著者
田中 直人 足立 啓 後藤 義明 古賀 紀江
出版者
摂南大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

国内外の高齢者居住施設における事例調査から、レミニセンスを導入して日常の生活環境への配慮としている事例を確認できた。本研究で目的としている感覚誘導システムに関連する事例も海外事例で確認できた。続いて国内施設へのアンケート調査で、環境要素として感覚的誘導に用いることが可能な「レミニセンス事物」の抽出を行った。その事物を導入した効果を確認するためビデオカメラで長期観察実験を行い、さらに実験後に施設スタッフからもヒアリングを実施し確認した。感覚的誘導の効果として、(1)放尿抑制効果、(2)個室への侵入防止などの抑制効果があることが確認できた。また、T字型の歩行空間を想定した画像実験から、高齢者の記憶に残る感覚的な誘導方法についての可能性と効果を検証確認できた。本研究結果を生かしさらに継続発展させる知見が得られた。
著者
小野 米一
出版者
鳴門教育大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

アイヌ語話者の日本語北海道方言の特徴として、次のような知見が得られた。(1)母語アイヌ語の干渉と思われる特徴が、主に音声面に観察される。例えば、(1)主に1拍目の音を引き伸ばしがちなこと、(2)母音オとウが近似していること、(3)連母音同化を起こしにくいこと、(4)サ・シャ行音及びザ・ジャ行音の区別がないこと、(5)いわゆる清音と濁音との区別がないか混同が著しいこと、(6)拗音を直音ふうに発音する傾向があること、(7)イントネーションが平板な調子になりがちなこと、などである。しかし、文法面においても、(8)助詞「に」「しか」などの用法、(9)自動詞・他動詞の混用、(10)文末の表現、などにアイヌ語の干渉が認められる。語彙面には、借用語がいくつかあるものの、アイヌ語の干渉はほとんどない。(2)アイヌ語話者たちが身に付けた日本語は、主に明治期・大正期、さらには昭和戦前期のものであり、昭和30年代以降の共通語化が急速に進む以前のやや古い北海道方言である。東北方言的な特徴が基盤となって、全国各地からの移住者たちが持ち込んだ全国諸方言が混交しあった、独特の「北海道方言」である。その日本語には、織田氏のそれに淡路島方言から取り入れたと思われる特徴がいくつか観察されることに象徴されるように、近隣在住移住者の日本語方言が反映している点で注目される。(3)アイヌ語話者の日本語北海道方言には、以上のような共通した特徴も観察されるが、生育環境や日本語を身に付けた時期、アイヌ語・アイヌ文化に対する態度などが、アイヌ語話者一人ひとりの日本語の個人差となってさまざまでに観察される。
著者
藤井 範久
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

トレイルランニングレース上位入賞者の走動作を分析し,実験室内での走動作と比較することで,不整地における走動作の特徴を明らかにすることを目的とした.その結果,舗装路(整地)に比べトレイル(不整地)では,支持時間の割合が大きくなる,離地距離が長くなる(身体後方まで足部を地面に接地し続ける),路面の「柔らかさ」に応じて接地時の膝関節角度を調整している,ことなどが明らかとなった.膝関節角度の調整は,長距離走における力学的エネルギー利用の有効性の観点からも支持できるものである.路面に凹凸があり,路面の一部が高い時には,膝関節を屈曲させた姿勢で接地することで,バランスを維持しようとしていた可能性がある.
著者
奥山 治美
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.583-585, 1995-05-01 (Released:2008-02-14)
参考文献数
9
被引用文献数
1 3
著者
加藤 寧 風間 宏志 西山 大樹
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J94-B, no.3, pp.315-324, 2011-03-01

広域性と同報性に優れ古くから利用されてきた衛星通信システムだが,時代の変遷とともにその役割が少しずつ変化してきている.地上の有線/無線ネットワークの発達により都市部を中心に利用者数が減ってはいるものの,災害に対する強さなど非常時でも利用可能な通信システムとしての役割は依然として大きい.僻地や災害地でのシームレスな通信を実現するために衛星通信システムと地上ネットワークの融合が叫ばれる一方,限られた周波数資源の有効利用も課題となっている.更に,地球環境の変化などに伴い,環境モニタリングといった衛星通信システムの新しい利用法にも注目が集まっている.本論文では,衛星通信システム実験の現状を概観し,国内外の最新の状況を紹介するとともに,今後の展望について述べる.
著者
新村 秀一
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.31-45, 2007-07-31
被引用文献数
2

Miyake & Shinmura (1978)は,最少誤分類数(Minimum Misclassification Number,略してMMNを判別基準とする最適線形判別関数(Optimal Linear Discriminant Function,略してOLDF)を提案した.この基準は,多くの統計家にとって過剰推定(オーバーエスティメイト)あるいはパターン認識でいうOver Learningが考えられ受け入れがたいものであった.しかし,判別する2群がFisherの線形判別関数(LDF)の理論的前提を満たせば, LDFの誤分類数(Misclassification Number,略してMN)はMMNと等しくなる.そこで,教師データでこの差が大きいほど,この理論的前提より乖離する指標になることが期待される.そこで,ヒューリスティック手法(ヒューリスティックOLDF)を開発し研究したが,計算時間や評価法などで壁に突き当たった(三宅・新村(1979)).新村(1998)は,この問題が数理計画法(MP)の研究者が,計算時間がかかるということで嫌っている整数計画法(IP)で定式化できることに気づき,IP-OLDFと命名し研究を再開した.計算の爆発というブラックホールに分け入り大変であったが,MMNの集合である最適凸多様体でもってこれまで判別分析の理論で説明できないことが幾つか分かった.しかし,「学生の生活実態調査データ」でIP-OLDFの致命的な欠陥が見つかった.今回改訂IP-OLDFというモデルを考えたことで,この問題のほか,計算時間の短縮,最適凸多様体のどの内点を最終的に判別関数の計数に用いればよいか,そしてそれを用いて評価データによる汎化能力の検証が可能となった.これによって,1970年代から延々と行われてきた数理計画法による判別モデル(Stam, 1997)と既存の判別手法の比較を今後客観的に行う目処がついた.
著者
毛利 晶
出版者
公益財団法人史学会
雑誌
史學雜誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.123, no.3, pp.372-374, 2014-03-20
著者
浅見宗広 福井隆司 葛城友香 大杉苑子
雑誌
研究報告高度交通システム(ITS)
巻号頁・発行日
vol.2013-ITS-55, no.2, pp.1-8, 2013-11-07

屋内での位置推定手法として,Gaussian Mixture Model (GMM) を用いた WiFi 位置推定手法が提案されている.本稿では,この手法を渋谷駅周辺エリアに実際に適用した際に明らかになった課題やそれに対する対策などを報告する.具体的には,GMM でモデル化するにあたり事前にWiFi電波情報を現地でフロア毎に収集するが,位置推定処理に利用可能な信頼できる WiFi 電波の選定方法が挙げられる.また,位置推定処理ではまずフロアを特定する必要があるが,フロア毎に事前に計測された BSSID 毎の最大強度の情報からフロアを特定する方法について紹介する.その他,フロア推定の正解率や位置推定結果の誤差などを報告する.
著者
夏目漱石著
出版者
國民出版會 (発売)
巻号頁・発行日
1954
著者
西浦 敬信 善本 哲夫 中山 雅人
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ある特定の領域にのみ音波を放射できるパラメトリックスピーカを用いて,音空間の任意の場所における立体的な音像(3D音像ホログラム)を実現した.特に放射板を自由に形状変形可能なフレキシブルパラメトリックスピーカを開発した上で,複数のフレキシブルパラメトリックスピーカを用いて「キャリア波」と「側帯波」を分離放射することで音空間に3D音像ホログラムを構築した.さらに社会実装実験を通じて活用シーンも調査・検討し,音空間上の任意の場所に構築可能な3D音像ホログラムの総合開発を試みた.
著者
中山 雅人 松井 唯 西浦 敬信
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.388, pp.25-30, 2013-01-17

近年,超音波を利用することで超指向性を実現できるパラメトリックスピーカが注目されている.パラメトリックスピーカは超音波を可聴音波で変調した振幅変調波を放射し,振幅変調波が空気の非線形性により目的とする可聴音波に自己復調する原理で駆動する.パラメトリックスピーカより復調する可聴音波は,キャリア波と側帯波との差音として考えることができる.そこで本研究では,振幅変調波をキャリア波と側帯波に分離して,異なる方位よりそれぞれ放射することで,特定の領域のみで可聴音波を復調させることで再生領域の制御を試みる.さらに本稿では,パラメトリックスピーカを複数に増やすことで,側帯波による高調波歪みの影響の軽減を試みる.最後に,実環境における評価実験を行い,提案手法の有効性を確認した.
著者
Shu Kondo
出版者
日本遺伝学会
雑誌
Genes & Genetic Systems (ISSN:13417568)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.3-8, 2014 (Released:2014-05-10)
参考文献数
41
被引用文献数
7 17

Drosophila melanogaster has the longest history as a genetic model system and even in the present day remains the front runner in diverse fields of biology. However, lack of a convenient method to make specified modifications to endogenous genes has been a pain in the neck for many fly geneticists for decades. Synthetic nuclease technologies, especially the CRISPR/Cas9 system, hold great promise for a breakthrough. Synthetic nucleases are programmable nucleases that can be directed to cleave a specified sequence in the genome. Deleterious mutations can be efficiently induced by expression of a synthetic nuclease that targets a gene of interest. Precise modification of the target site, such as a reporter gene knock-in, is also possible by simultaneous delivery of a synthetic nuclease and a targeting vector. Here I summarize recent advances in synthetic nuclease technologies and discuss their possible applications to Drosophila genetics.
著者
津田 拓郎
出版者
公益財団法人史学会
雑誌
史學雜誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.123, no.2, pp.205-230, 2014-02-20

The primary purpose of this article is to offer a new perspective on the use of the written word by the government of the Carolingian through an examination of the "capitularies". The capitularies are traditionally recognized as "the edicts of the kings"; and it is widely accepted that their "Golden Age" occurred during the reign of Charlemagne and Louis the Pious. The research to date has concentrated mainly on manuscripts, but this method is not appropriate for an analysis of the governmental system of the Carolingian age, because manuscripts were composed some time after the initial authoring of any given text and show us only information about their later phases. In order to clarify the earliest phase, the author explores references to the use of documents in narrative sources. His results show that with some exceptions, there are only two categories of information about the use of the written word which emerge in the narrative sources; namely lex (or "texts that should be added to lex") and "texts on behalf of the church". In view of the quantity of such cases, there is little diversity during the Carolingian age, a fact that would belie the alleged "Golden Age"; moreover, references to texts for the church can also be found in the east Frankish kingdom, which historians have considered as a land where no capitulary was issued. The reason for the discrepancy between the author's conclusions and the conventional view concerning a "Golden Age" lies in the fact that many "capitularies" of Charlemagne and Louis were texts which had only subordinate functions for the communication, for in the later Carolingian age the communication system had been transformed into a face-to-face system via assemblies; and rulers had not as much need for such texts as before. There are also indications that in the west Frankish kingdom fundamental changes appeared to have occurred in the use of the written word by the government. The age of Charlemagne and Louis the Pious can be called the "Golden Age" of those texts that had only subordinate functions in communicating the wishes of the kings ; that is to say Charlemagne and Louis the Pious should be not regarded as "great legislators who issued many written edicts". Therefore, we should reexamine the use of the written word in each kingdom without considering the text category of "capitulary".
著者
渡邊 紀文 森 文彦 大森 隆司
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.J434-J440, 2013 (Released:2013-11-25)
参考文献数
12
被引用文献数
2

In daily life, our behavior is guided by various visual stimuli such as the information on direction signs. However, our environmentally based perceptual capacity is often challenged in crowded circumstances, or more so, in emergency evacuation circumstances. In these situations, we often fail to pay attention to important signs. In order to achieve more effective direction guidance, we considered the use of unconscious reflexes in human walking action. In this study, we experimented with vision-guided walking direction control by optic flow stimulus combined with body sway. We observed a shift in subjects' walking direction and body sway and discuss the possible mechanism.