著者
土井 誠 善 正二郎 奥田 充 中村 宏子 加藤 公彦 花田 薫
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.181-188, 2003-08-25
被引用文献数
8

1998年1月及び1999年6月に静岡県で,また2001年には佐賀県で施設栽培のトルコギキョウに,葉にえそやえそ輪紋等の症状が発生した.これら発病株からウイルスを分離し,T2, T3, SGA及びSG1分雑株を得た.4分雑株の汁液接種によりトルコギキョウで原病微が再現された.T2及びT3分離株の宿主範囲は狭く,13科25種の植物のうちで,3科4種のみに全身感染した.T2及びSG1分離株はミカンキイロアザミウマでは媒介されず,ネギアザミウマのみにより媒介された.発病株を電子顕微鏡で観察した結果,平均粒子径85nmの球状粒子が認められた.DAS-ELISA法でT2及びT3分離株ともにIYSV抗体と強く反応したが,TSWV及びINSV抗体には反応しなかった.4分離株のヌクレオキャプシドクンパク質のアミノ酸配列を解析した結果,T2及びSG1分離株はオランダで発生したIYSVと相同性がそれぞれ97.8%,97.1%であり,T3及びSGA分離株はブラジルで発生したIYSVとのそれが97.4%, 97.8%であった.以上から,4分離株をIYSVと同定した.本病害をえそ輸紋病と命名する.IYSVのトルコギキョウヘの病原性は系統により多少異なることと,IYSVに対するトルコギキョウの感受性には品種間差があることが明らかとなった.
著者
防災科学技術研究所長岡雪氷防災実験研究所
出版者
独立行政法人防災科学技術研究所
雑誌
防災科学技術研究所研究資料 (ISSN:0917057X)
巻号頁・発行日
vol.186, pp.1-14, 1998-07-30

本報告は1997年から1998年にかけての冬の積雪観測結果をまとめたものである. 観測項目は天気, 積雪深, 積雪相当水量, 新積雪深, 新積雪の相当水量および新積雪の密度の6項目である. 今冬は1月5日にようやく根雪となり, その後は順調に降雪がみられたが, 2月18日以降はほとんど降らなくなった. 観測期間中の最大積雪深は1月29日に観測された110cmである. また新積雪深の最大値は1月26日に観測された45cmで, 積算新積雪深は457cmとなった.
著者
土屋 晴文 榎戸 輝揚
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.410-416, 2008-07-25

雷活動に伴い突発的でMeV領域におよぶ放射線バーストが観測されている.これは雷活動の中で粒子が高エネルギーを獲得していることを推測させるが,その正体は,まだ十分には理解されていない.そこで,放射線の正体やその生成過程を明かすため,筆者らは新型の放射線観測装置に光・音・電場測定の機能を加えたシステムを開発し,冬季雷が頻発する日本海側の柏崎刈羽原子力発電所構内で,2006年12月より雷活動からの放射線観測を続けている.本稿では,冬の雷雲がその強電場により電子を10MeV以上に加速できる天然の粒子加速器であることを示した筆者らの観測例を中心に論じる.
著者
町田 俊一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.69-78, 2003-11-30

浄法寺漆器は、古くから、青森県との県境に位置する岩手県浄法寺町を中心とする地域でつくられてきた漆器である。かつては、東北地方のなかでは有数の規模の漆器産地にまで発展した。しかし、浄法寺漆器は世界大戦後に衰退し、昭和30年代には消滅してしまった。この産地の壊滅状態は約20年間統いたが、昭和50年代に、浄法寺漆器再興の運動が起こされた。筆者は、浄法寺漆器の復興計画へ参画し、この漆器を現代生活で使用できる日用品として開発を行ってきた。以前につくられていた製品の復活のみならず、現代の日用品として生活様式へ適合させることが大きな課題であった。この課題に対しては、問題を解決するための手法としてのデザインが大きく貢献できると考えられ、漆器製造の技術だけでなく、新たなデザインの作業が総合的な観点から展開された。本稿では、浄法寺漆器のデザイン開発を通して得られた伝統的工芸品とデザインの関係に関する知見について報告する。
著者
翁 群儀 植田 憲 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.35-44, 2006-01-31

本稿は、台湾漆器「蓬莱塗」の意匠特質を調査・研究したものである。「蓬莱塗」は、日本領有時代の台湾において、日本人の漆器制作者であった山中公が、台湾で体験した異国情緒をモチーフとして日本人向けに制作を始めたことを起源とする漆器である。本研究では、台湾漆器の発展史とともに、「蓬莱塗」の位置づけ、ならびに、制作工程、モチーフの調査・分析などを通して、「蓬莱塗」の特徴を明らかにした。「蓬莱塗」の特徴は以下の通りである。(1)地域の実風景をモチーフとした地域性の溢れる絵柄が施されている。(2)原色の多用によって、台湾の活力が表現されている。(3)力強い彫刻によって、台湾の素朴な民風が表現されている。「蓬莱塗」は、今後においても、台湾社会を映し出す漆器デザインとして発展していくことが期待される。また、漆器のみならず、伝統的工芸品産業の発展に向けてデザインにおけるアイデンティティを確立していくことは、今後、台湾のさまざまな分野で検討されるべき重要課題である。
著者
浅野 和也 青木 智一 長友 晃彦 菅原 拓 橋田 淳一 阿部 紀夫 岡本 諭 上野 悠也 七夕 雅俊 大久保 好幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CAS, 回路とシステム
巻号頁・発行日
vol.108, no.453, pp.145-146, 2009-02-23

低消費電力で1Gbpsフルワイヤ処理が可能な1Gbps IPsecアクセラレータの開発について前回報告したが,今回は同じLSIにルーティング機能(NAPT,PPPoE等)を追加した実装について報告する.結果として,NAPT+IPsec(トンネルモード/3DES/SHA1)を700Mbpsで処理可能であることが確認でき、高速かつ低消費電力のブロードバンドルータ実現に有効なソリューションとなることが実証できた.
著者
櫻井 國郎
出版者
東京基督教大学
雑誌
基督神学
巻号頁・発行日
vol.21, pp.24-58, 2009
著者
佐竹 絵美
出版者
沖縄大学
雑誌
地域研究 (ISSN:18812082)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.213-222, 2006-03-31

この調査の目的は苗族の生活を聞き書きにより記すことにある。調査は2005年6月26日から7月2日までの期間で実施した。台江苗族の生活と年中行事、特にドラゴンボートレースについて記している。
著者
那須 昭夫
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.47-57, 2007-04-30

The aim of this paper is to account for the phonological characteristics and prosodic function of a word-final moraic obstruent, namely the obstruent suffix /-Q/, in Japanese mimetics. Though phonological structure containing a word-final moraic obstruent is banned in the general vocabulary of Japanese, mimetics allow a moraic obstruent to appear in word-final position. More than 90% of disyllabic mimetic stems can take /-Q/ as a word-final element. This extraordinary frequency shows that word-final /-Q/ behaves as an unmarked default, which repairs ill-formed structures to satisfy certain prosodic requirements in mimetic phonology. /-Q/ plays a key role in constructing head-final prosodic structure, in which an accented trochaic foot appears in word-final position. The optimality-theoretic account in this paper shows that the head-final pattern is widely observed in and strongly required for well-formed prosody in Japanese mimetics.
著者
那須 昭夫
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.20-29, 2005-04-30

The phonological processes of mimetics have a close relationship to sound-symbolic, or iconic effects that accompany the segmental structure of mimetic forms. While iconicity is one of the most conspicuous properties of phonological processes underlying mimetic expressions, some of the phonological processes of mimetics show consistent and systematic patterns which cannot be explained other than with reference to the general grammar of a language. This article accounts for some of the asymmetries found in mimetic phonology in Japanese. The phonological asymmetry that emerges in the phonological patterns of mimetics frequently reflects a contrast between marked and unmarked structures observed in phonological processes that generate mimetics. Here we concern ourselves with three types of asymmetries, the first two of which relate to issues in segmental phonology: "Coronal syndrome" and rhotic exclusion - particularly focusing on the process of palatalization - and the asymmetry found in voicing patterns. In addition to these two issues of segmental phonology, we analyze syllable structure in the intensified forms of mimetics and discuss their prosodic asymmetry.
著者
友寄 長重
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.151-155, 1967-10-01

毛細管現象により液肥を砂床に地下自動供給する方法により山東菜に対する液肥の濃度試験を行なった。対象区として砂床と土床に地上灌水(液肥)する区を設けた。液肥は尿素, 過燐酸石灰, 塩化加里を窒素, 燐酸, 加里が12-5-7になるように配合したものを稀しやくして用いた。地下自動給水区は4区設け, 液肥の濃度は200倍, 400倍, 800倍, 1600倍区にした。地上灌水区は砂区, 土区とも200倍液を月, 水, 金曜日に1平方米当たり1lの割合いで灌注し, 火, 木, 土曜日には同量の水をかけた。1966年11月26日に播種し, 1967年1月20日に測定した。地下自動給水区の液肥がなくなった12月10日と21日に50lづつ液肥を入れた。土区では生育の途中で害虫が多く発生し測定できなかった。砂床地上灌水区は, 試験期間中降雨が多かったため, 地下自動給水の200,400,800倍区に劣っていた。地下自動給水区では生育の中途までは400倍区がよかったが, 結果は200倍区が成績は最もよかった。200倍区のT/R率が極めて高く, 十分の水と肥料が供給されれば, 根長, 根重は小さくても, 地上部に十分の養分を供給するものと考えられる。地下自動給水により液肥を砂床に供給し, そ菜, 花卉を栽培することは筆者が1966年9月から始めたものであり, 満足のゆくような施設と研究はできなかった。液肥を貯めるのに内径10∿15cmのビニールパイプを用い, その他いろいろ改良を加えれば, 多額を要さない施設費で栽培の省力化と増収にかなり設立つものと考えられる。