著者
Dubatolov V.V. KORSHUNOV Yu. P. GORBUNOV P. Yu. KOSTERIN O. E. LVOVSKY A. L. 猪又 敏男
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.177-193, 1998-06-30

東アジアには翅斑の特徴同様♂交尾器のよく分化したベニヒカゲ属のふたつの近縁種が分布していることが明らかになった.それらはクモマベニヒカゲErebia ligea(Linnaeus,1758)およびもう一つは同所的な種で,後者は古くErebia ajanensis Menetries,1857の名称をもち,本報では次の3亜種に区分した.1.原名亜種E.ajanensis ajanensis Menetries,1857ロシア,ハバロフスク州のオホーツク海沿岸地方に知られる.かつてはE.ligeaの亜種に位置付けられていた.今回,ロシア科学アカデミー動物学研究所(セント・ペテルスブルク)に保管されていた標本を後模式に指定して,標記の名称と均質群の地理的範囲を確定させた.2.亜種E.ajanensis kosterini P.Gorbunov,Korshunov et Dubatolov,1995ロシア,マガダン州南部に分布する.本集団は先にP.Gorbunov他(1995)で"Erebia kosterini"として新種として発表したものである.3.亜種E.ajanensis arsenjevi Kurentzov,1950ロシア極東地区南部,朝鮮,中国北部および東北部?に知られる.この集団もE.ligeaの亜種とされ,Kurentzov(1970)では独立種として扱われながらも,名称のつづりが誤っていた.本報でこの名称を担う後模式指定(ロシア科学アカデミー極東支部土壌生物学研究所)をして,地域集団を確定させた.上記3つの集団に対する名称群は,いずれも今回初めての昇降格,[種との]結合がなされた.また,それらの集団は広義の日本列島(サハリンを含む)の集団とは関連がない.一方,従来のE.ligeaについても検討し,本報においてE.ligea koreana Matsumura,1928およびE.eumonia Menetries,1859のそれぞれの後模式を指定した.後模式標本の指定後,名称eumoniaはE.ligeaの最も古い東方亜種名として活用できることとなり,北部を除くアルタイ山脈からマガダン州および朝鮮に分布する真のクモマベニヒカゲに適用した.この広大な地域から記載されたE.ligeaと想定される群は,E.ligea sachalinensis Matsumura,1919,E.ligea rishirizana Matsumura,1928およびE.ligea takanonis Matsumura,1909を除き,すべてE.ligea eumoniaの異名と考えられる.
著者
藤本 真記子 坂江 千寿子 佐藤 真由美 上泉 和子 角濱 春美 福井 幸子 木村 恵美子 小山 敦代 杉若 裕子 秋庭 由佳
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森県立保健大学雑誌 (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.321-329, 2005-12-28

看護における新しい考え方、方法の普及速度に差が見られることから、普及に関する影響要因を検討する目的で、全国47都道府県から規模別に抽出し、調査協力が得られた141施設の看護部責任者及び各施設10名のスタッフに質問紙調査を行った。看護部責任者、スタッフそれぞれに質問紙を作成し、個人の属性、施設の状況に加え、革新性(知的興味、上司の姿勢など普及に影響すると考えられるもの)に関する質問に4段階の尺度で回答を得、返送された看護部責任者の有効回答124部、ナースの有効回答886部を対象に、属性と革新性との関係を分析した。その結果、看護部責任者で、「新しいことを取り入れ広める時、チームや委員会を組織する」「リーダークラスの看護師に根拠を説明する」「学会や看護協会などの情報を活用する」などで平均得点が高く、「降格人事をしている」が低かった。スタッフは、「研修の参加者は、内容を伝達し広める使命がある」「病棟では協力体制がある」「病棟責任者は積極的に研修を勧める」などで、低い項目は、「新しいことを取り入れるのは提案者が誰かによる」「新しいものを受け入れにくい理由として『時間がとれない』『面倒だ』と感じることがある」「病棟責任者は『トラブルは引き受けるから』という姿勢である」などであった。属性との関係では、「研修伝達の使命感」は、学会・研修参加回数、講読雑誌数が多い群が高く、20代が低かった。「面倒、時間がない」は、高い年代の群がやや高かったが、全体として低い点数であり、研修伝達と同様、看護者としての使命感が強く自覚されているのではないかと考えられた。学会・研修会、雑誌など、情報へのアクセスと革新性の関連が確認でき、これを普及にうまく活用していくことの重要性が示唆された。
著者
諫早 勇一
出版者
同志社大学
雑誌
言語文化 (ISSN:13441418)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.101-119, 2007-08

亡命プラハのロシア文学は、従来スローニムや雑誌『ロシアの意志』が代表と考えられ、ソヴィエト文学志向や若い世代への期待がその特徴とされてきた。ところが、近年これまで公刊されていなかった文書が発表されるとともに、アルフレッド・ベームと彼が率いる文学サークル〈庵〉の役割が再評価されるようになった。本稿はそうした近年の研究を踏まえて、ベームと〈庵〉の活動をロシア亡命文学のコンテクストのなかで捉えなおそうとしたものである。19世紀ロシア文学、とくにドストエフスキイの専門家として知られるベームは、プラハ移住後若い詩人たちの指導者となり、彼らに詩的技巧や言語の大切さを説き、文学の能動的な意義を訴えつづけた。そして、1930年代になっても依然としてソヴィエト文学の優位を主張していたスローニムに対しては、亡命文学が着実な成果を上げていることを説き、心の内面を素朴に表出する「日記的」な詩をよしとするパリのアダモーヴィチに対しては、形式の重要性を訴える論争を積極的に挑んだ。こうした当時の文学状況を振り返るとき、亡命プラハのロシア文学を支えていたのはベームであり、彼の功績は今後さらに検証されなければならない。
著者
福井 博泰 新庄 エルサ-マルガリータ 梁川 良
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.177-186, 1980-04-25

レプトスピラの抗原変異株を家畜から分離しようとして, Leptospira interrogans血清型canicolaを子犬に, pomonaをSPF豚に接種し, 血液および腎臓をhomologousな免疫血清を加えた寒天平板に培養した. 2〜4週後に寒天上に発育したコロニーを, 大, 中および小型コロニーに区分し, それぞれいくつかずつを無作為に単離し, 沈降素吸収試験によるスクリーニングでその抗原性を親株と比較した. Canicolaの抗原変異株は感染犬10頭中7頭の血液および7頭中3頭の腎臓から得られた. 変異株は血液および腎臓由来の大型コロニーに多数, また血液由来の中および小型コロニーに少数認められた. 変異株は接種菌液からも分離されたが, 感染犬血液からはそれよりも有意に高い割合で分離された。他方pomonaの抗原変異株は感染豚5頭中2頭の血液のみにおいて小型コロニーに認められた. 大型コロニーは豚からは出現しなかった. 変異株は接種菌液からも分離されたが感染豚血液からはそれより有意に高い割合で分離された. 変異株の抗原性は交差凝集素吸収試験などによっても親株とは明らかに異なり, 同じ株由来の変異株はその抗原性が互いに類似した. 以上の結果は, 用いられた株には少数の抗原変異株が含まれており, その割合は実験感染後3〜7日目の犬や豚の血液において有意に上昇したことを示している.
著者
橋本 喜夫
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.819-826, 1997-03-20
被引用文献数
2

尋常性乾癬は, 慢性増殖性炎症性皮膚疾患で, きわめて難治であり, 漢方による治療の試みも多いが, この疾患の証の分布, [オ]血を示す頻度などは不明である。田中の虚実判定用実証スコアと, 寺沢の[オ]血診断基準を参考にした前田の[オ]血チェックリストを用いて, 乾癬患者72例を診察した。虚証(0-8点)が31名(43%), 中間証(9-12点)が36名(50%), 実証(13-18点)が5名(7%)と, 実証の頻度が高いという結果は得られず, むしろ健常人の分布に近いと考えられた。[オ]血スコアでは高度の[オ]血(40点以上)が30名(41.7%), 中程度の[オ]血(21-39点)が30名(41.7%)と, スコア上では高率に[オ]血の病態を示した。スペアマンの順位相関では, [オ]血スコアと治療スコア(過去に多種類の乾癬治療を受けた度合)が有意な正の相関を示した。
著者
山岡 泰幸 大江 ひろ子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告情報システムと社会環境(IS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.32, pp.9-15, 2009-03-11

企業は世界的な競争環境のなかで、生き残りをかけた熾烈な戦いを続けている。次世代を担う優秀な新人が獲得できるかどうかは、組織の存亡に関わると行っても過言ではない。次世代に企業から期待されるコミュニケーション能力とは何かに着目すると、組織牽引の要素には単独リーダーシップとチームの総合力を高める触媒としての役割がある。本研究では後者が重要であると仮定し、それを実証するために、ある課題を学生にグループワークさせた。その課題達成までの行動やリーダーシップの発揮のしかたで、作業効率に差がでることを実証的に確かめた。Companies are trying to survive in a situation of harsh world wide competition every day. Whether a company can obtain capable freshmen is one of the highest concerns to the business continuation. There are two kinds of organization towage, one is solo leadership, the other is catalytic capability to move foreword a team. We observed that catalytic communication ability was a key element that companies require, through experimental research conducted with university students.
著者
堀 龍介 安里 亮 田中 信子 嘉田 真平 平塚 康之 金子 賢一 児嶋 久剛 赤水 尚史 伊藤 壽一
出版者
The Society of Practical Otolaryngology
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.95, no.8, pp.825-829, 2002-08-01
被引用文献数
8 9

Congenital piriform sinus fistula, which is usually unilateral, is recognized as a cause of acute suppurative thyroiditis. We have encountered a rare case of bilateral piriform sinus fistulae. The patient, a 53-year-old female, was referred to our hospital because of right neck swelling, which improved after conservative treat. Three months later, an abscess of the left thyroid lobe was presented and was improved after incision and drainage. The diagnosis of bilateral piriform sinus fistulae was made by hypopharyngeal enhancement radiography. Total fistulectomies were performed. There was no recurrence observed six months after surgery.