著者
陳 光輝 加藤 弘之 中兼 和津次 丸川 知雄 唐 成 加藤 弘之 梶谷 懐 大島 一二 陳 光輝
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

個票データの利用や収集が容易ではない中国,かつその内陸部農村地域の調査を,四川省社会科学院農業経済研究所の協力を得て行い,同省江油市農村地域206戸×3年,同小金県農村158戸×3年のパネルデータ(3年間継続調査できたのは前者が142戸,後者は127戸)を構築した.中国内陸農村地域の成長・発展は沿海や都市部に比べて伸び悩み,利子補填融資,財政支援,雇用創出等の貧困支援策のほか,現在は「新農村建設」政策が打ち出されている.そうした環境下の住民行動を「開発のミクロ経済学」を理論ベースとして分析し,以下の知見が得られた.1.山間部にある小金県は貧困世帯が多いが,政府からの移転所得は必ずしも貧困家庭のほうが多くを受けとっておらず,貧困支援策がうまく機能していない可能性を示唆している.2.所得水準の低い小金県のほうが道路,電気,水道・水利,医療施設といったインフラの現状に対する満足度は低く,整備を望む度合いが高かった.3.小金県の農業は,より恵まれた江油市のそれに比べて土地生産性が低く,得られる所得も低いが,それ以上に小金県は出稼ぎを含む非農業所得がめだって小さい.4.小金県の出稼ぎが少ない理由として,土地利用権の保障や農家間で土地を貸し借りする制度が十分でなく,出稼ぎのリスクが大きくなっていることが考えられた.5.天候不順などの収入低下ショックに直面した場合,江油市農家は貯蓄の取り崩し,小金県農民は親戚・友人からの借り入れに頼る度合いが大きかった.6.教育の収益率は有意であった.
著者
佐野 まさき
出版者
神田外語大学
雑誌
Scientific approaches to language (ISSN:13473026)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.49-69, 2006-03-31

日本語のいわゆるとりたて詞は、文末との呼応が明白なものとそうでないものとがある。たとえば「健は酒さえ飲んだ」に見られるとりたて詞サエは一見特定の述部と呼応することを要求しない。これは「飲んだ」の部分を「欲しがった」「飲まなかった」「飲んでいた」「飲んだようだ」などあらゆる形に変えても、サエとの文法的な関係に問題が生じるということはないことからそのように見える。一方「健は酒でも飲んだようだ」に見られる例示的なデモは、「ようだ」「に違いない」などのモダリティ表現で終わることを要求し、「飲んだ」で終わることはできない。本論はしかし、このような区別は文法的には意味がなく、むしろすべてのとりたて詞がそれ自身の呼応述部、認可子を持つという立場をとる。それによりとりたて詞の文中、特に従属節内での分布制限が普遍文法の一般原理により自然に捉えられることを示唆する。
著者
土屋 由香 戸澤 健次 貴志 俊彦 谷川 建司 栗田 英幸 三澤 真美恵
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

冷戦初期(1950年代を中心に、1970年代初めまで視野に入れて)に、米国の政府諸機関-国務省、陸軍省、広報文化交流庁(USIA)、中央情報局(CIA)など-およびそれらに協力した民間部門-一般企業、ハリウッド映画業界、財団、民間人など-が行った対外広報宣伝政策について国際共同研究を行った。米国側の政策のみならず、韓国、台湾、フィリピン、ラオスにおける受容の問題も取り上げ、共著書『文化冷戦の時代-アメリカとアジア』(国際書院、2009年)にまとめた。
著者
斎藤 晃 宇賀 直樹 宇賀 直樹
出版者
鶴見大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

新生児期アテンションの指標であるNBAS敏活性が18ヶ月における認知課題解決と有意な関連性を示した。そして情動調節機能の指標であるアタッチメント行動が18ヶ月における認知課題解決と有意な関連性を示した。アタッチメント行動と認知課題解決との関連性は,B群児が認知課題を効果的に解決するという欧米の先行研究と一致する。また,脳波前頭部非対称性がアタッチメント行動と有意な関連性があることを示した。
著者
斉藤 晃 多田 裕
出版者
鶴見大学女子短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

平成6〜9年の3年間で316名の母親(満期産,経膣分娩)にブラゼルトン尺度(NBAS)を依頼し,105名の協力者を得た。この中の48名から家庭訪問の許可が得られ,1,3,6,9,12ヶ月まで家庭訪問を行ったところ,A群5名,B群35名,C群6名,啼泣強く実験中止した児1名であった。A群児はNBASの自律性においてB,C群児と顕著な差を示した。B,C群児の自律性は生後1ヶ月で上昇するが,A群児は生後8日目に一度低下し,その後1ヶ月目に上昇する。自律性は驚愕反射,振戦等から構成されており,A群児は生後1ヶ月間の成熟過程における何らかの一時的停滞を示唆した。アタッチメント形成には母親の敏感性が重要だといわれている(Ainsworth)。本研究では母親の敏感性の一側面であるの啼泣に対する応答性(随伴性)を測定した。その結果,A群児の母親は1年間を通じて他群よりも一貫して応答性が高く,そして児の啼泣時間も短い。Sroufe(1985)は安全性(B群・非B群)は母親の応答性に左右され,A・C群の違いは気質に影響を受ける,と述べた。そしてEgeland and Sroufe(1981)によれば,安全性に影響を与える要因として,肉体的虐待・敵意,無視・養育不足よりも心理的利用不能性(psycological unavailability)の方が大きな影響があったという。しかし我々のA群の母親は他群と比較して明らかに応答的であり,心理的利用性は高い。本研究の被験者は316名中の46名であり,かなり等質な集団,しかも「開放的,肯定的で受容的な母親」にぞくする。従って,アタッチメントパターンは,母親よりも児自身の気質に大きな影響を受けている可能性大である。そうであれば,彼らが見せたアタッチメントパターンは,ある狭い幅の,すなわち児にとって良好な環境において成長した児が見せる気質的特徴を反映したものだと考えられる。
著者
大城 昌平 穐山 富太郎 後藤 ヨシ子 草野 美根子 横山 茂樹
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.452-456, 1992-08-01

正常発達を遂げた成熟児を対照に, 重篤な合併症がなく正常発達の見込まれたAFD児, SFD児についてブラゼルトン新生児行動評価を用いて新生児行動の発達評価を行い, 加えて, ベイリー乳幼児発達検査による6ヵ月, 12ヵ月時の精神・運動発達について追跡調査を行った。その結果, SFD児では成熟児やAFD児に比べ新生児期の行動発達及び, 6ヵ月・12ヵ月時の精神・運動発達に遅滞傾向が認められた。SFD児は, より未成熟な要因に加え, 外環境からの刺激に対し, 意識状態の調整や注意集中, 運動調整系のストレス徴候を示しやすく, 環境との適応障害を起こしやすいものと考えられた。また, 結果的に乳児期の精神・運動発達にも影響を及ぼすものと考えられた。
著者
伊藤 啓司 笠田 洋和 世木 博久 伊藤 英則
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.50, pp.155-156, 1995-03-15

詰将棋は、攻め方が王手をかけ続け、それに対して受け方が逃げる手順を考えるというパズルゲームの1種である。双方が最善を尽くして詰みに至る手順を示すことが、詰将棋を解くこととなる。与えられた問題に依存するので一概にはいえないが、詰将棋のある局面に対して十数手の王手が存在し、その王手それぞれに対して数手の受け手が存在する。本稿では、与えられた局面において、複数存在している手を並列に探索する手法について述べる。なお、並列計算機は富士通AP1000を使用し、プログラム作成にはC言語を使用した。
著者
河田 興 伊藤 進 磯部 健一 日下 隆 大久保 賢介 安田 真之
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

2004年10-12月に香川大学医学部附属病院で出産した新生児33名およびその母親32名について、カフェイン及びメチルキサンチン血中濃度測定を行った。分娩時の母体血、娩出時の臍帯から得られた臍帯静脈、日齢2、日齢5に新生児血を採取し高速液体クロマトグラフィーで測定した。臍帯静脈血中カフェイン濃度が4mg/L以上の12名、臍帯静脈血中カフェイン濃度が4mg/L未満の21名の2群について日齢2、日齢5に行ったブラゼルトン新生児行動評価法について比較検討した。母体血と臍帯静脈血のカフェイン濃度の比較はWilcoxon順位検定で行った。母体血と膀帯静脈血のカフェイン/カフェイン及びその代謝物の和の比を比較した。その比較はpaired t検定で行った。母体血と臍帯静脈血のカフェイン及び代謝物濃度比(カフェイン/総メチルキサンチン)はそれぞれ0.68±0.13、0.69±0.14(平均±標準偏差)で差を認めなかった(p=0.469)。母体血カフェイン濃度と臍帯静脈血カフェイン濃度は対数変換後の換算値の平均値及び標準偏差値で1.47±1.87mg/L、1.73±1.76mg/Lであった(P=0.078)。更に、臍帯血濃度、日齢2血中濃度、日齢5血中濃度を測定し、新生児カフェイン消失半減期を求めた。新生児カフェイン消失半減期が14日以上は10名とで14日未満は23名であった。分娩前に母体に摂取されたカフェインを臍帯血カフェイン濃度の高低で検討すると、そのカフェイン濃度が日齢2と5の新生児行動の方位反応に影響することが示された(p=0.076)。
著者
大城 昌平 穐山 富太郎 後藤 ヨシ子 横山 茂樹 鋤崎 利貴
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.355-358, 1996-09-30

本論文は低出生体重児77名を対象として,在胎週数に換算して(修正)44週時のブラゼルトン新生児行動評価(NBAS)とベイリー乳幼児精神運動発達検査(BSID)による修正12カ月時の精神運動発達との関連について統計学的に検討し,NBASが低出生体重児の早期介入及び療育の適応決定に有効であるかどうか考察した。NBASの8つのクラスター(漸減反応,方位反応,運動,状態の幅,状態調整,自律神経系の安定性,誘発反応,補足項目)と12カ月時の精神運動発達指数との関連を単相関分析により概観した結果,自律神経系の安定性クラスターを除いた他のクラスターと精神運動発達指数は有意な相関を示した。12カ月時の精神運動発達指数を目的変数,NBASの各行動クラスターを説明変数とした重回帰分析の結果,高い相関が認められ,精神運動発達指数はNBASから約60%の精度で説明することができるという結果であった。また,標準偏回帰係数を算出した結果,運動,状態の幅,誘発反応の各クラスターが統計的に有意に影響を及ぼす因子であった。これらのことから,修正44週時のNBAS評価は初期乳児期の精神運動発達を予測するうえで有用であり,早期介入及び療育の適応決定において有益であると考えられた。
著者
大城 昌平 藤本 栄子 小島 千枝子 中路 純子 池田 泰子 水池 千尋 飯嶋 重雄 福永 博文
出版者
聖隷クリストファー大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、ハイリスク児の出生早期からの発達と育児支援の方法を開発し、フォローアップシステムを構築することを目的とした。その結果、出生早期からの親子の関係性を視点とした"family centered care"によるディベロップメンタルケアの取り組みが、児の行動発達、両親の心理的安定、育児の自信につながることが示された。また、そのような取り組みには、関係専門職者に対する、ディベロップメンタルケアの理論的実践的な教育の機会を提供し、低出生体重児・早産児のケアの質を改善することが急務の課題であると考えられた。
著者
高城 和義
出版者
岡山大学法学会
雑誌
岡山大学法学会雑誌 (ISSN:03863050)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.p384-337, 1986-12
著者
内田 翔 中村 太一
出版者
プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会研究発表大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.192-195, 2006-03-16

コミュニティを立ち上げ運営する,あるいは周期的に繰り返されるイベントを企画立案し実行する場合にも,何らかのマネジメントが行われている.しかし,それらのマネジメントは体系的に整理された知識体系に則っているとは眠らない.その原因は,マネジメントに対する重要性の意識欠如であったり,メンバが入れ替わったりすることにより実施ノウハウが継承されないなど,多々ある.本稿では毎年,国内の大学が持ち回りで主催・実施する「ACM国際大学対抗プログラミングコンテスト(ACM/ICPC)」にメンバとして参加しPMBOKの知識体系に則ったマネジメント方法を提案する.
著者
平岡 義和
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、聞き取り調査とその分析を中心にして、水俣病が生起した時期において、人々が水俣病をどのようなものととらえていたのか、当時の生活の変容とともに考察する試みである。その中で、多くの人々が、危険なのは弱った魚であるといった日常知に基づく解釈のもと、魚介類を食べ続けたことが明らかになった。また、この時代は、水俣においても、都市的生活様式の普及が急速に進み、地縁、血縁が希薄化し、家族の独立性が高まったことが示唆された。