著者
田中 寛
出版者
東京工業大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本年度の研究では、主にシゾンにおけるアブシジン酸(ABA)の作用について解析を行なった。これまでの研究で、シゾン細胞から内生ABAが検出されること。暗所で増殖停止したシゾン培養にABAを添加することでオルガネラDNA合成(ODR)が阻害されることを見いだしていた。しかし、ABAによる抑制効果は長期には持続しないことから実験的な問題が残されていた。今回、ABAを数時間ごとに再添加したところ継続的な抑制効果が見られたことから、ABAがシゾンの酸性培地中で急速に失活することが効果低下の原因であると考えられた。また、ABAの光学異性体((+)型、(-)型)を用いた実験より、+型のみが抑制活性を示したことから、植物ホルモンとしての機能と同様に、特異的レセプターを介した生理活性であることが強く示唆された。ABAの作用機作を明らかにする目的で、その添加によりODR促進効果がみられるHemeとの、培地への共添加実験を行なった。その結果、Hemeの添加によりABAのODR抑制効果が解消することを見いだした。従って、ABAはHemeシグナルを抑制することによりODRを抑制していることが示唆される。ABAとHemeの関係性については、シロイヌナズナにおいて、Heme結合性をもつTSPOタンパク質がABAにより誘導されることで、フリーのHemeによる細胞障害を抑制する機構が提唱されている。そこでシゾンゲノムを検索したところ、シゾンにもTSPOタンパク質が存在することが判った。さらに、この遺伝子がABAで発現誘導されることが判明したことから、TSPOによるHemeシグナルの吸着が、ABAによるODR抑制効果の分子機構であることが考えられた。ABAによるTSPO遺伝子の発現誘導機構について、現在解析中である。
著者
乾 重樹 板見 智
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

正常ヒトケラチノサイトの分化過程でHic-5はケラチノサイト内での局在が細胞質からFocal adhesionに変化し、内因性のHic-5はケラチノサイトの増殖、早期分化、接着能に正の影響を、運動能には負の影響及ぼしていることが示唆された。正常メラノサイトのモデル細胞として用いたB16-F1マウスメラノーマ細胞で、内因性のHic-5は増殖、遊走、浸潤能について正の影響を及ぼしていることがわかった。Hic-5はRho依存的なメラノーマの運動能調節経路を介してメラノーマの転移能に影響を与えた。これらのHic-5の役割は創傷治癒過程では上皮化過程および表皮の色素回復に関与していると考えられる。
著者
湯浅観明 著
出版者
実業之日本社
巻号頁・発行日
1906
著者
松永 翔雲
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究課題では,「More than Moore」に代表されるような新デバイスの採用および回路機能の多様化による集積回路のパフォーマンス向上を想定し,強誘電体や強磁性体などの不揮発記憶素子の特長を活用し,ゲートレベルの論理演算機能と不揮発記憶機能をコンパクトに一体化し,低電力性と高速性を両立できる不揮発性の細粒度パイプライン演算システムを構築した.応用例として,動画像圧縮等に利用する動きベクトル検索用絶対差分和演算回路,及び並列データ検索用連想メモリを取り上げ,パワーゲーティング機能を組み込んだ不揮発性の細粒度パイプライン演算システムにより,大幅なパフォーマンス向上を実現した.
著者
伊藤 求 鳩野 逸生 稲垣 成哲
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.113-116, 2004-03-05
被引用文献数
1

本研究では,学習者が簡単に取り扱える定点観測教材ビデオクリップ作成システムの自動化を実現した.Webカメラを観察対象に向け設置するだけで,時間軸を縮めたmpeglビデオクリップを作成し,かつ,それらをパソコンのWebブラウザで閲覧できるようにする.さらに,インターネット経由で公開することもできる.導入コストが低く,かつ安定性のあるOSを用いているので,季節変化などの長期間の観察に対しても利用できる.本システムを導入することにより,学習者自らが興味を持つ観察対象をビデオクリップとして観察することができる.その結果,彼らの意志で主体的に取り組んだビデオクリップ教材を作成および公開することができる.
著者
上本 伸二
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

ラット同種間強拒絶肝移植モデルを用いて、肝移植術前にレシピエントの骨髄細胞をドナーに移植することにより、拒絶が軽減するかどうか検討した。肝移植術前に骨髄細胞移植を行うことで肝移植術後の拒絶反応が軽減された。肝グラフト内に移植骨髄由来の細胞の生着を認め、それらはKupffer細胞に分化していた。ドナーに対するレシピエント由来の骨髄移植によるKupffer細胞置換は肝移植後の拒絶抑制に有用な治療となる可能性がある。今後、異種移植モデルで検討を行っていく。臨床でのブタ/ヒト異種移植を想定し、ハムスター/ラット間の異種肝移植モデルの手技を確立した。
著者
紙屋 正和
出版者
東洋史研究會
雑誌
東洋史研究 (ISSN:03869059)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.235-261, 1989-09-30
著者
山中 秀昭 小崎 成治 横谷 哲也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CS, 通信方式 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.266, pp.29-32, 2009-10-29
参考文献数
7
被引用文献数
1

2000年代初頭から始まった光アクセスネットワークによるブロードバンドサービスは、概ね全国に行き渡りインターネットサービスの高速化が達成されたと言える。インターネットアクセスと電話サービスに加えてIP技術により映像配信を加えた「トリプルプレイサービス」の導入が積極的に進められている。現在、更なる高速化及び高機能化を目指した次世代光アクセスシステムの研究開発及び標準化の議論が始まった。次世代光アクセスシステムでは、経済的な高速化と宅内における新サービスの創造が課題と言える。本稿では、次世代光アクセスシステムを目指した技術動向と標準化動向を俯瞰し、これらの課題に対する解決策を論じる。
著者
冨樫 健二 藤澤 隆夫 長尾 みづほ 貝沼 圭吾 荒木 里香
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

小児期の肥満と若年成人期の心血管リスクとの関連を検討するため、肥満で通院した小児を対象とした予後調査を行った。小児期の平均年齢は9.8歳、成人期の平均年齢は22.4歳であり、平均経過年数は12.6年であった。小児期の肥満が高度化するほど成人期の肥満継続率は高かった(軽度肥満35.9%、中等度肥満49.1%、高度肥満77.8%)。小児期の皮下脂肪面積、内臓脂肪面積と成人期のそれとは相関を認めなかったが、小児期の血清脂質、高分子量アディポネクチンは成人期のそれと有意な相関関係を示し、肥満に伴う脂質代謝異常やアディポネクチン低値といった心血管系リスクは成人期においても残存した。
著者
Toshiyuki Hagiya Tsuneo Kato
出版者
一般社団法人 情報処理学会
雑誌
Journal of Information Processing (ISSN:18826652)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.410-416, 2014 (Released:2014-04-15)
参考文献数
25
被引用文献数
1

To provide an accurate and user-adaptable software keyboard for touchscreens, we propose a probabilistic flick keyboard based on hidden Markov models (HMMs). Touch and flick operations for each character are modeled by HMMs. This keyboard reduces input errors by taking the trajectory of the actual touch position into consideration and by user adaptation. We evaluated the performance of an HMM-based flick keyboard and maximum-likelihood linear regression (MLLR) adaptation. Experimental results showed that a user-dependent model reduced the error rate by 28.3%. In a practical setting, the MLLR adaptation to a specific user with only 10 words reduced the error rate by 16.6% and increased the typing speed by 11.9%.
著者
井上 宣子 大草 知子 名尾 朋子 李 鍾国 松本 奉 久松 裕二 佐藤 孝志 矢野 雅文 安井 健二 児玉 逸雄 松崎 益徳
出版者
山口大学医学会
雑誌
山口医学 (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.109-115, 2005-08-31
被引用文献数
2

心筋細胞間のギャップ結合の発現・分布はコネキシン蛋白の半減期が短いことにより様々な病態において直ちに変化しうる.高頻度電気刺激(RES)によるギャップ結合リモデリングへの効果はいまだ明らかにされていない.培養5日目のラット心室筋細胞に120分間3HzのRESを負荷した.RESによりCx43蛋白質および遺伝子発現量は60分後には有意に増加した.免疫染色においても同様の結果であった.心筋細胞中のangiotensin II (AngII)は15分後に約2倍に上昇した.MAPK系のリン酸化型ERKは2峰性に5分と60分で, またリン酸化型JNKも15分と60分で著明に活性化された.リン酸化型p38 MAPKは5分後に1峰性に活性化された.細胞外電位記録法により心筋細胞の興奮伝播特性の変化を解析したところ, RESにより伝導速度は有意に増加した.これらの変化はlosartanにより抑制された.RESによるCx43の発現増加はまたERK, p38の特異的阻害剤にても抑制された.RESは, 早期より心筋細胞内のAng II産生を増加し, MAPK系を活性化することによりCx43発現量を増加させた.その結果, 細胞間の刺激伝播異常を引き起こし, 不整脈基質の一つとなる可能性が示された.