著者
茂木 瑞穂 高木 裕三 泉福 英信 米澤 英雄
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ミュータンス菌は、う蝕(虫歯)の主な原因菌であり、歯の表面にバイオフィルム(細菌の集合体、歯垢)を形成する。このミュータンス菌の数ある遺伝子の中でも、SMU832,833遺伝子については、子が母親などの養育者からミュータンス菌を獲得する際に関与している可能性が示唆された。また、バイオフィルム形成にも関係していることが示唆された。
著者
脇本 健弘 苅宿 俊文 八重樫 文 望月 俊男 酒井 俊典 中原 淳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.209-218, 2010
被引用文献数
1

本研究では,初任教師の育成として授業に関するメンタリングに注目をした.メンタリングとは,経験を積んだ専門家(熟達教師)が新参の専門家(初任教師)の自立を見守り,援助することである.初任教師を対象に授業に関するメンタリングを行う際は,初任教師が授業を行い,子どもの姿をもとにした授業の振り返りを行うことが有効である.しかし,子どもの姿をもとにした授業の振り返りを行う際に,(1)対話内容が授業技術や理論的なもの中心で,具体的な子どもの話がでてこない,(2)熟達教師の子どもの話が初任教師に伝わらない,(3)振り返る子どもに偏りが出るという問題がある.上記問題を解決するために,メンタリング支援システムFRICA(読み方:フリカ)を開発した.その結果,FRICAを利用することにより,子どもの話が引き出され,初任教師に伝わるように熟達教師が子どもの話ができるようになった.また,子どもの偏りに関しても効果がみられた.
著者
本田 裕子 林 宇一 玖須 博一 前田 剛 佐々木 真二郎
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
vol.122, pp.41-64, 2010-03-25

ツシマヤマネコは,長崎県対馬市にのみ生息し,野生復帰の将来的な実施が検討されている。ツシマヤマネコ及び野生復帰計画を含めツシマヤマネコの保護を住民がどのように捉えているのか,本研究ではその住民意識を探る。本研究は検討段階を対象としており,野生復帰直前・直後を対象としていた先行研究に対して新規性がある。方法は,長崎県対馬市全域住民のうちの20歳以上79歳以下の男女1000人を対象とし,住民基本台帳使用による無作為抽出郵送方式を採用,回収率は48.8%であった。住民によるツシマヤマネコの捉え方は,「対馬にだけ生息する生き物」「対馬を象徴するもの」として,その固有性が評価された。検討されている野生復帰に関しては,実施場所としては検討されている下島が適当とする回答は少なかったが,野生復帰そのものに関しては全体として肯定的に捉えられていた。ツシマヤマネコは,ほとんど目撃されない存在でありながら,主に交通事故対策を中心とした保護活動の展開や新聞テレビ報道によって,「対馬にのみ生息する」や「絶滅のおそれがある」という認識は普及していることが背景にあると考えられる。ただし,生活とは遠い存在であるがゆえに利害関係が想像されにくく,保護活動が肯定的に受け入れられているとも考えられる。
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科
雑誌
人環フォーラム (ISSN:13423622)
巻号頁・発行日
vol.27, 2010-09-30

<巻頭言>色は匂へと咲きぬるを / 宮﨑興二
著者
甲斐 敬美
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

一酸化炭素と水素からガソリンを製造するような反応は体積が減少する反応であり、このような反応を流動触媒層反応器で行うと、体積減少により非流動化が起きて安定な操作が不可能となる。本研究ではモデル反応として二酸化炭素の水素化反応を行い、安定な操作が行える方法について反応器モデルと実験によって検討した結果、一方の原料である二酸化炭素を2段に分割して供給することによって、非流動化を避けることができることを明らかにした上で、二段目の供給位置やガスの分割比について、最適な操作条件を明らかにした。
著者
奥乃 博 中臺 一博 駒谷 和範
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003

ヒューマノイドと人間との柔軟なコミュニケーションのために,混合音を聞き分け理解する機能を設計することを目的としている.平成15年度は,前年度開発をした方向情報や話者情報などの複数のレベルで視覚と聴覚を統合したアクティブ方向通過型フィルタ(ADPF)の高性能化,及び,ADPFを使用した音源分離システムと音声認識システムのインタフェース化を行い,簡単な3話者同時発話認識を,複数のロボット上に実現した.また,日本ロボット学会に「ロボット聴覚」研究専門委員会を設立した.(1)アクティブ方向通過型フィルタ(ADPF)の散乱理論による高性能化:画像と音から得られる話者の方向情報を基に,特定の方向からの音を分離するADPFでは,2本のマイクロフォンで得られる入力音から求めた両耳間位相差と両耳間強度差を用いて方向情報を得ていた.聴覚エピポーラ幾何に加えて散乱理論により頭部音響伝達関数の近似精度を向上させた結果,30度以上の周辺領域で音源定位と音源分離性能を大幅に向上させることができた.さらに,2種類のヒューマノイドロボット,SIG2とReplieに実装し,本手法の一般性を確認した.(2)3話者同時発話認識(聖徳太子ロボットの予備実験):昨年5月に放映された「鉄腕アトムを作る」(NHK)では方向と話者に依存した音響モデルを使用し3話者同時発話認識を行っていた.ADFPで得られる分離音は,周波数成分での特徴量が欠け,時間成分でのデータも喪失しているので,単一の音響モデルで済ませるために,ミッシングフィーチャ理論に基づいた音声認識システムを開発し,演繹ミッシングマスクにより,分離音の認識精度が大幅に向上することを確認した.(3)音一般の認識と対話システムへの展開:音声を用いた柔軟な対話システム構築のために,音声認識誤りに確信度を導入し,不要な問い合わせを解消する方法を開発した.また,非音声認識のために,楽器音認識と擬音語認識にも取り組み,単音について認識技法を確立した.
著者
好井 裕明
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

「ヒロシマ」をめぐる一般映画、アニメーション、ドキュメンタリー作品などを、可能なかぎり入手し、その映像のなかで被爆やその後の情景など「ヒロシマ」に関連することがどのように描かれているのかを解読した。その結果、「ヒロシマ」の具体性の稀少と一般的な核イメージの過剰を確認した。つまり、被爆した瞬間、直後の惨状など歴史的な時間に依拠された「ヒロシマ」を表現する映画が稀少である一方で、より一般的に原水爆の恐怖、悲劇を利用する作品が過剰であったのである。そのうえで、いわば「ヒロシマ」表現の原点である映画における表現のありようを詳細に解読した。具体的にとりあげたのは『原爆の子』(新藤兼人監督、1952年)、『ひろしま』(関川秀雄監督、1953年)、『はだしのゲン』(真崎守監督、1983年、アニメーション)である。3作品はそれぞれ独自の「ヒロシマ」表現を持っている,ことを例証した。他方、こうした作品は製作後半世紀がすぎたものであり、古い映像と言える。原点としての「ヒロシマ」映画が、現代の若者にとってどのような意味があるのかを例証するために、これらの映画を見せ、感想レポートを作成させた。レポート内容を整理し解読を試みた結果、原点としての映画は、現代においても、十分に「ヒロシマ」を理解するうえで意義あることが確認された。過去の作品として整理するのではなく、こうした映画を今後どのように活用するのかを考えることは「ヒロシマ」理解において極めて重要な作業であることも確認した。他に、今後の課題として、強大な破壊力の象徴としての核イメージの解読、「ヒロシマ」をめぐるTVドキュメンタリーの詳細な解読などをあげることができた。
著者
小原 嗣朗 立沢 清彦
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京大学宇宙航空研究所報告 (ISSN:05638100)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.493-504, 1981-03

液相焼結に対する重力の影響について,理論的な考察およびAl-CuとAl-Fe系を用いて実験を行った.液相焼結の再配列過程における毛管現象に対する重力の影響は,用いた系では実験的に検出できなかった.また,固相粒子の液相金属中における沈降速度の測定値は,計算値より小さかった.このことは,液相中の対流を計算に入れる必要があることを示している.また,このような重力の影響を検出するためには,融点差500℃以上,密度差10g/cm^3以上の系が適している.
著者
蒲生 郷昭
出版者
日本大学
雑誌
日本大学芸術学部紀要 (ISSN:03855910)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.A57-A72, 2006

永禄のころ本土中央に伝来したと考えられる三味線は、本稿が対象とする年代には、すでに広い範囲で用いられるようになっていた。しかしながら、その楽器名は、寛永期に俳譜の分野で「三味線」と書かれはじめるようになったものの、それは普及せず、正保、慶安にいたってもなお、おおくは仮名で書かれ、漢字を使ったとしても、俳諧以外で「三味線」とされることはなかった。別称の「三弦」の用例もはじめて認められるが、それは堺出身ながら十年間琉球に滞在していた人物によって書かれたものである。
著者
服部 勝憲 齋藤 昇 秋田 美代
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

学部学生の算数科カリキュラムのとらえ方は,「各学校の算数科教育計画・指導計画」が31.8%,「算数教育の計画,授業,評価の総体」が30.8%,「学習指導要領に示された算数科の内容」が15.6%,「算数科の授業内容の全体」が14.2%である。以下「算数教育により子ども達が身につけたもののすべて」3.3%,「算数科の教科書に示された内容」1.9%と続く。また開発したカリキュラム編成の重点に関する尺度,評価実施の場面と時間に関する尺度,編成段階の評価と改善に関する尺度の評価尺度得点において,学部学生の得点が現職教員より高い結果が出ているが,単純に学部学生の方の認識が高いとは考えられない。今後これらの調査項目に対する理解の広さ・深さ,さらに学校現場におけるそれらの実施の困難さ等についての検討が必要である。さらに授業観を評価する10個の調査項目を用いて,授業観についての3つのタイプ,(1)教師主導・説明練習評価尺度得点が高いType-A,(2)2つの評価尺度得点がともに平均的な位置にあるType-B,(3)生徒主体・活動支援評価尺度得点が高いType-Cを抽出した。これらの観点から考察すると,小学校教員の場合は39.4%が,中学校教員の場合は,36.9%がType-A, B, Cとして抽出された。それに対して学部学生の場合は28.4%(全211名中)とかなり少なく,タイプとして見られるような明瞭な授業観を持つに至っていないといえる。また学部学生の場合,現職教員の場合に比べて,拡散的である。特に評価の場面や時間,及び評価の改善に関する評価尺度では現職教員の場合に比べて,かなり高い得点を示している。このことから評価とそれによる改善に関しての可能性についての期待を示している。このことからも,教員養成系学部において,望ましいカリキュラム観や授業観を育てていくための考え方やその展開のための教員養成カリキュラム(教育計画・シラバス)の開発とともに,一貫性のある教科カリキュラムに関する教育のあり方が重要なものになる。
著者
吉元 洋一 勝田 治己 長谷川 博一 杉浦 昌己 宮川 博文 古川 良三 青山 賢治 三橋 俊高
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.321-328, 1988-07-10
被引用文献数
4

脳卒中患者87例に対し, Brunnstrom Stageと姿勢反射機構検査を行い, 以下の結論を得た。1. 上・下肢Brunnstrom Stageと本検査得点の比較では, 全てのStageにおいて健側との間に有意な得点差を認めた(下肢StageI : p<0.05, 他は全てp<0.01)。2. 上・下肢StageIIとIIIの比較では, 健側及び麻痺側共に有意差を認めた(p<0.01)。3. 上肢StageVとVI, 下肢StageIIIとIV, IVとV, VとVIの麻痺側間の比較において有意差を認めた(p<0.05)。4. Brunnstrom Stageと本検査得点の相関係数は, 上肢健側r=0.555, 麻痺側r=0.825, 下肢健側r=0.613, 麻痺側r=0.872と中等度以上の相関関係を認めた。
著者
代田 健二
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,弾性波動場における係数同定逆問題の実用問題例である周波数データを用いた鉄とコンクリートによる合成梁の欠陥同定問題に対して,反復型数値解法を開発した.変分法的定式化によりチコノフ型正則化項を持つ汎関数による制約条件付き最小化問題を導出し,その問題へ射影勾配法を基礎とした反復アルゴリズムを適用した.数値シミュレーションによる周波数データおよび実測データを用いた数値実験を実施し,一定精度で同定できることを明らかにした.
著者
遠藤 正之
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

1 制吐薬オンダンセトロンとメトクトプラミドのモルモット乳頭筋活動電位に及ぼす影響近年心筋活動電位第三相を形成する遅延整流カリウム電流の抑制がリエントリー型の不整脈に対して抗不整脈作用を発揮するのであるが、逆にその作用により致死的不整脈が誘発されることが明らかとなり注目されている。5-HT3受容体遮断薬であるオンダンセトロンとドパミン受容体遮断薬であるメトクトプラミドはいずれも術後の制吐剤として使用されるが、オンダンセトロンはイヌの心室筋細胞で遅延整流カリウム電流を抑制することが示されている。そこでモルモット乳頭筋の活動電位に対する両薬物の作用を検討した。その結果オンダンセトロン3uMおよび10uMは刺激頻度0.2,0.5,1.0,2.0Hzのいずれにおいても90%再分極における活動電位持続時間APD90を、濃度依存性に延長した。一方メトクトプラミド3uM、10uMは同様の刺激頻度において、APD50,APD90に対し明らかな延長作用は示さなかった。2 炭酸水素ナトリウムのモルモット乳頭筋活動電位に及ぼす影響心肺蘇生時にはしばしば大量の炭酸水素ナトリウムが、代謝性アシドーシスの補正のために投与されるが、本科学研究費に基づく研究で、炭酸水素ナトリウムがモルモット乳頭筋のAPDの延長と静止膜電位の過分極を生じることが明らかになった。種々の薬物を用いた検討から、APDの延長にはナトリウムイオンの増加が、過分極には炭酸水素イオンの増加が関与していることが明らかになってきている。3 冠動脈血流量に対する二酸化炭素分圧の影響冠動脈攣縮等による心筋虚血も麻酔中の致死的不整脈を誘発しうる。本研究ではモルモットLangendorff心を用いて、定圧潅流を行い冠潅流量を測定した。潅流液中の二酸化炭素分圧を40mmHgから80mmHgに上昇させると、血管内皮依存性に一酸化窒素の作用を介して潅流量が増加した。一方二酸化炭素分圧を20mmHgに低下させると、潅流量は約10%減少したが、一酸化窒素合成酵素阻害薬を前処置しておくと、その減少は増強された。
著者
平良 勉 金城 文雄 真栄城 勉 金城 昇
出版者
琉球大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

明治10年代より急激に学校設置されていくが、それは民衆の教化・統合と日本資主義経済の発展に伴う学力及び軍事力の養成ということが内外情勢のうちに支配層をして緊急の課題として強く意識されていた。明治12年清国政府が廃藩置県につき日本政府に抗議するという事態は、そのことを一層推進していく必要にかりたてた。御真影や教育勅語下賜記念運動会,日清・日露の戦勝奉祝運動会は、天皇制教化の一翼を担わされていたと考えられる。だが、そのことがその地域独自の生活や文化と何んの矛盾もなく浸透していったとは考えにくい。少なくとも就学率の状況はその現われとみることができる。さらにまた,沖縄に存在してきた独自の運動文化の盛衰は朝鮮や台湾などの調査研究とともに改めて検討されなければならない。大正期から満州事変頃まで“スポ-ツの黄金時代"ともいえる様相を呈する。野球や庭球など近代スポ-ツの種目の大会も開催され、新聞社や青年会主催の競技会なども盛んになってくる。青年会やスポ-ツ組織の設立もこの時期には際立った特徴となっている。それは、同時に大正5年内務・文部省訓令にみられるように、青年会をはじめとして社会教育団体の統合支配の再編過程でもあったと考えられる。しかしまた,民衆における一定の学力・教養の高まりは、内に自覚的主体の形成の可能性も孕む。自由民権運動や大正デモクラシ-,労働運動の高揚は,結社・表現の自由に基礎づけられ,スポ-ツ・芸術の本質が逆にその基礎に働きかえしていく過程の吹き返しの可能性を一定の規制を伴いながらももつ。野球部廃止をめぐる男子師範生のスト(大8)や宮古の運動会官僚統制に対する論争(昭3)などはこの時期の一端を示している。しかしこの時期以降、日中戦争,国家総動員法,翼賛県支部結成へと展開していくなかで,スポ-ツは自由主義,合理主義の温床であるとして一転して変質・排除され,あるいは実用的に国防競技化する。
著者
中川 宣子
出版者
京都教育大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、自閉症児における自己思考の表現を支援するためのデジタルテキストを開発することであった。そこでまず、特別支援教育に携わる現場教師3名により、対象生徒5名の興味・関心について、日々の授業を通してアセスメントした。次に、ここで得られた情報に基づいて、デジタルテキストで使用するテーマを協議した。協議の結果、生徒が実際に活動を行った単元・題材(宿泊学習、運動会、学校祭…など)10項目を本デジタルテキストのテーマとして選択した。続いてこれらのテーマに関連する写真やイラストを収集し、その中から各テーマ毎に5種類の素材を選択した。各素材を、Micro-soft社:power-pointによって編集し、1テーマにつき写真(イラスト)5枚、計10テーマ、計50種類の教材によって、「視覚デジタルテキスト」とした。「視覚デジタルテキスト」の実施は、週1回70分間の「国語」の授業の中で行った。生徒はまず、本時のテーマを聞き、デジタルテキストを活用して自己の思考をパソコン上に打ち込むという学習設定と、同テーマのもとで手書き(或いは口頭)表現するという学習を設定し、それぞれの学習設定における表現語彙数の比較によって、「視覚デジタルテキスト」の学習効果を評価した。結果、5名中4名の生徒に「視覚デジタルテキスト」を活用した場合の方が表現語彙数が増加するという結果が得られた。中でもA児は、1テーマにつき、手書き・口頭による表現語彙数が、最小1語〜最大5語であったのに対し、デジタルテキスト活用の場合には、最小5語〜最大15語という増加が見られた。他の生徒も同様に、1語〜7語の増加が見られた。また彼らに共通した学習態度として、「視覚デジタルテキスト」活用時の方が、学習に取り組む時間が長く、教材に向かう集中度も高いという姿が見られた。生徒にとって「視覚デジタルテキスト」は、興味・関心の高い教材であるといえ、思考表現の成果のみならず、学習意欲の継続、向上にも効果があると考えられる。今後も、自己表現支援教材の一つとしての「デジタルテキスト」を開発していきたいが、本研究で取り上げた視覚素材と併用して、聴覚素材を取り入れたデジタルテキストの開発に着手する必要があると考えられた。これは、彼らの生活を見直したとき、彼らの触れる情報は、視覚素材のみならず、聴覚素材である機会が多い。自閉症児の特性にあげられる視覚優位を活用した視覚素材と、これに対する聴覚素材との両面をデジタルテキストに取り入れることによって、彼らの生活全般における自己思考表現を支援するための学習教材の充実が考えられる。
著者
新村 和則 金川 寛 三上 隆司 福森 武
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.87-94, 2005-06-01
被引用文献数
8 9

本研究では日本国内で栽培されている水稲うるち品種の中から, 作付け面積の約99%のシェアを有する130品種(好適酒造品種は12品種)を供試品種とし, これらの品種をすべて判別できるマルチプレックスPCRプライマーセットの開発を試みた.供試した原種または原々種について, 供試品種間での多型DNA断片の塩基配列を決定し, 15組のSTS(Sequence Tagged Sites)化プライマーを設計した.これらのプライマーを1組ずつ用いて130品種それぞれについてPCRを行ない, 品種特有のバンドについて確認した.設計した15組のプライマーが互いに干渉しないよう塩基配列やプライマーの組み合わせ, PCR条件などを検討し4セットに集約した.マルチプレックスPCRを行ない, すべての品種を判別できることを確認した.次に, 複数の都道府県で栽培されている12品種を用いて, 「コシヒカリ」, 「ひとめぼれ」, 「ヒノヒカリ」, 「あきたこまち」, 「キヌヒカリ」, 「日本晴」, 「ササニシキ」, 「ハナエチゼン」, 「祭り晴」, 「あさひの夢」について, これら4つのマルチプレックスPCRプライマーセットを用いてPCRを行ない, それぞれの品種において品種内変異が生じないことを確認した.以上の結果から, 本研究に用いたマルチプレックスPCRプライマーセットは, 日本国内で栽培されているイネの品種判別に有効であると考えられる.