著者
太田 静男
出版者
三重県立松阪工業高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は、夜間定時制高校に在籍している生徒のうち、非行歴や犯罪歴のある者へのさまざまな問題に接近しようとした研究である。高等学校では、不登校やいじめ経験をはじめとする不適応や何らかの病理や障害を抱えた生徒について、臨床心理学の専門的知見を用いたスクールカウンセラー等の支援によって、有効な手立てがなされつつある。一方、非行歴や犯罪歴のある生徒については、一般の高等学校では排除の対象であったりすることが多いのも事実である。カウンセリング領域においても、教育モデルというよりは司法矯正モデルであるべきという見方があるためか、必要とされる支援が不十分であるという現状でもあり、夜間定時制高校で学ぼうとする非行歴や犯罪歴のある生徒の情緒や行動の理解を促進するための研究を行うことには意義があると考えた。筆者は、在学中に医療少年院に措置された生徒との心理面接過程を通した研究を行なった。生徒は「妹に暴力をふるい逮捕されたが、逮捕された時期が近づくと胸が苦しくなってきて、気分が沈んだり、フラッシュバックが起きる」という主訴で来談した。生徒が卒業するまでの約6ヶ月間の50回の面接について実践的研究を進めた。面接は逐語録をつくり、精神分析的心理療法士とのスーパービジョンという形で議論を進め、この生徒の行動や情緒に関する理解を深めるとともに、そこでは生徒と筆者との間に生じた転移や逆転移をもとにした理解を進めた。精神分析的な理解や臨床心理学的な知見を用いて、指導にあたる教員が非行歴や犯罪歴のある生徒の情緒や行動を理解しようとしたことは、おそらく生徒にとっては受容された経験でもあったであろう。また、心理療法を通して、非行歴や犯罪歴のあるこの生徒が、自らも被虐待経験者であることもわかった。さらに、矯正施設としての医療少年院生活での経験の意義についても考えることができた。
著者
池上 素子
出版者
北海道大学留学生センター = Hokkaido University International Student Center
雑誌
北海道大学留学生センター紀要
巻号頁・発行日
vol.3, pp.15-29, 1999-12

「けれど」も「のに」も逆接確定条件を表す接続助詞とされている。しかし、両者は完全に交替可能ではなく、固有の性格を持っている。本稿では、両者に共通の機能を「話し手の発話の前件から導かれる聞き手の『(「PならばQ」から導かれる)PだからQ』という推論を制限すること」とし、相違点は、その推論「PだからQ」の前提となるP、Qの捉え方から導かれるものという考えに沿って両者の比較検討を行う。すなわち、「のに」文の場合は「PならばQ」が必要十分条件であるため、そこから導かれる推論は「当然~であるはずなのに~」という当てはずれの感情を伴うが、「けれど」文の場合「PならばQ」は可能性のある一つの条件に過ぎないためそのような感情は伴わない。また、他にも可能性があるがその中の一つを選ぶ結果、「けれど」文には聞き手の思惑を計るという聞き手中心の傾向が現れるが、「PならばQ」を必要十分条件と見なす「のに」文の場合聞き手の思惑を計る余地はなく、話し手中心の傾向が出る。さらに、「けれど」文に前置きなどの周辺的な用法があり、「のに」文に周辺的用法がないのは、そのような各々の性格が背景にあるためと考える。Both KEREDO and NONI are disjunctive subordinate conjunctions, but they show several differences. The purpose of this paper is to claim that there is a function common to these particles, namely, to restrict the hearer's inferences, and to examine certain differences between the two from the viewpoint of inference preconditions. NONI regards a precondition as a necessary and sufficient condition, while KEREDO regards a precondition simply as one condition. The following differences are examined from this perspective. First, NONI has a nuance of disappointment, surprise, dissatisfaction and so on, but KEREDO does not. Second, while NONI has a tendency to lay emphasis on the speaker's expectation, KEREDO has a tendency to lay emphasis on the hearer's expectation. Third, NONI has only one usage as a disjunctive, but KEREDO has several, including preface, hesitation, supplementation and so on.
著者
池上 素子
出版者
北海道大学留学生センター = Hokkaido University International Student Center
雑誌
北海道大学留学生センター紀要
巻号頁・発行日
vol.1, pp.18-38, 1997-10

逆接確定条件を表す接続助詞「のに」「ながら」「ものの」「けれども」を取り上げ、それらの使い分けの条件を考えつつ各々の意味と用法を考える。最後に焦点化を基準として四つの助詞の相互関係をまとめる。「ながら」には大きく分けて2つの用法がある。一つは「のに」の用法に近く、今ひとつは「ものの」の用法に近い。便宜上、前者を「ながらA」、後者を「ながらB」と呼ぶ。「けれども」は必ずしも評価を伴わないという点は異なるが、それ以外の点では「ものの」「ながらB」に近い。又、今尾(1994)の方法を援用して、強調、質問、修正という視点から、各々の焦点がどこにあるかを検証する。その結果、「のに」「ながらA」は前件に焦点を置き、「ながらB」「ものの」「けれども」は後件に焦点を置いていることを示し、上記の分類(即ち「ながらA」と「のに」、「ながらB」と「ものの」「けれども」が各々近いということ)の妥当性を確認する。I describe the meanings and usages of "NONI", "NAGARA", "MONONO", "KEREDOMO" in this paper considering how to use properly them. After that, I define their mutual relationships by the view of the focus. "NAGARA" has two usages. One of them resembles that of "NONI", I call it "NAGARA (A)" in this paper. The other resembles the usage of "MONONO", I call it "NAGARA (B) ". "KEREDOMO" also resembles "NAGARA (B)", "MONONO", except that "KEREDOMO" doesn't imply estimations necessarily. Finally, by using of Imao's (1994) means, I verify the position of their focus on the point of view "emphasis", "question", "correction". By which, I prove that "NONI", "NAGARA (A)" focus on the antecedent while "NAGARA (B)", "MONONO", "KEREDOMO" do on the consequent, and confirm the appropriateness my classification, that is, "NAGARA (A)" resembles "NONI", and "NAGARA (B)" resembles "MONONO" and "KEREDOMO".
著者
喜多村 晶子 竹島 由里子 市川 哲彦 藤代 一成 佐藤 浩史
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.48, pp.261-262, 1994-03-07

本研究は、純粋な関数型算譜言語(pure FP)とデータベース(DB)の操作体系との統合を目的としている。関数型データベース算譜言語(DBPL)の研究・開発が行われる一方で、pure FPは種々の参照透過な入出力機構を備えてきた。従って、Nikhilに指摘されたような、順次実行制御機構の欠落に起因する更新操作記述の困難さは解消可能である。関数型のDBPLではDBは記号束縛の環境で与えられ、更新は記号束縛の変更/生成、または記億域に束 縛された変数への代入により行われる。一方、pure FPでは実行時にトップレベルの束縛環境変更はできないため、なんらかの形で変数操作に対応する操作体系を持ち込む必要がある。本研究では、関数型算譜言語Haskell上に、モナド(Monad)による順次実行制御と、多重定義関数によるDB操作体系の導入を行った。多重定義はクラス(class)機構によって制御されているが、言語仕様の若干の変更が必要であったため、Glasgow Haskell Compilerに手を加える形で、これを実現した。簡単な操作例を図に示す。これは"university" DB中の学生データを更新する例であり、findStudentは名前で学生データを検索するためのユーザ定義関数である。以下、想定したデータモデルの簡単な説明に続いて、モナドの利用とDB操作体系の実現について順に説明をし、最後にまとめを行う。
著者
村中 孝史 西村 健一郎 水島 郁子 荒山 裕行 皆川 宏之 高畠 淳子 岩永 昌晃 木南 直之
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

労働法や社会保障法の分野においては、労働者又は国民の生活利益に着目した法規制が数多く見られ、そこでは労働者等が「家族」の一員であることから生じる様々な利益が考慮される。そのような考慮は社会保障法において顕著であるが、労働法においても近年は拡大傾向にある。しかしながら、家族の多様化は、そのような考慮に対し様々な問題を投げかけており、それに対して法が対応すべき分野が増加している。
著者
下村 一徳
出版者
市立池田病院
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

近年医療用注射剤の用法において抗悪性腫瘍剤のみならず、抗悪性腫瘍剤以外の注射剤においても週1回投与や3~4週間隔投与など日数単位での注射投与間隔が必要な注射剤が発売されている。また、血液検査値(赤血球数、白血球数、血小板数)によって抗悪性腫瘍剤は投与中止、延期、投与量の減量など投与をコントロールされているが、抗悪性腫瘍剤以外の注射剤においても血液検査値によって投与コントロールされなければならない。本研究の目的は抗悪性腫瘍剤以外の注射剤の投与間隔や血液検査値による投与基準を把握し、外来患者に対して注射剤投与時に投与間隔や血液検査値などの投与基準を満たしているかを新バーコード(GS1-Databar)を用いて監査する注射処方量監査システム構築である。まず、当院採用注射剤505品目における医薬品添付文書を調査したところ、用法に月単位(4週毎以上)での投与間隔が記載されていた薬品は20品目あり、隔日~1ヶ月未満の投与間隔が記載されていた薬品は112品目であった。また、抗悪性腫瘍剤(抗悪性腫瘍剤との併用療法に用いる注射剤を含む)を除くと投与間隔が記載されている注射剤は53品目であった。これらの注射剤のうち当院外来患者に使用頻度の高い週1回投与のペグイントロン注について注射剤の新バーコードと患者IDバーコードをバーコードリーダーで読み取ることにより投与間隔、血液検査値による投与基準を満たしているかを監査できるシステムを構築し、調査を行った。2010年3月1日~3月31日の1ヶ月間の調査では投与患者数34名、延べ136回の注射回数において、投与間隔7日未満の件数は19件あり、血液検査値が投与減量基準を下回っていた件数は延べ25件であった。新バーコードを利用するシステムを構築することにより、簡便に注射剤の適正使用を監査・管理し、医療過誤を防止することが可能であると考える。
著者
沈 煕燦 (2011) 沈 熙燦 (2009-2010)
出版者
立命館大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究は、植民地朝鮮に設立された「朝鮮史編修会」という歴史編纂機関を取りあげて、近代史学の特質やその性格を明らかにすることを目的とする。とりわけ、「植民史学の総本山」として評されるのみであって、もっぱら否定と批判の対象としてしか取り扱われなかった「朝鮮史編修会」とその作業を、植民地朝鮮における「実証主義史学」、つまり「近代歴史学」の成立と展開という側面から分析することに力を注いできた。それは今日の日韓における歴史学全般の問題までをも視野におさめる格好の素材でもあると思われるからだ。そのような問題にとり組むため、活溌な史料調査を行った。なかんずく、韓国での現地調査をつうじていまや日韓友好の表象となっている「金忠善/沙也可」が、歴史学においてどのように語られてきたのかを、「朝鮮史編修会」の修史官であった中村栄孝の著作を中心として穿鑿した。また、朝鮮の三大天才とも呼ばれた崔南善の著作を中心として、被植民者が歴史学に託した抵抗の試みとその屈折を綿密に調べた。昨年度(2011年度)は、採用期間の最終年でもあったため、以上の研究成果を含む3年間の蓄積を文章化することに傾注した。とりわけ、いくつかの学会や研究会などで報告を行い、それらの成果を論文としてまとめた。また、昨年7月の『現代思想』の震災に関する臨時特集号に寄稿をも行った。なお、博士論文を年度末に提出し、審査を待っている状況である。
著者
池田 敦治 若狹 邦男
出版者
広島大学歯学会
雑誌
広島大学歯学雑誌 (ISSN:00467472)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.141-146, 2002-12-01
被引用文献数
5

本論文の要旨の一部は平成十三年三月の第37回日本歯科理工学会学術講演会において発表した。
著者
伊東 祥博
出版者
アルス
雑誌
カメラ
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.69-70, 1950-08
著者
宮本 五郎
出版者
写真工業出版社
雑誌
写真工業 (ISSN:03710106)
巻号頁・発行日
vol.4, no.5, pp.363-335, 1954-05
著者
江田 研一
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
油化学 (ISSN:18842003)
巻号頁・発行日
vol.18, no.9, pp.582-587, 1969

銀塩感光材料は, ハロゲン化銀を感光性物質とし, 高分子電解質であるゼラチン中にこれを分散した乳剤を支持体, たとえば, バリタ紙, 三酢酸セルロース, ポリエステルベース, またはガラス板に均一塗布し, 乾燥したもので, 撮影後, 現像液で増幅し黒化銀画とする。未露光銀塩は定着液で除去し, 永久保存しうる画像として, ユーザーに提供するものである。その製造工程は, 第一熟成, 第二熟成, 塗布, 乾燥, 裁断, 包装の各工程である。また, 露光したのち, 現像, 定着, 水洗, 乾燥されるが, 界面活性剤はほとんどすべての工程で使用されているといえる。以下工程を追って, どのように応用されているかについて述べてみたい。