著者
池田圭佑 岡田佳之 榊剛史 鳥海不二夫 篠田孝祐 風間一洋 野田五十樹 諏訪博彦 栗原聡
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告知能システム(ICS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.7, pp.1-7, 2014-01-16

2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災後,Twitter 等ソーシャルメディアの果たした役割はとても大きく,今後起こるであろう各種災害においても重要な役割を担うことが予想される.しかし,誤った情報 (流言・デマ) が広がったことも事実であり,大きな社会問題となった.災害時には,必要な情報をいち早く拡散させるだけでなく,誤った情報の拡散を早期に収束させることが重要である.これまで,我々は情報拡散モデルとして,感染症の拡散モデルとして有名な SIR モデルを拡張させたモデルを提案しているが,この手法では情報を伝搬させるかどうかを確率的状態遷移モデルで表現している.しかし,実際には人は情報に対する興昧度や,情報発信元の信頼,また日常生活パタン等に基づいて情報を伝搬させるかどうかの判断を決定していると考えられる.本研究では,マルチエージェント型拡張 SIR モデルを提案すると共に,それを用いた情報拡散シミュレーションの定量的な評価手法を考案し,評価を行った.
著者
稲葉 通将 神園 彩香 高橋 健一
出版者
The Japanese Society for Artificial Intelligence
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.21-31, 2014
被引用文献数
9

Recently, computerized dialogue systems are studied actively. Non-task-oriented dialogue systems that handle domain-free dialogues like chats are expected be applied in various fields, but many challenges still exist in developing them. This paper addresses the problem of utterance generation for non-task-oriented dialogue systems. We search twitter data by topic words and acquire sentences. The sentences are filtered by rules and scored on the basis of training data. We acquire the sentences which have a high score as utterances. The results of an experiment demonstrate that the proposed method can generate appropriate utterances with a high degree of accuracy.
著者
長谷川 貴之 鍜治 伸裕 吉永 直樹 豊田 正史
出版者
The Japanese Society for Artificial Intelligence
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.90-99, 2014
被引用文献数
1

While there have been many attempts to estimate the emotion of a speaker from her/his utterance, few studies have explored how her/his utterance affects the emotion of the listener. This has motivated us to investigate two novel tasks: predicting the emotion of the listener and generating a response that evokes a specific emotion in the listeners mind. We target Japanese Twitter posts as a source of dialogue data and automatically build training data for learning the predictors and generators. The feasibility of our approaches is assessed by using 1099 utterance-response pairs that are built by five human workers.
著者
由井 正敏
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1-8, 2007-05-01 (Released:2007-07-12)
参考文献数
47
被引用文献数
2

岩手県内の北上高地には約30つがいのイヌワシが生息しているが,近年の繁殖成功率は急激に低下している.この原因として,イヌワシの好適な餌狩り場の減少が関与していることが明らかにされている.イヌワシの繁殖成功率を改善し個体群を安定させるためには,繁殖成功率が0.282以上になることが必要であると推定された.そのために必要な餌狩り場の暫定行動圏内(半径6.4 km)における面積を由井ら(2005)の重回帰式によって計算した.10年生までの幼令人工林のみでは560 ha(440~790 ha),放牧採草地や5年生までの伐採放棄地のみでは1,020 ha(670~2,120 ha),101年生以上の落葉広葉樹のみでは770 ha(560~1,240 ha)が必要であった.幼令人工林を必要量供給するためには,行動圏内の人工林を平均して67 haずつ76年に1回伐採して造林することで充足される.また,イヌワシの餌資源確保及び餌狩り場確保の点で列状間伐が有効と考えられた.人工林の伐採利用や間伐によって森林が明るくなることで,生物多様性が向上する可能性を指摘した.
著者
由井 正敏 関山 房兵 根本 理 小原 徳応 田村 剛 青山 一郎 荒木田 直也
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.67-78, 2005 (Released:2007-09-28)
参考文献数
43
被引用文献数
2 5

北上高地に生息するイヌワシ個体群の繁殖成功率は,国内他地域と同様に近年急激に悪化している.本地域の長期の調査結果のうち,1979~1988年(前期)及び1995~2001年(後期)の2期間のデータを用い,繁殖成功率と巣からの半径6.4km圏内の各植生構成との関係を分析した.巣のオーバーハングの状態,巣の標高,行動圏の重複状況,気象条件,及び巣への直接的な人為が繁殖成功率に及ぼす影響も同時に分析した.全期間にわたり詳しく調査した7つがいの繁殖成功率は前期の67%から後期の27%に低下した.直接的な人為影響によって繁殖失敗した巣の割合は前期6%,後期19%程度と推定された.前期から後期にかけてイヌワシの採餌に適した幼令人工林は77%,低木草地は43%減少した.人為影響による繁殖失敗を除いたデータによる重回帰分析の結果,101年生以上の落葉広葉樹老令林,10年生以下の幼令人工林,5年生以下の広葉樹林や放牧採草地を含む低木草地の各面積が広いと繁殖成功率は高くなった.劣悪な巣の状態及び巣の標高が高い場合には繁殖成功率は低下した.造巣•繁殖期の気温,香雨量は繁殖成功率に影響しなかった.結局,最近の繁殖成功率の顕著な低下は,イヌワシの好適な採餌環境の減少で部分的に説明できると考えられる.繁殖成功率の向上のためには,条件の良い営巣地の確保,人為影響の排除に加えて採餌適地の維持造成あるいは再生が必要である
著者
佐々木 俊一
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF BENTHOLOGY
雑誌
日本ベントス研究会連絡誌 (ISSN:1883888X)
巻号頁・発行日
no.23, pp.27-35, 1982

Egg-spawning and browsing behavour of an archiannelid, Saccocirrus uchidai, were studied at a mediolittoral habitat in Oshoro, Hokkaido, north Japan. During the breeding season, May to July, in 1980 and 1981, it was occasionally observed that a number of worms came out from the interstices among coarse Shelly sands, then they spawned eggs or fed over the sediment. Timing, position and abundance for the occurrence of these behavioral phenomena displayed over the sediment were studied together with their under-sediment movement (aggregation and migration). Besides the above, the motions of egg-spawning worms were closely observed in the laboratory condition.
著者
井上 周八
出版者
立教大学
雑誌
立教経済学研究 (ISSN:00355356)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.1-40, 1986
著者
稲村 晋作 岡島 幹樹
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.66-67, 2013-01-01 (Released:2014-01-01)

本研究は,日本農芸化学会2012年度大会(京都女子大学)の「ジュニア農芸化学会」で発表された.惜しくも入賞は逃がしたものの,高校生の「なぜ?」に端を発したユニークな研究として紹介したい.さて,ミミズは1日に体重の1/2~同じ重さの土や落ち葉などを食べ,粒状の糞を排泄する.この糞には,窒素やカリウム,マグネシウムなどの肥料成分が植物が利用可能な形態で豊富に含まれている.また,ミミズが掘るトンネルによって通気が促進され,土壌微生物の増殖が促進される,など,ミミズは土壌改良に大きな働きをすることが知られている.かのチャールズ・ダーウィンは40年以上もミミズと土壌の研究をして,これらのことを明らかにしたそうだが,鳥取東高等学校では先輩から研究を引き継いで,土壌微生物とミミズの関係に取り組んだ.
著者
宮島 美花
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、、社会調査における質的調査(聞き取り調査)の技法を用いた、中国朝鮮族の跨境生活に関する研究である。国境を含む行政区界の境界を跨いだ生活(跨境生活)には、行政区界ごとに社会保障システムが成り立っていることに起因する不便や不利益が伴う。彼らの跨境生活のありよう、特に彼らが日常的に直面する困難やその解決方法を明らかにすることを通じて、国家や地方自治体のような行政区界内のガバナンスと、そのような行政区界の境界に収まりきらない跨境生活空間におけるガバナンスとのズレを問い、民族ネットワークがその調整のために果たす役割を明らかにする。
著者
陳 立立
出版者
筑波大学比較民俗研究会
雑誌
比較民俗研究 (ISSN:09157468)
巻号頁・発行日
no.22, pp.206-219, 2008-03
著者
別木 政彦 池田 絢也 塚田 真也
出版者
島根大学
雑誌
島根大学教育学部紀要. 教育科学・人文・社会科学・自然科学 (ISSN:18808581)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.95-99, 2013-12-25

KF添加チタン酸バリウム(KxBa1-xTiO3-xFx : KF-BT/x)は鉛を含まない強誘電物質として利用できる可能性をもつ.KF-BT/xセラミックスを作製するときには,添加物であるKFの蒸発を防ぐために低温状態での粉末・セラミックス作製を行うように配慮しなければならない.しかし,セラミックス作製の最終プロセスであるアニール処理が添加元素の蒸発を招き,セラミックスの誘電性に複雑な影響を及ぼしている.その影響は①誘電率の最大値(ε´max)の減少,②相転移温度(TC)の上昇,③誘電率の周波数分散の出現である.なかでも誘電率の周波数分散は単結晶には見られず,セラミックスで新しく現れた現象である.我々はこれらの影響について構成元素の蒸発に着目して考察を加えた.
著者
栢野 彰秀 廣島 亨 森 健一郎
出版者
島根大学
雑誌
島根大学教育学部紀要. 教育科学・人文・社会科学・自然科学 (ISSN:18808581)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.29-40, 2013-12-25

本研究の目的は、イメージマップを分析するためのデータ処理方法に工夫・改善を加えて、教師がこれから行う小学校理科授業の授業づくりにイメージマップの分析に基づいた形成的評価が活用できるようにするための第一次資料を得ることである。上述した目的を達成するために、まず最初に各小単元の学習終了後、子どもが書いたイメージマップと予め教師が書いたイメージマップを比較させた。次いで、それから得られたデータに、本研究において筆者らが新たに提案した簡潔な授業評価方法に基づいた授業評価を行った。13; その結果、本研究において筆者らが新たに提案した簡潔な授業評価方法は、次の2点の特徴を持つことが明らかになった。第一に、単元の学習内容に関する知識・理解に関する子どもの学習状況がモニターできるだけではなく、観察・実験時の技能やグラフの読み取りといった、単元の学習内容に関する技能・表現についての学習状況もモニターできる可能性がある。第二に、単元末テストにおいて測定される知識やスキルだけではなく、テストに出題されなかった単元の学習内容をより広くモニターできる可能性がある。13; これらのことから、本研究において筆者らの提案した文脈で、教師がこれから行う小学校理科授業の授業づくりにイメージマップが活用できる可能性が明らかになった。今後研究を進めて検討を加える価値があり、教師がこれから行う小学校理科授業の授業づくりにイメージマップを活用するための第一次資料が得られた。
著者
田邊 玲子 トラウデン ディーター クラヴィッター アルネ
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

この間「身体」が頻繁に議論されてきたが、非身体的なものの側面、とりわけ身体的なものと非身体的なものが交錯する領域が見逃されてきた。本研究は、ドイツ文学における身体と非身体との関連を研究した。キリスト教神学における身体と魂との関連、古代から現代の西欧哲学における模倣と身体存在についての言説、18世紀のヴィンケルマン、ヴィーラント、ゲーテ、そしてシルエットと影絵芝居の流行の美的内包について検討し、さらに、声、とくに1920年代の現代オペラにおける非主体化について考察した。本研究の成果は、身体的なものの不在といった、現代文化の特徴的な状況の解析に寄与するだろう。