著者
新井 馨
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.1-14, 2019 (Released:2020-04-28)
参考文献数
86

現代美術を美術教育へ取り入れた実践研究,あるいはその有用性や表現形式などの研究は数多くあるものの,目的とするところは多様である。そこで,本稿では現代美術の美術教育への取り入れに関する論文をとりあげ,研究の蓄積を整理し動向と課題を報告する。文献の収集方法と範囲は学術情報データベースCiniiによる検索を行い,対象年代は1958年から2017年とした。検索では「現代美術」「教育」をキーワードとして関連文献を収集した結果,100稿の論文が存在した。これらの論文を,年代別,対象者別,テーマ別に整理し課題を検討した。その結果,1.議論されるテーマに偏りがある,2.多くの実践や理論の対象に幼児・小学校の扱いが少ない,3.現代美術をどう取り入れどういった力が培われるかが明確でない,ことの3点が課題として明らかになった。
著者
グレッグ シモンズ ポール ヤング ジェフ マッキー ジョーン メアーズ 水野 哲男
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1-9, 2011-07-20 (Released:2012-03-23)
参考文献数
35
被引用文献数
3 5

新奇なコアラレトロウィルス(KoRV)と呼ばれるガンマレトロウィルスが2000年にコアラより分離された。残念なことに引き続き行われた調査から,KoRVはオーストラリアのコアラの個体群に広く拡がっているようである。現在KoRVは,活発に内因性化する過程にある外因性レトロウィルスの唯一の知られている例であり,非常にユニークなウイルスである。現在KoRVが病気の原因となる直接的で明確な証拠はわずかであるが,KoRV感染がコアラの臨床上,通常よく診断される種々の新生物や,様々な免疫不全症の病因として重要な役割を果たしている可能性があるか,もしくはその確率が高い。KoRVは,近縁であるオーストラリア固有のげっ歯類であるバートンメロミス(Melomys burtoni)のレトロウィルスの異種間交差感染を介して出現した可能性がある。これら2種のウィルスは,第三番目のレトロウィルスであるテナガザル白血病ウィルス(GALV)に対しても近縁である。GALVは白血病を罹患していたタイの捕獲下のテナガザルから1960年代後半に最初に分離された。しかし,現在に至るまでGALVの感染源は不明である。
著者
皆村 武一
出版者
日本島嶼学会
雑誌
島嶼研究 (ISSN:18847013)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.3, pp.17-45, 2002 (Released:2010-04-30)
参考文献数
24
被引用文献数
1
著者
野坂 直久
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.163-170, 2020 (Released:2020-04-08)
参考文献数
29

中鎖脂肪酸摂取が運動中のエネルギー基質代謝や体組成へ与える影響について解説する。脂肪は体内に大量に保有するエネルギー基質であり,パフォーマンス向上や競技特性に望ましい体組成の獲得のため,脂肪利用促進はトレーニングや食事の面から検討されている。中鎖脂肪酸は容易にエネルギーを産生し脂肪利用を促進することを期待され注目されてきた。運動前や運動中の多量摂取によるエネルギー補給が検討されてきたが,パフォーマンスへの効果は一貫しておらず,消化管の不快感も認め,その後,研究は中鎖脂肪酸の中間代謝物であるケトン体を主成分とした補給食品へ進展した。一方,中鎖脂肪酸の少量継続摂取は最大下運動中の脂肪利用を高め,オフシーズン時の筋厚の減少を抑え,運動との併用では体脂肪蓄積を相加的に抑制するなど,持久的運動能力の向上や階級制競技に望ましい体組成の維持増進に役立つ可能性が近年示されつつあり,他の競技や運動様式への応用が期待されている。
著者
石川 雅紀
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.106-114, 2019-03-30 (Released:2020-04-28)
参考文献数
15

海洋プラスチックごみ問題では,動的側面,国際的側面,問題・対策の多様性が重要であり,対策を考える上では,原因となる製品を A) 通常の使用状況でマイクロプラスチックとして排出する製品 ( 長寿命製品・短寿命製品 ),B) 散乱・不法投棄された後,その後マイクロプラスチック化する製品,C) 海洋に直接流出し,その後マイクロプラスチック化する製品に分類することを提案した。 対策の方向性としては,周辺途上国への日本の廃棄物管理制度確立の経験,技術,ノウハウ等の提供,支援,および,浮遊ごみの回収,および A) 群の製品 ( 歯磨き粉,洗顔料,タイヤ,人工芝,ドアマット等 ) に対する対策である。これらの製品の場合は,廃棄物問題として捉えられてこなかった問題であり,ただちに調査・研究するとともに,フローを抑制する対策が必要である。C) 群の漁具については,プラスチック使用量,排出量,産業廃棄物としての処理量等,基本的な情報がまったくなく,現状の把握が喫緊の課題であり,早急に調査を進めることが必要である。
著者
重松 孝昌 河野 哲也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.136-140, 2006-10-10 (Released:2010-06-04)
参考文献数
5
被引用文献数
2 1

土砂粒子群が水中を運動する際に誘起される水面波の諸特性およびその生成過程を解明するために, 水理模型実験を行った. 水深, 斜面角度, 粒子量, 粒子の初期位置をパラメトリックに変えて実験を行い, 発生波の波高および周期の推定式を誘導した. また, 流跡線連結法なる新たな画像計測アルゴリズムを開発して高濃度固液混相流場における流体運動の計測手法を提案し, その有用性を示すとともに, 水面波の生成過程における流体と粒子群の運動の詳細について検討した.
著者
黒田 吉孝
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.15-24, 2003-05-30 (Released:2017-07-28)

本研究は初期言語発達にある自閉症児の大小概念の獲得の特徴を検討した。本研究では具体的「対」概念と抽象的「対」概念という考えを導入してこの問題を検討した。前者では、「お父さんと赤ちゃん」の人形(実験3)と、「お父さんと赤ちゃん」の言葉(実験2)が呈示された。後者では、「大きいと小さい」の言葉(実験1)が呈示された。それぞれの実験で、子どもは大きい対象を選択する必要があった。自閉症児は幼児群(平均生活年齢4:5、平均発達年齢3:1、平均発達指数69)と学齢児群(平均生活年齢14:5、平均発達年齢3:9、平均発達指数27)からなっていた。対照群は、発達年齢が2歳代と3歳代の健常児と知的障害児であった。自閉症幼児群は健常幼児群よりも成績が劣っていたが、反応傾向は健常幼児群や知的障害児群と似ていた。一方、自閉症学齢児群は、3課題とも他の群よりも成績が悪かっただけでなく、特異的な傾向をしめした。また、各実験において、彼らの中に大きい対象を選択せずに対象の名前を言うケースが比較的多くみられた。自閉症学齢児群における大小概念獲得の困難さの原因にこのような反応が関係していることを指摘した。本研究ではさらに初期言語発達にある自閉症児の具体的な「対」概念と抽象的な「対」概念の関係についても考察を加えた。
著者
小林 一雄
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.479-487, 2017-10-15 (Released:2017-10-15)
参考文献数
58
被引用文献数
1

放射線照射によるDNA損傷の中でもDNAに溶媒和している水分子のイオン化により生成するH2O·+とDNAの反応過程が重要である。その中でも,糖–リン酸部位のラジカルの生成がDNA主鎖の切断を引き起こす。放射線化学反応の特徴である低エネルギー電子とDNAの反応や,修復することができない複数個の損傷が局在化して生成するclustered damageについて紹介する。
著者
杉木 明子
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
アフリカレポート (ISSN:09115552)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.1-12, 2016-02-15 (Released:2020-03-12)
参考文献数
45

2000年代半ば以降、アデン湾・ソマリア沖で急増した海賊問題は、海賊の取締や処罰を国際社会に問い直す問題である。海賊の不処罰が顕在化する中で新たな対応に迫られた国際社会は、様々な選択肢の中で拿捕国が拘束した海賊被疑者をソマリア近隣諸国へ引渡し、第三国が普遍的管轄権のもとで訴追・処罰する「地域訴追モデル」を次善策とみなした。ケニアはソマリア近隣諸国の中で最も多くのソマリ海賊被疑者を受入れ、処罰してきた。本稿ではケニアの先駆的な海賊裁判の事例から「地域訴追モデル」の問題を明らかにし、海賊および海上犯罪を処罰するためにどのような取り組みが必要であるか検討する。
著者
Biao Geng Ryuichi Shirooka
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
SOLA (ISSN:13496476)
巻号頁・発行日
pp.2021-013, (Released:2021-03-18)

The internal structure and evolution of a monsoon trough (MT) and associated mesoscale convective systems (MCSs) in the western North Pacific were investigated, based mainly on radiosonde and a Doppler radar observations in Palau. The MT was observed on June 15-16, 2013, with the pre-existing disturbance of Typhoon Leepi (2013) being embedded in it. The large-scale circulation around the MT featured a pattern representing an active MT. Deep convection developed ahead and at the leading edge of the downward-sloping monsoonal flow, where intense low-level convergence was observed. Stratiform precipitation broadened rearward over the MT axis. A deep and wide layer of warm and moist air over the MT axis was undercut by a layer of cold air sloping downward from the trailing stratiform region to the leading convective region. An intense low-pressure zone formed in the interface between the warm layer above and cold layer below, with the westerly monsoonal and easterly trade flows being enhanced on its west and east sides, respectively, from the low to middle troposphere. The results suggest that a strengthening of the large-scale cyclonic circulation in response to the internal processes of the MCSs triggered by the MT is important for typhoon genesis.
著者
Akiyoshi Wada Johnny C. L. Chan
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
SOLA (ISSN:13496476)
巻号頁・発行日
vol.17A, no.Special_Edition, pp.29-32, 2021 (Released:2021-03-18)
参考文献数
18
被引用文献数
9

In the 2019 tropical cyclone season in the western North Pacific, Typhoons FAXAI and HAGIBIS made landfall in Japan while keeping the intensity, resulting in serious disasters. This study addresses the influences of an increasing trend and variations in the upper ocean heat content above 26°C (tropical cyclone heat potential: TCHP) from January 1982 to June 2020 on FAXAI and HAGIBIS. TCHP underneath FAXAI and HAGIBIS in 2019 was higher than the climatological mean except for a part of mature phase of HAGIBIS due to HAGIBIS-induced sea surface cooling. TCHP significantly increased with the interannual oceanic variations (IOVs) in the subtropical (15°N-20°N, 140°E-150°E) and midlatitude (30°N-35°N, 130°E-140°E) areas where FAXAI and HAGIBIS intensified or kept the intensity. From an empirical orthogonal function (EOF) analysis of TCHP, we demonstrate that the leading three EOF modes of TCHP explain approximately 76.8% of total variance, but the increase in TCHP along the tracks of FAXAI and HAGIBIS particularly in the early intensification of HAGIBIS cannot be explained only by the IOVs included in the leading three EOF modes but rather by the warming trend irrespective of the IOVs.
著者
Naoshi Hirata Shiro Ohmi Shin'ichi Sakai Kei Katsumata Satoshi Matsumoto Tetsuo Takanami Akira Yamamoto Takashi Iidaka Taku Urabe Mayumi Sekine Tooru Ooida Fumihito Yamazaki Hiroshi Katao Yasuhiro Umeda Masao Nakamura Norihiko Seto Takeshi Matsushima Hiroshi Shimizu Japanese University Group of the Urgent Joint
出版者
The Seismological Society of Japan, The Volcanological Society of Japan, The Geodetic Society of Japan
雑誌
Journal of Physics of the Earth (ISSN:00223743)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.317-328, 1996 (Released:2009-04-30)
参考文献数
21
被引用文献数
41 43

A disastrous earthquake with a magnitude of 7.2 hit the southern part of Hyogo Prefecture on January 17, 1995. The mainshock was located on an active fault of the Arima-Takatsuki-Rokko fault system. Its focal mechanism was consistent with a right-lateral strike-slip fault trending N40°E. Three days after the occurrence of the mainshock, we started to install a highly dense seismic array in and around the fault area of the quake. Two permanent regional seismic networks of more than 30 stations covered the entire area of 200 km × 200 km. The temporarily installed array of 27 stations spanned the fault area of 15 km × 50 km. All data were telemetered to a temporary observation center at Uji. We located about 3, 100 aftershocks in real time for 1 month using an Internet connection between seismic networks. The aftershock area extended 70 km trending northeast to southwest. Hypocenters determined by the network were delivered automatically through the Internet. We found that the aftershock distribution was heterogeneous in space and time: seven clusters of hypocenters were identified and temporary variation in the rate of occurrence of aftershocks had a periodic component with periods of a half of day, 1 day, and 3 days, that are superimposed on decaying of the rate following Omori's law.
著者
猿谷 弘江
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.21-38, 2016-02-01 (Released:2020-06-20)
参考文献数
32

従来、社会運動研究は、資源動員論や政治的機会構造論に代表されるように、運動が﹁成功﹂する要因を分析することを主眼としてきた。これらの理論が前提とするのは、運動が資源や機会など何かしらを共有することによって生成するというものである。本稿は、運動の内部におけるアクター間の闘争や対立に着目し、これらが運動のプロセス、並びに運動全般の盛衰に影響を与えることを論じる。本稿は特にピエール・ブルデューによるフィールド︵界︶の理論を援用し、事例として一九六〇年の日米安保条約改定に際して生じた反対運動︵安保闘争︶を分析する。安保闘争は、戦後最大の社会運動となったにもかかわらず、社会学の理論に基づいた分析は、これまでごく限られたものとなっている。 本稿の研究では、文献調査に加え、当時運動に参加した人物へのインタビューを行った。調査の結果、安保闘争は一つの運動であったというよりもむしろ、それ以前に個別に形成された各種の運動のフィールドが、同一の物理的空間で一時的に交差した事象といえるものであることが明らかになった。本稿では特に、学生と労働者による運動を取りあげ、これらが安保闘争以前に既に個別の、かつ相互に排他的な運動のフィールドを形成していたこと、従って特定の運動のフィールドの参与者が、他の運動のフィールドに参加することは困難であったことを明らかにした。加えて、各運動のフィールドの参与者は、フィールド外の闘争よりも、当該のフィールド内での闘争に関心を向けており、安保闘争は、そうしたフィールド内の闘争のための運動となった側面があったことを明らかにした。 本稿は、フィールド理論を用いることにより、社会運動は集合行為でありながらも内部に不可避にコンフリクトを孕む点、同時にそのコンフリクトが、時に運動全般の発展をもたらす可能性もある点を示唆している。
著者
吉川 典子 高 智美 扇間 昌規 西島 基弘 伊藤 誉志男
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.102-105, 1996-03-29 (Released:2017-12-01)
参考文献数
1

The use of sodium chlorite, permitted so far only as a breaching agent for cherry, coltsfoot, grape and peach, was recently expanded to a fungicide of the peels of citrus fruits for confectionery, vegetable, and egg shells. Remainder of chlorite in these foods after dipping into the agent was determined by ion chromatography (IC). The remaining chlorite in the vegetables and that on the egg shells were 40-130 ppm and 10 ppm, respectively. However, these remaining chlorites were completely removed by washing with water. Furthermore, the permeability of the agent through the egg shell was studied. It was found that no agent did permeate into the shell within 12 hours after the use at even ten fold excess of permitted dose.