著者
若林 芳樹 岡本 耕平 今井 修 山下 潤 大西 宏治 西村 雄一郎 池口 明子
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,日本で本格的にPPGIS(参加型GIS)を実践していくための方法論的基礎を確立することを目的として,内外での既存の実践例を調査した上で,日本の実情に即したPPGIS の応用の仕方を検討した。研究にあたっては,課題を次の四つのサブテーマに分けて取り組んだ:(1) PPGISの理論的・方法論的枠組み(2) PPGIS のための技術開発(3) PPGIS の実践例の調査(4) PPGISの実践的応用。
著者
藤谷 泰
出版者
京都府立久御山高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

報告者はこれまでに高等学校で「DNA塩基配列を用いた植物の同定と進化の解明」という授業を実施してきた。この授業では、植物のDNAの抽出から遺伝子の増幅、その塩基配列の決定から分子系統樹の作成を主眼としつつ、植物の観察同定、実体顕微鏡下での外部形態の観察を加えた内容を実施してきた。この授業の中で最大の課題は、「PCR増幅をいかに成功させるか」であった。授業を円滑に実施し、生徒に大きな達成感を抱かせるには、何としても生徒がサンプルにした植物の塩基配列の解読に成功する必要がある。これまでの経験上、PCRに成功しなかったサンプルは、ターゲットにしている遺伝子を内部プライマーを用いて2分割してPCR増幅させるとうまくいく場合が多かった。塩基配列が短いほどPCRが成功する確率が飛躍的に増大するようだ。そこで本研究では、植物系統分類学で用いられる遺伝子の汎用内部プライマーを開発することを目的とした。(1) プライマー設計の対象とする遺伝子は、植物系統群類学で用いるrbcLをターゲットとした。設計はprimer3 plusを使用して行なった。(2) 最初に設計したのは、過去の取り組みの中でrbcLを2分割してシーケンスしてきたが、2分割のつなぎ合わせの部分が読み取りにくい場合が多かったので、その部分をカバーするプライマーの設計を行なった。(3) 次に、rbcLは1400塩基程度なのでこれを4~6分割して読み取りができるようにプライマーを設計した。(4) 過去の実験でPCR増幅に成功してきているDNA抽出サンプル16種類(シダ、裸子、被子植物)を用いて、設計したプライマーのPCR成功率をスクリーニングした。(5) 成功率の高いプライマーを用いて、これまでのプライマーではPCR増幅ができなかったサンプルのPCR増幅を行なった。以上の結果、すべての植物に対応できるプライマーの開発はできなかったが、設計したプライマーを用いてPCR増幅を数種類テストすれば、これまで解読できなかったサンプルについても、解読できることがわかった。今後、このプライマーを用いて標本庫等の古いサンプル等にも適用して、実用化を検討する予定である。
著者
堀 準一
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

既2年度に得られた、アンケート調査、咬合圧力結果に加え最終年度は、マウスガード装着有無による発声分析の資料収集分析を行った。これら得られた資料のまとめを行った。本研究の目的が、コンタクトスポーツにおけるマウスガードの必要性をその機能から確認することと従来多用されている既製品の歯科学的問題点を明らかにし、本来あるべき専門家(スポーツデンティスト)によるカスタムメイドマウスガードの必要性を検討することである。検討結果から、既製品の問題点として、従来の報告で示されている違和感と話しづらいの2項目が確認された。また、マウスガードの主な役割である異常な外力に対する衝撃減衰能についても、既製品のパンフレットに示されている製作方法に従うと、咬合接触点が不安定で、接触歯に非装着時より大きな力が加わり、ガードの役割をしていないことが明らかにされた。加えて、咬合圧力がある限られた領域に集中するため、マウスガードの破壊につながりやすいことも示された。発声については、一律の設計では、発声に大きな問題を訴える者も多く、すべての者が、後舌母音ならびに前舌母音の両関連音に問題を認め、アンケートによる問題点を明瞭に裏付ける結果を得た。これらを改善し、違和感のないマウスガードにて、マウスガードへの抵抗をなくしいままで以上に普及の計るには、カスタムメイドの必要性が明確且つ具体的に示されるとともに、カスタムメイドマウスガードの製作にあたり、設計において、個人的な要望を満たす学問的裏付けとなる検討の必要性も示された。
著者
木谷 幹一 加茂 祐介
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.99-109, 2010-05-25

京都盆地周辺の第四系層序は海成粘土層やその上下に挟まれる火山灰を指標として組み立てられてきた.京都盆地南部の更新統は,主に大阪層群と更新世段丘堆積層からなり,海成粘土層は大阪層群のMa0層からMa9層が確認されている.しかし京都盆地南部の久御山町で掘削されたKD-0コアに関する既往の研究では,大阪層群のMa3層,Ma5層,Ma6層が確認されたにとどまった.これに疑問を抱き,再度コア観察を行い,各接分析(石膏および硫黄結晶の析出・水溶液の硫化物臭・渦鞭毛藻・有孔虫・火山灰・花粉)を行った.その結果大阪層群のMa3層,Ma5層,Ma6層に加えて,Ma0層,Ma0.5層,Ma1層,Ma1.3層,Ma2層,Ma4層,Ma7層,Ma8層,Ma9層,Ma10層と上部更新統のMa12層も分布することが確認された.また最終間氷期の海進が京都盆地南部まで及んでいたことが確認された.
著者
平田 純一 近藤 宏一 木下 明浩 斉藤 雅通 山崎 正史 塚口 博司 春名 攻 土居 靖範 平井 孝治
出版者
立命館大学
雑誌
地域連携推進研究費
巻号頁・発行日
1999

本地域連携研究は,京都府,滋賀県,京都市を対象地域とし,対応する行政機関との連携をはかりつつ研究活動を継続してきた.研究期間内に大規模小売店舗法から大規模小売店舗立地法へと大規模小売店舗の主点調整に対する枠組みの変更もあり,現在ではいわゆるまち作り3法(改正都市計画法,改正建設基本法,大規模小売店舗立地法)によるまち作りとあわせた大規模小売店舗の立地調整が基本となってきた.こうした商業活動を巡る環境の変化と併せて研究期間内には商業活動自身にも大きな変化が発生した.複数の大規模小売業が破綻または大規模なリストラを行う必要が発生した.こうした商業活動を巡る大きな変化を目の当たりにしつつ,本研究プロジェクトでは,対象地域の各自治体における商業調整方法の変化や中心市街地活性化計画等の説明を受けつつ,大学の研究者が独自の研究計画に従った,研究を進め相互交流を図った.研究成果はいくつかに分類することができるし,今回の研究成果のすべてを研究報告書に取り入れることはできなかったが,今後個人ベースで今回の研究成果をより精査することと併せて,学内で研究グループを維持し,行政の担当者との交流を含めて来年度の研究成果の本格的なとりまとめを行うことを予定しており,学内的な予算措置も講じた.本研究では,京都府,滋賀県,京都市における商業活動状況の特性を明らかにすることを目指して,商業統計データの詳細な分析により,地域間の商業活動の比較分析を行った上で,京都府下および滋賀県内における具体的な研究対象地域を設定し,ここにおいて各種の調査を行った上で,これらの地域に対する具体的なまち作り計画を検討した.ここで対象とした地域は,京都府京都市伏見区の大手筋を中心とした商業地区と滋賀県草津市の中心市街地である.伏見地区では,TMOによる具体的な中心市街地活性化計画を策定中であり,これが完成した時点において,この地区がどのようになるのかを歴史的検討と併せて評価を行った.草津市後威信市街地では,大手スーパーSEIYUが撤退跡市を含む隣接地域の将来経計画が大きな課題となっており,これらを含めて検討を行った.こうした検討を行う上で,両地区の通行量調査,来街者調査,消費者の買い物動向調査を行い,これらの調査結果もとりまとめている.こうした調査は,これまで行政主体のものが多く,ここではこれらの内容にとらわれることなく,独自の調査を行った.
著者
鈴木 英之進 安藤 晋
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

多視点・多粒度型知識発見のためのデータマイニング手法として,データの重要部分を確率的クラスタリングにより要約し,情報量規準をもとに色相を割り振る方法を考案した.この方法は,医療検査データで有効性が示されたわれわれのプロトタイプラインの拡張となっている.この方法の有効性をテキスト画像データであるウェブページデータを対象として調べ,Googleに比較して再現率,適合率,および発見時間の全てにおいて優れていることを示した.この手法を改良・発展して最終手法とし,ウェブページデータやネットワーク侵入データなどに適用してその有効性を定量的に評価した.ウェブページデータを用いた実験は,多数のウェブページの内容をA4用紙1枚の表示結果から把握する課題について行った.一定時間に多数の質問を課す形式のため,評価指標としては被験者たちの正解数を採用し,Googleに比較して約35%増加することに成功した.画像やキーワードに関する個別処理は必要であるものの,知識発見のために適切な複数の視点と粒度で情報を可視化するという当初の目的を達成できたと考える.ネットワーク侵入データを用いた実験は,ウェブページへのアクセス履歴からの予測問題について行った.不正アクセス検知に関する再現率・適合率,珍しい不正アクセスの発見,可視化結果の見易さなどに関して良好な結果を得た.研究過程において,多目的型探索手法,情報量評価指標,および述語データ用クラスタリングなども開発してそれらの有効性を確認したその他,仏国カン大学と協力してアイテム集合トランザクションデータ可視化手法を開発し,良好な結果を得た.サッカーに代表される各種時空間データへの適用も進め,可視化と知識発見の両面で成果をあげた.
著者
松尾 哲矢
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究の主な結果は以下の通りである.1.スポーツ競技者養成の《場》に着目し,学校運動部と民間スポーツクラブを自ら相対的自律性の獲得(正統性の獲得)のために独自に再生産戦略システムを有する《場》として捉え,それぞれ異なる《場》で養成された競技者の身体化された文化資本(ハビトゥス)の様相の差異を両下位《場》の教育戦略,象徴戦略の視点から分析することが目的であった.本研究の分析対象者は,全国上位の高校サッカー競技者で,中学校,高等学校を通して学校運動部に所属する194名と民間スポーツクラブに所属する78名であった.主な結果は,以下に示す通りである.1)学校運動部,民間スポーツクラブの両競技者ともに幼少期の相続的文化資本に差異はみられなかった.学校運動部および民間スポーツクラブの競技者間で現在の身体化された文化資本(ハビトゥス)の様相において差異がみられた.2)現在の身体化された文化資本(ハビトゥス)の様相の差異に関して,教育,象徴の各戦略の視点から検討され,特に民間スポーツクラブにおいて勝利志向の隠蔽のみならずその勝利志向を暗黙の内に前提化するようなハビトゥス形成に教育戦略や象徴戦略が巧妙に機能していることが示唆された.2.スポーツ競技者養成の下位《場》である民間スポーツクラブに着目し,指導者の有するスポーツ観,《場》に対する表象,親との関係性等から,スポーツ競技者養成の《場》の正統性をめぐる再生産戦略の諸相を教育戦略,象徴戦略,対人戦略という視点で明らかにするとともに,《場》の構造とハビトゥス形成のダイナミズムについて検討することが目的であった.本研究の分析対象者は,フルタイムの契約職員,専任職員,自営業主として勤務する民間スポーツクラブ指導者273名(サッカー83名,水泳111名,体操競技79名)であった.なお,比較分析のために,筆者が行った民間スポーツクラブ競技者の調査結果(2001)が必要に応じて用いられた.主な結果として,スポーツ観,《場》の表象において,指導者と競技者間で相同性が認められたが、競技者において,より限定的で強い意識や表象を有している場合がみられた.この両者間の相同性と異質性から,伝承の二重性のダイナミズムが示唆された.
著者
甲斐 健人
出版者
愛知教育大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

本研究の目的は「底辺校」の運動部員が獲得する文化を通して学歴社会における学校文化を問い、「課外スポーツの経歴」と社会的再生産に関する基礎的知見を得ることにあった。申請者は一農業高校サッカー部を対象とし参与観察を行いながら事例研究を実施した。サッカー部員には積極的入部希望者と1年生は全員部活動に入らなければならないという校則に従った消極的入部者とがいた。実際に活動している人数は部員登録人数よりもはるかに少ない。アルバイト、友人や彼女との約束などの理由で部活動に参加しないのは「当然」であり、練習に何人の部員が参加するかを予測しにくい。さらに、農業高校のカリキュラム上、日常的に実習、当番などで時間を拘束されるために部活動運営はますます厳しい状況にある。彼らにとって部活動は空いた時間に行う「趣味」ともいえるだろう。このような状況においては予定された練習計画を十分に消化することは難しく、現実的には長期の練習計画は作成されていない。結果的には優秀な「スポーツの経歴」を獲得することは困難である。彼らの多くは中学時代の成績によって選別され農業高校に進学し、学校に対してあまり多くを期待していない。彼らの行動は各自がその時々で行動する必要性を感じるか否かによって決定され、校則などは実質的にはあまり意味をもたない。既に彼らは学校文化、学歴社会を相対化していた。その背後には家庭において学校で教えられる価値観とは違う価値観を身につけているなど、家庭の影響を指摘できる。3年生9名の進路は進学4名(短大2、専門学校2)、就職5名。両親の学歴、職業と彼らの進路を考えたとき「スポーツの経歴」が社会的再生産につながっている可能性が示唆された。