠藤周作が作家を志したフランス留学(昭25~28年)から『沈黙』(新潮社昭41年3月)上梓までの間に、彼が中心的な執筆意図として抱えていた「「戦中派」の戦後の生き方」という問題に考察の焦点を定め、国立国会図書館・日本近代文学館等を利用し、昭和20年~昭和30年代までの遠藤の著作を出来る限り収集することに努めた。その調査の中で、遠藤がフランス留学中に興味関心を示し帰国後はサド論を書きたいとまで考えながらその生涯のなかでもかなわなかった「サド」への興味・理解にのなかに、遠藤が戦中派として体験した第二次世界大戦を乗り越える可能性を示し、またその思想と格闘していることが具体的にわかった(「遠藤周作にとっての「悪」-昭和30年代までの戦争への態度とサド理解を中心に」(「遠藤周作研究」第3号に発表)。また一方で、遠藤の著作のなかで「第二次世界大戦」を扱ったものを収集、整理することに努めた。その成果として、フランス留学中の「フォンスの井戸体験(注、第二次世界大戦下で行われた同胞虐殺事件のあった井戸)」を元にした『青い小さな葡萄』(「文学界」昭30年1~6月号)だけでなく、遠藤が文学的回心をするきっかけとなり加えて『沈黙』を書くための母体ともなったと言われている生死の境をさまよった大患(昭35~38年)を中心的な素材とした『満潮の時刻』(「潮」昭40年1~12月号)にも、作家が「第二次世界大戦を戦後文学としてどう描くのか」という流れのなかで『沈黙』へと筆を進めていったであろう軌跡を見出し、その変遷を朧ながら明らかにした(「「呻き声」の彼方-『沈黙』への道」(「九大日文」第17号に発表(※印刷中))。一年間という限られた時間のなかでの作業ではあったが、遠藤周作という一人の作家が小説家としての出発期に抱えた「戦争をどう乗り越えるのか」という問題意識の変遷を詳らかにする土台を形成することに努めたことは、それがとても小さな第一歩だったとしても、今後遠藤文学研究に新たな視座を導入するきっかけとなるはずだと考える。
著者
楠本 良延 稲垣 栄洋 平舘 俊太郎 岩崎 亘典
出版者
独立行政法人農業環境技術研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

静岡県の茶産地では茶畑にススキを主とした刈敷を行う農法が広く実施されている。この刈敷の供給源となっている半自然草原を茶草場という。空中写真とGISの解析から掛川市東山地区では茶畑の65%に相当する半自然草地が維持されていた。わが国の半自然草地が減少しているなかで茶草場は重要で貴重な草原性植物の生息地として評価できる。茶草場は伝統的な里山景観と農業活動によって維持される生物多様性保全の良い事例だと考えられるため、その成立・維持機構を明らかにする。
著者
遠藤 教昭 菅原 準二 三谷 英夫
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : journal of the Japanese Orthodontic Society : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13440241)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.105-115, 1999
被引用文献数
3

本研究の目的は, 骨格型下顎前突症における垂直的顔面骨格パターンと脳頭蓋形態との間に関連性があるかどうか, すなわち, Short face群とLong face群の脳頭蓋形態に差異が認められるかについて検討することである.研究対象は, 未治療女子骨格型下顎前突者398名(暦齢6歳0カ月∿27歳1カ月)で, 暦齢によって, 7歳, 9歳, 11歳, 成人群の4つの年齢群に区分した.それらの側面頭部X線規格写真の透写図上で設定した変量に統計処理を適用して, 各年齢群におけるShort face群とLong face群の脳頭蓋形態の比較を行ったところ, 以下の結果が得られた.1. Long face群においては, Short face群と比較して頭蓋冠前方部の前後径が有意に小さく, 両群の差は増齢的に明確になっていた.すなわち, Long face群はShort face群よりも, 前頭部の前方成長量が少なかった.2. Long face群においては, Short face群と比較して前頭蓋底の傾斜角(FH平面に対する前頭蓋底の傾斜角)が有意に大きく, 両群の差は増齢的に明確になっていた.3. 以上のように, Long face群の脳頭蓋形態は, かつて遠藤が報告した顔面頭蓋形態と同様に, Short face群と比較して増齢的に扁平化する傾向が認められた.さらに, 脳頭蓋と顔面頭蓋のいずれについても, Short face群とLong face群の形態的な相違は経年的に明確になっていたが, 前額部がそれらの形態的調和を保つために補償的な成長を示す部位であることがわかった.
著者
藤田 幸
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

これまでに、SIRT1とzyxinがほ乳類細胞内で結合することを免疫沈降法により示したが、この実験系では、SIRT1,zyxin両者の結合が、直接結合であるか、細胞内因子などを介した間接的な結合によるのかについては定かではないnそこで、SIRT1とzyinが直接結合するか、in vitro pull-down assayにより検討した.大腸菌にGST-SIRT1またはHis-zyxin発現ベクターを導入し、Glutathione sepharoseまたはNi agaroseを用いてSIRT1、zyxinのタンパク質を精製することに成功した。また、zyxin deletion mutantとの結合を調べることにより、これまでに行った酵母での実験結果と同様に、zyxinのLIM domain3が、SIRT1との結合に必要であることを確認した。さらに、申請者は、中枢神経系におけるSIRT1の機能を詳細に調べるため、脳組織におけるSIRT1の発現分布について検討した。Real-TimePCR法、Western blot法により、RNAレベル、タンパク質レベルでの両者の発現を解析した結果、SIRT1,zyxinともにマウスの各臓器で発現していることを確認した。マウスの発生段階ごとの両者の発現レベルを比較した結果、各発現段階で両者ともに発現していた。また、in vivoでのSIRT1の機能を調べるため、SIRT1の発現をRNAiで抑制し、アポトーシス細胞の増減をTUNEL染色で検討したCoSIRT1の発現抑制のため、pSuper-GFPvectorにSIRT1のsiRNA配列を導入し、SIRT1shRNAベクターを作成した。in ovo electropolation法によりニワトリ胚網膜細胞に導入し、SIRT1の発現を抑制することを試みた。
著者
徳守 淳也 小野 智司 木場 隆司 北山 信一 中山 茂
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.41-50, 2007-02-21
被引用文献数
2

学術情報の円滑な流通を図るため,国立情報学研究所(NII)の主導のもと,大学などの研究機関において学術リポジトリの構築が進められている.しかし,学術情報のメタデータ作成は労力がかかるため,より簡便にメタデータを作成できるツールやサービスの開発が望まれている.本研究では,学術機関リポジトリの構築支援を目的として,理工系の研究者の間で研究者に広く用いられているBIBT_EX形式のメタデータを,NIIメタデータ記述要素に準拠するメタデータに変換するシステムを開発する.提案するシステムを利用することで,メタデータ記述の労力を5分の1程度に抑えることができる.また,コンパイラ・コンパイラを利用することで,開発の労力を抑えることができた.
著者
年森 清隆 伊藤 千鶴 前川 眞見子 大和屋 健二 神村 今日子 武藤 透
出版者
千葉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

Muse細胞調整後、精子幹細胞の無いW/Wvミュータント雄マウス精巣内に移植して定着性を検討し、次の点が明らかになった。長距離移動によるMuse細胞のダメージは無く生細胞数を確保できる。移植前培地中に長時間置くと凝集が起こり、移植効率が下がる。移植用培地からアルブミンを抜くと効率良く微小注入できる。移植後3ヶ月では、GFPのシグナルは認めらないことから、単純なMuse細胞移植では精子細胞分化への誘導はできないと思われた。
著者
高木 修作 細川 秀毅 示野 貞夫 宇川 正治
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.417-427, 2000-05-15
被引用文献数
6 11

マダイ飼料におけるコーングルテンミール(CGM)の配合許容量を, 0歳魚(初期平均体重53g)および1歳魚(初期平均体重280g)を用いて調べた。0歳魚では15%の, 1歳魚では36%以下のCGM配合区は, 無配合区と同等の平均増重量および飼料効率であった。しかし, 0歳魚では26%以上の, 1歳魚では47%以上のCGM高配合区の平均増重量および飼料効率は劣った。試験飼料の見かけのタンパク質消化率はCGM配合率と無関係に90∿95%と優れていた。マダイ飼料におけるCGM配合許容量は0歳魚で15%, 1歳魚で36%, 魚粉代替率としてそれぞれ30%および70%と判断された。
著者
寺尾 敦 飯島 泰裕 宮治 裕 伊藤 一成
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は,(1) 携帯端末を利用した授業のための学習環境の開発, (2) 携帯端末を利用した新しい教育方法の探求, (3) モバイルラーニングに適した学習ウェブサイトあるいはアプリケーションの開発,であった.スマートフォンやタブレットなどの携帯端末を利用した学習を行うための環境(学習管理システム)を開発した.デザイン科学のパラダイムに基づき,携帯端末を用いた授業のデザインを繰り返して,環境,教材,授業の改善を行った
著者
柳沢 豊 塚本 昌彦 劉 渤江 西尾 章治郎
出版者
社団法人人工知能学会
雑誌
人工知能学会誌 (ISSN:09128085)
巻号頁・発行日
vol.10, no.5, pp.761-768, 1995-09-01
被引用文献数
6

Conventionally, the development of a knowledge application system has often been accompanied with the constraction of its underlying knowledge-base system. As a result, such a tight coupling of an application system with its employed knowledge-base system makes it difficult to share and reuse a knowledge-base among different applications. However, large scale knowledge-base should be shared by a wide variety of applications. The efficient share and reuse of knowledge-base among different applications is currently one of the most important research issues in building knowledge systems. Thus, it is important to establish the notion of knowledge-base independence among applications and knowledge-base systems. In this paper, this important notion is first defined by three types of independence : maintenance independence, program independence, and algorithm independence. Then, a dynamic inheritance deduction mechanism is proposed to achieve knowledge-base independence in the environment of object-oriented programming languages. The mechanism acts as the interface between the application and its knowledge-base system : if a message invokes a method, a query for the knowledge-base is automatically generated. The result of reasoning in the knowledge-base dynamically decides the class hieraechy (i.e., the inheritance relation) of the application. By doing so, a knowledge-base can be effectively utilized by different application systems without knowing the detailed structure, which realizes knowledge-base independence. We implemented the dynamic inheritance deduction mechanism using the Objective-C language and the DOT developed in our previous work for deductive and object-oriented extended term representation. Furthermore, based on the proposed mechanism, we constructed the enviroment DOT-ADE (DOT application development environment) for supporting application development.