著者
LEE Hyong Cheol 李 炯喆
出版者
長崎県立大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:18838111)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.77-87, 2014-01-15

宮澤喜一と言えば、戦後日本の政治外交と経済に深くかかわった戦後史の証人である。占領から経済摩擦にいたる対米関係のみならず、アジアの隣国とも深く関わっていて、教科書問題の際の近隣諸国条項、PKO 協力法、従軍慰安婦問題(河野談話)、新宮澤構想などの決定と政策を打ち出した。そのため、毀誉褒貶相半ばする異色の保守政治家である。首相としての評価は高くないが、宮澤の政治活動には並の保守政治家とは異なる戦前の意識、自由主義、アジア認識が通底している。決して弱腰、優柔不断のせいではなく、彼の信念に由るものである。
著者
石川 隆 山沖 和秀 矢崎 義雄 加藤 裕久 鈴木 亨 塩島 一朗 小室 一成 山沖 和秀
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

1. CSXとGATA-4によるANP遺伝子の転写調節 ヒトCSXcDNAおよびマウスGATA-4cDNAを発現ベクターに組み込みANP遺伝子のプロモーター領域を含むレポーター遺伝子とともにCOS-7細胞に導入しtrans-activation活性を解析した。CSXによるANP遺伝子の転写亢進には、転写開始点上流-100bpおよび-250bpに存在するCSX結合配列が重要であり、CSXとGATA-4を同時に発現させると、ANP遺伝子の転写は相乗的に亢進し、その協調作用には-250bpに存在するCSX結合配列が必要であった。さらに、CSXとGATA-4はin vivoおよびin vitroにおいて蛋白同士が直接会合した。以上より、心筋に発生早期より発現し異なるDNA binding motifを持つ転写因子であるCSXとGATA-4が、直接的な蛋白-蛋白相互作用を介してANP遺伝子の転写を協調的に制御することが明らかにされた。2. CSX1過剰発現マウスの解析 CSX1過剰発現マウス(Tg)を作製し解析した。Tgは生存及び生殖可能であり、外奇形や成長障害、心不全症状を認めず、心重量の増加も認めなかった。Tgにおいて心臓と骨格筋にCSX1 mRNAの過剰発現が認められた。内因性Csxの発現はCSX1 の過剰発現により有意に増加を認めた。以上より、TgにおけるANPの誘導はCSX1の直接の作用である可能性が考えられた。また、内因性Csxの発現が増加していたことからCsxの発現調節に正の自己調節機構があることが示唆された。3. Csx/Nkx2.5と会合する新たな転写因子Zf11の発見と解析 ヒトCSX遺伝子cDNA全長を用いtwo-hybrid systemにてマウス胎生17日のcDNA libraryをスクリーニングした。20個のうち1個はC2H2型のzinc fingerを11個と核移行シグナルを持つ転写因子と考えられ、Zf11と名づけた。two-hybrid systemではCsxのN-末端とhomeo domainが会合に必要と考えられ、pull down assayではZf11のzinc finger domainが会合に重要であった。マウスのES細胞において、分化前および分化誘導後3日では発現がなく、6日目以降より発現が認められた。8日目よりミオシン等の収縮蛋白の発現が認められ、自発収縮が始まることより、Zf11はこれらの心筋特異的な収縮蛋白などの発現に関与していると考えられた。Whole mount in situ hybridizationにおいて、Zf11は心臓の形成されるマウス胎仔8日目頃より心臓の原基において発現していた。
著者
前村 浩二 林 同文 永井 良三
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は末梢組織体内時計の下流アウトプット遺伝子を同定し、中枢と末梢の体内時計が、各組織ごとの概日リズムの形成にどのように寄与しているかを明らかにすることを目的とする。ClockとBmalを発現するアデノウイルスを培養細胞にinfectionし、cDNA Microarrayにより発現が増加する遺伝子を網羅的に解析した結果、転写因子、分泌タンパク、膜受容体などが体内時計の標的遺伝子の候補として同定された。その中の転写因子、Dec1の機能について解析した。心臓や腎臓、大動脈などの臓器でDec1mRNAの発現は日内変動を呈した。Dec1はClockとBmalによりmRNAレベルで誘導され、またDec1はClockとBmalによるPer1プロモーターの活性を抑制した。さらにDec1は低酸素でその発現が誘導された。これらのことより、Dec1が低酸素などの環境因子を関知して体内時計のコアフィードバックループを調整する因子として働いている可能性が示された。今後はDNA Microarrayにより同定された体内時計に関連する他の遺伝子群についてさらにその発現パターン、循環機能調節における役割をさらに解析する。次に、中枢の体内時計は正常に保たれ、血管内皮末梢体内時計のみが異常なトランスジェニックマウスを作成した。このマウスを用いて今後さまざまな循環機能の日内変動を解析することにより末梢体内時計の役割を中枢と末梢に分けて解析できる。本研究により、心筋梗塞の早朝発症機序を初めとする循環器系疾患の日内変動のメカニズムが分子レベルで詳細に解明されることが期待される。組織固有の日内リズム発生のメカニズムを理解することは今後時間に即した治療法の開発にむすびつけるられることが期待される。
著者
前村 浩二 渡辺 昌文 永井 良三
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

循環器疾患の発症には概日リズムが認められる。本研究は循環器疾患発症の概日リズムを体内時計の観点で明らかにし、時間を考慮した視点からの循環器疾患の予防法、治療法の開発をめざして遂行した。まず末梢の体内時計によりコントロールされている遺伝子群の候補として転写因子、分泌タンパク、膜受容体など28個の遺伝子が同定され、体内時計がこれらの遺伝子発現を通じて循環器疾患発症に関与していることが示唆された。
著者
永井 良三 森田 啓行 前村 浩二
出版者
東京大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2001

血圧や心拍数など心血管系機能、あるいは心筋梗塞や冠動脈スパスムなどの疾患の発症時間には、明らかな日内変動が見られるが、その分子メカニズムは未だ解明されていない。最近、体内時計の分子メカニズムが急速に明らかにされ、CLOCK, BMAL1, PERIODなどの転写因子相互のpositive及びnegativeのfeedbackループから形成されていることが明らかになった。本研究は循環器疾患の日内変動が、心臓や血管に内在する体内時計により制御されているという全く新しい着想により遂行した。マウスをlight-darkサイクルで飼育した後、経時的に心臓や血管などの臓器を採取し、体内時計構成因子群の発現が日内変動をもっていることをNorthernブロット法にて確認した。さらに、血管内皮細胞、平滑筋細胞、心筋細胞の培養を行い、個々の培養細胞レベルで体内時計関連遺伝子の発現が概日リズムを呈することが示され、.心血管系を形成する細胞レベルで体内時計の存在が示された。心筋梗塞、不安定狭心症などの急性冠症侯群は早朝に多く発症し、その一因として線溶系抑制因子であるPAI-1の活性が日内変動を呈し、早朝に最高値になることが挙げられている。我々はさらに血管内皮細胞において、我々のクローニングしたCLIFとCLOCKがPAI-1遺伝子発現の日内変動を局所で調節していることを示した。以上の結果より末梢組織にも体内時計が存在し、局所に抽いてPAI-1遺伝子の発現を調節することにより、心筋梗塞発症の日内変動に寄与していることが示唆された。組織固有の日内リズム発生のメカニズムを理解することは、心筋梗塞や冠動脈スパスムなどの病態の理解を深めることにつながる。さらにそれは時間に即した治療法の開発にむすびつけることが期待される。
著者
安藤 隆之
出版者
中京大学
雑誌
文化科学研究 (ISSN:09156461)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.13-42, 2001-12-20

時間を遡るが、1998年夏、豪日交流基金から日本におけるオーストラリア文化のイメージ調査の依頼があった。限られた時間と予算を前提とするもので引き受けるについては迷いがあった。しかしこれまでのオーストラリア政府の協力に感謝する意味でお役に立ちたいという思いと、オーストラリアの劇場研究のプラスになるかもしれないという気持ちから引き受けることにした。調査の結果は『日本におけるオーストラリア芸術のイメージ調査』 (オーストラリア大使館文化部出版) としてまとめられた。翌年にはその追跡調査 (第二次調査) を実施し、日本におけるオーストラリア文化政策への提言という形で「第二次レポート」 (final report) を作成した。この二つのレポートはオーストラリア議会に<Ando report>として提出され、豪日交流基金の活動実績として評価されることになったが、筆者にとっては望外の名誉であった。さて、オーストラリアの芸術文化を日本で普及させるための調査をオーストラリアにおいて実施するのはなぜか。開拓すべきマーケット (市場) は日本ではないのか。この疑問に答える必要がある。芸術文化の輸出入 (貿易) は一般の商品取引と異なり、社会貢献活動と言うべきだろう。たとえば、日本でオーストラリアの芸術文化として普及しているものに、工芸品ではオパールを使ったアクセサリー、音楽ではアボリジニの伝統音楽がある。しかし1998年の「オーストラリア年」では、絵画展やオーストラリアのバレエ (ダンス)、クラシック音楽が紹介された。オーストラリア大使館としては伝統的芸術ジャンルにおいても欧米に負けない水準にあり、できれば今後オーストラリアの美術品の展示会や舞台の招聘公演を企画してほしいという期待があった。欧米に対する対抗意識も強く感じられたが、結果として日本はその期待には応えられなかった。その矢先、貿易省は世界に配置されている大使館に対してアートマーケットの現状報告を求めた。筆者に依頼されたイメージ調査はこうした背景から実施された。筆者はオーストラリア大使館と豪日交流基金のスタッフとも相談して、限られた時間と予算の範囲でもっとも有効な調査方法を検討した。筆者としては単なる調査に終わらないものにするために、第二次調査を含む調査デザインを提案した。豪日交流基金所長だったテリー・ホワイト氏はこれを高く評価してくれた。筆者は玉井祥子氏と協力して、直ちに調査を実施した。その結果、本国政府への報告が間に合ったことは言うまでもないが、意味のある調査になったものと自負している。調査で判明したことは多々あるが、例えば映画分野の広報が不足していること、日本のマーケットに受け入れやすい芸術ジャンルから攻めるべきであるという提案をした。豪日交流基金のホームページではただちに映画紹介が始まった。しかし今後オーストラリア側の期待に答えるべく協力を惜しまないとしても、オーストラリアの関係者が本当に期待しているものは何か。オーストラリアの芸術関係者が日本においてどのようなオーストラリア芸術が普及すればよいと期待するのか。国家としては自国の文化的ステイタスを称揚することは外交上必要であるが、両国の文化的関係を深めていくには文化的ステイタスの確認に終わっていいはずがない。それは始まりに過ぎない。オーストラリア国民は自国芸術をどのように受けとめているのか。とりわけオーストラリアの芸術家が考えていることを広範な日本人芸術愛好家に理解してもらう必要があるのではないか。しかし筆者の調査は国民的レベルにおいて行うものではない。それは個人研究の限界を越えるものである。筆者の目的は、専門家レベル (公共文化施設の企画担当者、美術館のキュレーター、劇団のマネージャー、教育現場の関係者) において何をすればより効果的かを発見し、実務的で即効性のある文化政策的提言を作成することにある。総論的長期的ではない個別的短期的な具体的施策を立案することにある。他方、一連の調査の副産物として、1つの文化 (culture) が二つの異なる国民 (nation) においてどのように共有されているか、あるいは非共有されているかを分析する機会となった。比較を通して双方の考え方が浮かび上がり、とりわけオーストラリア人の考え方が発見でき、筆者のオーストラリア研究に貢献する結果となった。
著者
倉田 のり 野々村 賢一
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究ではまず、穀類共通のセントロメア配列として知られていたシークエンスをもとに、イネセントロメア局在復配列RCE1516をクローニングした。イネゲノムのファージライブラリーを作り、この配列を複数コピー持つゲノムクローンを選抜し、14kbにわたってその構造解析を行い、1.9kbを単位とする反復配列が存在することを見出した。これらの反復配列がすべての染色体のセントロメア部に存在することをin situ hybridizationで確かめた。さらに、もう一つのセントロメア反復配列RCS2を用いて第5染色体セントロメア領域に位置するYACクローンを選抜した。第5染色体のセントロメア領域に、14のYACクローンを整列化した4つのYACコンティグを形成し、この領域の構造解析を行った。この結果、この領域は1)それぞれがおよそ1Mbの長さを持つ3つのコンティグ(Contig I,II,III)と、1つのYACより成ること。2)セントロメア特異的高頻度反復配列RCS2はBamH1切断した13Kbと15Kbのフラグメントのみにあり、相互にかなり近い距離に存在していること。3)ほとんどのYACがRCE1のコピーを複数個保持しており、RCS2を2ブロックとも持つYACクローンを中心に、左右ほぼ均等にRCE1が分布している可能性が示唆されること。4)この領域には9個以上の遺伝子が存在すると考えられること。が明らかになった。次に、これらの中からセントロメアクローン候補を選び、イネ人工染色体の構築に取りかかった。まずイネ用染色体アームを構築するため、GFP遺伝子、イネテロメア等を挿入し、左右のアームベクターを作成した。これらのアームを用いてイネ人工染色体を構築するため、酵母細胞内での相同組換えを用いたセントロメアYACクローンへのアームの導入を、引き続き進行中である。
著者
岩元 和敏 妹尾 学
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.466-473, 1990-08-01

小特集 材料複合化による新機能の創製