著者
當山 孝義 堀口 進
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.77, no.11, pp.770-773, 1994-11-25

最大公約数(GCD)算出は数値計算,暗号や符号計算などの分野で用いられている基本的計算の一つであり,高速解法について盛んに研究されている.Chor-Goldreichアルゴリズムは最も速い並列アルゴリズムの一つであると考えられいるが,その動作は詳細に検討されていない.本論文では,LPRAMモデルの並列マシン上での並列GCDアルゴリズムの詳細な動作をエミュレータを用いて解析し,メモリアクセス遅延が大きな影響を与えることを確認した.
著者
浅野 二郎 仲 隆裕 藤井 英二郎
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.109-122, 1987-03-30
被引用文献数
1

紹鴎から利休へとつづくわび茶の草創の時期において,わび茶の先達たちが求めた世界は,一座建立の世界であり,それは,茶の場において亭主の座と客の座がもつ格差の否定につながるものであった.而して,利休が求めるものは,四畳半,三畳あるいは二畳といった,いわゆる小間の茶に佗びすますところのものであった.しかし,うき世の外の道を目指したこのわび茶も,終いにうき世の外のものではあり得ず,やがて,それは客のための茶へ,さらに客のもてなしのひとつとしてとらえる茶へと変容する.わび茶に対する意識のこのような転換に伴って,茶室の空間構成にも,新たな展開が起る.この際立ったひとつとして茶室における台目構があげられる.一方,露地についてみるとき,露地もまたおそらく茶室のたどった道筋と無縁のものではあり得なかった筈である.つまり,台目構の茶室に対応する露地は,台目構を構想する意識と深くかかわりつつ造形されていったものとみてよいのではあるまいか.本論文では,特に台目構の茶室をとらえながら,それに対応する露地の形態がどのように展開したかを,指図(平面図)が確認できる史料を手がかりとして,検討を加えた.即ち,織部がかかわった松屋久好の露地,細川三斎の露地および金森宗和の露地を事例的にとりあげ,関連資料を活用しつつ,これらの露地が辿った道程を見極め,それぞれの茶匠たちが求めた造形をとおして,わび茶における伝統の継承と創造の問題について論じた.
著者
吉田 憲司
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.518-536, 1998-03

いま, 民族学博物館にあらためて熱い視線が注がれ始めている。人文社会科学全般における政治性・歴史性への関心の高まりと, 民族学博物館がこれまでその展示の主たる対象としてきた非西洋の諸民族の自己の歴史に対する覚醒の動きのなかで, 民族学博物館の存在が, 西洋と非西洋との歴史的関係性の具体的な証として, また文化的アイデンティティーの形成の装置として, あらためて注目されてきたからである。こうした流れをうけて, 民族学博物館のあいだでは, 現在さまざまな新しい試みが展開されつつある。旧来の展示に欠落していた部分を補おうとする修正主義的な展示。展示という営みそのものを見つめなおそうとする自省的な展示。展示する者とされる者, さらにはその展示を見る者とのあいだの対話や共同作業を志向する展示。そして, 文化の担い手自身による「自文化」の展示, などである。本稿では, 個々の展示にみられるメッセージの生成の様式(詩学)とそれがはらむ権力性(政治学)に焦点をあてながら, 民族誌展示をめぐるこうした近年の新たな取り組みの見取り図を描く。
著者
土橋 昌 中山 英久 加藤 寧 JAMALIPOUR Abbas
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.627, pp.73-76, 2006-02-23

デジタルコンテンツの配信をセキュアに保つDRM(デジタル著作権保護)技術に注目が注がれている.トレイタートレーシング技術は,DRM技術の一種であり,配信側がコンテンツの視聴状況を把握する技術である.その例として,電子透かしを用いる手法や暗号配信の際の暗号鍵を利用するものがある.しかし,コンテンツに対する加工情報を利用するそれらの手法では,ユーザ側での不正な加工によりトレーシングを無効化される可能性を払拭できない.ユーザ側での不正な加工を防ぐためには,ネットワーク上のルータで加工情報を解析しなければならない.しかしながら,現在の高速広帯域ネットワークにおいては,流れているパケットの解析が非常に高負荷であるため,現実的ではない.したがって,加工情報以外の情報を用いる手法を検討する必要がある.本稿では,ストリーミング再生中のトラヒック量の変化に着目したトラヒックパターンを用いて,コンテンツを視聴しているか否かを判定する手法を提案する.提案手法は,無線環境でエラーが頻発することを考慮し,動的な判定方法や崩れた波形のマッチング方法についても検討を行った,画期的なトレイタートレーシング技術である.実際にPCを用いた実ネットワークにおける実験環境を構築し,有線だけではなく無線においても提案手法が有効であることを確認する実験を行い,良好な結果が得られたことを示す.
著者
八木 健 杉崎 隆一 荒井 慎一 相曽 景一 武笠 和則 小倉 邦男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OFT, 光ファイバ応用技術 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.84, pp.1-6, 2000-05-18

WDM伝送が急速な進歩を遂げている中, 光アンプ, 分散補償モジュール, 合分波モジュールあるいは波長変換モジュールなどの光を処理するためのデバイスが大きな進歩を遂げている.また, 新たなWDM用光源の検討も進められている.それらのデバイス・光機器のキーアイテムの一つとしてデバイス系光ファイバの開発にも力が注がれている.本論文では我々が開発している光ファイバー分散スロープ補償ファイバ, 非線形現象を回避するEDF, 高非線形性ファイバーの紹介を通して, デバイス系光ファイバの現況を考える.
著者
北村 光子 山崎 久子 大江 千恵子 綿 祐二
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.185-193, 2003-01-31

我が国は高齢社会に入り様々な社会問題や生活問題を抱えている。その中でも介護に関しては、施設介護や在宅介護に限らず注目されており、現場で働く介護職の量と質の向上に各方面から力が注がれている。介護職の中でも、国家資格保持者である介護福祉士は、単に身辺介護に留まらず専門性をもって、利用者をとりまく生活全般の改善・向上に努めている。しかし、このように介護の現場で専門の知識と技術を提供している介護福祉士の認知度や、過酷な労働でありながら業務の評価については決して高いとは言えず、"やりがい"と"現実"の間でジレンマを起こしている状態である。よりよい介護を目指して、介護職のリーダー的役割を担う介護福祉士の職業意識や社会的地位、あるいは就労意欲について、もっと客観的に評価する必要があるといえる。そこで本研究では、介護福祉士の現状を調査し、さらに介護福祉士の就労意欲に影響を及ぼす要因を明らかにすることを目的とする。調査の結果、就労意欲の現状においては、仕事面で「身体的負担」「精神的負担」を感じると就労意欲を欠き辞職を考えるようになるという結果を得た。また、その理由として「賃金の低さ」や「仕事内容のきっさ」「運営方針への不満」「社会的地位の低さ」などが挙げられた。また、介護福祉士にとって、職場内に「良き理解者」が存在すると介護福祉士の「将来性」や「職に対する誇り」が得られるという結果を得た。この「良き理解者」について詳細な記述はできなかったが、このことは介護福祉士の役割を他職種間で共有することの重みを現しているといえる。今回の調査では、良き理解者が存在することが自己研鑽に直接結びつくという結果は得られなかったが、もっと介護福祉士の就労意欲や社会的地位を向上させるためには、自己研鑽できる環境設定や講習内容の充実が必要と考える。
著者
濱川 礼 暦本 純一
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.44, pp.329-330, 1992-02-24

マルチメディアシステムへの期待と共にメディア間の同期をどのように処理するかが重要なテーマとなってきている。現状では、この問題を解決するためにハードウエア、OSレベルでの処理(real time OS)に研究が注がれている。これは最終的に同期を行なうためには現状のハードウエア、OSでは非常に困難であるからである.一方ユーザインタフェースの立場からメディアの同期を考えてみると、主だ未解決の問題が多いのに気づく。現状の、いわゆる「マルチメディアオーサリングシステム」のほとんどは、時間軸上に複数のメディアを並べるという操作によってユーザに同期関係を定義させている。しかし、これは実際に行なうと非常に手間のかかる作業である。
著者
八田 賢明
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.83-91, 1972-02-01

従来, 子宮内膜の病変の診断に細胞診の行なわれる機会は子宮頚部に比して少なかつた. しかし簡単で確実かつ反復採取可能な内膜細胞診の確立がのぞまれていた. 近年, 内膜細胞採取法が種々考案され内膜細胞診による体癌の検出はもとより, 内分泌環境の変化に基づく各種内膜像についての細胞学的知見にも関心が注がれている. しかし内膜細胞診における判定も統一されておらず, 正常周期における内膜細胞の特徴的所見でさえ判然としない現状である. 本研究は子宮内膜腺細胞の正常周期像を細胞レベルでとらえ, 不正子宮出血例 (主に機能性子宮出血) に対し改良を加えた内膜採取法を試み, 得られた内膜細胞の塗抹標本上の特徴的所見を系統的に分析し, さらに子宮体癌と非癌内膜との細胞学的鑑別法について検討し, 次のような結果をえた. (1) 正常周期像では増殖期初期および分泌期後期ではそれぞれ比較的特徴ある所見がみられ, 特に細胞集塊の形態, 細胞質量の多寡に明らかな差異を見出しうるが, 増殖期後期と分泌期初期との間には剥離細胞所見は近似し, 両者間の区別は容易でない. (2) 不正出血例について病理組織分類別に内膜細胞を検討すると, 標本全体, 細胞質, 核各々に特徴的所見がみられ, その分析により背景となる組織像をほぼ推定することができる. (3) 各種内膜について核の長径と短径を測定し分布図をつくり比較すると, 特有な核群分布がみられるものがあり, 子宮体癌例では長径7.5μ〜17μ, 短径3.5μ〜13μの大小不同の強い核群と比較的均一な核径分布を示す2群が認められる. (4) 体癌細胞と非癌細胞との鑑別は核多形性, 核過染性, 核径不整, クロマチン像の他に内膜腺細胞の散乱傾向, 核小体肥大, 核内空胞に求めるべきである. (5) 機能性子宮出血例においては出血持続日数の増加につれ各種内膜に共通して細胞集塊性減弱, 遊走細胞増多, クロマチン像の変化がおこり, 固有の塗抹標本所見から離脱した結果がえられ, 出血開始直後での内膜細胞診の実施がのぞまれる. (6) 不正子宮出血例において腟プールスメア中に内膜細胞が出現する頻度は年令およびその背景の内膜像に関与する場合が多く, 出血持続日数の長短によつても差異を認めうる.
著者
池田 雅史
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.377-378, 1994-09-20

最近、熱い視線が注がれているマルチメディアであるが、今一つその実態がつかめない。まさしく言葉先行である。そこで、企業活動における有効性を検討することでマルチメディアの実態に迫ることにした。つまり、「マルチメディアは利益に貢献するのか?」という観点で、厳しくその有効性を評価した。また、多様な業務をこなしている企業にあってマルチメディアが有効である分野を模索し、幅広い観点から評価することも狙った。今回は、企業活動を(1)対顧客活動、(2)社内活動の2つに大別し、実際にあるいは机上でマルチメディアシステムを構築することで、各々での有効性を検討した。
著者
白木 仁
出版者
筑波大学体育センター
雑誌
大学体育研究 (ISSN:03867129)
巻号頁・発行日
no.27, pp.65-69, 2005-03

2004年8月13日から29日にわたって、聖地アテネでオリンピックが開催された。選手312名、役員201名の総勢513名で編成されたチーム・ジャパンは26の競技に参加し、多くのメダルを獲得して、日本を感動の渦に巻き込んだ。 私はシンクロナイズドスイミング日本代表のトレーナーとしてオリンピックに参加した。選手やスタッフが各々最大限の挑戦をしたものの、 ...
著者
菊池 章太
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学研究紀要 (ISSN:13447459)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.223-246, 2002-03-31

日本人が仏教信仰の根本的な聖典として用いてきた漢訳仏典の中には,インドや中央アジアではなく,中国において撰述された経典もかなり含まれている。これらは一般に「疑経」の名で呼ばれ,かつては,疑わしいもの,偽妄なものとして排除されてきた。このような見方は,中国であいついで作られた経典目録の判断基準にもとついているが,今日では疑経は,中国人による仏教の受容と変質のありかたを考えるうえで,また,庶民による仏教信仰の実態を知るうえで,欠かせない資料として,日本でも欧米でも盛んに研究が行われるようになった。これは道教経典に対する見方とも共通し,中国土着の宗教である道教もまた,中国仏教の研究者によってようやく認識されだした。仏教の疑経と道教経典に対する目下の人々の関心には共通する意識があることが認められる。一方,欧米人による中国仏教の研究にあっては,日本で盛んな教義上の議論などよりも,むしろ社会現象としての中国人の信仰という側面により多くの関心が注がれてきた。その結果,かつては異端的なものとして退けられる傾向にあった疑経や,土俗的な迷信とほとんど同義に扱われていた道教は,むしろ欧米においては早くから注目された。本稿は,日本における疑経研究の現状を報告し,欧米の研究との視点の違いを踏まえ,そこに含まれるいくつかの問題点を抽出し,今後の研究への展望を提言するものである。