著者
王子 善清 高 祖明 脇内 成昭 岡本 三郎 河本 正彦
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.291-296, 1984
被引用文献数
3

まず〔実験1〕として, 培養液中の亜硝酸塩(0∿10mM)が8種類の野菜の生育及び亜硝酸含量に及ぼす影響を調べた。次に〔実験2〕として, 青物市場より購入した野菜といわゆる"有機農業"により生産された野菜を供試して, それぞれの可食部の硝酸塩と亜硝酸塩の含量及び貯蔵中におけるころらの消長を比較調査した。〔実験1〕 : 亜硝酸塩の供給は一般に野菜の生育を低下させた。しかしキュウリとキャベツでは影響がなかった。亜硝酸毒性感受性はホウレンソウ>サラダナ>シュンギク>ダイコン>ニンジン>ハクサイの順であった。硝酸塩で生育させられた野菜には, 亜硝酸が検出されなかったが, 亜硝酸塩を与えられたものでは最高15ppm(生重当り)程度の亜硝酸態窒素が認められた。〔実験2〕 : 市場野菜及び有機農業野菜のいずれにおいても, 硝酸態窒素含量は種類によって著しい違いが認められた。葉菜類には特に多量蓄積した(300∿600ppm)。亜硝酸はすべての試料について検出されなかった。7℃暗所に貯蔵した場合, 硝酸態窒素含量に有意な変化が認められなかったし, また貯蔵中に亜硝酸態窒素が出現することもなかった。一般に市場野菜の硝酸態窒素含量が高かったが, ゴボウとダイコンでは有機農業野菜の方が高かった。以上より, 次のことが結論される。1) 亜硝酸塩が存在する培地中に生育した野菜には有害な亜硝酸が含まれている可能性が高いので, 食用に供する場合には, 特に注意が必要である。2) いわゆる"有機農業"により生産された野菜中にも相当な量の硝酸塩が含まれているので, 低硝酸塩野菜の生産のためには, 硝酸化成作用の抑制が必要である。
著者
都築 伸二 山田 芳郎
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

従来の電力線通信(PLC)は100ボルトの電力線間に通信用信号を重畳する方式である。一方本研究では100ボルトの線とグランド間にも同時に注入(ファントムモード注入と呼ぶ)する新しい通信方式を検討した。ファントムモードで注入した高周波信号は、空間に微弱ながら信号を放射する。従って、複数の電力線が配線されている閉空間では微弱電磁界で満たされ、無線通信が可能となる。こうした形態で行うPLCを"有線・無線融合型PLC"と呼ぶ。本研究では、室内の移動体の位置を高精度に特定できる、つまり通信と測位を同時に実現できるような有線・無線融合型PLC方式を検討した。主な成果は以下の2点である。(1)微弱無線通信技術:本研究では、ファントムモード信号の注入・抽出器、及び効率良くアンテナとして励振するために必要なアンテナカプラを開発した。また電力線の配線形態によってアンテナ効率が著しく変動する問題に対しては、PLCモデムに使用されるACコードをシールド付きのものにすることによって解決した。これらの成果は特許としても出願した。(2)高精度位置特定技術:ホームロボットのナビゲーションを行うことを想定し、可聴音DS-CDMによる屋内高精度位置推定法およびその精度を検討した。(1)の微弱無線により、マイクとスピーカを同期させ、室内のように障害物の多い環境下でも数cmの精度で測位できる技術を開発した。ただし、(a)障害物に隠れていても回折波で測定できるものの精度が劣化すること、及び(b)移動体の測定においてはドップラー効果の影響が懸念された。(a)については測定精度の検定方法を提案した。(b)に対しては、チップ長1023チップのM系列を用いる場合、許容される移動体速度は1m/sec以下であることを明らかにした。本研究で得られた成果は国際会議で3件発表し、招待論文や解説記事としても出版した。
著者
梶原 忠彦 川合 哲夫 赤壁 善彦 松井 健二 藤村 太一郎
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

最近"磯の香り"(マリンノート)はアメニティー機能を有する海洋系複合香として注目されている。例えば、そのタラソテラピー(海洋療法)における機能性芳香剤としての利用、あるいは水産食品への香味香付与によってみずみずしさを増強し、商品価値を高めるなど種々の用途開発がなされようとしている。ここでは高品質のマリンノートを安定供給できる最新の遺伝子組み換え技術と伝統的養殖技術を両輪とし化学合成を組み込んだ、未利用植物材料(沿岸汚染藻類、野菜クズなど)を利用する生産システムの技術開発を目指した研究に於て、次のような研究成果を得た。(1)紅藻ノリより、不飽和脂肪酸に酸素を添加しオキシリピン類(ヒドロペルオキシド)を生成する機能を有する新規のヘムタンパク質をはじめて単離することができ、このものはグリンノート生産に極めて有用であることが分かった。(2)ヤハズ属褐藻の特徴的な香気を有するディクチオプロレン、ディクチオプロレノール及びそのネオ一体の両エナンチオマーを酵素機能と合成技術を併用して、光学的に純粋に得ることに成功し、絶対立体位置と香気特性との関連を明らかにした。また、ネオ-ディクチオプロレノールから生物類似反応により、オーシャンスメルを有する光学活性ディクチオプテレンBに変換することに成功した。(3)緑藻アオサ類には、(2R)-ヒドロペルオキシ-脂肪酸を光学特異的に生成する機能を有することを実証した。また、このものはマイルドな条件下で海藻を想起する香気を有する長鎖アルデヒドに変換できることが分かった。(4)アオサ類に含まれる不飽和アルデヒド類を立体選択的に合成し、熟練したフレーバーリストにより香気評価を行った結果、これらは海洋系香料としての用途が広いことが分かった。
著者
釘宮 雄一 林 健司 都甲 潔
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.612, pp.49-52, 2002-01-19

食品, 化粧品, 香料の製造において, 現在でも官能検査と呼ばれる人間の鼻を使った品質管理や製品開発が不可欠である.しかし人間は長時間の検査に耐えられず, 健康状態などによっても結果が左右される.また, 環境計測や安全管理においては, 悪臭・危険臭などの人間が嫌がる検査を行わなくてはならない.さらに個人差による評価結果の違いが存在することが大きな問題である.以上のことから匂いを客観的に評価できるデバイスの開発が望まれている.本研究では新しい匂いセンサ用トランスデューサとなるガスセンサとしてグラファイト分散系に注目し, パーコレーション(percolation, 浸透)現象を利用した素子を作製した後, その特性を明らかにした.またその特性を利用し, 匂い物質のひとつであるクロロホルムに対する感度を向上させることが出来た.
著者
林 巌 岩附 信行
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

我々の住む社会において,機械の振動,騒音,不快さといったNVHの分野における問題を解決し,人間にとって快適な居住空間を作り出すことが重要な課題となっている.しかし,機械から発生する騒音を最小にし,かつ心地よくリズミカルな音で機械の稼働状況を知らせる静音最適構造設計手法といったものがまだ十分に明らかにされていない.そこで本研究では,すずむし,こおろぎ,あるいはかんたんなどの鳴き声の美しい昆虫の翅の構造と発音メカニズムを工学的に解明するため,昆虫の翅の構造の精密測定と振動モード解析を行い,そしてその結果を工学的に静音最適設計へ応用するため,平板を対象として厚さを局部的に変更し,またいくつかの編み目パターンを掘り,発生する振動モードおよび音のコントロールについて検討した.本研究で,得られた結果は以下の通りである.(1)昆虫の翅の構造の精密測定こおろぎの翅をプラスチックでモ-ルドし,微少量ずつ削り出し断面を写真撮影する方法により,翅脈のため凹凸が激しい翅の形状を精密に測定でき,翅脈は波板状の構造であることが分かった.(2)昆虫の翅の振動モード解析(1)で測定したデータから,こおろぎの翅の有限要素モデルを作成し,翅脈の端にある翅と胴体の付け根,およびこすり器にたいして種々の境界条件を与え振動モード解析を行った結果,こおろぎの鳴き音の主成分の周波数に一致する固有振動数は見られなかったが,音に寄与している振動モードを確認することができた.(2)編み目模様をもつ平板の振動モード特性局部的な厚さの変化を含む編み目パターンをもつ平板の実験モード解析を行った結果,編み目による固有振動数および振動モードの特性を明らかにすることができ,編み目の変更による音響放射パワー最小化のための検討を行った.
著者
永持 仁 石井 利昌 軽野 義行
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

・最大隣接順序によるグラフ疎化法を利用して,O(n^2(1+min{κ^2,κ√n}/δ))時間,O(n+m)領域の計算量で,点連結度κに対する2倍近似の点カットを計算するアルゴリズムを得た(δはグラフの最小次数).提案するアルゴリズムはδがκと比べて大きい場合には従来よりも高い性能を発揮する.・グラフにソース,シンクと呼ぶ2点s,tが与えられたとき,ソースシンク間の最小(s,t)-カットを求める問題に対しては,有向グラフに対し,無向グラフへの「近さ」を表す指標μを導入し,有向グラフDの最小(s,t)-カットをO(min{m+ν(ν+μ)^<1/2>n,(ν+μ)^<1/6>nm^<2/3>}})時間で計算するアルゴリズムを設計した(νは最小(s,t)-カットの値).この計算量は小さなμを持ちかつ密であるような有向グラフに対しては従来法よりも優れた性能を発揮する.・与えられた単純連結グラフG=(V,E)および2点対の集合Rに対して,何本かの新しい枝をグラフGに付与してRの各2点対間の局所点連結度を2以上にする問題を考える.このとき加える枝の本数を最小にすることが目的である.問題に対する下界の導き方を精密化することで最適な付加枝集合の大きさの高々4/3倍の解を求める線形時間アルゴリズムを設計した.・ネットワーク連結度問題に対する最近の進展についてサーベイを行った.多くのネットワークの連結度問題は最大流最小カットの定理に基づく考察から最大流アルゴリズムを利用したアルゴリズムにより解くことができるが,最近,最大隣接順序と呼ばれる節点の順序付けを利用することで無向ネットワークにおいてはさらに効率の高いアルゴリズムが設計できることが示されている.特に,n,mをネットワークの節点数,枝数としたとき,極値節点集合問題,カクタス表現問題,枝連結度増大問題,供給点配置問題と呼ばれる問題に対してはO(mn+n^2log n)時間のアルゴリズムが設計できることを示す.この計算時間はネットワークの最小カットの値を決定する現在最良の計算量に等しい.これらの多くのアルゴリズムに対して研究代表者により現在最良の計算時間が達成されている.
著者
永持 仁 石井 利昌
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
特定領域研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究ではグラフ構造の解明,高速グラフアルゴリズムの開発を行った.グラフの連結性に関する問題について以下の結果を得た.重み付き無向グラフのすべての最小カットを,カクタスと呼ばれるグラフ構造に表現するアルゴリズムの計算量を軽減した.ここで使われている手法は最大隣接順序というグラフの探索法であり,すべての最小カットを計算するために最大流アルゴリズムを必要としない点が特徴である.グラフをk-分割する枝集合はk-カットと呼ばれる.最小k-カットを求める問題に対し,グラフの2-カットを大きさの小さい順に部分的に列挙するという新しいアプローチにより,k=3,4,5,6に対して従来の計算量を改善した.k-辺連結でないグラフにおいて,カット値がk未満のカットから適当なものをいくつか互いに交叉しないように選んでやると,グラフの連結度増大問題を解くために必要な情報が取り出せるという性質を示した.あらかじめこのようなカットの集合を求めておけば,連結度増大問題における解の形を細かく制御できることを示した.近似解を求めるアルゴリズムについて以下の結果を得た.グラフの点連結度増大問題は,これまで,目標の点連結度kに対し,入力のグラフの点連結度が(k-1)である場合にしか解法が知られていなかったが,新たに,入力グラフの連結度が任意である場合のアルゴリズムを与えた.このアルゴリズムは最適解に比べ,高々2(k-α)k本しか余分に付加辺を使わない解を計算する(ここでα=(入力グラフの点連結度)).さらに連結度増大問題では点連結度と辺連結度を同時に扱うものも研究し,目標値のみに依存する絶対誤差の近似アルゴリズムを得た.この他,相対誤差のアルゴリズムとして,重み付き3点連結化問題に対する(7/2)-近似アルゴリズム,最小重み辺支配集合問題に対する2-近似アルゴリズム,次数dのハイパーグラフ上のネットワーク設計問題に対するdH(r)-近似アルゴリズムを設計した(rは連結度の最大要求量,H<>は調和関数).
著者
家村 浩和 小川 一志 五十嵐 晃 高橋 良和 松久 貴 佐藤 忠信
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

本研究では、隣接する橋桁構造系や隣接建物系を取り上げ、それらの連結装置による連結により、同時振動制御を行うことを目的として、理論的実験的側面から種々の検討を行った。得られた主な結果は、次のとおりである。1) 大地震に対する制震システムにおいては、入力レベルに関わらず装置の性能制約範囲を超えない制御を実現する必要がある。特にアクティブマスダンパー装置における補助質量の変位制約問題を解決するために提案されている非線型可変ゲイン制御の実用性を検証するため、AMD装置を実物大構造フレームに実装した実験を行った。可変ゲイン制御アルゴリズムにより十分な制震効果を確保しつつ、装置の能力を有効に用いた制御が実現されることを示した。2) 阪神高速3号神戸線の震災復旧において、上部をラーメン構造とし橋脚の下端部に免震支承を設置するタイプの道路橋が建設されている。このタイプの免震橋では地震時において、免震支承には水平変形だけでなく、従来考慮されていなかった曲げ(回転変形)や軸力の変動が生じる。そのためそれらの効果の影響を実験的に評価する必要がある。そこで本研究では、多軸載荷が可能となる実験システムを用いて免震支承(LRB)の載荷実験を行い、水平変形・回転変形・変動軸力同時載荷条件下での復元力特性を検討した。その結果、変動軸力の効果は、回転変形の効果に比べ復元力特性への影響が大きいこと等を示した。3) 隣接する橋桁構造系や隣接建物系を制震する手法として、両者をジョイントダンパーで連結し、一体的に制御する方法が提案されている。本研究では5層と3層の隣接構造物の応答低減効果を得る手法として、LQ理論及びH^∞理論により制御器を設計し、シミュレーションを行った。特に制御における時間遅れの問題を取り上げ、数値モデルに対する検討を行った。その結果、H^∞制御においてはLQ制御に比べてはるかにロバスト安定性が得られ、ジョイントダンパーへの適用において優れていることが示された。
著者
太田 孝子 福田 須美子 福田 須美子
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

植民地下朝鮮にあった高等女学校を卒業後、内地に留学した経験を持つ7名の朝鮮人女性にインタビュー調査を実施し、留学の経緯及び内地での留学生活に関する具体的証言を得た他、11校分の高等女学校史の翻訳、主要人物の伝記等の翻訳により、高等女学校毎の内地留学の実態を把握した。また、「鴻嬉寮」(主に李王妃が創設した淑明高等女学校と進明高等女学校からの内地留学生のために、李王家が東京市渋谷区若木町に開設した寮)に関する文献や入寮者2名に対するインタビュー調査により、鴻嬉寮の概要を究明した。
著者
宇賀田 順三
出版者
九州大学
雑誌
法政研究 (ISSN:03872882)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.83-90, 1944-01-30
出版者
ポ-ラ文化研究所
雑誌
化粧文化 (ISSN:0388399X)
巻号頁・発行日
no.41, pp.94-104, 2001
著者
中野 詔彦 長谷川 澄子 中尾 幸道
出版者
社団法人日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.42, no.480, pp.1072-1076, 1993-09-15
被引用文献数
2

The effect of reinforcement of elastic modulus in polymer composite materials filled with ultramicroscopic particles has been investigated by taking an example of polymethyl methacrylate-palladium cluster composites.The singularity that makes the elastic modulus increase twice has been indicated by filling up the microscopic fine particles of 10〜20A in spite of a little volume which is 05%.This singularity is caused by the fact that the microscopic particles and the matrix,are perfectly unificated in the materials.The reinforcement of elastic modulus can be explained by the perfect parallel model in consideration of the interface restriction regions.It is clearly shown that such singularity is brought in only by the relative size effect of microscopic particles in such perfect composite materials.
著者
林 真照 渡辺 幸信 加来 大輔 中島 秀紀 相良 建至
出版者
九州大学大学院総合理工学府
雑誌
九州大学大学院総合理工学報告 (ISSN:13467883)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.321-328, 2005-12

We have investigated the response of a 6Li loaded neutron coincidence spectrometer to MeV neutrons. The spectrometer has a structure consisting of three 6Li-glass scintillators in a liquid organic scintillator BC-501A, which can detect selectively neutrons that deposit the full energy in the BC-501A using a coincidence signal generated from the capture event of thermalized neutrons in the 6Li-glass scintillators. The efficiency and response functions were measured using 4.7, 7.2 and 9.0 MeV mono-energetic neutrons, and were compared with those derived by combination with both neutron transport calculation in the spectrometer and scintillator response calculation. The calculation results showed fairly good agreement with the measured ones. Finally, the response function matrices were obtained for 1 to 10 MeV neutrons.