著者
田中 義久 常木 暎生 藤原 功達 小川 文弥 小林 直毅 伊藤 守
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

高度情報化の進展に伴い、コミュニケーション行為およびメディア環境の変容は、対人関係、マス・コミュニケーション、メディエイティッド・コミュニケーションなどと、重層的な連関を通して進行してきている。本研究では、こうした状況を、地域社会におけるコミュニケーションとの関わりの中で捉えることを目標として研究会を開催し、10年前に実施した調査研究(文部省科学研究費・総合研究A・平成3-4年度「コミュニケーション行為と高度情報化社会」)をふまえ、埼玉県川越市で調査研究を行った。1997年度は、地域作りのリーダー層、行政関係者などを中心にヒアリングを行い、1998年度と1999年度には、川越市の旧市街地と郊外住宅地とで、情報機器利用や地域コミュニケーションなどに関する意識や行動について、質問紙による数量調査を実施した。2000年度は、当該地域の住民に対して、ヒアリング、グループ・インタビューを実施した。4年間の調査研究によって、情報化の進展する地域社会の実態を把握するとともに、高度情報化に即応した、コミュニケーションに積極的な層の存在が明らかになった。その上で、地域住民の側からのヴォランタリスティックな「地域社会」形成の行為は、いかに展開されていくのだろうか。コミュニティとコミュニケーションとの連関を、情報化と地域社会の双方に影響するグローバリゼーションの社会変動のなかで注目していくことの重要性は高い。2000年6月には日本マス・コミュニケーション学会において、「情報化の展開と地域における生活」というテーマで研究発表をおこない、11月には日本社会情報学会において「情報関連機器の利用とコミュニケーション行動に関する実証的研究」というテーマで研究発表をおこなった。また年度末には、本研究成果として、文部省科学研究費報告書(冊子)をまとめた。
著者
辻 孝
出版者
東京理科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

平成20年度は、細胞操作による歯の形態制御に向けて、上皮・間葉細胞層の接触面積によって再生歯の歯冠の幅と咬頭の数を制御可能であることを示した。平成21年度では、歯の大きさの決定に関わる分子の検索を進め、sonic hedgehogの発現領域と歯冠の幅が相関していることを見出し、歯の形態形成制御において当該分子が制御に関わる可能性を示した(投稿準備中)。さらに平成21年度は、歯の形態形成に関わる遺伝子の機能を利用して再生歯の形態制御の技術開発を目的として、形態制御に密接にかかわる遺伝子の探索を行った。胎齢11-18日の歯胚を用いてAgilent Whole Mouse Genomeアレイによる網羅的遺伝子発現プロファイル解析を行ない、対象となる41,252遺伝子から、歯の誘導と初期発生時期であるPlacode期またはCap期で高発現であり、かつ歯胚発生への関与が知られていない185遺伝子を選出した。再生歯の形態制御に関与する候補遺伝子を解析するため、これらの遺伝子群についてCap期の臼歯歯胚における遺伝子発現をin situ hybridization法で解析した。その結果、歯の形態形成を制御しているCap期のエナメルノットで発現する5遺伝子、歯胚の大きさを決定すると考えられている陥入した上皮で発現する10遺伝子、歯種ごとの形態を制御しているCap期の間葉で発現する6遺伝子、咬頭形成を制御すると考えらえているEarly bell期のエナメルノットで発現する6遺伝子を見出し、歯の形態形成に関与する可能性のある新規30遺伝子を同定した。以上の成果より、本研究課題において歯の形態を制御する細胞操作技術を開発できたと共に、新規遺伝子の機能解析を進めることにより、形態形成制御遺伝子の応用による再生歯の形態制御技術の開発が期待される。
著者
宮村 摂三 堀 実 安芸 敬一 松本 英照 安藤 誠一
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, 1962-03

1961年8月19日岐阜,福井,石川3県境界付近に発生した北美浜地震にともなう余震群を,本震震央南南西30kmの岐阜県郡上郡八幡町において8月27日より約1ケ月間磁気テープ記録による多成分観測装置によつて観測した.辺長1kmにちかい3点観測によつて初詣の到来方向,みかけの速度をもとめ余震群の分布を現地でただちに推定することができたが,それによると余震域は本震震央の西方にひろがるごくせまい面積をしめ,深度はO~25kmの地殼内にかぎられることがわかつた.余震域の面積A(km2)は本震の規模(M=7.2)から宇津・関の公式logA=M-4で推定されるものにくらべいちぢるしくせまい.なお余震群以外の局地的小地震が観測されたことも注目にあたいする結果である.|After the Kita Mino (North Mino) Earthquake of August 19th, 1961, we hurried to Hachiman, Gujo County, Gifu Prefecture, Central Japan, about 30 kms south-east of the epicenter to observe its aftershock activity for several weeks. Tripartite stations were occupied, as shown in the map of Fig. 1, near the temporary observation room at Gujo High School and from Aug. 27th to Sept. 20th the observation were executed almost continuously.
著者
高瀬 英彦
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.143-150, 2002-03-06

学習とは「暗記」だと思っている学生が増えた。学習とは「工夫することを学ぶ」と気付いていないし,教員もそのことを指摘することがないようだ。フランス語を学ぶにあたって難しいとなげく前に,ノートの取り方,まとめ方を工夫しろと言いたい。フランス語はその形式・メカニスムに気付けば日本人には英語よりも学なびやすく,発音しやすい言語といっていい。「暗記」より「単純な基準」の理解とそれの「応用」,つまり「工夫することを学ぶ」ところにフランス語学習の醍醐味があることに焦点をあわせたメモ。1)教科書の問題点2)英語が唯一の外国語であるとの思い込み3)発音が難しいとの思い込み4)音節表の大切さ・見直しの提案5)アクセント6)名詞のジェンダー7)名詞の先行要素8)動詞の法と時制
著者
藤井 雅寛
出版者
新潟大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は成人T細胞白血病の原因ウイルスである。一方で、近縁ウイルスHTLV-2の白血病発症への関与を示す結果は得られていない。このHTLV-1とHTLV-2の病原性の違いに、それぞれのトランスフォーミング蛋白Tax1とTax2が深く関与していることを、我々は報告してきた。この違いの分子機構について以下の新たな成果を見出した。1、Tax1はマウスのT細胞株(CTLL-2)の細胞増殖をIL-2依存性から非依存性にトランスフォームするが、この活性はTax2よりも著名に亢進し、この活性の違いに、Tax1のみが持つPDZドメイン結合配列(PBM)が必須である。ヒトパピローマウイルス(HPV)も子宮頚がんに関与する悪性型と関与しない良性型サブタイプに分けられるが、悪性型HPVのトランスフォーミング蛋白E6のみがPBMを持つ。Tax1からPBMを欠損したTax1変異体のトランスフォーミング活性は、E6のPBMを付加することによって野生型Tax1と同程度まで回復した。Tax1はPDZドメインを持つがん抑制遺伝子Dlg1ならびにScribbleとPBMを介して結合したが、同程度の結合がHPV由来のPBMを付加したTax1変異体においても観察された。これらの結果はTax1によるがん抑制遺伝子Dlg1とScribbleの不活化がトランスフォメーションに関与することを示唆するとともに、これらのがん抑制遺伝子が複数の発がんウイルスの病原性に関与する共通な標的分子である可能性を示す。2、NF-kB2がTax1とTax2のトランスフォーミング活性の違いに関与することを報告している。この違いにJax1のアミノ酸225-243の領域が関与することを明らかにした。この領域はHTLV-1とSTLV-1(サルT細胞白血病ウイルス1型)のTax1では極めて高く保存されていたが、HTLV-2とSTLV-2のTax2においては保存されていなかった。これらの結果は、この領域が病原性に深く関与することを示唆する。
著者
大池 真知子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究課題は、社会運動における小説の働きを、アフリカのHIV/エイズをめぐる社会運動を例に考察した。アフリカのHIV/エイズのキャンペーンでは、映画、演劇、テレビ・ラジオ・ドラマといった視聴覚を使う物語芸術が応用されている。これらは受け手の五感に作用して、主人公との一体化をもたらし、HIV/エイズ問題にたいする共感的な態度を熟成する。それに対し小説は、社会の異性愛主義言説を主人公が内面化していく過程を批判的に表象する。読み手は距離をもってその過程を追体験し、分析的かつ情緒的にエイズ問題を認識する。視聴覚に訴える映画等と言語のみを用いる小説という両物語芸術は、HIV/エイズの社会運動において補完的な働きをしている。
著者
中山 文 成田 静香 野村 鮎子 濱田 麻矢 西川 真子 松尾 肇子 林 香奈
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

この研究の目的は、現代中国の中国文化(文学・演劇・映画など)に表れたジェンダーを明らかにすること、および文化の根底にある中国人のジェンダー観念を歴史的に考察することであった。我々は、平成15年度〜16年度(2003年4月〜2006年3月)にかけて、これをテーマとする研究会を計22回開催し、平均して毎回14〜15名の参加者を得た。2004年3月7日の国際シンポジウム「中国演劇におけるジェンダーの表象」では、パネリストとして、中国から中国の女性演劇である越劇の監督である楊小青氏、中国戯劇家協会の重鎮で『中国戯劇』の副主編である黎継徳氏を迎え、日本側からは中山文(神戸学院大学)、伊藤茂氏(神戸学院大学)、細井尚子氏(立教大学)が加わり、中国の越劇と日本の宝塚との比較やジェンダーの表象について討論した。また、2005年6月25日〜26日には、日中の女性演劇の比較をテーマとする国際シンポジウム「男らしさ・女らしさの作り方-越劇と宝塚」を開催した。宝塚からは、草野旦氏(演出家)・磯野千尋氏(宝塚歌劇団専科、男役)・一原けい氏(宝塚歌劇団専科、女役)、越劇(中国の女性演劇)からは、楊小青氏(演出家)・陳雪薄氏(杭州越劇院、男役)・周俊氏(杭州越劇院花旦、女役)を迎え、実演を交えて、一般にも広く公開した。このほか、研究会では、中国のジェンダーを歴史的に考察するための入門書『中国女性史入門-女たちの今と昔』(人文書院2005年3月)を編纂・出版した。この書は、中国女性の歴史を、婚姻生育・教育・女性運動・労働・身体・文芸・政治ヒエラルキー・信仰の8つのテーマに分けて解説したもので、すでに書評などで高い評価を得ている。
著者
石神 健
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

新規薬剤となりうる天然生理活性物質の立体化学決定を目的に合成研究を行った。抗ピロリ菌活性を有するサンタロール型セスキテルペン類に関しては、タンデム型ラジカル環化反応による効率的構築法を確立した。抗腫瘍剤Topsentolide類に関しては、全立体異性体を合成し、絶対立体配置の決定と生物評価を行った。抗真菌剤Majusculoicacidの合成に関しては、キラルビルディングブロック新規構築法を確立した。
著者
湯川 和典 吉田 謙二 竹内 典子
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

セマフォリン受容体のplexin-A1を欠損するマウスは、精神疾患で異常となる驚愕反射のプレパルス抑制(PPI)試験において、14週齢以上のマウスで障害が顕著となった。また自発活動量増加と毛繕い行動亢進、加齢進行性のミクログリア過剰活性化と脱髄所見を認めた。したがってplexin-A1欠損マウスは、ミクログリア関与の示唆はあるが未だ本態不明の精神疾患の発症機構解明に繋がる新規知見を得るための有用なモデルと判明した。
著者
島田 哲夫 多田 幸生
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.302-310, 1989-03-15
被引用文献数
3 3

三次元グラフィックスシステムを用いた設計やロボット動作のオフライン教示において 操作性の良い入力方式が必要となる.現在 CADやロボットシミュレータを用いて 設計工程や作業工程の自動化が求められているが 対象が自由曲面である場合 コマンドメニュや言語の組合せによって 曲面モデルの形状処理を行うことは非常に困難である.位置情報を入力する装置としてロケータがあり 従来より 三次元座標の入力に三次元ロケータを用いる手法が提案されているが 曲面形状上をなぞるなどの処理自体がむずかしく 操作性に問題があるという指摘がされている.そこで 作業対象である曲面上を確認しながら しかも曲面から離れた任意の場所に基準点の位置指定ができ 操作性の良い三次元の入力が必要となる.本論文では 対象である自由曲面モデルの展開形状を基準平面とし それぞれの点において 法線方向に可変のオフセット成分を付加した三次元領域を定義域にもつ入力システムを提案する.そして 航空機に用いられているハニカムサンドイッチなどの複合材やタクト・鋼管などの金属溶接部分の欠陥を見出すための超音波探傷用ロボットシミュレータを対象とし 本手法を適用した例をあげる.