著者
門脇 健
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.255-281, 2010-09-30

カントの『視霊者の夢』(Traume eines Geistersehers)、シラーの『招霊妖術師』(Der Geisterseher)においては、ドイツ語のガイスト(Geist)は「霊」と訳されている。それは、啓蒙的な合理的世界の外に存在し、しかしその外からこの機械的な合理的世界に生命というエネルギーを注入するものとイメージされている。「啓蒙」によって昼が明るくなればなるほど、ガイストは彼岸の闇の中で妖しく蠢くのである。しかし、ヘーゲルの『精神現象学』(Phanomenologie des Geistes)つまり「ガイストの現象学」では、ガイストは実体であるとともに主体として「現在という昼」に帰還してくる。それは、否定性という「死」の力を伴い彼岸の夜の世界から帰還してくるのである。この否定の力が、我と我々を媒介しガイスト的な共同体を形成してゆくのである。つまり、生命のうちに死という否定をもたらすことで、人間的な共同体が形成されるのである。
著者
ほりぐち かずひさ Kazuhisa Horiguchi 千葉経済大学 CHIBA KEIZAI UNIVERSITY
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 (ISSN:0915972X)
巻号頁・発行日
no.44, pp.49-60, 2011-07

The main purpose of this paper is to criticize, for the following three reasons, a recent trend in Japanese universities where the paragraph theory is taught as if it were the sole universal way of writing, whether in English or Japanese. First, the paragraph theory was primarily established by Alexander Bain (1818-1903) and it has survived and dominated American education for only a century and a half. Second, according to some previous studies, eminent writers do not necessarily follow paragraph-writing rules when writing in English. Third, as some surveys on contrastive rhetoric suggest, each culture has its own organizational or structural pattern of writing documents. The paragraph-writing method should not be applied directly to education in writing Japanese or be imposed on Japanese students writing Japanese. When we teach English or Japanese writing in Japanese universities, the teachers should explain these situations. Explaining only prescriptive rules that are mentioned in English composition textbooks is confusing to many Japanese students.
著者
池田 正雄
出版者
つくば国際大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13412078)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-17, 2007

In this text, first of all, an economic developmental process in the East Asian countries is clarified. Next, it considers why a violent currency crisis was generated in the latter half of the 1990's in Thailand, South Korea, and other East Asian countries. Finally, the historical meaning of the Asian currency crisis is clarified while examining various opinions concerning the crisis. The theory that valued vulnerability in the institutions of the East Asian countries is criticized ; and, the perspective that the financial globalization that progressed rapidly with financial deregulation was a factor of the crisis after the 90's is evaluated. However, it is discussed that it would have been necessary to value the decrease in global competitiveness in nations such as Thailand in the latter half of the 1990's and the burst of the economic bubble as factors to cause the rapid outflow of money.

1 0 0 0 石黒忠篤伝

著者
日本農業研究所編著
出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
1969
著者
石野 亜耶 難波 英嗣 竹澤 寿幸
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.667-679, 2010-12-15 (Released:2011-03-11)
参考文献数
17
被引用文献数
3

本研究では,自動的に観光情報を収集するための手法を提案する.我々は観光情報を収集するため,ブロガーが日記形式で綴った旅行記である旅行ブログエントリに焦点を当てた.多くのブロガーが旅行記をこの形で記述するため,旅行ブログエントリは観光情報を得るための有益な情報源であると考えられる.まず本研究では,ブログデータベースから旅行ブログエントリを検出した.その中から観光情報として土産物情報と観光名所情報を抽出する手法を提案した.更に,旅行ブログエントリからリンクを抽出することで,観光情報リンク集の構築を行った.また実験により提案手法の有効性を示した.旅行ブログエントリの検出に関しては,再現率 38.1%,精度 86.7%を得た.また,旅行ブログエントリからの観光情報の抽出においては,抽出された上位 100 件の土産物において精度 74.0%,観光名所において精度 71.0%を得ることができたため,旅行ブログエントリは観光情報の有益な情報源であるといえる.旅行ブログエントリからの観光情報リンク集の自動構築においても,高い精度・再現率を得られており,提案手法の有効性を示すことができたと言える.
著者
高橋 満 石井山 竜平 広森 直子 笹原 恵 槇石 多希子 朝岡 幸彦 千葉 悦子 大高 研道 宮崎 隆志 松本 大
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

日本の社会教育制度は、福祉国家的な施策として制度化がすすめられてきた。しかしながら、この制度や管理運営の在り方は、経済のグローバル化や、これへの政策的応答としての自由主義的改革のもとで機能不全に陥っている。本研究では、これに対して、ソーシャルガバナンスという「パートナーシップ型の統治」モデルを提案している。それは、行政とともに市場やNPOなどの多様な主体がステークフォルダーとして独自な役割を果たすものとして参入し、新しい公共性をつくりあげるものである。
著者
長山 正義 バーカーン ロナルド ヒューゴ
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.1087-1092, 1987-05-01
被引用文献数
4

雄ラットの低栄養状態下で,結腸を切除,吻合し,種々の濃度(5%,10%,15%,20%)でモノアセトアセチン(Ma群)およびブドウ糖(G群)を用いたTPNの効果を比較検討した.術後5日目の体重はG群,Ma群で,投与カロリー量が同じ群ではほぼ同様の値を示した.血清Acetoacetate,β-hydroxybutyrateは5%Maを用いたM5群を除いてMa群で高値を示した.NバランスはMa群が全体的に良好な傾向を示し,特にM5群と5%Gを用いたG5群で統計的に有意差がみられた.吻合部腸管耐圧力はMa群ではほぼ一定の値を示し,M5群とG5群の比較ではM5群が有意に高値を示した.以上の成績からMaは低栄養,ストレス下のラットにおいては,有効なエネルギー源であることが示唆された.
著者
橋本 篤 叶木 律子 早崎 宣之 山口 敦 梶原 史洋 荒川 忠一
出版者
一般社団法人 日本風工学会
雑誌
日本風工学会論文集 (ISSN:13493507)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.17-26, 2010-01-31 (Released:2010-09-21)
参考文献数
20

The objective of this study is to investigate the differences in accuracies of wind predictions among four different meso scale meteorological models that will be used to develop a wind power prediction model. Hindcasts of winds are carried out using these models for four wind farms (three in Tohoku and one in Kanto districts). The performances of the models are discussed by comparing the simulated results with the wind data observed at these wind farms under different meteorological conditions. The results show that the meteorological models exhibit similar tendencies for general meteorological cases. On the other hand, significant differences are found in some cases such as those characterized by the passages of cold fronts, typhoons, and so on. The evaluations of the uncertainties in the meteorological model predictions show that the individual models have uncertainties of approximately 3 m/s in wind speed and 40° in wind direction. Additionally, the results also indicate that uncertainties attributable to the differences of the model design amount to only 10% of the total uncertainties, and that the initial and boundary conditions as well as the formulations of the models themselves can have more significant effects on the prediction accuracies.
著者
唐澤 信司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング
巻号頁・発行日
vol.98, no.673, pp.193-200, 1999-03-18
被引用文献数
11

神経細胞のごときインパルスだけを信号どする知能システムでは、情報圧縮して応対を選択し、情報圧縮を解除して出力を司令する機能が必要である。神経細胞は、特定の条件の時だけインパルスを発生する解読器の接続で情報を圧縮する。他方、多出力の[OR]接続および抑圧性[AND]回路による多入力[OR]動作で情報圧縮を解除する。また、神経細胞でループ回路を作ると、ループに取り込まれたインパルスは循環し続け、循環する度に外部にインパルスを発生する。これらの回路要素を組み合わせて、脳と類似な動作機能を電子回路で実現することができることを示す。
著者
黒田 展之 小林 裕一郎
出版者
関西学院大学
雑誌
法と政治 (ISSN:02880709)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.327-337, 1998-09-30
著者
川村 よし子 前田 ジョイス 北村 達也 三輪 譲二 宇津呂 武仁
出版者
東京国際大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、世界各国の日本語学習者に、よりよい読解支援環境をWeb上で提供することである。代表者らはすでに読解学習支援システム『リーディング・チュウ太』を開発しWeb上で公開している。今回新たに文章の難易度の主要な決定要因である単語の難易度と構文の複雑さに着目し、「学習者の視点にたった文章の難易度判定システム」を開発することを目指した。そのため、本研究では世界各国の母語の異なる学習者を対象にした難易度判定実験を行い、その結果を基に、単語と構文の双方に着目した文章の難易度判定システムを開発した。さらに、チュウ太の辞書ツールにはデータ・マイニングシステムを組み入れ、日本語学習者の辞書利用の実態調査を行った。利用者の推移や言語別の利用者数の変化および辞書のカバー率の調査を通して、辞書開発に関する今後の課題も明らかになった。研究成果は、Web上の読解学習支援ツールとして世界の日本語学習者・教育関係者に無償公開している。
著者
ジュリアンディ ベリー
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、(1)バルプロ酸によるヒストン脱アセチル化酵素阻害が胎生期神経幹細胞に与える影響の解明、(2)胎生期から成体期の長期に渡る同阻害影響の解明、(3)同阻害影響を回復・最小化する方策の確立の3点である。これら目的を達成する為、申請者は、神経産生が顕著な時期において妊娠マウスにバルプロ酸を経口投与した。その結果、バルプロ酸投与により胎児の脳におけるヒストンアセチル化が増加した。また、バルプロ酸のアナログであるバルプロミド投与では、ヒストンアセチル化の増加は認められなかった。さらに、胎児における神経産生はバルプロ酸投与により亢進した。これは、成体海馬由来培養神経幹細胞において、神経細胞新生がピストン脱アセチル化作用により引き起こされる事を示した過去の報告と整合性がある。また、この神経細胞新生の様式の大部分は、中間前駆細胞の形成が関与する神経幹細胞からの非直接的な神経細胞産生経路を介し、浅層神経細胞層厚の増加と深層神経細胞層厚の減少が観察された。さらに申請者は、マウス胚性幹細胞由来神経幹細胞を用いた浅層および深層神経細胞産生の評価モデルを確立し、in vitroにおいても同様に浅層神経細胞の産生量増加と深層神経細胞産生量の減少を確認した。加えて、胎児期のピストン脱アセチル化酵素阻害により、海馬歯状回における成体脳神経細胞新生および神経細胞形態は異常を示し、胎児期バルプロ酸投与マウスにおける、後の記憶学習能力の低下の原因の一部だと考えられる。
著者
日色 真帆 原 広司 門内 輝行
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.59, no.466, pp.65-74, 1994
被引用文献数
18 3

Protocols taken from the experiments in Shibuya's ground level and Ginza's underground level are analyzed using eight types of codes as follows : view(V), signage(S), guide(G) and memory(M) information; A-plan(Ap) and B-plan(Bp); lostness(?) and finding(!). Two types of protocol sequences, finding(!, [V S G M], Ap) and lostness(?, [V S G M], Bp), are identified. The results show that as a problem solving, wayfinding in above situations has shallow and simple planning process. However, plenty of environmental information can be acquired, and in case of getting lost, "way out" behavior, stated as B-plan, can be executed. Unspoken process is also discussed.
著者
竹内 繁樹 栗村 直 岡本 亮
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、独立した光子源間で良質な量子干渉をもつ単一光子源の実現と、光量子回路への応用を目指した。その結果、95.8%と世界最高レベルの2光子干渉性を実現した。また、入力された2光子の特定の偏光相関成分を抜き出す「量子もつれフィルター」、および2001年にKnillらの提案した線形光学量子計算の基本となる、「制御ノット光量子回路」の実現に成功した。また、擬似位相整合結晶における群速度分散の制御を目ざし、デバイスの作成ならびに評価を行った。
著者
福嶋 祐介 犬飼 直之
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

粉雪雪崩の流動機構と発生機構が同じ固気混相流である吹雪の流動と密接に関連していると考え、一連の研究を推進した。モデルとして、これまで保存性サーマルや定常の泥水流で実績のあるk-ε乱流モデルを用いた。偏微分方程式の離散化と数値解法にはSIMPLE法を用いた。まず、吹雪の解析では拡散方程式の解法で不可欠な底面での境界条件について考察した。その結果勾配型あるいはフラックス型で与えられる境界条件として雪の連行係数を用いる方法がもっとも合理的であることを示した。これを南極みずほ基地で観測された吹雪データと比較し、風速分布、飛雪流量の分布に対して合理的な結果を与えることを明らかにした。また、現地観測結果と数値解析を組み合わせるで雪粒子の密度と雪の連行係数が算定できることを示した。雪崩については、傾斜面上のサーマルの流動と酷似していることから、保存性傾斜サーマルの解析を基礎として、上流部で塩水サーマルとして発生した流れが斜面上の固体粒子を巻き上げ、さらに自ら加速する"Ignition Condition"が現れる泥水流に置き換えて数値解析を行った。この結果、底面上の固体粒子の直径がある程度小さいとIgnition Conditionを満たし、流下方向に加速する現象があることを初めて見出した。このようにサーマルが加速する場合には、塩分濃度の等濃度線の時間変化は保存性の場合とかなり異なり、斜面方向に平坦な形状を示すことが明らかになった。一方、土砂の等濃度線の形状は塩分濃度の等濃度線とはその形状がまったく異なり、プルームの先端部の形状に近いことを明らかにした。さらに、固体粒子を浮遊する流れの相似則についてさまざまな議論があることから、傾斜サーマルについて、保存性と非保存性の二つの場合についてスケールを100倍に替えた数値解析をおない、サーマルの流動に及ぼすスケールの効果について議論した。その結果、保存性傾斜サーマルでは適切な無地元化を行うとスケールにかかわらず相似な流動となることを実証した。一方、非保存性の場合には、スケールが異なると流動特性に顕著な違いが現れることを確認した。したがって、吹雪や雪崩の流動特性を明らかにするためには、現地規模の数値解析を行うことがもっとも有効であることが示されたといえる。またスケールが異なった場合の底面での条件については十分な検討がなされていないことから、この条件を明確にすることの重要性を明らかにした。